「待った。」
「あ?」
そのティアの言葉に対して、不満そうな言葉を漏らすリリア。
「話は聞かせてもらった。貴方達は運がいい。」
とティア。
「まぁたふざけた事言うんじゃねぇだろなぁ!少しは状況と空気を……!」
声を荒らげるリリアの口元に人差し指で静止するティア。
「ちっちっち……」
ティアは自身の人差し指を左右に動かす。
「今回は真面目。大真面目。そもそもいつもの私はもっと くーるびゅーてぃー。」
リリアがティアの返しにまた青筋を立てる。
「漆黒の剣だっけ?」
ティアは苛立つリリアを置いて、漆黒の剣へと向き直る。
漆黒の剣のリーダーであるペテルがティアの言葉に対して はい、と一言。
「話は聞かせてもらった。
もし貴方達が例の組織を探りたいというのなら………私達、青の薔薇が協力をしてもいい。」
ティアが真顔で言う。
「それは本当ですか?!」
ニニャが食い気味で言う。
「私、女の子には嘘をつかないと決めてるの」
嘘つけ!何一つも信用できる要素が…………ん?…………なんか…………今のあの変態の言葉に違和感…………
「ただし、貴方達も私達に協力して。ぎぶあんどてーくってやつ。
詳しい話はここで話せないけれど…………
それにこっちとしては人手が欲しかった。恐らく鬼ボスも王女様も許してくれる……多分!
上手くいけばハーレム…………」
ティアは一瞬 へへっ、と不敵に笑う。
何やら話の最後におかしなフレーズが聞こえたが気のせいだろう。
「ゴホン……私達は構わない……多分!
後は貴方達が決めること。
付いて来るなら命の保証は出来ない。私達が居るからと生半可な覚悟ではダメ。それぐらい危険。
貴方達は命を賭ける覚悟はある?」
ティアは真面目な顔凄みを効かせてそう言い放つ。
……色々欲が見え隠れしている気もするが………………まぁ、今は空気を読んでやる。さぁ、どうする漆黒の剣。
「………………」
俯いて沈黙するニニャ。
「あの…………僕だけで協力していただく事は!」
「駄目。」
ティアに即答で返される。
ニニャはまた俯く。
ニニャは迷っていた。
姉を探す為に冒険者になった。その中で仲間も出来た。掛け替えの仲間。命を預けられる仲間。最早家族に同然であった。
そんな人達を自分自身の問題に巻き込み危険に晒す。果たしてそんな事が許されていいのか?
許される訳もない。
「いダッ!」
ニニャがキリのない思考に陥っていると、突然頭に衝撃が走る。
「な、なにが…………」
見上げればそこには自分より背の高い男性3人。逆行となり見にくいものの、その顔は間違いなく仲間のもの。
「なぁに面倒な事考えてんだ?姉ちゃん、見つけんだろ?」
とルクルット。
「姉殿を見つける絶好の機会。これを見逃せば次は無いのである。」
とダイン。
「元より冒険者になった日から命を賭ける覚悟はできている。そうだろう?」
とペテル。
「皆…………」
少し涙ぐむニニャ。
「という事です。ティアさん。私達 漆黒の剣は貴方達に協力させていただきます!」
ペテルが大きな声でそう言う。
「ぶらぼー。良い仲間達だね。」
と関心したように言うティア。
今は恐らく感動する場面。故にお涙頂戴な訳なんだが………。
何故だろう……何故か感動しきれないんだよなぁ……。俺が捻くれているからか?青春の時間をそれなりにゲームに捧げたからか?クソゲーのやり過ぎで心までクソになったからだろうか……
「うっ……うっ!………ッ……」
サンラクが横を見れば、嗚咽するようなリリアの声が馬のマスクから漏れている。
馬のマスクによって顔は見えないものの、恐らくその下は泣いているのだろう。
しかし泣いているものの明らかに見た目はふざけているので何処まで行ってもシリアスな空気にはならない。そこに居るのはうっうっと嗚咽を漏らして俯いているただの馬である。
なんだコイツ…………
サンラクはまるでこの世のものでは無い存在を見たかのように顔が固まる。
俺が異常なのか、それとも俺がまともなのか……とジト目でこの甘酸っぱい空気を見守っていると
「ようこそ。我が国の王城へ。」
ティアが大袈裟に身体を使い、大きな門を背にしてこちらに振り向く。
ティアの背後に見えるのは巨大な城壁に囲まれ、随所に円錐形の塔が並んでいる。その中央には大きな建物があり、豪華で複雑な造りとなっていた。
まぁ、見て分かる通りに目的地に着いたようだ。
「じゃ、中の人呼んでくるからそこで待ってて。」
とティアは言い残し、門を開けるでなく、壁をよじ登り、城内へと侵入した。
――――――――――――――――――――
しばらくして城内に侵入したティアが戻ってきた。
後ろには何人かの兵士を引き連れている。
その中には見知った顔も居た。
「ミラク様、ご足労感謝します!」
金髪の青年、クライムであった。
「昨日振りですね。」
と軽く返すサンラク。
クライムは軽く挨拶を交わした後、サンラクの後ろに居る元々呼ばれていなかった面々を見据える。
「話はティア様から聞いております。主の許可も取れた為、どうぞ、お入りください。」
とニコやかに言うクライム。
そして衛兵に命令し、門を開けさせる。
……そういえばコイツの主って王女様なんだよなぁ。堅苦しい挨拶とかしなければならないのだろうか?面倒だな……。
クライムは全員が入った事を確認してから、では行きましょう、とサンラク達を王城の中へと案内する。
サンラク達はそれに従い歩いていく。
てか、今思ったんだが……見ず知らずの冒険者を王城に入れる事を許可するってどうなんだ?
いや、招待したのはあっちだが…………それは俺だけであってこの馬と漆黒の剣一同は別に途中から増えただけで招待はされてないんだよなぁ。
まさに招かれざる客。
もしそこに危険人物が混じってたらどうするつもりなんだ?しかもこの馬は元犯罪組織の一人だぞ?
サンラクがそんな事を思っていると何やらリリアはクライムへと話しかけていた。
「すまん、兵士さんよ…………自分で言うのも何だが…………こんな顔も隠してる怪しい奴……王城に招いていいのか?」
どうやらリリアも同じ事を考えていたらしい。
お前が言うなって感じだが、本人はそれを承知で聞いてるんだろうな。
「えっと……確か…リリー様ですよね?
確かに今日初めて会った人物を王城に入れる事は不用心とも思いますが……主曰く
アダマンタイト級冒険者、2チームがこの王城に居る。それに王国最強の戦士長だって。ここより安全な所は他には無い。
との事です。」
クライムは少し苦笑いを混ぜて言う。
「……はぁ…」
リリアも納得していないという様子で返事を返す。
「大丈夫、王女様は私が守る。例え隕石が降ってきても変態に襲われようとも、私がこの身を投じて助ける。
貴方も助けてほしい時は私を呼んで。」
横に居たティアがそう言う。
「最近変な変態が私にしがみついてくるんだが…………」
気付けばティアはリリアの背中へとしがみついていた。
「大丈夫。私がここにいる限りはその変態も近付けない。」
「お前の事だよ!!この変態がッ!!離れろ!!」
といつもの茶番が始まった。
クライムはまた苦笑いしてその状況を見ていた。
――――――――――――
長い廊下の先、一際大きな扉が見えた。
そしてその前でたむろしている集団。
「!!」
クライムはその存在にいち早く気付き、足が早くなる。
そしてその集団に近付いていき声をかける。
「どうかなさいましたか?アインドラ様?」
クライムが声をかけたのは金髪でドレスを着た女性。
「あら、お帰りなさいクライム。実はあのバ………じゃくて………ザナック殿下とレエブン候がラナーと中で話してるの。」
「……ザナック殿下とレエブン候が……?」
クライムは眉をひそめて言う。
「特に何も言われず追い出されたから、私達も混乱しているの。」
アインドラと呼ばれた女性が少し不満そうに言う。
「そう……ですか。」
クライムも歯切れ悪く言う。
「まぁ……いいわ。あの子の事だから何か考えがあるのでしょう。それよりも……」
クライムと話していた女性はクライムの後ろを見るように目線を変え
「そちらの方々を紹介してくださる?」
そうにこやな顔で言った。
お久しぶりです。