夕日が窓から差し込む。
微睡の中から顔を出した僕は、ふとした拍子に窓の外を見た。夕陽に照らされ、閑古鳥が鳴く閑散とした町並みが、なんだか幻想的に思えてならない。
そんな印象を伺わせていた。
何気なくだが、夕方だけに時間を気にしてしまう。とは言え、自宅は近所だし、そこまで焦る必要はないのだが……。
そんな時である。
トン、トン、
ドアがノックされ、それから木戸が開いた。ギィー、と軋むような音を立てて現れたのは、僕の親友――リクだった。
「その感じだと、寝てたな〜?」
「悪いかよ」
「別に。ちょっと弄って見せただけさ。それよりも、見せたいものがあるんだ。……これさ」
そう言うなり、徐に手にしていた遺物をテーブル上に置いて見せた。遺物は何かの石板のようであり、色々と絵やら象形文字が刻まれていた。
「石板? これは一体……」
すると、リクはニンマリと笑みを浮かべ
「前に言っていただろう? クラウド。それ関係の石板さ。ようやく見せることができたから」
「前に言っていたこと?」
よくよく思い出してみる。すぐには思い出せなかったが、〝考古学“と言うキーワードを当て嵌め、やや時間を置いてからようやく思い出すことができた。
「あ〜、あれか。古の大戦の件で」
「そうそう、それそれ。それだよ、クラウド」
「でも、よく、そんなものを発見したよな? 確か、一万年以上前の大戦時代のものだよ。いくらなんでも……」
「それが、そうでもないってことさ。こう見えても、うちの父さんは、遺物調査は随一の考古学者だから。ただ、さすがに現物は貸し出せなかったけどね」
「え? てことは……」
てへ
少々、リクは照れくさそうに表情を変えて見せ
「レプリカ、になっちゃった。ごめんな」
「レプリカ、て〜。まぁ、いいけど」
レプリカだろうとなんだろうと、僕には大して変わらなかった。ただ一つ、その石板とやら、何が書かれているのかを知りたい。
それだけが目的だったから。
「で、なんて書いてあったんだ? 見ていいか?」
「いいよ。自分も、実際、見るの初めてだし」
そして、リクと僕は、そのレプリカとは言え、石板の方に改めて目を通して見せた。
傷だらけのような石板には、何かを意味するような絵だったり、簡単な象形文字だったりが刻まれている。
象形文字の方は、流石に理解できなかったが、絵の方はと言うと――
「木? 木、か。これは」
すると、リクも同じように思ったらしく
「やっぱり、そう思う?」
「やっぱり、って。リクもか?」
「うん、どこからどう見えても、そう見えたから。でも、思うにただの木でもなさそうかも」
「と言うことは?」
するとそこへ、聞き慣れた声が
「お! 興味津々だね。しかもそれって、神話に出てくる木かい?」
「父さん! いつの間に」
僕もまた、軽く会釈し
「ど、どうも。お邪魔してます」
ついつい畏まってしまった。父さん――、いわゆるリクの親父さんは、
「ちょっと貸してみ?」
そう言うなり、徐に片手を伸ばすや、僕とリクが見ていたレプリカを手に取って見せた。
なにか思うところがあるのだろうか?
ふむふむ……
軽く何回か頷いて見せた。
「なにか、思うところでも?」
肩の緊張を抜いた形で、僕は質問してみた。
「あ、いや。思うところはないさ。ただ、もし、本当なら、生きているうちに、是非、行きたいな〜、とね。特に家族揃ってな」
この言葉に興味を抱いたリクが、早速、問いただして――
「父さん、どう言うこと?」
一方、僕も、この件に関しては、興味を惹かれるものがあり。注視する中、リクの親父さんは、端的に一言で済ます。
「星の故郷」
「え?」
?
あまりにも抽象すぎて、思わず怪訝そうな表情をしてしまう。そんな僕とリクを見てか、親父さんは続けて話す。
「あー、この描かれている木の場所のことさ。刻まれた文字には、全ての始まりであり、真実が秘められているとかなんとか……」
「真実? ん?」
なんの真実だろうか?
首を傾げる中、この空の世界に関することだろうかな〜。とは、ふと思ったが。
「他にはないの? 父さん」
「他、て言うか……。書いてあるには書いているんだろうけど、ハッキリしてないんだよね。文字が欠けていると言うか〜」
「なんだよ、もうー」
なんだか煮え切らない回答に、リクは不服でならないみたいだった。
「でも、まぁいいや。いずれにせよ、自分の気持ちは変わらないし」
「リク、それって……」
的中したかのように、にやっ、と笑みを浮かべ
「想像通りさ。勿論、クラウドも行くよね? 星の故郷への旅」
「え? でも、それって……」
レプリカとは言え、石板に書かれている場所。思うに、あるかどうかすら分からない。
いわゆる
さらに付け加えれば、なんだかいきなりのような気もするし。まさに、思いつきで言っているようにも。星の故郷への旅へ行こうだなんてことを。
そんな中で、親父さんは
「ま、無理しなくていいよ。それに、本当にあるかどうかも分からない場所だ。高確率で無駄な旅になることも考えられるからな」
「父さん……」
しかし、そんな夢を壊すような発言に幻滅しかけたリクを他所に、親父さんは苦笑するに留めておいた。
真実が秘められているか〜
その言葉が、妙に自分にとって引っ掛かりそうな気がしていた。なお、後からリクに聞いてみたら、星の故郷への旅へは、名前自体は知らなかったものの、前からそんな場所へ行くのを憧れていたそうだ。
僕としては、そんなことを思っていたなんて思いも知らなかったけど。
朝――
微睡の中、僕は目覚めた。
「夢、か〜」
なんだか懐かしいような。そんな夢だった気がした。
「星の故郷への、旅、か〜」
全てはここから、そんなような気がしていた。空の世界の秘密はともかくとして、なぜだか自分の生い立ちにも関係あるような。
理由は分からないが、その日を境に、次第に気になってきたことだけは確かだから。
それに、あの日を境に不思議な夢を見始めたのは確か。見知らぬ場所の光景を毎度見せられる夢。でも、あくまで夢なんだけども、どこか郷愁さえ感じてやまなくて……。
その中で聞こえてくる〝謎の少女のような声″は、その都度、星の故郷を目指すよう促してくる。理由は分からないんだけども。
そのようなことがあって、次第に星の故郷へ行きたい。そのように感じ始めた訳であり――
ホッと息を吐いては、ふと、机上にて、雑多な小物の中に置いてあるリボルバーを目にした。
この肌身離さず持ち歩くリボルバー。銃口がなぜか2つある独特の形状したそれは、リクの形見だからだけでなくて
そんな彼との約束も込められていたからに他ならないのかも知れない。或いは、ある種の〝お守り″そんな意味合いもあるのかも、と。
そんなこともあってか。
の意味を込め、名をシーカーと呼んでいた。
ベッドから降りた僕は、一階に降り、そのまま玄関へ。靴を履いて、外へと出た。
明朝だけに、朝靄が微かに残っている。日が昇る前だけに、まだ、薄暗さも残していて。
これと言って、村人はまだいない様子。閑散とした雰囲気を醸し出していた。
すー、は〜……
新鮮な空気を吸い込むようにして、深く深呼吸をする。徐に歩を進めて、僕は思い至った場所へと向かった。
その場所たるや、ここから然程、遠くにあるわけでもなく――。そこは、僕にとって特別な場所。
多分、ここから、星の故郷への旅が始まるのかも知れない。そんな気がするような場所だった。
村外れの林を進んでいく。慣れている道だけに迷う事はなく、その先は開けた場所へと通じていた。
歩きながら、ふと、見上げてみれば
「あれから、5年、か〜」
誰にも語る事なく、懐かしむようにそう呟いた。そう、5年もの歳月。この地へ来てからの歳月のことを意味していて。
当時のことは、正直、記憶が定かではないのだが、とにかくまともじゃなかったことは、確かだとは思う。
ただ、その頃の出来事以外は、鮮明とまではいかないが、よく覚えていたつもり。
リクとの出会い、彼との日々、その大半を。
だけど……
やっぱり、なんというか。最低線、これだけは、薄々、知りたいとは思っていたのかも知れない。
今でもそうなんだが、リクとの交流を経ても尚消えない蟠り。なんというか。例えるなら、心の底でシコリとなってできている異物のようなもの。
具体的に言い表すとなると、そう、それは――
であることを。
僕自身の名前――
そのニャアンス的な部分(僕の、漢名を使うような名前とは違い、周りの人はカタカナで本名が成り立つあたりで、と言う部分)とは違うような気もするし。
今まで話を聞いて来たことを鑑みて、そう言った漢字を使うような名前を持つ文明社会は、この現在の空の世界において、まずないとのこと。
まさかとは思い、図書館に通い、軽く歴史の文献を読んでみたが、案の定、そのような記述的なものは何一つなくて……。
それに、言葉では表せないが、何というか。他所の国に来たような感覚。それが、不思議と未だに消えないのである。
更に極めつけと言えば、リクと出会う前の記憶が、自分の名前以外、何も覚えていないと言うこと。
それらを鑑みても、やはり、自分は周りとは違う。そんな気がしてならなかったのだ。
まるで、この空の世界における、完全なる
であるかのように、だ。――と、そんな自問自答するような想いを巡らす中、遂に僕は、その
〝特別な場所″
とやらに辿り着いた。
その場所も、林中にいた時と同じく朝靄に包まれていた。だが、一面原っぱで、周りが林に囲まれているとは言え、それなりに開けていただけに、広々としていた。
それだけに、視界も、まずまず良好であり、見晴らしがそれなりに良い方であった。
そんな中で、僕を待っていました。そんな風に言わんばかり、一陣の寒風が駆け抜け、靄を振り払っていく。
より視界が開け、見えてきた景色。緩やかな傾斜からなる小丘。その丘の上に、〝それ″があった。
まだ、未完成とは言え、小型エンジンを操縦席の真上に搭載したプロペラ機の名前。ここまで作り上げるのに、3年半の歳月はかかった特別な機体が、そこに鎮座していた。
セーラと僕。2人で空の彼方へ旅することを名目に、前後に操縦席と助手席があり――
だけど、エンジンの調子がイマイチなのと、強風からパイロットを守るための防風カバーが未装着だけに、まだ、製作の段階。完成とまでにはいかなかった。
外観を堪能した僕は、タイニーブロンコへと向かって歩んで行く。
そして……
機体の側に立った。立つや否や、そっと白桃色の塗装に触れてみた。やや操縦席の方へと見上げて想い馳せる。
「もう直ぐなんだよな。もうすぐ完成して、それでいて――」
それから、肌身離さず持ち歩いているリボルバー入りのフォルダーに手を当てがい
「リク、いよいよだよ。いよいよ……」
友を懐かしむように独白して見せた。その後、操縦席へと入った。入って、それでいて何をするまでもなく。
とにかく、早速、エンジンを唸らせ始めてみた。力強い音が周囲を轟かせる。だが、すぐに事切れだかのように、止まってしまい――残念。
いつもそうだが、何回かこうやってエンジン調整やってきたけど、結局、結果はいつも同じで――
は〜
思わずため息が漏れる。だけど、なんだか悟り始めてきたような。そんな気さえする。
タイニーブロンコを飛ばして、空の向こうへの旅。それを諦めた。そんな事ではなく。
「やっぱり、燃料に難があるのかな。そうとしか……」
徐に立ち上がった僕は、エンジンに備えた燃料タンクのハッチに手を伸ばした。キャップを外して、それでいて素手で中に手を突っ込んで見せた。
固形燃料に触れてみたが、熱さを感じず。まるで、河原の意思を掴むような感覚で軽く手に取って見せる。
座り直し、その掌に乗せた固形燃料を見つめた。キラキラとエメラルド色の光沢を放つ固形燃料――魔導石。
一見して、ただの結晶のようにしかないように見えるが、魔導石と言われるだけあって、
けれど、現実的には店員の言っていた通りにはならず。その問題があるだけに、色々と想像を膨らませてみせた。
燃料タンクの構造に難があるじゃないのか?
とか、
エンジン機構に問題があるのではないのか?
とか。挙句には、
まさかの
なんて、疑念を抱いたりもして……。それだけに、半ば半信半疑になり
「まさかね……」
ぼやいて見せた。
ま、いずれにせよ。ジャンク屋で購入した品であることは変わらない。本物だとしても、あくまで中古。
やっぱり、新品が良かったような。なんだか、
〝安物買いの銭失い″
そんな気がしなくもなかった。
軽くため息をすると共に肩の力を抜くと、魔導石とやらをポケットにしまうことにした。
「あとでジャンク屋に聞いてみようかな」
とりあえず、そんな目処を立てた次第である。
「さてと」
燃料のことはさて置き、今度は完成に向けて、他に足りないものがないのか入念に確認してみる。
エンジンカバーに防風カバー、それ以外に必要なもの。操縦席周りを見回し、それでいて一回、そこから降りてみて、もう一度、外観を見回してみる。
念入りに確認するように、タイニーブロンコを中心に時計回りで一周してみて――
「特になさそうかな」
これと言って必須なものはなさそうであった。だけど、付け加えても良さそうと言えば、なくはない気もした。
それは、操縦席と助手席。両方に言える事だが、その席までの高さがそれなりにあると言うこと。
僕はともかくとして、僕より低身長なセーラみたいな小柄な人は大変かも。台があれば席まで登れなくはないが、それでもドアに取っ手やら、そこまでの足掛けがあれば便利。
そんな気がしなくもなかった。――とそんな感じで、足りない物を頭にインプットするや、あとから行きつけのジャンク屋にでも、また、立ち寄ってみよう。
魔導石の件も含めて、僕はそう思った。
「一旦、戻るかな」
その場を後にすることに。踵を返して、帰路に着こうとした。――と、そこで、前方から人影が。
ん? 誰だろう?
林の中からこちらに向かって来る人影。こんなところに来るとなると、限られた人くらいしかいないのだが――
「あ! やっぱりいたいた。おーい‼︎」
その声は⁉︎
遠くからここまで聞こえてくるような大きな声。聞き慣れたそんな声に、僕は反応した。
「セーラ! それにブックまで……」
やや遅れて、僕の相棒まで来ていたことに気づいた。
「朝早くから居ないから、びっくりしたよ」
「ごめんごめん」
「セーラ、オイラが先に気付いたんだからな。少しくらい感謝しろよな」
「はいはい、ありがとうございますぅ」
「www」
想像に難くない2人のやり取りを側から掻い摘んで訊いていた僕は、苦笑するに留めた。
「それにしてもクラウド。なんでまた、朝早くから?」
らしくないぞ。そう言わんばかりなくらい不思議な顔をするセーラ。そんな彼女に、僕は――
「ちょっと、思うことがあってね」
「思うところ?」
とセーラ。他方、ブックは冗談めかした風に
「ここに来た、と言うことを鑑みて、どーせそれ絡みの夢を見て、流行りたい気持ちが昂ったんだろう? 言わなくても分かるよ」
「ちょっと、ブック!」
「なんだよ。オイラ、悪いことでも言ったか?」
なんだか怪しい空気が取り巻き始める。そんな中、そんな空気を止めるべく、僕は合間を縫うようにして
「あははは……、さすがだよ」
と再び苦笑。一旦、取り繕って、場を和ますに居たり。しかし、
「でも、少し違うかな」
と前置きした上で
「ブックが思うほど、感情が昂った訳ではないさ」
そして、180°振り向き、遠方の空を見上げながら。2人が見つめる中を
「約束を再確認していた。そんなところかな」
「なんだそりゃ。約束したことを思い出すのに、こんなところまで来た、ってか?」
この場所に来た理由が突拍子もないことだったのだろうか。半ば拍子抜けたような反応しただけに、あまり真剣になってくれなさそうであった。
一方、セーラはと言うと、軽く腕組みしながら
「約束って。確か……、クラウドの親友との、だったよね?」
的を得たような回答をしてくれた。
「そうそう、そのことでね」
ゆっくりと再び2人に背を向けるや、
「夢を見たんだ。きっかけになるような夢をね」
それから僕は、夢で見たことを滔々と語り始めた。夢の中での出来事――
リクが持って来た石板のこと。
彼の親父さんが指摘していた場所のこと。
そして、その事を境に、自分に纏わる秘密を、目指すべき場所とに絡めて知りたいと思う気持ちが強くなって来たと言うことを。
話の締め時に、2人の方へと向き直ってからに
「――と、そんなことがあって、約束の再確認も兼ねてここに来た。そんな感じかな。まさに、〝
「改めて聞くような感じになるけど、まさにロマンチックね」
「……へ、そんなことでは」
彼女の褒め言葉に、なんだかこそばゆさを感じずにはいられなかった。
「え? でも、確認したいんだけど、1人では行かないんだよね?」
「そ、そうだぜクラウド。このチビはともかくとして、オイラを置いてなんか――」
「あ、また、チビって――」
噛みつきそうな感じ。すかさず僕は介入するかのように
「んな訳ないだろう! 連れて行くに決まっているよ」
「「なら!」」
しかし、勢いに乗っている2人には悪いけど、
「ただな〜」
そこで僕は、トーンダウンした。現実問題を考えれば、トーンダウンしざるを得ないだけに、だ。
右手をそっと機体に当てがい、その悩みの種を打ち明ける。
「エンジンがな」
「エンジン? 問題でも?」
「そう言えばよ、クラウド」
ん?
「やっぱり前から思ったけど、ジャンク屋で部品かき集めたのは失敗だったんじゃないか?」
「失敗、て言うか〜」
ブックからの指摘。正直、図星な部分がなくはなかった。全てがジャンク品ではないにしろ、燃料となる魔導石だけはジャンク品でない方が良かったような。
そんな気がしていたから。
「ちょっと、見てもいい?」
「セーラ?」
徐にタイニーブロンコに歩み寄るや、操縦席へと登り始めた。だが、小柄なだけに登るのが大変そう。
取手に手が届かない中、遂には軽くジャンプ。気合いでドアを開くや、そのまま無理な姿勢から操縦席へとよじ登った。
何やらエンジンの方を見上げて吟味し出す。その中で
「セーラって、機械に詳しんだっけ?」
ブックが疑問を投げかけてきた。
「いや、特に。そうでもないと言うか……」
普段からして、機械弄りしているところなんて見たこともない。それだけに、たぶん、詳しくはないと僕は思っていた。
案の定、
「やっぱり、わかんないや。パッと見た感じ、どこもおかしいとこなんて」
そんなセーラに、僕は
「エンジン自体じゃないよ。どちらかと言うと、燃料の方」
言いながら、ポッケにしまっていた魔導石を取り出して見せ
「この魔導石。これに問題があるんじゃないかと思って」
「なんだそれ? ただの石か?」
「石じゃないよ。ちゃんとした魔導石」
「ほんとか?」
疑問を投げかけた。そんな中、セーラも興味を抱いたらしく、操縦席から飛び降りるや否や
「私にも見せて」
「いいよ」
そう言うや、僕はセーラに魔導石とやらを手渡して見せた。
「……」
不思議そうな顔で、色々な角度から魔導石を眺め始め――。そして、一言
「なんか、石と言うよりも結晶石に近いわね。しかも、全体的に光沢を放っていると言うか……。ちなみに、どこで手に入れたの?」
「ジャンク屋、から」
「え? ジャンク屋で、て……」
「珍しかったんだよ。正規品だと、コストがかかり過ぎるから、って」
訝しむセーラに、僕は反論して見せた。
「ふ〜ん、確かに。……はい、返す」
もう、十分だと思えたのだろうか?
まるで興味が失せたかのような表情。そんな表情をした彼女から、魔導石を返してもらった。
無くさないようポッケにしまう中、
「でも、よく見つけたよな。結晶石と言えば、名前からして、レア物なんだろう?」
「まー、そうだね。偶然と言えば偶然かな」
その半面、今更ながら、なんで魔導石みたいなレア物が、ジャンク屋で売られていたのか?
甚だ疑問でならなかったが……。しかし、そう言えば、あの店員。拾い物とかなんとか言っていたような……。
曖昧ではあったが、そんな記憶が垣間見えたような。そんな気がしてならなかった。
「で、でも、いずれにせよ、もう一回聞きに行った方がいいかもね。そうすれば活路は見出せるはずだし」
「そうだね。そのつもり」
けど、その半面、正直なところ、ジャンク屋にまた赴いたとしても、うまく行く確証はないものだと思っていた。
無駄足になる可能性だって否めない筈だし。それに、活路が見出せないんじゃないのかと、心配になる気持ちだって……。
だけど、それでも、行かないよりはマシかもしれない。とにかく、ここは前向きに捉えよう。
自分にそう言い聞かせておいた。その言葉を境に、僕たちは一旦、帰ることに。朝ごはんを食べてから、また、ジャンク屋へ行くことになったんだ。
その帰り、林中を歩いていた僕らであったが、
「ん? どうしたの? セーラ」
いきなり立ち止まってしまった彼女に、僕は不思議そうに思って聞いてみた。
すると、セーラは一言
「音が聞こえる」
と、何かを感じ取った様子で答えた。
「音? ???」
僕も、そこで立ち止まったまま、耳を澄ましてみた。そんな中、
「……気のせいじゃないか? 第一、音なんて微風くらいしか」
しかし、その音とやらは、次第に大きくなって来て――
「あ、ほんとだ! しかも近づいている。この音、まさか⁉︎」
ゴー、とまさに飛行機が近づいているような轟音。そんな騒音が、こちらに近づいて来るのを感じずにはいられず。
しかもその直後、吹き抜ける突風と揺れる木々の音色と共に巨影が僕たちを飲み込み、見上げた空から得体の知れない機体が過ぎ去って行くのを目撃。
「おいおい、なんだ!」
びっくりするブックに、突然、何を思ったのか、走り出すセーラ。
「あ、セーラ! どこに」
僕も、慌てて彼女の後を追いかけて始め、
「あ、クラウド。待てよー」
遅ればせながら、ブックも慌てて追いかけた。謎の機体を追いかけて、林を出るとその正体がなんなのかはっきりとして――
「あれは、軍用機⁉︎」
それほど大きくはなかったが、間違いない。それは帝国の軍用機だった。
なぜ、この辺境の村――ラシュアンに?
そんな疑問が過る中、さすがに異変に気付いた村人達も、各々の家から姿を現し始め。それぞれが、動揺と驚愕に満ち溢れたかの様子を漂わす。
そんな中、その軍用機の様子もおかしく。まるで――
「まさか、墜落かよ」
ブックの一言が的確だったように、その軍用機はクレストの森の向こうへ墜落するかのように姿を消すのを目撃したんだ。
「あの方向って……」
「行こう! クラウド」
「うん」
「あ、オイラも!」
我先に。そんな感じで、僕らは墜落して行く軍用機を追いかけるように、クレストの森へと足を踏み込んだ。