最近、ヒロアカのアニメを読み返し…見返し? 始めた、やっぱり面白い、あの時のジャンプが懐かしい。
それはきっと、あまりにも唐突な出会いだった。
偶然出会って偶然声を掛けた…困っていそうだったから、悩んでいそうだったから、特に何も考えずに声を掛けた…たったそれだけだった。
それがどうしてこのようなことになっているのか虎杖には分からない…ただ、何かとんでもない地雷を踏みつけたような気がしてならないと、そう感じた。
抑えようとしても抑えきれなかった喜悦の感情、きっと意図せずして飛び出た感情のままに話しかけたのであろう呪いの王と呼ばれた男…それが、今までに見たことがないくらいその口を吊り上げて、一人の子供に話しかけた。
今まで話すことなんてなかったが故にそれが異常な対応であることが虎杖にも分かった…けど、突然だったからそれに即時対応なんて出来なくて…気づいた時にはもう、始まっていた。
「………えっと……どちら様?」
困惑した様子で口を開く葛城廻と名乗った少年、虎杖の頬へと現れた口だけお化けとも呼ぶべき存在を前にしたという現状の前ではあまりに当たり前の反応を取った彼に、呪いの王はその口を更に吊り上げる。
「どちら様…か……ケヒヒッ、そうか、その様子では俺のことは覚えていないか…残念だ」
開かれた口から出てくる言葉、その通りには捉えられない程に上機嫌な様子で喋る宿儺、今まで誰に対しても何に対しても向けることの無かった感情を初対面の子供に向けている…それは、やはりあまりにも異常に過ぎた。
困惑しているのは虎杖も同じだった…いや、何方かと言うと混乱と言う方が正しいのかもしれない…だから、宿儺の口振りへの違和感に気がつけなかったのかもしれない。
「そうだな…ひとまず名乗るならば…宿儺だ、少なくとも周囲の人間は俺のことをそう呼ぶ」
呪いの王の口は止まらない、喜悦を惜しみなく吐き出していく、簡単な自己紹介という呪いの王の口から出たとは思えない当たり前の単語の羅列はきっと見る者が見れば卒倒することだろう。
「さいですか…俺、葛城廻って言います…さっきも聞いてたと思うけど、同じく宜しくです」
そう言ってぺこりと頭を下げる廻、俺に比べて随分礼儀正しい態度を取るなとふとしたように考えた虎杖の耳に殊更宿儺の笑い声が響いてくる、まるで可笑しなものを見たとでも言いたげな純粋な悪意の困らぬその声に廻と虎杖は困惑を面に出した。
「…俺、なんか変なこと言いましたかね? 」
「…あぁ、そういうわけではない、勘違いさせたのなら謝ろう…だが…───」
───律儀だなと…そう思ってしまってな?
くつくつと笑いを漏らす呪いの王、素性を知らぬ廻も素性をある程度知っている虎杖も、その意図を読めず笑い転げるように声を張り上げていく呪いの王へと困惑の視線を向けた。
虎杖と廻の視線が合う…何で笑ってるのこの人? とでも言いたげな廻の視線に虎杖は分からない…とでも言うような目線を返した…何方も似たようなことをしている辺り、ひょっとしたら似ているのかもしれない。
そんな二人を差し置いて、くつくつと笑みを溢す呪いの王は過去を思い出していた…忘れもしない、忘れることなど許さない、あの甘美な過去の始まりを、その男との出会いを。
『───どうも始めまして宿儺さん、禪院家の廻って言います……出会って早々何ですけど、食べます?』
何時だったか、何処だったか、どんな状況だったのか…その男に纏わる全てを宿儺は覚えていた。
やってきた都のド真ん中で、人っ子一人居ないその中で唯一存在していた一人の男、何処ぞの店の椅子に腰掛けながらもぐもぐと何かを食べながら話しかけてきたその男の姿を。
戦いに来たのは分かっていた…人っ子一人居ない状況下で投入された人材、それは即ち自らを屠る為にやってきた術師以外に他ならない…それ以外には考えられなかった。
それなのに向けられる気配や視線には殺意のさの字もない、差し出してきた自分が食していたものと同じ何か…餅にも見えるそれを笑みを浮かべながら渡そうとしてくるその男に、最初の己は一体何を考えていたのか。
馬鹿か何かだと思ったのか、それ以外の何かだったのか…困惑していたことは覚えている、というよりあの感情に言葉を付けられないというのが宿儺の答えだったのだが。
そして…被るのだ、その姿と行動があの日の宿敵の姿とどうしても被る、同一人物なのだからそれは当たり前と言ってしまえばそれまでだが…それはそれとしてあまりにも被ってしまうのだ…思わず、脇目も振らずに続きをしてしまいたくなるほどに。
だから溢れる、抑えようのない感情の波が次から次へと零れ落ちていく…こんな様子ではあるが、両面宿儺とて分別を弁えているのだ、抑えているのだ…それでも尚、乾き疼いてたまらないその感情の奥底、自らの本音。
───
結局のところ、それが今の宿儺にとっての全てなのだ、それだけが宿儺にとっての生きる理由と成り得るのだ…最早、それ以外はどうでもいい。
今は覚えていないだろう、自分相手にどちら様と聞いてくる時点でそれは確定だ…しかし仕方がない、生まれ変わり等と言う非現実的な状況に直面したのだ、記憶の欠落など当たり前のことであろう。
記憶の欠落が身体のキレや呪力操作の乱れの原因に繋がっているのだとすれば、それは寧ろ納得するに足るだけの理由となる…つまり、ブランクや腕が落ちたなどの理由ではないということだ…宿儺からしてみれば、それは安心に足る理由でもあった。
そうして、宿儺が自らの思考の内に浸っている間にどうにも道案内は進んでいたらしい…当然だ、言っていないだけで道案内自体は続いていたのだから。
廻のお礼の声が聞こえる、虎杖へと向けられる純粋な感謝の言葉、本当にありがとうございましたと言いながら駅へと駆け出していく廻を虎杖は手を振って見送ろうとしていた…宿儺もまた、その姿を見送ろうと視線を向けた…その瞬間のことだった。
───いや、待て。
ふと、宿儺の脳内に浮かび上がった存在する記憶…つい先程まで交わしていた虎杖と廻の会話の内容が宿儺の脳裏を巡った。
───いやぁ、信じてもらえないかもしれないけど、実は神隠し? みたいなのにあっちゃいまして
───変な町でね? なんか幽霊みたいなのがずっと追いかけてくんの…で、その時にスマホぶっ壊されちゃって…仕方がないからなけなしの小遣いで地図買ったんたけど…まぁ、現在こうして迷ってちゃってるってわけでして…へへっ…。
何処か照れくさそうにそう言ってのけた廻…特に神隠しや幽霊の部分で虎杖が過剰に反応していたが…そこは今は置いておく、重要な話ではあるが今この場では関係が無い。
問題だったのは…スマホが壊れていることとなけなしの財布で地図を買ったという言葉だった…スマホが壊れているということは地理を調べることが出来ず、ついでに言うと電子キャッシャま使えないことを意味する。
そしてその地理を確認する為に廻は地図を買った、何をするにしても何処に何があるのか分かっていなければどうにもならないからだ…そして、そのために廻はなけなしの小遣いを使ったと言っていた…つまり───
「───おい、小僧」
「───なんだよ」
宿儺の唐突な呼びかけに虎杖は嫌そうに返事を返した…お前と話すのがとても嫌だと露骨な態度と声色で以て自分へと言葉を返した虎杖に、宿儺は特に反応することもなく思いついたその疑問を自らの器へと吐き出した。
「───アイツ、帰りの為の運賃はあるのか?」
「───……あっ…」
その言葉に虎杖も思い出したのだろう、葛城廻という少年がなけなしの小遣いで地図を買っていたことを…とどのつまり、最早その財布の中身が空っぽに等しいことを。
その数分後のことである…何処か顔を赤くし、若干涙目になって帰ってきた廻は、虎杖の元に帰ってくるなり土下座を敢行し…告げた。
「───お金を…貸してください」
それは、あまりに切実な言葉だった。
虎杖
この後、普通に金を貸した…後に廻が言っていたことを伊地知さんに話したら卒倒された。
廻に興奮してたという理由で、宿儺がショタコンなのではないかと微妙に疑っている。
宿儺
マーキングした、ある程度大雑把ではあるが何処にいるかは大体把握できる、もう逃がさん。