何となく、そういえば解放戦線ってどんな会話してるんだろうというイメージが……
朝、起きた時に受信してしまいまして。
解放戦線は予算、人員、現場、資材の全てが自転車操業。
……どころかその自転車は真っ赤な火の玉であり、基本的に十分足りてます!という区域は少ない。
一時期はベイラム、アーキバスの補給や中継基地を狙った襲撃で潤った時期もあったが、怒り狂った企業側の報復と侵攻により状況は元に戻るどころか悪化している。
むしろ、戦死者が増え、負傷による長期……短期でも戦線離脱を余儀なくされた人間の増加により、人手不足が加速し始めていた。
「このダムを落とされるわけにはいかない!万が一があれば、後方への電力供給が更に深刻化する、また人が死ぬぞ!」
『ベイラムどもが壁に押し寄せる頻度が増えている!中央の4脚をもう2台、いや1台でもいい、増やす必要がある!』
「それはジャガーノートでいいだろう!それより周辺や後方の警戒体制の見直しを!また後方が焼かれたらどうする!」
ここは解放戦線の重要施設、ベリウス本部、その会議室である。
大きな壁掛けモニターに映されたベリウス地方のマップに様々なアイコン、多様な色のラインがびっしりと追加され、リアルタイムで更新されているのか、時折、数値やラインが変動している。
そしてここ、会議室居る者だけでなく、通信越しの参加者もそれぞれの主張を大きな声で叫んでいた。
どの声にも必死さがある。
これが通らなければ、通さなければ全員の未来が無い、そういう強い感情の乗った声だ。
『BAWSからの支援は増やせないのか、何もかもが足りていない……!』
「運ぶトラックとヘリが無いんだ!ボロボロのトラックだけ回してみろ、ドーザーの餌になるだけだ!」
「独立傭兵を護衛に……」
『受けてくれる独立傭兵が何人いると思う?護衛の報酬程度ではヤツらは食いつかん』
「そういえばノーザーk」
「「『その話は止めろ!』」」
何一つ纏まらない会議、もはや言い合いの泥沼になった様相に、会議室の末席に居たラコードは胃の辺りを押さえた。
独立傭兵への直接依頼や、オールマインドへ公示依頼を行う際の取り纏めをしているからと呼ばれるようになったが、毎回これだ。
深呼吸して、立ち上がって口を開く。
というか叫ぶ、そうしないと誰にも聞こえない。
「皆さん、まずは落ち着いてください、一旦、一旦休憩を兼ねて話をさせてください!」
強引に割り込んで、モニターの表示も切り替える。
まずは戦線、それぞれの区域の戦力図と、確認できている企業側の戦力も重ねて表示する。
といっても自分が調べたわけではない、元々重なってゴチャゴチャになっていた表示情報を整理しただけだ。
「これが現状で、どこも足りていないのは見て分かりますが……志願者の訓練を前倒しにしても壁やダムの防衛には回せません。
特に、壁の外での防衛に新兵など出すだけ無駄です、壁内部の部隊を外へ、中に新兵を入れて現地で訓練を続けるくらいがギリギリのラインかと思います」
壁の防衛責任者が何か言いたそうではあるが、ラコードが補充無しとは言ってないせいか、口には出さなかった。
そして4脚MTの話はラコードは意図的に無視した。
次に表示を追加して、補給ラインを重ねていく。
「問題の補給ラインですが、ガタガタです」
「多重ダムはダナムさんが欠席なので後にしましょう、他の防衛区画や補給の護衛の増員は……」
『独立傭兵を使おう』
「……はい?」
ラコードの口から平坦な声が出た。
『有力な独立傭兵に金を積んでの引き込みを行っているが、芳しくない。我らの予算では限界がある』
『だが、逆にだ』
『独立傭兵もACを失ったり、ACや装備の整備、修理が追いつかない連中がいる。そう連中を使おう』
『最前線に出ろなどという依頼は奴らも受けまい。だが、輸送ルートの巡回させて、ドーザーを掃除しろなら受けるかもしれん』
『報酬には成果次第で追加を付けるし、なんならBAWSから型落ちの武器くらいなら回せる可能性もある』
『少しでも金が欲しい連中なら釣れるかもしれん』
会議室に微妙な空気が漂った。
幾らなんでも、そんなのありか?という空気だ。
「……整備や修理がし切れていないACで大丈夫なのか?」
『護衛も無しでトラックやヘリを飛ばすよりマシだ』
「撃破されたらどうする?」
『護衛じゃない、補給ルートを先に進ませるんだ。撃破されたら補給ルートを変える』
『ACがない独立傭兵はどうするつもりだ……?』
「MTを貸し出して先行させる。それで死んでも我らの消耗はMTの1-2機で済む」
会議の出席者が概ね沈黙した。
無い袖は振れないが、これは……これはいいのか?成立するのか?と。
そしてラコードが口を開いた。
「あの、その依頼や調整は誰が……?」
会議室にいる人間の目が、全員がラコードを見ていた。
『予算は幾らかつける、後の手配は任せる』
発案者の声は完全にラコードのみに向いていた。
ラコードは自分の胃にギュリギュリっと穴が開く音を聞いた。
その後の会議の内容は、ラコードの耳には届かなかった。
週刊ツィイーの発行部数だとか。
ツィイーのACユエユーが運用しているガトリングの弾薬製造をBAWSが試験的に製造を了承したとか。
ストライダーに送る補給物資の集積地がヘリ4台と4脚MTごと壊滅させられたとか。
そんな音が聞こえていたかもしれない。
だが、右から左だった。
この会議が終わったら、自分は独立傭兵達に個別の連絡を取って依頼を、その調整を行わねばならない。
独立傭兵は決して物分かりのいい人間の集まりではない。
むしろ、行って戦うだけのシンプルな話しか通じない人間の方が多い。
そんな連中に、こんな話をつけろと?
ラコードの視界は段々と暗くなっていった。
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こういうのも、受信したら出力していこうかなと思いました。