ホラゲーの世界に効果エフェクトが追加されました。   作:ulo-uno

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禁解匣:その参

「これにて失礼ッ」

「……後で覚えていなさイ」

 

脱兎のごとく走り去っていく男の背中。

しかしその姿は隙だらけでもしも今あの無防備な背中にナイフを投げれば簡単にその命を奪う事ができるだろう。そう思ってしまうほどに隙をさらけ出している。

 

しかしあんな男でも先日教会のブラックリストに登録された異例の存在であることは忘れてはならない。

よく口の回る男だがその実重要なことは何一つその口からは吐き出していない。

 

「とは言え相手はあの"霧鬼"の関係者……元から油断などできる存在ではないというのは分かっていたことデス」

 

その為ワタシが監視という任務につけられたのデスガ。

 

あくまでも監視なのは危険性が未知数であるから。関係者を力づくで尋問しないのは何が払底になるか分からないから。

だから処分しようと思えばいつだってできるのだ。

 

おっといけません。私の任務はあくまでもあの男の監視でありそれ以上は越権行為と見なされてしまいます。

それに近々本部から応援の方も派遣されるとのことですし今は大きな荒波を立てないことだけ気を付ければいい。

 

「……流石にもう近くにはいませんネ。まぁ、いたとしても足手まといが増えられるので嫌なだけですガ」

 

彼が公園側の見回りに行ったことを確認してからアパートの中に入って行く。

この街を下調べしていた時には活気のあったアパートであるが今ではその面影すら見当たらない。むしろじっとりとまとわりつくような霊気が既にここが人が住めるような空間ではないと訴えかけてくる。

 

「予想通り……と言えばそうなのでしょうガ。出口は消えていますネ」

 

建物を迷宮(ダンジョン)化してしまうほどの強力な鬼。あの時の霧鬼の結界とは比べるまでもないがそれでもまっとうな人間である者にとって危険と言う事には変わりない。

鬼の討伐よりも出口を見つけるべきかと考える。しかしすぐに考えを改める。この結界が後どれ程広がっていくかも不明な中で撤退したとしてもこの当た手が付けられなくなる可能性がある。今はまだ不幸中の幸いなことに死者が出るような被害はこのアパートの中だけであるはずだ。

 

「此処で何が起こったかはあまり考えたくもないですネ」

 

下腹部が裂けて血だまりができた床を見ながらそうつぶやく。

子供も大人も関係なく広がる光景に自然と体が強張るのを感じる。もしかすると次にああなるのは自分なのだと目の前の光景とこの異常な空間がワタシに訴えかけてくる。

 

───ギャァ……おぎゃあ……ぁぁ……

 

ふと遠くから聞こえてきた鳴き声に警戒を強める。

一瞬まだ赤子が生き残っているのではないかと迷ったがこれだけの惨状であるにもかかわらず未だに生存者がいるとは考えにくい。それに軽率に行動して結果自分の足を掬われるなんて言う事にはなりたくない。

死者への同情はあれど自分もそうなりたいとはこれっぽっちも思わないのだ。

 

とは言え、この現状で何か手掛かりがあるとすれば声がした方しかないだろう。今こそ何も起きてはいないが此処は既に鬼の手中である以上何もせずにこのまま無事でいられるとも限らないのだ。

 

「本当に……いつまでたっても慣れたくはない光景デス」

 

声が聞こえた方に奥に奥にと進む。

その一番奥には階段が存在し踊り場を返して上の階に続いているようだ。

 

「……ッ……これは、また、……」

 

階段を上った先にあるのは先程よりもなおさら冒涜的な光景であった。壁にすりつぶされ塗りたくられた肉片、股から力ずくに引き裂かれたように臓物をまき散らした肢体、朱い液体がにじみ出ている丸い球体。そのどれもが正に冒涜的としか言いようのない光景だった。

 

ほぼ反射的に口元を抑える。幼い頃より凄惨な光景は訓練の一環として何度も見てきた。事故現場であったり、尾による被害者の末路であったりとその結果は初めて見た時にはしばらくまともに食事が喉を通らなかったのを覚えている。しかしそのどれも食事や儀式の為と言った何かしらの明確な理由がありこの様にただ悪戯に破壊されたものは見たことが無かった。

 

何の目的の存在しない純粋な破壊。

まるで幼い子供がおもちゃを壊してしまう様な───

 

───オギャァ……オギャア……オギャアァァ……ぁぁ……

 

 

「ッ!!」

 

再び聞こえてきた声に短剣を構える。先程よりも近くに聞こえた声は恐らく一つ上の階から聞こえたもの。だとすれば最初に聞いた時よりも確実に近づいてきているという事になる。私ではなく向こうが、が。

 

降りてこられる前にどこかに隠れてやり過ごした方が無難だろう。そして可能そうであると判断すれば奇襲で仕留める。

そうとなれば早くどこかの部屋に隠れて───。

 

───ァァ……アキャッ

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

「公園内を調べろって言われてもやっぱり何もないんだよなぁ。」

 

とは言え調べて来いって言われたから一応軽くは調べはしたがやはり何もないとみて間違いないだろう。それよりも疑うべきは……

 

「やっぱマンションの方しかないよな……。まぁ、大丈夫か。聖女サマが直接手を下すだろうし」

 

あんな美女の皮を被った脳筋ゴリラでもほんの少数しか所属することができない聖歌隊に籍を連ねるほどの超エリートだという事には間違いないのだから。例え単純すぎるようなごまかしにさえ騙されるような人間だったとしてもエリートなのだから問題はないはずだ。……問題は……問題……。

 

「いや、まさかな。だって原作でこんなマンションを丸ごと変えるような話はなかったし」

 

本当に?

確かに原作にはこんな事件はなかった。しかし万が一に俺が居たことで物語の何かが変わるとしたら?本来主人公たちが解決すべき事件を俺が居たことで予定が狂ったとかそんなこと起こり得るだろうか?

 

其処でないとは言い切れないのがこの世界だ。この原作からして分岐点が何処にあるか分からないというのが常であった事、そしてその中にはもちろん主人公の身の回りそれこそグレーシアや小百合の生死にかかわるものまで多岐に分類される。

 

可能性がないとは言い切れない。物事の全てには可能性がある限りそれは存在しうる出来事である。それがこの世界の真実だ。

 

「グレーシアの死亡が確認されたルートは全部で13通り……その中でストーリー外で死亡したルートが3通り。……死亡した理由が分からないのが……1通り……」

 

つまり彼女はここで……最期を迎える可能性があるという事だ。

 

「原作でもそうだけどなんで主人公達も聖女サマも皆、死ぬかもしれない場所にそう簡単に足を踏み込むかなぁ……。」

 

まぁ、忘れてた時点で俺もなんだかんだ同類なのかもしれない。けど勘弁してほしいよ……。でも、少なくとも助けにはいかないわけにもいかないし。

 

少なくとも俺はバットエンドよりもハッピーエンドが好きなんだ。そう言う事にしておこう。

 

「鬼にバレなきゃいい。それだけなら何とでもなるもんだ」

 

さぁ、コンティニューと行こうか。




感想、誤字報告を下さった方々誠にありがとうございます。

投稿が遅くなってスイマセンでした。(n回目)
去年の内に投稿するつもりはあったんだ!!( ゜ω゜)ウソジャナイヨ
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