もしもMyGoのそよが百合営業カフェでバイトを始めたら   作:りょーへい

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*前書き*

純加に対する呼び方ですが。
そよ→純加先輩
果乃子→純加さん
でやっています。
しかし自分のミスで、そよの呼び方がブレてるところがあったので改めて注意書きしました。


21. 孤独に被害者ぶるお嬢さん(雨宮果乃子)

 

 

 ()()()()()と帰りが一緒じゃなく。

 ()()()()と一緒にいるわけでもない。

 こんな帰り道は、夏にひめちゃんがリーベに来なくなったとき以来だった。

 

(今日は最悪だった。あの人を避けようとして、ひめちゃんから遠ざけることができなかったし。しかもひめちゃんを置いて、あんな強引に一人で帰っちゃって……)

 

 それもこれも、突然入ってきたあの人のせいだ。

 典型的ないい子を、何かのために演じてるらしい人。

 人と仲良くなろうとしている裏で何考えているか分かったもんじゃない、あの人。

 

 初めて顔を合わせたときは()()()いい子なんだと思った。

 それだけでもあまりいけ好かないけど、最近になってひめちゃんのような外面の上手さがあることに気づいた。

 ひめちゃんを隣でずっと見てきた私には分かる。あの人は絶対に裏表のある人だ。

 そんな人が意図していい子を演じてるだけなら、関わらなければいいから問題ではなかった。

 純加さんが初日から事あるごとに構ってばっかりなのも、いちいち気になるけど流せなくはない。

 矢野さんとの仲なんてどうでもいい。

 

(あんなに怒っていたひめちゃんまで絆されるなんて……。ひめちゃんに強引に関わって干渉してきた時点で、もうあの人は私の敵だ)

 

 いい子の仮面を張り付けた、目的の見えない外面使いがひめちゃんに近寄るなんて言語道断。

 私があの人からひめちゃんを守らなきゃって、そう思っていたのに。

 営業前は結局、あの人を見るなり1人でトイレに逃げてしまった。

 あの人に仲良さげに話しかけるひめちゃんを見て、疎外感についその場から離れたくなったんだ。

 

 その後もバックヤードに帰りづらくて、心を落ち着かせるためにも1人でサロンの掃除を始めたけど。

 結論から言うと、心に平穏をもたらすような時間にはなってくれなかった。

 

 最初に矢野さんがサロンに来た。

 向こうの手伝うという申し出を面倒としか思わず、断って他の仕事をするよう事務的に最低限の言葉で言いくるめる。

 

 次に純加さんが来た。

 正直この時の苛立ちはさっきの矢野さん以上だった。

 

「めずらしーねー、果乃子ちゃんが1人でサロンの掃除してるの。あたしも——」

「要りません」

 

 予想通り手伝おうとしてきて、反射的に遮断する。

 

「……いつもより頑なだなー。もしかして、また何かあった?」

 

「……ありません」

 

 このタイミングで、それも純加さんに悩みを聞いてもらおうなんてこれっぽっちも思わない。

 思わないはずなのに、さっきみたいに即答できない何かがあった。

 

「……そっか。じゃ掃除よろしくねー!」

 

 ここからもしつこく絡んでくるんだろうな、という予想に反して純加さんはあっさり引いた。

 一度も純加さんの方を見ずに掃除してたから、どんな顔していたのかも分からなかった。

 

(まぁ今はご執心の人がいるみたいだし、私のことなんてどうでもいいのか)

 

 あっさり引いてくれるなら面倒がなくていいはずなのに、何故か気に入らないものがある。

 余計にイライラしながら掃除してるとひめちゃんも来てくれた。

 けどその頃には掃除は終盤で手伝ってもらう間でもないから、と私は優しく伝えて断ってしまう。

 ほんの少し、私の予想を裏切ってあの人と仲良くなったひめちゃんから距離を置こうとしたところも、無意識にあったかもしれない。

 今思うと、終わり際だろうが拒否する必要までなかったのだから。

 

 断って断って断って。

 断るだけでも、こうも続くと流石にストレスがたまる。

 そのイライラと、ひめちゃんの申し出まで断ってしまった罪悪感を、最後に手伝いに来たあの人にぶつけた。

 どうせ相容れないのだからと、遠慮なく。

 この先変につきまとわれないよう明確に態度を示しておくのも悪くないか、という考えもあった。

 それで私の中ではあの人と、明確に敵対関係になった。

 

 だからなのか。営業終わりにバックヤードであの人と、ひめちゃんを含むみんなが楽しそうに話してる状況に。

 更衣室で着替えていた私は、一際強い疎外感に襲われた。

 その輪に加われないことに耐えられなくて、1秒でも早く話し声が聞こえないところへ離れたかった私は。

 ひめちゃんを置いていってまで、今こうして1人寂しく帰るはめになっていたのだ。

 

 

 

 いつものバスに1人寂しく揺られる中、悪夢のような1日を振り返り終わる。

 気づけば私は、リーベで居場所を失ったみたいに居づらくなっているらしい。

 その事実に私は納得できなかった。

 

(こんなのおかしい。ちょっと前、朗読劇まではひめちゃんとの仲も元に戻って、純加さんとだって……)

 

 ほんの1,2週間前くらい前。

 私は悩んでいたことにも答えを出せて、大切な人たちとも前より良い関係になれた。

 そうして悩みを乗り越えたことで、私自身も前に進めている気になって。

 これから全てが上手くいってる日常を送れると、思っていたのに。

 

 それが、あの人が来てから壊れ始めた。

 ひめちゃんもあんな人と仲良くなって、純加さんなんて最初からずっと味方してて。

 なのに私はあの人と仲良くなんてできないから、どうしても一緒に居づらい。

 

 この先も、こんな日々が続くんだろうか。

 あの人を避けるために、リーベで1人っきりになる日々が。

 せっかく掴んだ日常が遠のいていくように感じて、俯きがちな顔を上げる気力も湧かなかった。

 

(私は……どうしたら……)

 

 

 

 誰にも頼れず、自分がどうしたいかも考えられず。

 女の子は独りで抱え込むことしかできなかった。

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