この前、弟のパピルスがすごい落ち込んでたんだ。
だからオイラは仕事が忙しい中、肌は無いけど一肌脱いで元気を出させようと、頑張ったんだ。
ただ、何事にも理由はあるよな?
どうしてパピルスが落ち込んでたと思う?
パラパラ雨が降っている。そこまで強くもなく、だからといって無視できるほど弱い雨でもない、そんな雨がウォーターフェルに降っていた。
ウォーターフェルというのは、魔法のクリスタル*1やエコーフラワー*2という花が有名な地下世界の場所だ。
そんなウォーターフェルには、地下だと言うのに何故か雨が降る場所がある。
どうして地下世界で雨が降るのか理由を書くと、この小説が十五万文字以上になってしまうので割愛させていただく。そこを二体…二人?どっちだろ…まあとにかく、二人のスケルトンが歩いていた。
「ハア…兄ちゃん、これどこに向かってるの?」
「ステキな場所」
一人のスケルトンはパピルスという名前であり、顔を俯かせている。
もう一人のスケルトンはサンズという名前で、傘を差しながら歩いていた。
2人は兄弟であり、一緒にいる時はすごくうるさいのだが、どうやらあんまり会話が弾んでいないようだった。
「ステキな場所ってどんな場所?」
「そうだな、景色が綺麗でな…きっとパピルスも気に入るよ」
サンズが答えると、また会話が止まった。パピルスはそんなサンズに何か言おうとしたが、言葉が出なかった。
静かで重たい空気が辺りに満ちた。そんな空気はゆっくり、深く二人の背中にのしかかった。
「……なあ、パピルス」
重たい空気に耐えられないのか、サンズがパピルスに話しかけた。
「こんなに雨が降ってるのに、なんで傘を刺さないんだ?」
「兄ちゃんが最後の1本を持ってったからでしょ!!」
パピルスは声を荒げた。ここで言う最後の1本とは、ウォーターフェルに置いてある、おひとつどうぞの傘*3である。
「あー…ごめん、目が節穴だったみたいだ、骨だけに」
「さむっ!!」
へへっとサンズが笑う。パピルスも寒いとは言っているが、口元がにやけていた。いつも通りの空気感が戻ってきたようだ。
「まったく…どうして俺様は雨に降られながら、兄ちゃんのギャグを聞かされなければならんのだ」
「まあまあ、雨はきっとパピルスの事を励ましてるんだよ、オイラのギャグと同じで」
「雨に降られたのと寒いギャグで落ち込んでるのに?」
パピルスは何を言ってるんだこいつはというような目でサンズを見た。
「まあ、そんなことはどうでもいいよ」
それより、とサンズは続ける。
「なんか悩み事があるんじゃないか?」
「雨が体にあたってサムい」
「違う、そういうことじゃない」
サンズは一呼吸置いて言った。
「まだ、引きずってるんだな」
「…」
パピルスは何も言わない、サンズはパピルスの顔を見ずに話を続けた。
「いつもよりも元気がなくてさ、朝に声をかけた時も空返事で返してきて、オイラのキレッキレなギャグにもあんまり反応しなかったよな」
「兄ちゃんのギャグはキレッキレじゃない」
「ふつーそこに反応するか?」
今度は逆にサンズがツッコミをした。
「まあ、とにかく誰がどう見てもなんかあったんだなってわかるぐらいの様子だったよな」
「…」
「確かにあれは…あの事件はオイラにとってもショックだったよ、今まで身近にあったものが突然なくなるんだから」
「…うん」
今までだんまりだったパピルスがついにサンズに反応した。
「けど、あー…そろそろ前を向くべきじゃないか?」
サンズはそう言って、立ち止まった。
「ほら、もう着いたぞ」
パピルスは顔を上げた。
「すごい…」
「な?結構いい場所だろ」
そう言って二人はまた黙った。景色を見て感慨に浸っているのかもしれないし、どうやって話しを切り出すか迷っているのかもしれなかった。
「なあ、パピルス」
「なに?」
「別にさ、無理やり気持ちを切り替えろって言うわけじゃない。何かを大切に思うっていう気持ちも大事なことだ」
「うん…」
「だけど、辛いことを乗り越えて、前を向くっていうのはもっと大切だと思うんだ」
「……うん!!」
パピルスは元気よく答えた。しっかりと前を向いて、ケツイで満たされたような表情になった。
そんなパピルスの様子を見て、サンズは満足そうに笑った。
「オイラってあんまりこういうキャラじゃないから自信なかったけど、元気になってくれてよかったよ」
「兄ちゃん!俺様は今すぐにパズルの調整をしなくちゃいけない!!だからスノーフルに帰るね!!ニャハハハハハ!!!」
そう言ったパピルスは、スノーフルとは逆方向に走っていった。
「本当に良かったな…昨日今日はすごく元気がなかったから」
でもまさか、とサンズは付け加えて、
「ペットの岩が割れたせいであそこまで落ち込むとは…」
サンズは疲れたように笑った。
まあ、いい思い出になったからいいかな