そろそろ書いてないと呪術を忘れそうなので書いた、ヒロアカの方をちまちま書いてたらなんか展開が明後日の方向に行きそうだっからその整理も兼ねた。
みーんみーん…と、蝉の鳴き声が響いていた。
照りつける日差しに雲一つ無い青い空、時期が進んで余計に暑さが増して行っているように感じる今日この頃の夏日真っ盛りの中で、伏黒恵は流れ出る大量の汗を拭いながら自販機の前に立っていた。
ガタンと音を立てて落ちてくるペットボトル、目に掛かる汗を鬱陶しく思いながら身体を屈ませて中身を取り、キャップを空けてその中身を喉の奥へと流し込む。
ゴキュリ、ゴキュリと、大きな音を立てて伏黒の身体へと染み込んでいくスポーツ飲水、生き返るような心地を覚えながら伏黒は一息を付くようにぷはー…っと、大きく息を吐き出した。
あの日…少年院での虎杖死亡からの約一ヶ月弱の間、伏黒は薫によってみっちり扱かれていた。
まず基礎が成っていないと身体を鍛えることが始まり、続けて近接戦が成っていないと殴られるところで中間へと至り、最後には術式の使い方が赤ん坊と優しげな口調で送られる罵倒と共に術式に関しての訓練と駄目出しを繰り返される日々…伏黒はそんな日々を約一ヶ月弱もの間続けていた。
毎日毎日、汗水垂らして筋肉が痛くなるまで足を動かし、腕を動かし手を動かし、最後に脳を動かして一日を終える…最初の内は立つことすら出来ずに地べたを這いずり回っていたが、今は多少慣れてきているというのが現状である。
文句があるわけではない、あの日の無力感を超える為に必要なことなのだから文句などあるわけが無い、それが必要なことなのであると伏黒は理解している。
…ただ一つ、強いて言うことがあるとするのならば…誰と比べているのか良く分からないその術式評価を止めて欲しいと言う事くらいであろうか…時たま、五条と比べられているような気がしてならないのである。
くぴりくぴりと喉に奥へと流し込む、身体が内から冷えていく感覚と水分が入っていく感覚を味わいながら伏黒は手で汗を拭った…そんな時だっただろう、その視線がふと横へと向いたのは。
何となし何となく、急に思いついたように横へと流れた視線のその先、何かを感じ取ったように向けられたその向こう側に二つの人影が存在していた。
一つは大男、その服の外側からでも分かる程に鍛え抜かれた筋肉隆々の身体を晒した正しくゴリラと呼ぶに相応しい体躯を持った男。
もう一人は女…ノースリーブの恐らく改造制服であろうそれを着こなした美人系の女性…何処か親しげな笑みと共に自身へと視線を投げるその女へと、伏黒は口を開いた。
「…なんでこっちいるんですか、禪院先輩」
静かな問いかけだった、半歩下がるような立ち姿で何故にやってきたと言う意思も含めての問いかけ、歓迎しているか歓迎していないかで歓迎していないだろう部類に当たるその態度にクスリと笑いながら女…禪院真衣は口を開いた。
「別に? 少し気になったから来ただけ…同級生が死んだんでしょ?」
さも当たり前のように放たれるその言葉、連想されるのは虎杖の死とその現場、思い起こされる自身の無力と怪物の失望の表情…それが一気に伏黒の脳内を巡り、刃のように伏黒恵の心へと突き刺さる。
ギリッと歯を噛み締める、無意識のことだった…自覚無しに強く噛み締められる歯、ギリギリと音を鳴らすその様子に真衣は浮かべていたその笑みを引っ込めた…この場にそぐわないと判断してのことだった。
「そう、やっぱり気にしてるの…ごめんなさいね、思い出させて」
淡々と、粛々と真衣は謝罪を述べた…その表情に色は無い、申し訳ないことをしたというような表情を浮かべていない…ただ、それがそのまま何とも思っていないという訳ではないことを伏黒は知っている。
別にいいですよと同じように伏黒は色を乗せずにそう答えた…それが彼女なりのやり方なのだと知っていたから、伏黒また同じように返した。
…静かになった、静寂が場を支配した…蝉の音だけが静かに響くその中で止まった二人の会話に応じて辺りの空気が冷めていくような気がした…そんな空気を引き裂くように、男こと東堂葵が言葉を放つ。
「───お前が乙骨の代打の一人か」
まずは小手調べ、そう言わんばかりの短い言葉、この先聞きたいことがあるのですと露骨に言いたげな含みを持たせながら前へと出た東堂はその手に持った上着を放り投げながら、相も変わらずの唐突さで以てその何時もの言葉を吐き出していく。
「───どんな女がタイプだ?」
「───…はっ?」
間の抜けた声が思わず出た…東堂の突然過ぎる問いかけに伏黒の頭に?マークが浮かび上がる、何を言ってるんだこいつはと言わんばかりのその表情に更に畳み掛けるように東堂が言葉を重ねる。
「『京都校三年』東堂葵…そういうお前は伏黒恵…さぁ、これで知らぬ仲でも無くなった…改めて聞く、どんな女がタイプだ?」
「なんなんですかアンタ…?」
若干引き気味に東堂を見る伏黒、本当に何を言ってるんだこいつは…と言いたげに表情を引きつらせる伏黒に真衣は頭に手をやった…まるでまただよ…とでも言いたげに。
ふんすっと鼻息を荒く吐き出す東堂、早くしろと眼力が催促していた、早く言えとその筋肉が催促していた…テカテカと日光に反射する筋肉の塊が嫌に眩しい、言わなかったらこれでお前をぶちのめすから夜露死苦ゥゥッ!! と騒いでいるようだった、意味が分からない。
何故に初対面の男に自分の女の趣味を話さなければならないというのか、何故に若干脅されているような状況なのか、何故にそうもズケズケと内心に踏み込んでこようとしているのか、そもそもこの女性がいる場で女の趣味を言えとかどういう拷問だとか…言いたいことは山程あった、実際普段の伏黒ならそう言っていた。
だがしかし、伏黒は疲れていた…ただでさえ最近は薫による本人曰くの優しい扱きという名の過酷な訓練が続いていたのだ…しかもよりにもよってそこに理解しがたい頭おかしい筋肉ゴリラがやってきたときた…外側からは分からないかもしれないが、伏黒の思考回路はそれなりに混乱していた。
今も目の前で、因みに俺の女の趣味はタッパとケツのデカい女です…とかなんとか言いながら上半身裸になってその筋肉を見せびらかしている、警察から見たらセクハラである、変態である、即刻投げて拘束して連行の三連コンボが成立してしまうようなことをしているのである。
真衣によるトラウマ染みた一ヶ月前の出来事のフラッシュバック、薫との訓練による思考と肉体の疲れ、更にそこに畳み掛けるようにやってきた東堂葵というゴリラもとい筋肉ダルマによる意味不明な言葉の数々と筋肉による脅し…薫との戦闘訓練によって若干思考が物騒な方向へと進んでいた伏黒の思考は、普段の彼ならばまずすることはないだろう選択肢を提示し、そしてそれを選択させるに至る。
「───『鵺』」
印を組んでのその言葉、何処かダルそうな声色と共に放たれた言葉の意味を知る真衣が酷く驚いたような表情を伏黒へと向けた…その瞬間には、東堂の身体は風を切るような音と共に外側へと投げ出さけれていた。
視界の真横を通り過ぎる疾風の感覚…電流散らしながら、奇声を放ちながら生成と共に飛び出た鵺はその速度に任せて東堂の身体を外へと押し出していく。
その一撃は東堂からしてみても不意打ち、直撃は避けたし防ぎましたがその勢いまでは殺し切れずに日差しの元へと放り出される…弾かれるように互いに距離を取った鵺と東堂は天と地へと分かたれた。
砂煙を上げて地面へと降り立つ東堂、紫電を鳴らしながら空を舞い、奇声を放ちながら威嚇の様相を見せる鵺…そんな中で、伏黒は何処か重厚な気配を纏いながら足音を響かせながら歩いて来る。
「俺の女の趣味は、そのまま好きな人のことなんですよ…いや、好きな人がそのまま女の趣味って言い換えましょうか」
何処か圧を感じさせながら迫る伏黒、パンパンッと身体についた砂簿を払いながら伏黒へと笑いながら目を向ける東堂へと、伏黒は独り言のように言葉を続ける。
「俺に好みのタイプはありません、強いて言うなら好きになった人がそのまま俺の好みです…だから───」
鵺が伏黒の側へと翼を広げて舞い降りる、印を組んだ伏黒の影から溢れ出す大きな影、形を持ち徐々にその姿を凶悪なソレへと変えていくその最中に、伏黒はその目を据わらせながらその言葉を吐き出す。
「───俺の好きな人知りたきゃ力尽くで聞き出せ、デリカシー皆無の筋肉ダルマがッ…!」
「───上等ッ!!」
最早喧嘩の売り買いに近いそのやり取り、疲れていた中での東堂とのやり取りに寄って機嫌を悪くした伏黒とそんな伏黒に面白さを感じてしまった東堂…そんな二人の姿に、真衣は頭を抱えた。
「───何がどうしてそうなるのよ…!?」
そんな、何処か苦労している人間特有の気苦労的な気配を醸し出しながら放たれたその言葉と同時に、爆音は鳴り響いた。
真衣ちゃん
今作IF話に於ける苦労人、扇おじいちゃんがマトモだった影響で若干マイルド、自分で望んで高専に入学した。
同級生が死んだことで引きずり過ぎていないかと伏黒を気にしてやってきた、引きずってはいるけど引きずり過ぎてはいなさそうだから若干安心してた…けど、東堂が全部台無しにした。
東堂
伏黒に不意打ち食らわされたゴリラ、好きな人=女の趣味と聞いて簡単に話したくないという気持ちを汲んだ。
伏黒
薫に無茶苦茶扱かれた影響で若干思考が物騒になっている、父親との関係はそこまで悪くないし生活にも困ってない、姉への見舞いは基本一緒に行く。