星の旅人物語   作:ぷにぷに狸

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2章:風の出会い・終話

 

「カタリナ!」

 

 と問うクルミ。

 

「峰打ちだ、問題ない」

 

 そう言いながら、剣を鞘に納め

 

「ほんと、どうなることかと思ったよ」

 

 地べたに倒れ伏し、ある者は壁際にて伸びてしまった帝国兵数名を見ながら、ブックは血相を掻いた。

 僕も加勢に出るつもりだったけど、その瞬間なんて全くなくて。全部、カタリナさんが事を済ませた形になってしまったようなもの。まさに、呆気に取られてしまった。

 その表現が適切なくらいにだ。

 

「そうだ‼︎ セーラが外に!」

 

 ここに来て、ハッと我に返った僕は、彼女の無事を確かめようとして、玄関先へと向かう。

 

「あ、待つんだ!」

 

 とカタリナさんの声。したかと思えば、玄関の扉が開くや、少し服に擦り傷が入った感じで、セーラが入って来た。

 僕は驚いて

 

「セーラ!」

 

 と一言。

 

「ふ〜、鍛えた甲斐があったかな」

「怪我は?」

 

 心配そうに問い掛けるのだが、彼女はにこやかに

 

「平気平気」

 

 余裕の仕草を見せた。一方、カタリナさんは驚いていたようで

 

「帝国兵相手に、よく無事だったな。まさか、素手で、とかじゃあ」

「そのまさか。でも、流石に一部始終、武器なしは辛かったかな。途中で武器を奪って撃退したくらいだから」

「撃退って……」

 

 とても信じられない。そんな見てくれで、ブックは呆れていた。そんな中、クルミが呼びかける。

 

「カタリナ」

「っ! そ、そうだな。今は関心している場合ではないな。ともかく、こうなった以上、すまないけど……」

「分かっている分かっている。分かっているよ」

 

 とセーラ。

 

 状況が読み込めているのか読めてないのか? 

 

 それはさておき、この状況において、ドンと構えて見せたのだ。だが、その逆も然り

 

「じょ、冗談じゃないよ」

「ブック?」

「お、お、おおお、オイラはごめんだぜ。こんな面倒ごと。ましてや、帝国を相手にとか。なあ、クラウド?」

「そんな、いきなり振られても……」

 

 正直、このような形になるなんて、思ってもいなかった。それだけに、決断のしようがなくて。

 黙り込んでしまった僕に、ブックが慌てふためく。

 

「な、なんだよ! こんな時に黙り込んでよ」

 

 しかしそこで、クルミが徐に前へ。いきなり手を伸ばすや、ガシッとブックを鷲掴みにしたかと思えば、胸元で押さえ込み。

 

「な、何しやがるんだ⁉︎ いきなり」

 

 と胸元で暴れる本に、クルミは――

 

「ちょっと、黙りなさいよ‼︎ 古本のくせに!」

 

 言ってはならん事を放った。

 

「な、ななな、古本だと! オイラは古本じゃねぇー‼︎」

 

 しかし、状況が状況で。

 

「クラウドは、そう思うよね?」

 

 ブックのことは、無視しているようにも見えたのは気のせい?

 

 今度は、クルミが気さくにも問うて来た。

 

「僕は……」

 

 だけど、どうやら迷っている暇はなかったみたい。ちらっと外の様子を見たカタリナが、警告してくる。

 

「どうやら、迷っている暇はないみたいだ」

「カタリナ?」

 

 クルミの疑問に、カタリナはある方向を指で示す。思わず、僕もそっちの方を見て――

 

「車? でも、なにか〜」

 

 と、ここで即座に

 

「軍用車用だ」

 

 と、バシリと指摘。

 

「軍用車用って、まさか――」

 

 しかし、動揺する僕以上に、

 

「それって、どういう意味で……」

 

 現実を直視できないでいたブックが、ここにいた。張り詰めた空気が場を満たす中、さすがのセーラも、その表情たるや、深刻そうな面持ちを隠せない。

 どういう状況になっているのか。これで僕は、悟ったような気がしたんだ。帝国兵をやっつけてしまっただけに、見つかると

 

〝非常にやばい″

 

と言うことを。

 

「ともかく、今後のことは後回しだ。早く、ここから逃げるぞ」

 

 もはや、是が非でもないよう。僕らはカタリナの指示に従ってここから離れることに。セーラの提案もあって、念には念を。裏口から出ることにしたんだ。

 

 それから暫くして……

 

 裏口から出て、陰に身を隠しながら隣の建物へと移った僕ら。その直後、来た道を振り返れば、4、5人の帝国兵が玄関前に集まり、中には入って行く者までも垣間見えて。

 その様たるや、まさに間一髪だっただけに、もう少し逃げるのが遅かったらと思うと、ゾッとする光景があった。

 一方、未だにクルミに抱きしめられているブックも、ここに来てようやく現状を理解したのだろう。

 特に動揺する素振りも見せず、冷静に見据えていた。タイミングを見計らっているカタリナさんを尻目に、遠目で見ていた中、帝国兵たちの慌ただしい声が聞こえてくる。

 

「いたか?」

「いや、いない」

「もう一回だ。くまなく探せ」

 

 そんな中、カタリナがどこか関心したように言う。

 

「にしても、改めて言うよセーラ。もし、教えてくれなかったら、最悪……」

「別に礼を言うことじゃないよ。私だって、正面玄関から出るのは、嫌な予感がしてたから」

「それでもだ。家事情を知らない余所者の私達にとって、非常に助かったことには変わらないから」

「そ、そんな。こんな時に畏まらなくても」

 

 堪らずセーラは、カタリナの律儀な態度に、戸惑いを隠せなさそうだった。――と、そんな他愛無い会話の中、クルミがカタリナの裾を引っ張って

 

「ねぇ、カタリナ。これからどうするの? いつまでもこんなとこに居てたら、見つかるのも時間の問題だよ」

 

 と置かれた現状を前に、催促した。

 

「っ! そ、そうだな。ただ……」

 

 ん?

 

 ちらっと見た視線の先を前にして、なにか困ってそうに見えたのは気のせい?

 

 一瞬だけど、そのように見えた。

 

「どうかしたのか? ねぇちゃん」

 

 とブック。

 

「あ、いや。なんでも」

「え? なんでもってことはないだろう? このまま、逃げるように村を出ればいいんだからさ」

「そうなんだが……」

 

 さすがの僕も気になった。そして、セーラだけでなく、クルミまでも、建物の影から、コッソリと顔を出そうと動き出したようだ。僕も含めて、皆の行動に、カタリナさんは、慌てて生死を促してきた。

 

「あ、ちょっと! 君たち。クルミも」

「大丈夫よ、カタリナ。ちょっとだけだから、ちょっとだけ」

 

 そう言い聞かせた後、僕はクルミと一緒に。やや遅れて、セーラまでもが、注意しながら先を見据えた。

 パッと見た感じだけど、カタリナさんが何を悩んでいたのか。なんとなく分かった気がした。

 僕らの想いを代弁する形で、ブックが軽く宣う。

 

「あっちゃ〜、こいつは」

 

 そう反応するのも無理はなくて。クレスタの森方面を除いて、魔除けの防護柵に囲まれたラシュアン、唯一の出口。

 

 そこがなんと! 

 

 複数人の帝国兵達によって抑えられていたのである。更に言えば、先程の軍用車用だけではなくて。

 

 明らかに、(ラシュアン)全域を主戦場にするんじゃないだろうな?

 

 そう言わんばかりに、装甲車までもが、2台。ガッチリ、出口を塞いでいたのである。

 

「まるで、これじゃあ、あたし達、袋の鼠じゃないのよ」

「ゲームオーバーって奴か?」

「五月蝿いわね! 破り捨てるわよ」

「お〜、怖い怖い」

 

 一方、セーラはと言うと、歯痒そうに拳を握りしめていて。

 

「銃火器さえなければ、これくらい――」

 

 しかし、流石にこれには無視できず

 

「無茶だよ、セーラ。いくら腕っぷしでモンスターを倒したとは言え」

 

 それに対して、セーラは僕に問う。

 

「じゃあ、どうするのよ? クラウドは」

 

 堪らず、僕は

 

「そ、それは……」

 

 即答できなかっただけに、思わず口を閉ざしてしまい。そんな中で、カタリナは僕らの方を改めて見ると、侘びれた様子で

 

「こんな時になんだが、ほんと、すまない。君たちを巻き込んでしまって」

 

 とタイミングを軽視するかのように、謝って来たのである。何も、こんな時に? とは思ったんだけど

 

「そんな、謝らないでくださいよ」

 

 思わずついた言葉がそれだった。

 

「カタリナ……」

 

 心配そうに呟くクルミ。

 

「やむを得ずとは言え、成り行きで巻き込んでしまったことには変わりないんだ。だから――」

 

 返す言葉もなかった。そんな時である。

 

「なら、責任とって、私達と共に冒険ね」

「セーラ?」

「だって、そうでしょう? いずれにせよ、私達も共犯な訳だし」

「た、確かに」

 

 避けられなかったとは言え、帝国兵を倒してしまったことには変わりなくて。どの道、僕たちもカタリナさんやクルミと同じく、帝国から追われる立場になってしましまった。

 その点については、変わりなかったのだ。

 

「まぁ、ともかくだよ。この状況を脱さないことには始まらないんじゃないか? いずれにせよ、ピンチな訳だし」

「珍しいこと言うじゃない。古本の癖に」

「珍しいことってなんだよ! それに、オイラは古本じゃねぇ!」

 

 そこまでの付き合いだったけ? クルミとブックの間柄は。

 

 ブックと同じくそんな違和感を抱いたんだけど、僕としても、この点に関しては、彼の言う通りだと思った。とは言え、現状は厳しそうであり、それに対してカタリナさんが頭を悩ますのも無理もないと僕には分かっていたんだ。

 カタリナさんとクルミ、両者は地元民じゃない。必然的に頼れるとなると、僕らしかいなくて。

 そんな時、セーラがアイデアを出してきた。

 

「そうだ! クラウド、アレがあるじゃない。確か、タイニーブロンコだったけ?」

「え? でも、飛べるような感じじゃないよ。セーラだって、見ていたじゃない」

「ん? タイニーブロンコ? とは」

 

 首を傾げるカタリナさんに、僕は隠すつもりもなく打ち明ける。

 

「自作飛行機のことです。まだ、飛べた物じゃありませんが」

 

 すると、カタリナさんは考えを巡らすかのように、黙ししてしまい

 

「……カタリナ?」

 

 とのクルミに、彼女は

 

「地上がダメなら……。いや、しかし――」

 

 そして、

 

「飛べない原因でも?」

 

 興味を投げかけた。そこへ、ブックが

 

「おいおい、ねぇちゃん、まさか⁉︎」

 

「そのまさかだ。飛べない理由、如何にもよるが、うまくいけば活用できなくもないとな」

 

 それから、改まって僕の方を見ると

 

「理由を聞いてないからアレだが、もし、飛べるようになったら、この状況の打開のため、活用させてもいいか?」

「活用に? 特に断ることはないですけど」

 

 と言うよりも、もし、飛べるようになるんだったら、それに越したことはないと僕は思っていた。

 だけど、このような形で活用する段取りになるなんて、思っても見なかっただけで

 

「なら、決まりね。ありがとうね、クラウド」

「あ、うん」

 

 カタリナの代弁役で、クルミから思ってもないことばをかけられ、僕の心はこそばゆかった。

 けれで、人の役に立てそうなら、それもありなのかなあと。僕たちもカタリナさんとクルミ、2人と同じ立場になってしまったとは言え、少し嬉しかったかも。

 

「そうと決まれば、向かう先はあの丘ね」

「案内、頼む」

 

 僕とセーラは、揃ってタイニーブロンコのある丘を目指すことにしたんだ。

 

 だけど、事態はより深刻な様相を醸し出していたようで……

 

 僕らは思わず、道中の建物の影に隠れて様子見る、と言った立ち往生を余儀なきされてしまったようだ。

 この広場を通らないと、あの丘へは行けないんだけど。その広場にて、十何人もの村人達取り囲む兵士数人に囲まれるようにして集められていたから。

 皆、不安や恐怖に慄いているのが、遠くから見てもすぐに伝わって来るのを感じる。それだけに、

 

 どうにも嫌な予感がする。

 

 そんな気がしてならなくて。言葉を飲み込んで、僕らは様子を伺っていると、兵士達の間から声が聞こえてきて――

 

「これで全員か?」

「いえ、あとから数人連れてくるようです。どうにも抵抗が激しくて」

「できるだけ早くしろ。特に機密の少女を連れた者達の捜索を、重点的にな」

「は!」

 

 ここの隊長なのかな?

 

 その隊長らしき者の命を受けて、1人の兵士が、また、どこかへと行ってしまったようだ。

 

 機密の少女?

 

 とは、なんのことかは分からないけど、この会話から察するに、やはり僕らを探していることには間違いないようだ。

 

「私らをどうするつもりなのだ。私達は、あんた達に何を?」

「村長……」

 

 集めらた者達を代表して、顔見知りの村長が兵士達に勇気を出して問うた。

 

「君達は、直接、何かした訳ではない。ただ、間接的には、隠蔽の容疑がある」

「隠蔽? な、なんのだ?」

 

 しかし、具体的には教えてもらえず。ただ

 

「それを、今から問うのだ」

 

 そんな中、1人の兵士が隊長らしき者の元へ。目の前に立つや、敬礼をするや否や、何か耳打ちを。

 すぐに何かを理解したらしく

 

「ご苦労」

 

 それだけを言い、その兵士を下がらせた。改まって、村人達の方を見ると

 

「どうやら、この中に負傷した女騎士を助けた者がいるそうだ。そして、その者を匿っているそうだな」

 

 と言われる筋合いのないことを、淡々と述べたのである。当然のように、村人達は反応、ざわつき始める。

 何を話し合っているのかは具体的には分からないが、その者達のせいで、自分らがこんな目に。なんてことを話しているのだろうとは、想像に難くない。

 ざわつく中、再び隊長らしき兵士が口を開く。

 

「ともかくだ。その者達を出さない限り、ここにいる全員、命がないと思え!」

「そ、そんな。無茶な! それに、女騎士を助けたくらいで、なんでこんな仕打ちを受けなければならないのだ? 第一――」

 

 言葉を遮るように

 

「その者は、帝国の裏切り者。つまり、反逆者だからだ」

「は、反逆者? どう言う――」

 

 ――と、ここに来て、また1人、隊長らしき兵士の元へ。通信機らしき物を背負った兵士が、先程の兵士と同じく耳打ちを。

 また、何かを理解したらしく、頷くに留め、その兵士を下がらせた。

 

「どうやら、炙り出す必要があるみたいだ。……そうだな〜」

 

 まるで、生贄を選別するかのように、その隊長らしき兵士は、村人達を一瞥し始める。

 ますます嫌な予感が過ぎる。このままでは、誰かが……。そのような予感が脳裏をよぎるのだ。

 その最中、反応するかのように、誰かが、ギュッと強く握りしめるような音を立てるのが聞こえて来た。

 誰なのかはすぐに見当がつく。案の定と言うべきか。

 

「もう、黙ってられない。私、行く」

「あ、セーラ!」

 

 引き留める隙もなく、セーラは物陰から姿を現そうとした。――と、そこで、

 

「待つんだ!」

 

 反射的に、カタリナさんがセーラを押し留めた。

 

「離してよ! このままでは」

「よく考えるんだ。相手は銃火器を持っているのだぞ。無謀に挑んだら――」

「じゃ、どうしろって言うの?」

 

 その時である。

 

「よし、決めた! 君だ。君が相応しい」

「わ、私ですか?」

「あ、あなた」

「そうだ、君だよ。君の勇気ある自己犠牲が、敵を炙り出し、結果的にここにいる全員を救うのだ」

「そ、そんな犠牲って……」

「やめてください! な、なんで、民を守るはずの帝国軍が、私達に牙を?」

 

 すかさず、村長も

 

「そうですよ。どうしても、人柱になる必要があるなら、まずは私からで。村の長である私からの方が――」

「関係ない‼︎ 全ては将軍の命令だ。村の長だろうがなんだろうが、反逆者を炙り出すなら、人1人の犠牲はやむを得ないと言う判断だからな」

「そ、そんな! 理不尽な」

「さあ、こっちに来い!」

「くっ、くっそー……」

「あなた」

「すまない、この村の人達を守るためだ。先に逝っているよ」

「そんな、だめ、だめ――‼︎」

 

 妻は、とうとう号泣し始める。しかし、構わず、兵士達は無慈悲にも、選別された男を連れ去って行く。

 

 そして

 

 集団からやや離れたところで、隊長らしき兵士は、どこからともなく手枷を取り出すと

 

「念の為にこれを嵌めておけ。土壇場に来て、下手に抵抗されては困るからな」

 

 そう告げ、1人の兵士に手枷とやらを手渡した。渡された兵士は、歩み寄ってからに、男に手枷を嵌めようとする。

 もはや、このままでは殺されるのも時間の問題。

 

 セーラの焦る気持ち。

 

 僕だって同じであり、無謀でも構わないから、助太刀したい衝動に駆られていて。それがもう、我慢の限界に達しようとしていたから。

 それだけに、形見のリボルバー(シーカー)をフォルダから引き抜き、いつでも飛び出す勢いである。

 ――と、ここに来て、兵士達全員の視線が選別されし男へと向かうタイミングをついたかのように、村人達全員を取り囲むように、何か半透明なドームが形成されるのを垣間見る。

 その時間は、わずか1.5秒。いわゆる、一瞬だ。咄嗟に僕は振り返る。カタリナさんへと。

 

「カタリナさん?」

 

 僕の問いかけ。しかし、構わず、彼女は、何かの呪文を唱えていて。それが、やがて――

 

「構え‼︎」

 

 ガシャリッ

 

 一斉に、無数の銃口が、不運な生贄へと向けられ――。その直後、強引に振り払ったセーラが、物陰から飛び出す。

 

「やめろ――‼︎」

「あ、セーラ!」

 

 しかし、それだけではなかった。カタリナさんまでをも、立て続けに飛び出して来たのである。

 セーラの叫びが響き渡り、その場の全員が彼女の方へと向く。

 

「セーラ⁉︎」

 

 堪らず、村長が声を上げて。兵士達の間からも、声が上がる。

 

「いたぞ‼︎」

 

 続けて、隊長らしき兵士も、間髪入れず指令を出す!

 

「反逆者だ‼︎ 撃て! 撃てー‼︎」

「バリア‼︎」

 

 カタリナが叫ぶ。僕も、物陰からだが、声を上げて

 

「セーラ‼︎」

 

 直後、蜂の巣にせんとばかりに、無数の銃弾が2人の元へと殺到する。

 

 ババババババ――ン……‼︎!

 

 堪らず、目を覆う。

 

 もう、だめだ! 次に開くときは――

 

 そう、覚悟をして。だけど、現実を見れなくて。その中で、クルミが諭す。

 

「見て! 2人の前に」

 

 え?

 

 言われて、本能の赴くまま、僕はゆっくりと視界を開けて、現実を見る。すると、自分を庇う2人の眼前。そこには、半透明さながらバリアが展開されており、2人を無傷へと帰していた。

 信じられない光景に、僕は唖然とする。しかし、それと同じように、帝国兵達の間にも動揺が走っていて――

 

「ば、バカな! あれだけの銃弾を受けて、無傷とは?」

「外した? あ、いや、違うよな〜」

 

 しかし、隊長らしき兵士は違う模様。気圧されずして

 

「構わん! 撃ち続けろー‼︎」

 

 高らかに怒声が放たれる。その瞬間、

 

 っ!

 

 掛け声に、我に返った者達は皆、再びアサルトを構え直す。動揺した雰囲気は、立ち所に消え去った勢いだ。

 対して、セーラやカタリナさんはと言うと……

 

「私達、無傷?」

 

 戸惑いを隠せないセーラがいて。カタリナさんは、彼女とは違っていて。

 

「気にするな! どの道、食らわない。このまま畳み掛けろ‼︎」

 

 言われるがまま、セーラは頷き。果敢に斬り込んでいくカタリナさんに続いて、セーラ持ちを蹴った。

 

「バカな‼︎ 正面突破だと」

「怖気付くな! 撃て、撃ちまくれー!」

「くっ」

 

 再び、2人を穴だらけにするべく、無数の銃弾を浴びせまくる。障壁に阻まれ火花が散りまくる中、数人の兵士達へと殺到し、刃を振りかざす。

 その最中、

 

「飛燕連脚‼︎」

 

 雄叫びと共に、セーラの空中回転蹴りが炸裂し、まとめて2、3人が蹴り技の前に吹き飛んだ。

 

「なんて奴らだ! なんて」

 

 流石に、これには面を食らう様のようだ。次々に、吹き飛び、切り伏せられていく兵士達。

 見兼ねた隊長らしき兵士は、苦虫を噛むような表情を浮かべ

 

「ちっ、……おい! さっさと、その人質を始末しろ! 俺はこっちを」

「は、はい!」

 

 反射的に、生贄となった男へと銃口が向けられる。その合図を垣間見た僕は、瞬間的に

 

――まずい

 

 危機感を抱き。そして、手にしたシーカーを、2人のうち、1人に目掛けて射撃。

 

 バ――ンー……!

 

 直後、2人のうち1人が、何かに気づいたようで動きが。放たれた銃口から燻煙がゆったりと立ち昇る、その向こう。反応して動きをぴたりと止めた兵士は、その場で崩れ落ちた。

 威嚇攻撃のつもりで撃ったつもりが、モロに命中したようだ。しかも急所に。

 想定外の事態に、僕は、

 

 え? 

 

 となった。だが、このことにより、生贄の殺害に加担しようとしていたもう1人の気を引くことに成功したようで

 

「誰だ‼︎」

 

 反射的にこちらを向く。当然ながら、呆気に取られている僕と目が合ってしまって――

 

「っ! そこにもいたぞー‼︎」

 

 その言葉に呼応するかのように、一斉に僕らの方へと兵士達の無数の視線が集まってしまう。

 

「やばっ!」

 

 と言い出したところで、背後から引っ張られる感覚を覚えて――

 

「ちょっと、なにしているのよ! 見つかったじゃないの?」

 

 頬を赤らめて、プンスカ怒るクルミがそこにいた。

 

「つ、つい――」

 

 と言いかけたところで、いつの間にか兵士の1人が走って来たらしく。それに、気付いたクルミが叫ぶ。

 

「クラウド‼︎ 後ろ――!」

 

 え?

 

 咄嗟に振り返ってからに、

 

「この野郎〜、よくも相棒を」

 

 長剣を頭上に振り翳して、血眼になってまで、今にも斬りかかろうとしていたのである。

 堪らず、僕は叫んだ。

 

「うわ――‼︎」

 

 直後、即死の一撃が振り下ろされるかに見えた。――とその時、

 

「やめろー‼︎」

 

 叫び声と共に、どこからともなく、背後から〝何か″が飛来して来ては、その兵士の顔面に、

 

 ガツンッ、

 

 と、モロ直撃。意表を突かれた兵士は、顔を庇いつつ、堪らず後ろにのけ反った。その光景を垣間見た僕は、すぐにその正体がなんなのか分かった。

 

「ブック!」

「相棒には、指一本、触れさせはしないぞー!」

「クルミ!」

「ふん、ちょっとはやるじゃない」

 

 天邪鬼のように、素直な気持ちと真反対とも言うべきか。僅かばかり悔しそうな表情を見せるに留めたようだ。

 

「このぉー、ふざけやがって。ぶっ殺してやる!」

 

 怒りの赴くまま我を忘れた兵士が、再び僕らに向かって斬りかかろうとした。

 

 今度こそお終い

 

 そう思えた。――とその時、

 

 グサリッ、

 

 肉を刺すような音がしたかと思えば、大上段から振り翳そうとしていた兵士の動きが、ピタリと止まっていて。

 そうかと思えば

 

 こふっ

 

 と吐血。その場で崩れ落ちた。代わって、そこに現れたのは

 

「カタリナ!」

「ふぅ〜、どうやら間に合ったみたいだな」

 

 血糊が付いた長剣を振り払っては、チャキッと剣を鞘に納めるカタリナさんがそこにいた。

 

「怪我はないか? 2人とも」

「あたしは大丈夫」

 

 とクルミ。続けて僕も

 

「大丈夫です。死ぬかと思ったけど」

「だろうな。心配かけてすまない」

 

 そんな中、

 

「お、オイラを忘れちゃあいけないぜ」

 

 とのブックに、ハッとなって気付いたカタリナさんが、

 

「そうだったな。ブックも大丈夫だったか?」

 

 と気遣う。

 

「平気平気。それに、オイラだって、加勢して足止めくらいはしてやったんだぜ。ちっとはお礼を――」

 

 と、ここに来て、遠くにいたセーラの声が聞こえてきて――

 

「あ、逃げるな! 待て――」

 

 その声に、一同、彼女の方を見て。そこには、逃げる1人の兵士と、それを追いかけようとするセーラの姿がいた。

 

「セーラ!」

 

 僕は叫ぶ。一方、先を読んだカタリナさんも、何かしらの危機感を抱いたのか

 

「よせ‼︎ 早まるな!」

 

 と声高らかに叫ぶや、ばひゅー、と風を切るや、ハヤテのごとく疾走する。僕はカタリナさんが危機感を抱いたような様子が気になって、セーラが追いかける先を見た。

 

 っ!

 

 装甲車、装甲車だ。しかも、逃げる兵士は、何かしらの連絡をしているらしい。

 カタリナさんと同じく、嫌な予感が過ぎる。と同時に、装甲車に備えられた銃座に動きが。

 微調整するような小刻みな動きが見られたかと思えば、兵士を追いかけるセーラの方へと向けられる。

 狙いはセーラだ。機銃で抹殺しようとしているに違いない。僕は、今度こそ躊躇わなかった。

 シーカーを銃座に向けるや、残弾を全て使い切る勢いで、乱射しまくる。連射された無数の銃弾が銃座周りに殺到していく。

 その度に火花を散らすが、やはり相手は、硬く無機質な存在。全く意味をなさなくて。

 浴びせられていく攻撃。とうとう、カチカチ、と空回りするような音と共に、遂にこちらも弾切れになってしまった。

 

「避けろ‼︎ セーラ!」

 

 僕は叫ぶ。対する銃座は、その砲身の先に、吸い込まれるような空気音と共にエネルギーを集約。したかと思えば、強烈なビームが発射され。

 その僅か2、3秒前。カタリナさんが、セーラを庇って彼女と共に身を投げ出す前にいた場所に目掛けて一直線。ラインを引くや否や、大地を裂く勢いで凄まじい衝撃波を繰り出したのである。

 まさに間一髪。僅かにタイミングが遅れれば、破壊光線の餌食と化していた瞬間であった。

 僕だけでなく、さすがのセーラも、これには青ざめたよう。

 

「大丈夫か? セーラ」

「あ、う、うん」

 

 どうやら2人は無傷のようで、2人はすぐに立ち上がった。一方、いつの間にか、逃げていた兵士の姿はそこにはいなくて。

 装甲車の中から、ノイズがかかったかのようなスピーカーの雑音がしたかと思えば

 

「次はないぞ! 帝国の叛逆者ども。これで終いだ」

 

 殺意丸出しとはこのこと。堂々と威勢を放つ態度だ。

 

 今度は何が来るのだろうか?

 

 しかし、悠長に装甲車の動向を注視している暇なんて、当然なくて。自身とセーラにバリアを施すと、2人揃って装甲車から急いで離れようと、必死こいて走り出したのである。

 その間、呆気に取られていた村人達に目掛けて、怒声をぶちかます。

 

「何をボーとしている! 早く逃げるんだ‼︎」

 

 語気を荒げた声に弾かれたかのように、我を取り戻した村人達は、喚き散らしながら一目散に逃げ出す。その様たるや、まるで天敵に追われる獲物の如くの有様。

 

 どこへ向かうかなんて考えもつかないのだろうか?

 

 皆、装甲車の斜線から逃れるために、家屋の陰へと次々に逃げ込んでいくのだから。

 しかし、その間、敵は待ってはくれるはずもなくて

 

「皆殺しだー‼︎」

 

 その合図と共に、2基のガドリングが炸裂。先程の破壊光線程ではないにしろ、次々に家屋を吹き飛ばしていき――

 その間、僕らのいる場所へとなんとか逃げ込むことに成功したセーラとカタリナさんであったが、当然,僕たちのいた場所も例外ではなくて。

 遂には、僕やクルミのいた家屋までも吹き飛ばし、僕らは崩れた家屋に巻き込まれてしまった。

 まさに、見境がない。その例えが相応しいくらいに、その砲火は荒れ狂ったんだ。

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