何かを運ぶ傭兵稼業   作:大金剛

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ご無沙汰しておりますが、生きております。
また何かこう、色々浮かんできたので、纏まったら更新していきたいと思います。


第45話

 

 

 

 

どの星でも、どんな戦場でも独立傭兵は大体居るんだが、受けた仕事次第で当たり前にぶつかる。

 

それはこのルビコンでも一緒で、ベイラム、アーキバス、解放戦線、その他が特に指定無し!

誰でもいいからこれやってくれ!って依頼をばら撒くから、そりゃあしょうがない。

 

ぶつかったらどうするかって、じゃあお前は死んでね!って全然普通にやり合うし、そこに異論は無いんだけど。

 

無いんだけど。

 

 

『くぉのぉぁああああ!』

『―――――』

 

 

目の前で繰り広げられてるAC同士が至近距離でやりあってるのに、自分は全然、参加できてない。

 

というのも、レベルが高すぎてオレにはついていけないんだよな。

ギンのACが左腕のパイルバンカー叩き込もうとすると、相手のACが綺麗に横に避けるんだよ。

 

どういう読みしてるんだと。

それか純粋に反応速度がおかしいのか。

 

そうしたら相手のACがパルスブレードで切ろうって振り回すのを、今度はギンが斜め後ろとか横に避けて。

距離が少し空いたらお互い右手の銃で牽制して、また近付いてって……その繰り返しやってる。

 

お互い、背中の撃ってないのは近すぎるせいなのか?

 

 

えー、はい。

あれに混じるのはオレには無理です。

 

一応、周囲を動きながら、2機が離れた時に申し訳程度にバーストライフル撃ってみてるけど、これが全然当たらない。

ギンとやり合いながらこっちも見てるらしくて、最初からお前を見てましたってくらいに綺麗に避けられる。

 

普通に は? って声が出たよ。

 

それどころか、ギンを振り切って自分に切りかかってきたり、アサルトライフル撃ってきたり。

ギンとやってる合間に背中の4連ミサイルをこっちに撃ってきたりとか、冗談は止めてくれって動きをしてくる始末。

 

パルスブレードはちょっと避け損なって胴体のバリア削れたし。

 

ていうかコイツ何なの?

自分とギンの通信は聞こえてるはずなんだが、全く喋らないし。

 

おかげでギンの叫び声だけうるさくて、アイツ1人で盛り上がってるみたいになっちゃってるんだけど。

 

 

 

 

ギン主導の"ベイラムの用意したAC丸ごと強奪作戦"は途中までは上手くいっていたんだよ。

 

ちょっと離れたところのバカでかいビルの中に隠れて、ベイラムが構築した中継地点みたいなところ待機して、監視して。

半日くらい隠れてたら、飛んできたヘリがAC吊り下げてるから"あーあれかー"って思ってさ。

 

着陸したところを、2人ともACのモードを低出力にしてそーっと近づいて行って、一気に戦闘モードに移行してさ。

オレが背中の10連ミサイル、プラズマミサイルを通信施設っぽいところに降らせてる間に、ギンが凄い勢いで突っ込んでヘリやら何機かいたMTを粉砕してさ。

 

残ってた瓦礫手前みたいな施設と、雑に組んだ着陸施設の組み合わせでできた中継地点なんか、ACが襲ってきたらあっというまにぶっ潰れるわけだし。

 

運ばれてきたACのパイロットが居たのか分かんないけど……

 

こんだけ滅茶苦茶にされたらパイロット以外も潰れたか吹き飛んだかで、絶対生きてないーなって感じになった後。

じゃあ、このACはいただいていきましょうって準備しようとしたらさ。

 

なんか来たんだよ。

 

自分達が隠れてた、でっかいビルの方からACが飛んできたんだよ。

 

 

 

《高速接近する機体を検知しました》

《スクリーンにマーカーを表示します》

 

《データ照合に成功、スクリーンに表示します》

 

―――-―――-―――-

 登録番号:Rb23

 識別名:レイヴン

 機体名:LOADER 4

 ランク:--/-

 所属:独立

―――-―――-―――-

 

 

 

じゃあ帰ろうって時に飛んできたAC。

飛んできたのを見て思った第一印象は、全身RaD製ってすごい珍しい構成してるなあだった。

 

いやそれが悪いってわけじゃなくて。

 

ベイラムやアーキバス系は普通にまぁ買えるから、全身そうなってても不思議じゃないんだが。

 

RaDの実態ってルビコンのドーザーだからさ。

オールマインドが他の企業と一緒に、ラインナップに並べてくれるような物を作れてるのがおかしいんだよな、実際。

 

それで一式揃えようなんてのは、よっぽどRaDと繋がりがあるか、特殊な事情でもないとやらない構成だと思うんだよ。

まず買うのにどうやって話を付けるかって?ってのがあるわけだし。

 

 

『何?見慣れないACね?  って!?』

 

 

ギンは"何だお前"って続けるつもりだったんだろうけど、その前にこのACが突っ込んできて、それは中断された。

 

こっちを狙ってというより、大破してるヘリの横にあるベイラムの運んでたACに向かいそうだったんで、ギンのACが慌てて追っかけて、パイルバンカーで横から串刺しにしようとしたんだけども。

 

このレイヴンってののAC、急停止しながら横っ飛びして避けたんだよ。

 

 

『は、何なのコイツ!』

 

 

びっくりしながら、そこで更に追いかけるギンも大概だけど。

その後はもう、お互いが至近距離で左腕の武器を振り回すっていう状況になって、今に至ってる。

 

時々、レイヴンのACが振り回すパルスブレードがギンのACに掠ってるんだよなあ。

 

横からほぼ当たらない援護モドキをしてる自分もいるんで、構図としてはほぼ1:2なのに、むしろこっちが押され気味なのでは?ってちょっと信じたくない。

 

それに延々やってると連絡途絶えて不審に思ったベイラムが確認に来るだろうし、それはマズい。

 

 

「COM、依頼検索してくれ。

 依頼元はアーキバス系列か解放戦線、相手はベイラム……の系列もか、依頼文にACって入ってるのないか、2日以内で!」

 

《検索を開始します》

 

その間も牽制、援護の意味も込めてバーストライフル撃ってるんだが、やっぱり当たらない。

逆にこっちに4連ミサイル撃ってきたから慌てて避けなきゃいけない羽目に。

 

どういう視野だか反応速度してるんだ本当に!

 

 

《条件に一致する3件の依頼を確認しました、スクリーンに表示します》

 

 

とてもその、女とは思えない声で叫びながらやりあってるギンの声を聞きながら、表示された依頼の件名だけさっと確認する。

 

 

 

・レッドガン部隊のAC撃破、または支援部隊の撃破

・大豊核心工業集団の導入したテスターACの撃破

・企業からのダム施設防衛

 

 

 

最初のはこんなの公示するなバカって件名してるから論外、3つ目も違うから、真ん中のを選んで表示する。

 

 

---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ----

依頼元:アーキバスグループ - シュナイダー

座標:べリウス南部 - 汚染市街 - XXXXXXX

目標:大豊核心工業集団の導入したテスターACの撃破

報酬:95,000c

---- ---- ---- ---- ---- ---- ---- ----

 

 

要約すると

 

・敵対関係にあるベイラム系列企業大豊がテスターACを導入した

・外部アーキテクトによってアセンブル最適化がされたテスターACが輸送されるので、撃破しろ

・アーキバスグループは 各位の奮闘に期待しています

 

 

外部アーキテクト?

設計を外注したのか、運んでたえーとテスターACは。

 

見た目大豊の天槍で一式だけど、中身が違うのか?

 

じゃなくて、あのレイヴンってのが受けた依頼は多分これだ。

自分達の撃破でも、あのテスターACを確保するでもない、それなら話のしようはある……と思いたい。

 

 

「ギン、ちょっと離れろ!」

 

 

10連ミサイルとプラズマミサイルをレイヴンに纏めて撃つ。

当たるとは思って無くて、ギンとレイヴンのACが大きく距離取ってくれたから、それだけでいい。

 

 

『何、今良いトコロだったのに!』

「それはまた今度にしてくれ、そこのAC、独立傭兵で識別名はレイヴンだよな。

 目当てはそこに突っ立ってるACを撃破、あってるか?」

『――――――』

 

 

元気一杯のギンは良いとして、レイヴンは無反応。

せめてなんか喋ってくれよ。

 

 

「こっちはベイラムの護衛でも何でもない。目的は同じくあのACで、内容は強奪だ。

 

 つまり、戦わなくてもあのACはこっちで持って行く。

 そっちとしても、ベイラムに届かなけりゃ壊したも同然でいいだろ。

 

 アーキバス、いやシュナイダーか、中継基地ごとやりましたとでも報告すればいい、だからこの辺で終わりにしないか」

 

 

お互いやらなくてもいい戦闘でACの修理費増やす必要はないはずだ。

ここで、いいやどうしてもACを壊したい!って言い出されると、話が終わっちゃうんだけど。

 

そうなったらもう、被弾覚悟でこっちも接近戦に混ざってやるしかない。

 

リペアキットもあるから、2人で囲んでゴリ押しすればどうにかなる?なるはず、なってくれ。

仮にレイヴンのACにリペアキットがあったとしても、2回も3回も使えるわけないだろうから、最終的には押し切れる、ハズ。

 

 

『ぇぇええ!ギンちゃん、むしろこっからなんだけど!』

「お前はむしろ同調しろよ、完全に目的を見失ってるぞ、正気に戻ってくれ」

 

 

ギンが先に不満言ってくるのおかしくない?

 

これだからバトルジャンキーは。

独立傭兵は血の気ばっかり多くて困る、後で献血にでも行って3リットルくらい抜いてきてくれ。

 

 

『――――――』

 

 

それで、レイヴンってのは相変わらず何も言わない。

 

ただ、機体の頭がこっちと目当てのACを行ったり来たりしてるから、聞いてはいる……聞いてるよな?

どれから壊そうかな?って考えてるわけじゃないよな?大丈夫だよな?

 

 

『――――――』

 

 

 

OKでもYESでもいいから、何か言ってくれないかな。

 

あ、ブースタ吹かして後ろに下がっていくわ。

これは了承って受け取っていいのかな、いいんだよな?

 

じぃっと凝視してると、そのまま結構な距離空けた後、バカでかいビルの方に向かって飛んでいった。

着地しないまま飛行モードにして空に消えてったから、多分帰った……と思う。

 

見えなくなるまで、最後まで見届けて、やっと安心の息を吐く。

 

 

『……ちょっとモヤモヤするけど。次見たら串刺しにしてやるんだから』

「自分が居ない時なら好きにやってくれ。

 ほら、早くアレ持って帰ろうぜ、ベイラムの部隊でもきたら、もっとややこしいことになる」

 

 

未だ何かぶつぶつ言ってるギンがガシャンガシャンACを歩かせて、突っ立ってる……テスターACに近付いていく。

 

背中に回りこんで右腕を動かしてガチャガチャやってるのは、自分もコクピットから出て作業するのに良い位置探してるんだろうな。

 

「作業できそうか?」

『大丈夫よ、天槍のコアは妹分が前に乗ってたから、結構触ってたのよ。

 背中の腰のところに非常用の解放メンテスイッチがあって……』

 

 

ACだけじゃなくて、MTのコクピットも中に緊急脱出レバーとかスイッチがある。

 

だから撃墜される!って時はそれを使うんだけど。

パイロットがレバーやスイッチに触れない、つまり意識が無いくらい重傷の時に、外からコクピットを開いて救出するための非常用スイッチっていうのもあるんだ。

 

普段は装甲カバーがついて隠れてるから、戦闘中にそこを狙って押すなんてのはまぁ不可能。

だから独立傭兵でもメンテや修理は業者に丸投げしてると、知らないヤツが結構居るんだが……ギンはそういうタイプじゃなかったらしい。

 

暫くすると、テスターACのコクピットハッチが重たい音がして開くから、操作できたんだろう。

同時に手足の関節のロックが外れる音もする。

 

外から非常用スイッチが押されたってことは、意識不明のパイロットを引き摺りださなきゃいけない状況で、かつ、ACもそのままにはしておけない場所だろうって想定の元、緊急自動操縦とか遠隔動作の指示を比較的、受け入れるようになる。

 

イメージとしては大破したACを担いで持って帰ってきたとして。

パイロットを急いで救出して、そのACは早くどかせ!っていう、要するに戦時状態のベース基地の中って感じだな。

 

いつだったか、ドーザー許さんって飛び出してった解放戦線のACがボコられて、倒れてた時もこれを使おうとしたんだけど……

あれ、ちゃんとしたメンテが全然されてなかったせいで、このスイッチが動かなかったんだよな。

 

お陰で引き摺って帰るハメになってさ。

 

 

「お疲れ、じゃあそっちに追従させて早く逃げようぜ。

 分け前は後で郵送でも、パーツ分の金振り込むのでもどっちでもいいから」

『分かったけど、途中までは一緒に来てもらうわよ』

「はいはい、分かってるって」

 

 

ギンが移動するのの後ろをついて、コクピットが開いたままのACがゆっくり歩き出す。

 

一応、中を見たけど誰も乗って無かったな。

縮こまって隠れてるパイロットとか入ってたら、ギンが引っ張り出して踏んでただろうけども。

 

後はここから離れて、適当に距離取ったら飛んで帰って終わりだ。

 

武器は何も持ってなかったが、天槍って結構な値段するよな。

 

いやでも板みたいな頭は安かったっけ?

自分の取り分は頭と腕だから……ガレージ帰ったら確認しよう。

 

あー、帰ったらちょっとまって、後でって言ってた通信の返事もしなきゃなあ。

 

断れそうにないから、RaDに行かなきゃなるなあ、うーん。

どうしても嫌ってわけじゃないから、別にいいんだけどさあ。

 

と、帰った後のこと考えてたら、そろそろ良いだろうって場所だ。

 

様子見にきたベイラムが追いかけてくるとか、レイヴンだっけ、あれが上から降ってきてやっぱり壊すって襲ってくるとかも無かった。

 

 

『よし、それじゃあ解散で。イレギュラーはあったけど、欲しいものは丸っと手に入ったわ。

 売るにせよ使うにせよ、大儲けよ。

 

 ありがとうね。』

「あの飛び入りは焦ったけどな。ずっと無言だったのが本当に怖かった」

『愛想ゼロのくせにめちゃくちゃ強かったもんねー、次は勝つけど。串刺しにするけど』

「絶対に巻き込むなよ、参加しないからな」

『ぇー』

「えーじゃない、そんなに強くないんだって、こっちは」

 

 

まだなんか不満そうなギンと別れてガレージに帰る。

 

いやあ、一時はどうなることかと思ったわ。

 

 

 

 

そして無事、ガレージについて、今はソファに座って、コーヒー片手にPDA弄ってる。

 

 

「大豊の天槍って頭と腕、幾らだっけ?なーっと」

 

オールマインドのショップで正規購入の値段を見てみる。

 

・DF-HD-08 TIAN-QIANG 58,000 COAM

・DF-AR-08 TIAN-QIANG 200,000 COAM

-----------------------------------

合計         258,000 COAM

 

 

おお、すごいなこれ。

 

ギンがこのまま振り込んでくれたら大儲けだ。

200,000 COAMくらいでも全然いいな。

 

分かってたけど、ACって高いなあ。

 

でもベイラム、ベイラムだけじゃないけど、企業の発注したACを丸ごと奪おうなんて危ない橋はなあ。

ヤバ過ぎて絶対に自分じゃ計画しない。

 

そもそも今回みたいな条件が揃うことなんか、まず無いしなあ。

 

 

「そういえば、外部アーキテクトってどこなんだろうな。

一式組んでくるくらいだし、大豊の系列なのかな?いやそれだと外部ではないような……

 

独立傭兵だとオールマインドにこういうのコンセプトって頼んだら見積り出してくれるかもしれないけど」

 

 

傭兵支援って考えたら何でもこなしてくれそうなのが、オールマインドだし。

ルビコンの外でも支援してくれないかなあ。

 

 

「ルビコンから帰った後にオールマインドの支援が受けられないのが辛い。

外にも支援システムの出張版とか支店とか出してくれないかなあ……」

 

 

まあ無理なんだろうけども。

そうするとマジでオペレーターが……でもそんな金は無い……はぁ。

 

まぁ、まだ帰る予定はないんだけど。

 

現実逃避もこの辺にして、Radから来たメールの返事するかあ。

 

BAWSの第1工廠から色んな部品運んできてくれと。

ちょっとベイラムの居ないところに行きたいし、受けとくか。

 

コンテナの中に自前の背中の武器も積んで来るようにってのが不安でしょうがないけども。

ついでにドーザーと戦ってきてとか言われそう。

 

 

「メールで返事してっとー……飯でも食うか。

タキガワ・カレーでも温めよう。

 

味のハーモニクスとか全然分からないけど、美味いから」

 

 

 

 

 

――――――――――――

――――――――

――――

 

 

 

 





テスターACって誰に届く予定だったのかなあ、本当に。
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