無自覚で【無属性】持ちの俺は最強みたいです~外れスキルを3年間鍛え続けていたら、ダンジョン配信中の亜人姉妹に襲い掛かるS級モンスターを偶然倒してしまいました~   作:早乙女らいか

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第8話 事務所にやってきました

「やっほー!! さ、事務所行こ!!」

 

「……治るのに二、三日はかかるとか言ってなかったか。事務所の件は昨日話したばっかだろ」

 

「姉さんがおーねがい♡ってしたら医者が本気出した」

 

「ちょろすぎだろ!?」

 

 大丈夫かよ日本の医療業界。

 ただ見た感じ、大きな怪我もなければ我慢している様子もない。

 

 本当に一日で治したのか……

 

「で、事務所はどこにあるんだ?」

 

「えっとねー、ここの病院から徒歩……」

 

「徒歩? そんなに近いのか?」

 

「いつでも入院できるよう、事務所の立地は考えに考え抜いたらしい」

 

「物騒な……」

 

 そんなに近いなら先に一言、詫びでも入れとけばよかったな。

 と、姉妹にからかわれつつ、俺たちは事務所へと向かった。

 

「じゃーん!! ここが私たちの事務所、オトプロでーす!!」

 

「意外とこじんまりとしてるな」

 

「少数精鋭だからねー、所属タレントもアタシ達二人しかいないし」

 

「ふむ、なるほど」

 

「ささ、入って入ってー……」

 

 オトプロの事務所は4階建てのビル……の3階にあるワンフロアらしい。

 大人気チャンネルの運営元がここまで小さいとは少し意外だった。

 いや、ダンジョン配信者の事務所はこんなもんなのか?

 

 ビル内のエレベーターに入って3階まで上がり、れなに案内されるがままオトプロの事務所があるフロアへと向かう。

 

「退院おめでとう。待っていたよ二人とも」

 

 オトプロの入り口では、俺と同じくらいの身長はあるイケメン美女が出迎えてくれた。

 

「あ、リゼさん!! お出迎えありがとう!!」

 

「すまないね、本当はお見舞いに行くべきだったのだけど、仕事が立て込んでいて」

 

「いいのいいの!! 一日で退院できたし!!」

 

 黒髪ショートで中性的な容姿、そしてパンツスタイルの黒いスーツがクールな雰囲気とよく似合っている。

 ちなみにイケメンなのに女性だとすぐ見抜けたワケは……ほら、その……胸元が意外と大きくてさ……

 

「この人は高宮リゼさん、アタシ達のマネージャーさんだよ!!」

 

「初めまして、音梨くんだったかな? ボクがリゼだ。二人を助けてくれたこと、改めて礼をさせてくれ」

 

「いえいえ!! そんな頭を下げなくても……俺は出来る事をやっただけなので」

 

「出来る事と行動することは似てるようで違う。君は素晴らしい選択をしたと思うよ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 丁寧な礼と仕草に加えて、社交辞令で見せたキリッとした笑顔に少しだけ心が惹かれる。

 見た目と言動がイケメンだとここまで輝かしく見えるのか……

 きっと同性にモテモテだったんだろう。

 

「ふふっ、そんなに見つめられると困っちゃうかな?」

 

「あっ!! す、すみません!!」

 

「なーんて、冗談さ♪」

 

「は、はは……」

 

 少なくとも言葉で勝てる気がしない。

 これが大人の余裕かぁ…… 

 

「リゼさんイケメンだし見とれちゃうよね~わかるわかる」

 

「でもリゼさん、ホラーダメだからホラー関連の企画あんまり取ってこない」

 

「……真白くんは少し黙ろうか」

 

 おっと、イケメンなリゼさんの眉間にしわが寄ったぞ。

 意外と可愛い一面もあるようで。

 

「さて、音梨くんも来てくれたし、話を始めようか。奥へどうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

 リゼさんに案内され会社の中へと入る。

 

「おお……」

 

 中はデスクチェアで仕事をする社員さんで埋め尽くされていた。

 人数はそこまでではないが、一人一人が複数の作業を同時にこなしており、仕事の忙しさと熱量を感じられる。

 高校卒業と同時に探索者になった俺にとっては、社会の現場というのは新鮮な光景だった。

 

「うちは夢街くん二人の為に作られた事務所だから、規模もそこまで大きくないのさ」

 

 そういえばそんなことを姉妹が言ってたような。

 二人のために事務所を作る、ということは社長は親族か何かなのだろうか。

 

「さ、こっちだよ」

 

「ここは防音だからナニしてもバレないよ~♡」

 

「何もしねぇよ」

 

 れなの意味深な発言を軽くあしらいつつ、事務所の隅に設けられた応接室へと入っていく。

 応接室のソファは結構ふかふかで、家にも一つくらいは欲しいと思うくらい快適だった。

 四人が座り、リゼさんがそれぞれのテーブルにお茶を置き終わると、早速話が始まる。

 

「さて、ややこしいことは抜きにして担当直入に聞こう。オトプロに入らないか?」

 

「いきなりですね。俺としても未知の世界で魅力的ではあるんですが……何故俺を?」

 

「二人が気に入ってるのと、事務所に新しい風を入れたかったのさ。前々から男性との絡みはあった上に、男女の絡みを見たいというファンの声にも答えたかったからね」

 

「男女の絡み?」

 

 意外だな。

 俺は二人のことをよく知らないが、こういう美少女系の配信者というのは男性との絡みをよく思わないファンが多いと思っていた。

 

「特にれなくんが下ネタエロネタ全開で男女と絡むからね……彼女の生々しいボケに動揺する男性という図が結構人気なのさ」

 

「はえー……」

 

「アタシはただ欲望に素直なだけだよー? あ、無名くんとぐちゃぐちゃに絡み合うのはもう少し仲が良くなってからかなー?」

 

「もう少しでやっていい行為ではない」

 

「えー? 今どんなこと考えたのー? へーんたい♡」

 

「……なるほど、これは面白い」

 

「だろう?」

 

 やられる側はたまったものではないがな。

 

「ま、ウチとしても現在進行形で大バズりしている音梨くんを迎え入れたいし、対価として高難易度ダンジョンでのサポートを行いたい。どうだろうか?」

 

「俺に……オトプロの役に立てるのでしょうか」

 

「勿論。ボク達が色々教えるし、自信を持ってくれ」

 

「そーだよ!! なんとかなるって!!」

 

「姉さんとリゼさんが言うから、大丈夫」

 

「……そっか」

 

 俺は番崎との件ですっかり自信を無くしていた。

 才能もなければ、人に求められることもない。

 誰かに蔑まれ、見下され続ける人生だと思っていた。

 

 けど、今……何かが変わろうとしている。

 

 何故かSランクモンスターを倒せて。

 何故か美少女姉妹と知り合えて。

 何故か配信者事務所に招待されて。

 

 暗闇に包まれていた過去から、光り輝く未来へと進める。

 そんな気がした。

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「あぁ、楽しみにしているよ」

 

 勇気の一歩を踏み出し、新たな人生を歩もうと俺は決心した。

 

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