糞のハンバーガーを積み上げてきた、俺になり切れなかった僕に向けて。

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追想と現在の狭間で

始まりは、ほんの些細なことだったのだと思う。

口論だとか、あるいは約束事を違えただとか。

未熟で視野の狭い子供らしい、それまでにも何度も繰り返していたような些細な喧嘩事。

 唯一それまでと違ったのは、互いに自分に理があるとして相手に一切の譲歩をしなかった事だろう。そして、一般的な価値観に則って、彼がそのリーダーシップを遺憾なく発揮して交友の輪を広げていた事と、孤立気味で独善的であった僕はそれを気にも留めていなかった事だろう。

 結果として、些細な喧嘩から始まったすれ違いは仲たがいを引き起こし、未熟で視野の狭い子供らしく、彼は親友だった僕を虐められるようになった。そして僕は親友の彼に虐められるようになった。

 

 

 その正確なことの顛末を僕は覚えていない、という言い方は正確ではない。

 彼が彼の’’新しい’’友人達と遊ぶ光景も、遅すぎた謝罪を当然のように拒否された瞬間も、仲たがいを起こした決定的な瞬間も、すべて鮮明に覚えている。記憶を手繰り寄せていけば、捨て切れない記憶を掘り返してみれば当時のことなどいくらでも思い起こすことができる筈だ。

 

 

 だから僕の脳みその内側に当時の光景が今現在存在していないのは、やはり僕自身がその過去に蓋をして、封をして、包み隠して、対峙しないように逃げ続けているからなのだろう。直視したくないだけなのだ。

やはり決定的に悪かったのは僕で、そして今の惨めで惨めでどうしようもない自分は今まで過ちを積み重ねてきた事の左証なのだから。

 

 

 

一度転んでしまえば、そのまま転がり落ちるのはすぐだった。

裏切られた様に感じてしまった、確かに己に非は存在していたのに。だから他者が怖くなった。だから信頼ができなくなった。

見下されるのが怖かった。だから勉強をした。だから他者と遠ざかった。

評価されるのが怖くなった、僕のような人間が優秀なはずがないから。意地汚く騙しているような気持ちになってしまう。

 

だから儀礼的無関心を強く心がけるようになった。嫌われたくなかったから。近づかれたくなかったから。

だから責任を一人で背負うようになった。ほかに押し付ける人がいなかったから。

だから人としての規範を強く意識するようになった、良識的な人間であることがアイデンティティであるかのように振舞った。彼らのようにならないために、自分が嫌いな自分にならないために。外れてはならない道があると思えて仕方がない。

 

だから、人のことが嫌いになった。どれだけ忘れようとしても、無視しようとしても、過去の光景が脳にこびり付いて剝がせない。考えないようにしても、ふとした拍子に思い出してしまう。友達であった僕を虐めて楽しむ親友の彼の顔も、人が苦しむさまを見ながら笑ったふりをする傍観者どもの顔も、見て見ぬふりをした、加害者の味方をした大人の不完全さも。どれもこれも憎くて憎くてたまらない。どいつもこいつも、そこまで惨めな存在でいてまで人の輪の中で生きたいのか?

 

どこまで成長しても、前に進んだ気になったとしても、地獄からの開放感がどこまでも続いて俺を離さない。今に生きているはずなのに、どこまで進んでも過去に囚われたまま前を見ることができない。

 

だから、だから、だからだからなんでだからだからどうしようもなくてだから嫌いでやはりそうやってだから、だから。

 

 

だから、僕は僕が好きだ。

過ちに過ちを重ね、後悔に後悔を重ねて今の自分が在るように思えてしまう。

どうしようもない僕だからこそ、習うべき他者の姿も、見下し唾棄すべき行為の数々も、強く目に留まるようになった。何が正しいのか、何が間違っているのかを強く意識できるようになった。もちろんそれ自体が一元的で独善的なモノの見方でしかないことも。

だから、間違いと後悔を糧に、思考を巡らせフィードバックを重ねることで育んできた価値観が、己が好きで好きでどうしようもない。

 

だから、僕は僕が嫌いだ。

正しい価値観を育んできたはずなのに、蒙昧で矮小で取るに足らない彼らとは違う筈なのに。自分が嫌いな自分にならないように、救いようのない愚か者にならないようにどこまでも離れて遠ざかって逃げて来た筈なのに、正しいことを何も為せない己が嫌いで嫌いで堪らない。

前に一歩進むごとに、己は己が嫌いな存在と何ら変わらず、成りたかった素敵な自分なんて理想と現実の間には奈落のように深くて、対岸が見えないほどはるかに大きい溝が据わっているらしい事を痛感してしまう。

俺は、僕の事を救えたはずなのに。

 

 つまるところ、端的に言ってしまえば俺は俺のことが好きで、それ故に、そこに至るまでのすべての過程とその結末が嫌いで、俺になり切れなかった僕のことが嫌いなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから、俺は俺のことが好きだよ。どれだけ糞みたいな経験をしても、自己愛に満ちた人生を送ってやる。それで初めて、ようやく俺は全ての俺を肯定できる気がするんだ。」

 

 




書き損じです。何かの拍子に消してしまうかもしれませんが、短いながらも初めてのちゃんとした文章を読んでもらいたくて推敲して投稿することにしました。
何か感想もらえると自信に繋がるのでうれしいです

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