【完結】人生舐めまくってたギャルが優しい陰キャくんにガチ恋しちゃう話   作:崖の上のジェントルメン

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last.汽車

 

 

ではみなさんは

 

そういうふうに川だと云われたり

 

乳の流れたあとだと云われたりしていた

 

このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……タタンタタン

 

タタンタタン……

 

 

気がつくとアタシは、汽車の中にいた。

 

古びた木造の椅子に座り、ゆらゆらと揺れる汽車の動きを感じていた。

 

窓の外には、今まで見たことないほどに……息を飲むほどに美しい星々が浮かんでいた。

 

白、黄、赤、青、緑……そんなたくさんの色が放たれていた。でも不思議なことに、決してその光は眩しくない。真っ直ぐに星が見られるくらいに、その光は優しかった。

 

(……あれ?)

 

ふと、窓ガラス越しに自分の姿が写っているのが見えた。それは、学生時代のアタシだった。

 

肌もツヤツヤで、髪も金髪に染めていた、あの当時の姿だった。

 

気になったアタシは、パッと自分の身体に目を向けた。顔だけじゃない。手も足も、若返っている。そして着ている服も、高校時代の制服だった。

 

「わあ!なんか懐かしい~!」

 

そう言って一人で盛り上がっていた時、アタシと対面して座っている人がいることに気がついた。

 

「…………………」

 

それは、ケンジだった。

 

ケンジもまた、高校時代の制服を着て、当時の姿に若返っていた。

 

「ケンジ……」

 

アタシがそう声をかけると、彼はにこっと顔を綻ばせた。

 

「……ケンジ、ケンジ……」

 

アタシは胸に湧いた気持ちが爆発して、席から立ち、目の前に座っているケンジの胸に飛び込んだ。

 

「ケンジ!やっと!やっと会えた!」

 

アタシはケンジの背中に腕を回して、力強く抱き締めた。ケンジもそれに合わせて、ぎゅっと抱き締めてくれた。

 

「会いたかった!会いたかったよ~!」

 

自分の気持ちの丈を叫ぶと、思わず涙声になってしまう。そんなアタシのことを気遣って、ケンジは背中をとん、とん、と優しく叩いてくれた。

 

 

 

……タタンタタン

 

タタンタタン……

 

 

 

アタシはケンジの隣に座った。窓際にいるアタシが、窓の外にある星を指さして、ケンジに向かって言った。

 

「星、めっちゃ綺麗だね、ケンジ」

 

ケンジはうんうんと、嬉しそうに頷いた。

 

本当に綺麗な星空……。このままずっと、ケンジと一緒に眺めていたいな。

 

「あかいめだまのさそり~♪ひろげた鷲のつばさ~♪」

 

上機嫌になってきたアタシは、窓枠に両肘を置いて、星めぐりの歌を歌い始めた。

 

「あおいめだまの小いぬ~♪ひかりのへびのとぐろ~♪」

 

ケンジママがケンジに歌っていた子守歌。そして、ケンジが薫や正に歌っていた子守歌。

 

「オリオンは高くうたい~♪つゆとしもとをおとす~♪」

 

そうして気持ちよく歌っていた時、アタシはあることに気がついた。その窓の外に浮かんでいるのは、星ではないことに。

 

「ん……?」

 

手前で光っている星らしきものに目を凝らして見ると、それは……日記帳だった。

 

その日記帳はふわふわと浮かんでいて、白い光を放っていた。

 

「あの日記帳……アタシが使ってたやつだ!」

 

そのことに気がついた瞬間、周りに見えている全部の光が、とある物から発光されていることが分かった。

 

ケンジと昔行った、プラネタリウムのチケット。

 

ケンジと一緒にやった花火。

 

正と薫が赤ちゃんの頃に乗っていたベビーカー。

 

「ねえケンジ!見てみて!」

 

アタシは興奮のあまり、声が大きくなった。

 

「ほら!見えてたのは星じゃなかった!光ってたのは、アタシたちの思い出だったんだ!」

 

そう、空にはアタシたちが今までの人生で使ってきた、たくさんの思い出の品が浮かんでいた。

 

それが光り輝いて、アタシたちを出迎えてくれていたんだ。

 

見れば見るほどに、その物ひとつひとつが懐かしい。

 

初デートで一緒に食べたガレット。

 

勉強する時にいつも使ってたシャーペン。

 

家族みんなで一緒に観ていたテレビ。

 

深雪がくれたスウェーデンのケーキ。

 

文化祭の時に使ってた劇の台本。

 

何年も履いていたスニーカー。

 

そして……結婚指輪。

 

「あっ!指輪だ!」

 

アタシは窓を開けて、その指輪を取るために手を伸ばした。すると指輪はひとりでにこっちへ動いてきて、アタシの手の平に音もなく置かれた。

 

ああ……薫がまだ小さい頃に、海岸で失くしたあの指輪が……またここに。

 

海で消えたものが、空から帰ってきた。

 

「ね、ケンジ」

 

アタシはこの指輪を、ケンジへと渡した。ケンジは最初、きょとんとした顔をしていたけど、アタシの意図を読み取ってくれたらしく、にっこりと目尻を下げて、静かに頷いた。

 

アタシはすっと、ケンジの前に左手を出した。その薬指に、ケンジはその指輪をはめてくれた。

 

「ありがとう、ケンジ」

 

アタシが感謝の言葉を告げると、ケンジはまた優しく笑ってくれた。

 

薬指につけられた、キラキラと輝くその指輪には、『Giovanni & Campanella』……ジョバンニとカムパネルラという文字が彫ってある。

 

その文字を見た時、アタシは茶目っ気のある言葉を口にしようとした。

 

──ジョバンニ、ボクたちはこれからもずっと一緒だよ。

 

それは、銀河鉄道の夜の台詞。ケンジが意識不明の時に目覚めた、あの台詞を言いたくなった。

 

「ねえ、ジョ……」

 

そうして、彼の顔を見ながら、その台詞を口にしようとしたけど……その途中で、言葉を終わらせた。

 

彼のことを見ていると、その台詞は違う気がしたからだ。

 

だって、アタシが愛したのは、ジョバンニじゃないんだもの。

 

「……ねえ、ケンジ。これからもずっと一緒だよ」

 

「…………………」

 

ケンジは、今まで以上にもっと……もっと素敵な笑顔で、こう答えてくれた。

 

「ああ、佳奈さん。僕たちはずっと一緒だ」

 

それを聞いたアタシも、にっこりと笑顔を返した。

 

 

 

そして、アタシたちは目を閉じて……静かに、キスをした。

 

 

 

それは優しい気持ちが胸いっぱいになるようなキスだった。お互いのあたたかい唇の感触が、今まさに、ここにいてくれている証明になった。

 

 

 

あかいめだまのさそり

ひろげた鷲のつばさ

 

 

 

遠くで、星めぐりの歌を歌う声が聞こえてくる。それは、知っている人が歌っているように聞こえたし、全く知らない誰かが歌っているようにも思えた。

 

 

 

あおいめだまの小いぬ

ひかりのへびのとぐろ

 

オリオンは高くうたい

つゆとしもとをおとす

 

 

 

アタシたちは、その汽車に乗って、どこまでもどこまでも、一緒に進んでいった。

 

真っ暗な闇の中を、アタシたちの思い出が光らせてくれていた。

 

それは夜空に浮かぶ星たちのように、アタシたちを明るく、包み込んでくれた。

 

 

 

 

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

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