ラモーヌさんとアルダンさんの姉妹の間に挟まれたメジロに転生してしまったお話 作:雅媛
ティアラ三冠を取ったので引退することにしました。
理由はいくつかあります。
一つは体の事です。生来の虚弱体質を幼いころからの体質改善でまともにしてきましたが、さすがにトレーニングがハードすぎたようで、体に若干ガタが来始めています。
まだケガまではいきませんが、長く続けない方がいいかなと勝手に判断し、引退することにしました。
「このトモとこのデカい胸で虚弱とか言っても全く信用できないんですけど」
「いいんちょー、胸に顔を埋めないで」
引退する話をチームのみんなは心配そうに聞いていましたが、シリアスは続かずやっぱり途中からわちゃわちゃし始めました。他人の太ももを枕にしたり、胸に顔を埋めないでほしいんだけどなぁ……
生活するだけなら全く問題はないですが、これからシニア級の人たちとG1でガチ勝負するならば、夏合宿のようなハードトレーニングは不可欠ですが、そんなことをしているとさすがにそろそろヤバそうなので、今のうちに引退を選んだ、というのが一つです。
まあ、すでにティアラ三冠もとりましたから実績も十分ですしね。
もう一つの理由はトレーナー業に専念しようかと思っていることです。
うちのチーム、人数増えましたし、理子ちゃん一人で管理するのは大変そうですからボクも本業に戻ろうかなと思っています。管理する相手が一人減って、仕事する者が2人に増えるんですから、かなり楽にはなるはずです。
先日ライトハローさんがどうにか未勝利戦に勝ちましたから、管理相手が一人増えていますしね……
あと専念する理由はもう一つありまして……
「姉さま~!!」
そういってボクにとびかかってきたのはメジロアルダン。ボクの妹です。
スパダリを探すと言って若い男性トレーナーと契約していたアルダンでしたが、ある日突然契約を解除してボクのところに転がり込んできました。詳細はあえて何も聞いていませんし調べてもいません。悪意解釈して思わずミンチにしてしまいたくないので…… 一応ルドルフには相談して置いたらしばらくしたらいなくなっていたので何かやらかしていたのかもしれません。
何にしろアルダンです。結局ボクのチームに乗り込んだ彼女の世話もありますから、自分のレースなんて出ている暇はないわけです。
しかし、アルダンの世代は何というか、層が厚いですね……
さすがに前世知識さんがうろ覚えになってきてても覚えてるようなメンバー多すぎなんですよ。
まず当然ながらヤバい筆頭芦毛の怪物オグリキャップちゃんですよ。走り見てて思いますがマジでやばいです。トレーナーも六平さんですから確かな実力ですし、根回ししてちゃんとクラシック登録させましたからクラシック路線に普通に出てきます。
アルダンのルームメイトのチヨノオーさんもかなりヤバいです。謎のことわざワンコオーなのは確かですが、中身はワンコどころか猛犬もびっくりですよ。競った時の闘志もすごいですし、純粋に実力も高いです。
あとはサッカーボーイさんも警戒するべき相手ではありますが、クラシック三冠は彼女には距離が長そうですから、どうにかはなると思いましょう。というか距離適性に不安がある相手でも油断ならないとなるともう勝負できませんし。
奈瀬トレーナーのところのスーパークリークさんもヤバそうです。晩成型に見えますから今のところはまだわかりませんが菊花賞とかの秋になればどうなるかわかりません。
他にもヤエノムテキさんとかもいますし。これ、本当にクラシック勝てるんですかね。ティアラ路線に今から行った方がいいんじゃないですかね。
そう思うボクに異議を唱えたのはボクの引退と共に戻ってきたラモーヌ姉さまでした。
「ライバルから逃げて確実に勝てるレースに勝つ意味はあると思う?」
「勝てればいいのでは?」
「マーリン、貴女ならばそういうでしょうね。でもアルダンは違うわ。あの子はライバルに勝ちたいの」
「なるほど」
なるほどと言いましたが正直ボクにはよくわかりません。どんなレースだって勝てばすごいですし賞金にも実績にもなります。だったら厳しいレースより同格の勝ちやすいレースを選んだ方がいいと思います。
とはいえこの辺りの感性は、アルダンは明らかにラモーヌ姉さま寄りなので、ラモーヌ姉さまの言うことが正しそうに思えます。
「アルダンは勝てなくてもクラシックに挑戦したい?」
「逃げて勝つよりは戦って前のめりに倒れたいです」
「おう、武士道」
そこまで言うならアルダンの言う通りにしましょう。
勝てないから将来が閉ざされるわけでもないですし。
姉さまやボクの実績のせいもありますから周りは騒ぐでしょうが、そのあたりはある程度は押さえますし、本人も覚悟の上でしょう。
さて、引退したら何をするか、も悩みますね。
トレーナー職を本格化してもいいですが、一応学生ですしあまりそっちに比重を置くのもなんですしねぇ……
生徒会のお仕事もありますし。
でも今まで頑張ってきたのだから好きなことやってもいいと思うんです。
そう、好きな事…… なんだろう?
「何がいいですかねぇ、マスター」
誰かに相談しようかと思いましたが、なかなかいい相手が思い浮かばず、結局カフェちゃんのお父さんであるマスターさんに聞くことにしました。なんかカフェのマスターとか、人生相談慣れてそうじゃないですか。
「好きなことでいいのでは」
「好きなことがわからなくて……」
「それなら今していることでいいのでは?」
今していること…… 紅茶を飲みながら優雅にアヤベちゃんを膝にのせて撫でまわしていることですかね。なんか悪者チックな絵面になっているような気がします。
こう、悪い組織のトップがソファに腰かけて、片手でワイングラスを持ちながら、片手で膝の上にいる猫を撫でているような。
いや、でも猫じゃなくて幼女ですからね…… ちょっとエッチな感じになってませんこれ? 何とか法に違反しないでしょうか。でも幼女に膝枕して撫でることでしか得られない栄養素もありますからしょうがないんですよ。だから多分セーフです。
しかし普段していることですか。なるほど、それなら……
「ネコカフェでもしますか」
「なんでそうなったの?」
「いや、カフェちゃんに猫耳付けたらかわいいだろうなって」
「うちの娘に変なこと教えないでください」
「あれはもともとだと思うけど……」
カフェちゃん、猫好きだし、猫と話せるみたいだし、本人も結構猫っぽいし、近所の猫会議に混ざっていても違和感ないんですよね。現在トレセン学園周辺ネコ会議の副議長だそうです。
猫系の小物とか服とか好きでいつもそういう系の服ばかり着てますし。
猫になったカフェちゃん、すなわちネコカフェなんですよ。
「……」
「いたっ、いたたたっ、アヤベちゃんフトモモつねらないで!!」
「お仕置きだからしょうがない」
「妹ちゃんもほっぺ引っ張らないでぇ!!!」
ネコカフェを力説していたらアヤベちゃんに怒られました。解せぬ。
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