星の旅人物語   作:ぷにぷに狸

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3章:紅の鉄巨人・2話

 特段、これと言った策があるわけではない。ないけど、それでも、きっとなんとかなるに違いない。

 そんなご都合主義的な要素を伴い、僕らはタイニーブロンコのある丘へとやって来た。

 その間、帝国兵に見つからないように全速力で駆け抜けて行った訳であり。僕とクルミは、互いに息が上がっていた。

 特に体力的にも難があったクルミなんか

 

「もう、無理! ……はぁ、はぁ、これ以上は、……はぁ、走れ、ないよ」

 

 とその場でへたり込んでしまった。ここからだと上り坂の真っ只中だけに、死角となってタイニーブロンコは見えない。

 だけど、その機体まで100mもないだけに、目と鼻の先であることには間違いなかった。

 

「もうちょっとだよ、もうちょっと。この丘を登り切ったら、ゴールだよ」

 

 僕も息が絶え絶えだったけど、それでも彼女を励ますにことに徹した。しかし、クルミはこれ以上は、本当に無理みたいで

 

「無理ったら無理。あたし、あんたみたいに体力お化けじゃないもん!」

「体力お化けって……」

 

 買い被りすきだよ。そう思ったけど、なんとなくだが口にする気はなかった。その代わり、クルミに歩み寄ってからに、手を差し出して助け舟を出してあげた。

 

「ほら、手をあげるから捕まってよ」

「捕まって、て……」

 

 なにやら抵抗があるのか?

 

 僕の顔と、その差し出した手。何やら交互に目配せして、すぐに手を取ることはしなかった。

 しなくて、一言

 

「ふんっ!」

 

 どう思ったのか。拒否してきた。

 

 え?

 

 思わず、僕は顔を顰める。

 

 もう、立ち上がれる余力ないんじゃないの? 

 

 そんなことを思っていただけに、この反応は意外だったからだ。

 

「いいよ。助け舟を出すくらいなら、これくらい我慢してあげるもん」

 

 ツンツンと刺々しい物言いで、クルミは最後の力を振り絞るようにして立ち上がってみせた。

 これには流石に、何をどう思っているのか理解に苦しむ。そんな印象を、僕は受け取らざるを得なかった。

 

 よくわかんないの

 

 その一言につきた。

 

 丘を登り切った先、遂にタイニーブロンコが姿を見せた。未だに動いた試しがない機体。でも、これを飛ばせれば、カタリナさんやセーラを連れて村から脱出できること間違くて。

 しかし、操縦は? とはふと思うけど、きっとなんとかなるような。自分で作った機体だけに、理由はないだけどそんな気がしてならなかった。

 

「で、どうするのよ?」

 

 クルミが問いかけてくる。

 

「こいつを飛ばすんだ。飛ばして、セーラ達を乗せて村から脱出する手筈」

「飛ばすって……。飛ばしたことはあるの?」

「ない」

「え? ないって」

 

 これには面を食らったらしい。彼女なりに不安感が募ったような口調をしてみせた。

 

「正直、飛ばしたためしがないんだ。エンジンが動かないだけに」

「なによそれ! エンジンが動かないって、そんなんで大丈夫なの? 見込みは?」

「ない。ないけど……」

 

 言いながら、エンジン近くに歩み寄っみせる。エンジンの動力炉から魔石を取り出してみせて。

それから、色々と吟味し始めた。ゴツゴツとした感触に見た目がまさに鉱物そのもの。

 だけど、これでも一応、魔石のつもりではあった。つもり、と言うのは、ジャンク屋で取り寄せたに過ぎず。

 正規で購入しようと思ったら、とてもじゃないが手が出せない価格を突きつけられるのは、目に見えたからであって。

 心の底では、まさかな〜、と感じずにはいられなかった。なんせ、未だに効果を発揮した試しがないから……

 

 本物、だよな?

 

 今の状況を鑑みた場合、そう信じる他はなかった。

 

「ねぇ。石ころなんか見つめてばかりじゃなくて、なんか言ってよ!」

 

 焦りからか、語気を荒げた。

 

「ちょっと待ってよ! 僕だって、方法を見出そうとしているんだからさ」

「見出すって。第一、策があって来たんじゃないの?」

「そうだよ。そうだけどさ……」

「さー、って」

 

 次の瞬間である。

 

 村の方から、何やら大型飛行船が接近しているような。そんなけたたましいエンジン音が響いて来た。

 思わず、僕とクルミ。揃って、村の方へと目を向けて――

 

「な、何あれ⁉︎」

 

 え? 

 

 第一声。声を上げたクルミにつられるように、僕の両目は、信じられない光景を目の当たりにしたかのように目を見張ったのだ。

 一言で言えば、まさに、

 

 〝巨人″

 

 それも、真紅に染め上げられた山のような規模を誇る巨人が、4機の軍用ヘリに宙吊りにされながら召喚されて来たのである。

 空いた口が塞がらないとは、まさにこのことを指すに違いない。それくらい、巨人の存在に圧倒されていた。

 呆気に取られる中、なにやらバイブレーションみたいな振動音が、鼓膜へと聞こえて来て。

 そこで、僕はようやくハッとなって我に返る。

 

「なにか鳴っている。……クルミ!」

「え?」

 

 僕の呼びかけに反応してか。バイブレーションを察知したクルミは、自らのポッケを弄り始めた。

 数秒を経て

 

「あった」

 

 その一言と共に、裾野ポッケから通信機を取り出してみせ。躊躇わず即応してみせた。

 

「カタリナ!」

 

 すると、雑音混じりで僕の方まで聞こえて来る。

 

「クルミ、ごめん! ちょっと動けそうもないかも」

「え? なにがあったの?」

「身動き取れそうもなくて。囲まれちゃった」

 

 直後である。けたたましい銃声が鳴り響き、とんでもないことになっている様を見せつけられた。

 

「な、な、なに? カタリナ! 大丈夫なの? カタリナ!」

 

 ブツリッ

 

 通信は、そこで途絶える。立ち所にクルミの動揺が酷くなっていくのが目に見えた。

 

「どうしよう。どうしよう、どうしよう。カタリナが」

「ちょっと落ち着いてよ」

 

 これ以上見てられなくなった僕は、慌てて冷静になるよう促した。しかし、かえってこれが油を注ぐ結果になろうとは

 

「落ち着いていられる訳ないでしょ!」

 

 そして、

 

「あたし、見に行くよ」

 

 踵を返しては、早まろうとした。

 

「ちょっと待ってよ‼︎ 1人で行ったってどうするってのさ?」

 

 そう言いながら、彼女の手を取る。

 

「離してよ! 離してってば‼︎」

 

 振り解かんと暴れまくる。だが、ここで離したら、すぐにでも飛んでいってしまうような気さえして、離せる気にはなれなかった。

 

「離せないないよ! 離せる訳――」

 

 とその時であった。クルミが抱えていた物を言わなくなった本――ブックに異変が。

 帝国兵に撃たれた箇所から、何やら湯気のようにどろっとした虹色の蒸血か何かが流れてきたのである。

 異変に気づいた僕は、思わず

 

 「なんだ?」

 

 と声を上げる。

 

「え? なに?」

 

 驚いた僕の表情を見てか。僕の視線を辿るように、ゆっくりとブックの方を見る。

 そして、反射的に

 

「きゃっ」

 

 手放した。それはもう、得体の知れない〝何らかの異物″を手放すかのようにだ。

 ドサッと地に落ちたブックに、僕は手を差し伸べつつ

 

「何するんだよ?」

「だって……」

「……もう、いいよ」

 

 返答に困るクルミに、僕は得体の知れない虹色の液体に触れないように、ゆっくりと持ち上げてみせた。

 

「よく、平気で持てるね」

 

 とクルミ。

 

「だって、どうなろうとブックはブックだもん」

 

 当然だよ。そう言わんばかりに主張して見せた。とは言え、この得体の知れない蒸血。どくどくととめどなく少量とは言え漏れてくる血のような湯気に、僕は

 

 なんだろう? これ

 

 と少なからず気になった。見た限り、柔らかそうな虹色の血か何かなんだろうが、どこか透けて見える感じもしなくはない。

 僅かに触れてみるくらいなら大丈夫だろう。軽率に触れようとした。

 

「ちょっと大丈夫なの?」

「ちょっとくらいなら。それに、どの道、塞がないといけない感じがしなくもないし」

 

 そう言い残して、そっと触れてみた。――と、その瞬間、触れたようで触れてないような。曖昧な感触を抱く。

 それはまさに、霧に触れるような。そんな感触に似たような物だった。

 掬おうとしてみたが、どうにも救えないみたい。掬う側から、それはこぼれ落ちていったから。

 しかも、何というか。手にシミがつくわけでもないし。

 

「どうしたの?」

「あ、いや。なんでもないよ。特に」

 

 なんだろうな? これ

 

 どうやら、ただの血液の類でもなさそうな。そんな気さえした。

 

「ま、ともかく。一にも二にもエンジン動かさないと」

 

 気を取り直して、機体に取り付けられたエンジンへと目を向けようとした。

 ――と、その時である。

 

 うっ

 

 めまいが。突如として、僕を襲ってきたのである。片手を目に当てつつ思わず両目を閉じてみては、閉じた側からありとあらゆる光景が、脳裏を過ったのである。

 

 例を挙げようとすれば……

 

 自分と似たような少年が、幼馴染のように少女と戯れる光景。飛行船に乗って、異界のような場所でとある島へと辿り着く光景。

はたまた、リクに似た少年と古文書を巡り議論を交わしている光景などがあるように。

 

 数えたらキリがないが、それはまるで、コマ送りしたような。そんな不可解な光景が、僕の脳裏を過ぎるように襲ってきたのであった。

 

 一体、なにが?

 

 だが、その疑問を投げかけるより先に、得体の知れない光景は、通り過ぎる微風のように消えてしまった。

 めまいから立ち直りつつある中、心配してクルミが尋ねてきた。

 

「ね、大丈夫?」

 

 と

 

「あ、いや、なんでもないよ。多分、知らないうちに疲れていたのかも。気にするほどでもないよ」

 

 そう取り繕って見せた。とは言え、内心、さっきのは何だったんだろうか? 不思議でならなかったけど。

 

「ともかく、エンジンを動かさないと」

 

 今度こそ、気を取り直し、僕は動かないエンジンへと向き直った。電源系統・動力構造。色々と吟味してみるが、別に壊れている感じには思えなかった。

 その間、クルミは焦っているのを我慢しているのは肌で感じるだけに、僕も早く、と焦燥感に囚われていく感じが否ない。

 

 しかし、現実は甘くはなかった。

 

 どうすることもできない事態に、遂に僕はため息を漏らした。それはもう、超えらない壁を前にしたかのようにだ。

 いくら調べても分からない。やはり、動力源となり得る魔石に問題があるとしか思えなくて。

 諦めの境地に達しようかとしていた最中、ポッケにしまっていた魔石を、もう一度、取り出して見せる。

 ジャンク屋で取り寄せたような魔石。やっぱり、偽物を摑まされたような。そう思うと、悔しさが込み上げてきそうだった。

 そんな中、何かに気付いたのか?

 

「ね、なんか引き寄せられてない?」

 

 え?

 

「ほら、なんか。ブックから出ている血みたいなものが、魔石に吸い寄せられているような」

「え、そんなはずは」

 

 指摘されて、右手に持ったブックと左手に持った魔石を照らし合わせてみた。

 すると、

 

 どう言うことなのだろうか? 

 

 風穴から溢れ出てくる虹色の蒸血みたいなものが、僅かばかり魔石に吸い寄せられているような挙動を見せていたのである。

 まるで、そう。魔石と蒸血が、共鳴し合っているかのように見えたのだ。

 

「これは……」

 

 ぼやく側から、僕は不意に、魔石と流れ出る湯気のような蒸血とを重ね合わせてみた。

 途端、魔石に吸い寄せられるような挙動をしていた蒸血が、今度は、積極的に魔石に流れ込んでいくではないか。

 やがて、エネルギーを充填してきたのか? 魔石自体に発光現象が宿るようになり――

 吸い寄せられていた蒸血は、そこで力無く途絶え。あとに残るは、発光する魔石だけとなった。

 呆然とこの現象に目を奪われていた僕は、クルミの鶴の一声に我に返る。

 

「行けるんじゃないの?」

「え? え、あ、そうかも」

 

 弾かれたかのように、行動を開始した。

 

「ちょっと、ブックを持っていて」

「うん」

 

 蒸血に触れさせないよう注意深く、ブックをクルミに預けると、僕は発光する魔石を手にエンジンの動力炉に魔石を放り込んで見せた。

 なんとなくだが、今度こそ行けるような。そんな予感が胸を躍らせる。早速、コクピットに搭乗。エンジンをふかし始めた。

 すると、今度は反応が違う。まるで、命を吹き込まれたかのように、唸り音を立てて動き始めたのである。

 前方のプロペラが時計回りに高速回転し始め、目覚めたタイニーブロンコは、力を漲り始めていったから。

 その最中、

 

「うまくいったんじゃないの?」

 

 ウサ耳を手で押さえながら、爆音の中、声を大にしてクルミが叫んだ。僕も負けじと声を張り上げる。

 

「たぶん! 今までとは感触が違うからー!」

 

 どう言う原理かは分からないが、恐らく、先程の蒸血が魔石にエネルギーを吹き込ませたのは間違いないのかも。

 とりあえず、結果オーライだった。手を挙げて、クルミも後部座席へと乗り込むよう促す。

 低身長だけに、乗り込むのは一苦労だったが、ドアの開け方は分からずとも乗り越えるような形で搭乗できたようだ。

 

「行くよ、クルミ。シートベルトをして!」

「……どれ?」

「脇と背面に」

「……これね」

 

 カチッとした着用音が、僅かに騒音の間を縫って聞こえてきた。

 

「準備はいい?」

「たぶん、OK!」

「じゃあ、行くよ!」

 

 僕は更にエンジンを吹かし、不動の如く動かなかった機体を、徐々に動きし始めていった。

 そして――

 

 ブォオーン……‼︎

 

 爽快な風切音を伴い、地を蹴ったタイニーブロンコは水を得た魚の如く、勢いよく羽ばたいた。

 操作手順は慣れなかったかったけど、自分で作った機体だ。そのうちに慣れるだろう。僕はそう楽観視した。

 だけど、それ以前に、空を舞えた。これだけとって見ても、僕の心は歓喜に震えていたんだ。

 

「凄ーい‼︎」

 

 思わず、声を張り上げるクルミがそこにいた。

 

「やっただろう?」

「うん! ……って、別に驚いてなんか」

「嘘つけ!」

「嘘じゃないもん!」

 

 そうは言うが、声のトーンからして、本当は嬉しそうにしているのは、何となく伝わってきそうだった。

 

「それよりも」

「分かる。カタリナさん達のところでしょ?」

「分かっているんなら、早くいく!」

「はいはい。……じゃあ、捕まって!」

「掴まって、って。え、えー、ちょっとー‼︎」

 

 驚くのも無理もなくて。

 翼を得たような感覚を抱く僕は、調子に乗って操作卓を巧みに操り、風を得たように思っ切り舞ったから。

 舞い上がった側から一転して、急勾配の滑空体勢に入る。それはもう、勢いつくジェットコースターのような様。

 無重力を体感したことはない僕は勿論。そんな物に堪えられそうになかったクルミは、その間、絶叫を大空いっぱいに撒き散らしたのであった。

 

 紅き巨人が舞い降りた場所。そこには、けたたましい銃声音が一点集中するように鳴り響いていた。

 地上からでは、たぶん、分かりづらいのだろう。僕らがいる上空からでは、バリアを展開して防戦一方のカタリナさんとセーラの姿がよく見えた。

 銃弾の雨が降り注ぐ光景に、2人は壁際に追い込まれていて身動きが取れない状況のようだ。

 

「クルミ、クルミってば‼︎」

「あう、うう……」

 

 さっきの無理な飛行が堪えたらしいのか。半ば、意識が飛んでいるような。そんな虚な反応をしてみせた。

 僕は必死に呼びかける。

 

「起きて、起きてよ! カタリナさん達、やばいから、早く連絡とってよ!」

「カタリナ、が? ……生きてるの?」

「生きている、生きているからさ。だから――」

「生きて、……っ! 生きてるの‼︎」

 

 ようやく我に返ったのか? 

 

 離れていた魂が吹き込まれたかのように、弾かれたかの如く目を覚ましたようだ。

 

「そうだよ! だから――」

「どこ? どこなの?」

「眼下だよ! だから、連絡くらいとってよ! 今、上空にいるって」

「わ、分かった。そんな焦らせないでよ」

 

 急かした甲斐があったのか。クルミは、早速、カタリナさん達に向けて通信を飛ばす。

 やや間を置いてからに、カタリナさん達の方を見たら、こちらの存在に気付いたのだろう。

 カタリナさんはバリア展開に手一杯だったからアレだけど、代わりにセーラが手を振って見せた。

 僕は合流地点を示すべく、傍に備えてあった発煙銃を取り出し、噴水広場へと目掛け発射。着弾させた側から、モクモクと煙を焚かせるに至った。

 

「クルミ、カタリナさんに伝えて! 噴水広場にマーカーを送ったから、そこに来て、と」

「分かった」

 

 このことを想定してかしてないか。タイニーブロンコ製作時に、発煙銃を無駄に備えておいてよかったような。この時は、そんな気がしたんだ。

 一旦旋回し、タイニーブロンコを噴水広場へと向けて飛ばす。

 

 それから、程なくして……

 

 あっという間に噴水広場へと向かうと、そこにも帝国兵が複数人控えているのを目に。

 遅れてカタリナさんやセーラも、煙に巻くようにやって来るが、どうにも帝国兵に囲まれて、すぐには出られそうになかった。

 このままでは挟み撃ちも時間の問題。そんな危機的な状況だ。そうした中、連絡を受けたクルミが、僕に縋るように注文して来る。

 

「クラウド、カタリナから。囲まれて動けないって。どうしたらいいの?」

「どうしたらって……」

 

 それは僕だって同じだ。このままでは、カタリナさんやセーラを拾うことができないと分かっていたから。

 目の前に立場だかる問題、帝国兵達の気を引く何かがあれば。操縦しながら、ふと傍に手をやるとシーカーに手が触れた。そのまま取り出しては、回転弾倉を確認してみる。

 すると、一発だけだが、まだ、使っていない弾丸があった。

 

「この一発で」

 

 威嚇射撃でもいい、帝国兵の気を引くことさえできれば。無駄だと思いつつも、僕はその一発に賭けた。

 エンジン音が鳴り響く中、銃声が掻き消されたまま、その一発が放たれた。どこを目掛けて撃ったのかは分からない。

 しかし、噴水広場に屯していた複数の兵士達は、その一発に反応したのだろう。

 

「撃って来たぞ‼︎」

「たかが、プロペラ機の分際で!」

 

 それぞれ驚愕の声が驚いたが、皆一様、小銃を構えてか。旋回する僕たち目掛けて迎撃をしてきたのである。

 飛ぶ物を撃ち落とさんと、殺到する弾丸の雨。緊急回避しつつ、距離を取った。

 その間、クルミが泡を食って

 

「ちょっと危ないじゃない‼︎ 当たったらどうするのよ!」

 

 語気を強ませた。

 撃ち止まない攻撃に、マズったような。カタリナさんとセーラへの挟み撃ちは回避されたものの、これでは返って2人に近寄れないからで。

 

「上空の敵機を、何が何でも撃ち落とせ!」

「新型機の出番だ! 実地試験がてらの餌にでもしてやれ!」

 

 大地から、それぞれのそんな怒号が飛び交って来る。距離を取った後、上空旋回しながら

 

「どうするのよさ? これでは近寄れないじゃないの」

「くぅ〜、困った」

「困った〜、じゃないの。何か策があって撃ったんじゃないの?」

「そうだけどさ」

 

 ――と、その時である。

 

「ひっ!」

 

 クルミの悲鳴と共に、どこからともなく一発のビーム光線が右翼に命中。そのまま貫通してしまった。

 

「しまった!」

 

 一撃を受けて、機体のバランスが傾く。だが、それだけではなかった。立て続けに、地上からビーム光線が殺到してきて――

 クルミの悲鳴が鳴り止まない中、僕は必死に交わし続けるが、ぬぅ、と目の前に現れた紅き鉄巨人を前にして、その迫力さに狼狽。

 両目を見開き、煙から姿を現した大怪獣の如き巨人を前に、何もできずして――

 

「これでも食らえ‼︎」

 

 巨人から拡声器を使って叫んだような声と共に、グーのロケットパンチが噴射炎を伴って飛来。

 

 ブォーン‼︎

 

 と物凄い風切音を立てる中、

 

 っ! 

 

 反射的に体が動いて、辛うじてモロ直撃は回避できたものの、今度は左翼に命中。

 

 バキーンー……‼︎ バラバラバラバラ……

 

 ビーム攻撃を受けた時とは比較にならないレベルに、破壊された部品がばらけて粉砕。

 木っ端微塵の左翼に、当然、バランスを狂わされ。今度は飛行困難に直面してしまう。

 翼をもがれたトンボの如く、安定性を失ったタイニーブロンコは、螺旋を描くように地上めがけて真っ逆さの様相を呈する。

 

「あわわわわ……」

 

 泡を拭くクルミが背後から伝わって来る中、意識を辛うじて保っていられた僕は、加重が酷い中、脱出装置を握り締め、そのままレバーを引くようにして発動。

 

 ボシューンー……‼︎

 

 と空気銃を放つがのような音を立てて、僕とクルミは墜落する悲劇の機体から脱出した。

 宙を舞う中、僕とクルミは射出されたコクピット越しに自動でパラシュートを解き放ち、軌道を安定させたんだ。

 ゆっくりと地上へと降下していく中、イカれてしまったタイニーブロンコは、そのまま墜落していき――丁度、駐留していた装甲車に衝突。爆炎を激らせ、木っ端微塵に砕け散った。

 

 くっ

 

 爆炎と共に、熱気が肌を舐めるように覆い被さり、思わず手で顔を庇った。

 

 地上へと降り立つ僕らであったが、そこはすでに、複数の帝国兵によって包囲されていた。

 

「動くな!」

 

 代表するかのように、1人の兵士が声高らかに叫び。無数の銃口が僕とクルミ、物言わぬブックへと向けられる。

 

「丁度いい。この際だ、機密の少女を渡してもらうぞ」

 

 そう言いながら、コクピット越しに目を回しているクルミへと歩み寄って行った。

 

「や、やめろ!」

 

 僕は声を上げる。しかし、

 

「おおっと、動くなよ。……分かるよな?」

 

 銃口を更に突きつけられ、牽制されてしまった。

 

 くっ

 

 どうすることもできない中、指を咥えて見ているしかない状況に、歯痒さが込み上げて来る。

 

 どうしたら、どうしたらこの状態を――

 

 無駄だと分かりつつも、思考を張り巡らしたんだ。――とそんな中だ。遠方から、1人の兵士が叫び声を上げて来て――

 

「誰か! 誰か、その2人を止めてくれ――‼︎」

「何事だ!」

 

 その声に反応してか、その場にいた兵士達が一斉に声のした方へと向く。すると、その直後であった。

 

「飛燕連脚‼︎」

 

 その雄叫びと共に、複数の兵士が吹き飛ばされ。飛ばされてからに、中からセーラが姿を現しては、遅れて、敵1人を切り裂くカタリナさんの勇姿が見えた。

 

「セーラ! カタリナさん!」

 

 僕は叫ぶ。まるで無双しているかのような、勇ましい姿。帝国兵達は焦りを滲ませ、次のような戸惑いを口にする。

 

「どう言うことだ? 2人は挟み撃ちにして、足止めしたんじゃなかったのか?」

 

 次から次へと打倒される中、

 

「そ、それが、僅かに注意が逸らされた矢先に――」

「馬鹿野郎‼︎ ……くそー、こうなったら、2人だけに的を絞って、蜂の巣にでもしてやれ――‼︎」

 

 どこからともなく発せられた言葉に、一斉に銃口が2人に向けられ。そんでもって間髪入れずして、これでもか? ってくらいに、一斉照射。

 

 ブバババババー……‼︎

 

 あまりにも残酷な光景に、僕は叫ぶ!

 

「セーラ‼︎」

 

 発射炎が迸り、特に先陣切って来たセーラ目掛けて、容赦なくブッパなしたんだ。だが、彼女の眼前に立ちはだかるように、半透明な障壁が現れては、火花を散らして防ぎまくって。

 それはもう、不屈の防壁、の如き、頑強なバリアによって、放たれた銃弾達は、火花を散らして無へと帰った。

 そんな無敵の光景。それは、カタリナさんにも言えることで、場は2人によって制圧せんとあった。

 僕とクルミを無視してか、兵士達の注意は完全に2人へと移行している。僕だって、そんな2人に注目がいきそうであったが、そこで我に返ると、早速、クルミの元へと急ぐ。

 未だに目を回しているクルミに、僕は必死で声をかけ、同時に揺りまくる。

 

「起きて! 起きてってば‼︎」

「う、ううう……」

「起きて‼︎」

「……気持ち悪い〜」

 

 青ざめた表情。何というか。それはもう、酷い車酔いをしているような有様だった。

 動けそうにないだけに、

 

 だめだ。完全に意識混濁しているみたい。

 

 僕は諦めた。

 自力で起きて来れそうにないと判断した僕は、彼女をコクピットから引きずり剥がし、そのままブックを脇に抱えながら負んぶ。

 

「カタリナさん!」

 

 乱戦真っ只中、僕は呼びかけた。自由に動けそうにあるのは、僕だけ。周りを見て、タイニーブロンコが不時着。激突して炎上した装甲車へと目をやる。

 燃え盛る炎は、夕闇へと染まりつつある薄暮の空を彩っては、銃声が迸る中、火花を散らしていた。

 そうした中である。炎上する装甲車の向こう、そこには一台の軍用トラックが見え隠れしていた。

 

「トラック⁉︎ あれで……」

 

 トラックを運転したことはないんだけども、あのトラックでこの窮地を逃れそうな気がした。

 指を指しながら、僕は呼びかける。

 

「カタリナさん! あそこにトラックが――」

 

 ――とその時である。振って沸いたかのようにだ。

 

 ズシーンー……‼︎

 

「のわー‼︎」

「っ! 痛っ。な、何⁉︎」

 

得体の知れない巨脚が、炎上する装甲車を踏みつけにして、眼前に立ちはだかったのである。

 まるでそう。数メートル範囲内で、上空から巨大なビルが降って来たような。そんな錯覚を抱かんとする感じに。

 思わず尻餅をついてしまった僕は、負んぶしていたクルミを下敷きにしてしまったんだ。

 呆然と見上げる僕をよそに

 

「ちょっと重たい! どいてよ、クラウド。……ねぇ、どいてってば‼︎」

「っ! あ、ごめん」

 

 速やかにどいた。

 

「ごめんじゃないよ! あんたの体重で、こっちはぺちゃんこなんだからさ。どうしてくれるのよ」

「そんなこと言ったって――」

 

 ――と、ここでだ。眼前の巨人。見上げても見えない頭部から、拡声器が聞こえて来て――

 

「舐めた真似を! この紅の鉄巨人(プラウ・クラッド)で、捻り潰してやる‼︎」

 

 僕とクルミに向けられたかどうだかわからないが、この拡声器で発せられた声に、先程、タイニーブロンコを破壊した巨人だと認識。僕とクルミは、思わず両耳を押さえながら耐え忍んで

 

「なんなのこれ‼︎ 冗談じゃないわよ!」

「それは、僕だって」

 

 僕とクルミが巨人に圧倒される中、紅き巨大な鉄巨人――プラウ・クラッドは、地響きを立てながら動き始めた。

 ただでさえ、帝国兵達に包囲されて危機的状況なのに、これでもかっ、てくらいに、ね。

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