もしもMyGoのそよが百合営業カフェでバイトを始めたら   作:りょーへい

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23. 似合わないお節介

 

 

 ~~そよと陽芽との会話から時は少し遡り、そよがリーベに着く前のバックヤード~~

 

「ひめちゃん、2人でサロンの掃除しない?」

 

 私は普段ならこんなこと言わないのに、珍しくひめちゃんを仕事に誘った。

 昨日みたいにならないよう、あの人がまだリーベに来てない内にひめちゃんと2人になろうと画策しての発言だった。

 

 でも、ひめちゃんは私の誘いを断ってきた。

 面倒だからとか気が向かないからなら、まだよかったのに。

 

「果乃子、今日は夏八木さんと私で掃除するよ」

「…………」

 

 よりにもよって、私からの誘いを断ってまであの人を選んだことがショック過ぎて。

 返事もできないくらい固まってしまった。

 

 これだけでも相当気分が悪いのに、更に私を追い打ちするように矢野さんが言ってくる。

 わざわざひめちゃんの前で。

 

「間宮さん。ゴミ出すの手伝ってくれないかしら」

(なんで私があなたとそんなことしなきゃいけないの!?)

 

 反射的に口から飛び出そうになった怒りを、ひめちゃんの手前なんとか飲み込む。

 1人だけ何もしようとしないのも体裁が悪いので、せめて1人でやろうと向こうの求めに抵抗する。

 

 

「……私1人でやっておきます」

「話したいこともあったの」

「……」

「果乃子……」

「……分かりましたよ」

 

 渋々従う。心配そうに声をかけてくれるひめちゃんの前で強引に振り払えなかった。

 

 相手がどういうつもりかなんて関係ない。

 当然自分からは何も話し掛けず、できる限り早く終わらせようと急ぐ。

 でも向こうは話したいと言っていたのだから、このまま終わるはずがなかった。

 

「そよさんのことが嫌いなの?」

 

 屋外にある非常階段下のゴミ置き場で矢野さんがそう切り出してきた。

 さっきのバックヤードでもそうだったけど、こうもらしくない行動が連続すると流石に無関心を貫けなかった。

 

(私と仕事しようとする時点でおかしいけど、それ以上に人の関係に首を突っ込むのはいくらなんでも変すぎる。絶対向いてない真似なのは自覚してるはずなのに……)

 

 今日のこの人は何から何まで不自然だった。

 何が彼女をそうさせてるかまだ分からないけど、仕方なく付き合うしかない。

 バックヤードでのやりとりを思い出せば、ひめちゃんも関係していることは明らかだから。

 完全無視は回り回ってひめちゃんに嫌われる。

 

「急に何ですか?」

「昨日間宮さんの様子が変だったからよ。特にそよさんがいるところで」

「別に普通です。あの人への態度だって、あなたに()()()のと()()()変わりませんよね?」

 

 そう言うと矢野さんがポカンとした顔でこっちを見てきた。

 黙ってくれた方が好都合なのだけど、妙なタイミングで黙られると訳が分からなくて気持ち悪い。

 ついに私は沈黙に耐えられず「何ですか」と問い、矢野さんは苦笑いしてようやく話を続けた。

 

「いえ、自覚がないみたいだから流すけど。ともかく同じ職場で働く仲間である以上、最低限気を遣ってあげるべきよ。しかも私たちは同学年でも先輩なのだから」

「……仕事に支障をきたしてるわけでもないのに」

「それは確かにそうね。サロンでは何も問題になってないわ」

「ならいいでしょう」

「そよさんは私とも、陽芽とだって仲良くなってきてるわ」

「……」

「昨日だって純加さんも加えて4人で話すぐらいリーベに溶け込んできてる。これからそんなことがある度に、あなた1人だけ輪から外れるのは嫌なんじゃないかと思ったの」

 

 ひめちゃんの名前を出したときは本気で苛ついたけど、私の急所として利用したわけでもなさそうでこの人の意図が分からなくなる。

 とりあえず、どういうつもりなのか確認しにかかる。

 

「あの人のために仲良くしろって言いたいんですか」

「そよさんのため、と言うより。あなたが孤立しないように、と思ったのよ」

 

 私の苛つく予想は外れていたけど、それよりもっと腹立たしい回答をされるとは思っていなかった。

 何が私が孤立しないように、だ。

 どうせあなただって大して友達もいなさそうなくせして偉そうに……。

 いや、そんな境遇とかこの人には関係ないのか。

 黙っていれば落ち着いていて思慮深いように見えてもその実、後先考えなしの言動ばかりなのがこの人だ。

 今だってどうせ、碌に考えずに突っ込んできてるだけなんだろう。

 

(——あぁ、そうだった。矢野さんはこういう人だった。ほんと……!)

 

「……大きなお世話です!」

 

 心から思ったことを思いっきりぶつける。

 最後のゴミ袋をゴミ箱に放り込んで、早足で矢野さんから離れた。

 一目散に階段を駆け上がったけど、話は終わったのか追って来る気配はない。

 無事逃げれたことに安堵した後、好き放題言われた怒りを蒸し返す。

 

(……あんな人を気遣え? なんであなたにそんなこと言われなきゃいけないの。ふざけないでよ……!)

 

 私は湧き上がる怒りに身を任せる。

 そうしていると、最後に矢野さんから言われたセリフを忘れることができそうだったから。

 

 

 

 

 

「で、そっちはどうだった?」

「まぁ予想通りよ。折れるつもりはなさそうね」

「私もできるだけのことしたつもりだけど、やっぱダメそうな感じするんだよね……」

 

「ふぅ……」

「はぁ……」

 

「でも簡単にあきらめるわけにもいかないわ。バースデーイベントの頃と、ブルーメの決まりを言われたからには……」

「まぁ、ね。あの時のこと言われちゃうと……今がまさに償うのにいい機会だしね。それに、やっぱり果乃子が心配だし……」

「昨日の営業終わりに言ってたわね。間宮さんがまたおかしい気がするって」

「あのときはまだ分からなかったけど、やっぱり夏八木さん絡みだと思うんだ」

「そう……なら、ますます折れるわけにはいかないわね」

 

 会話が途切れ、沈黙が流れる。

 

「とりあえずさ、後で相手チェンジしてもっかい話してみよ?」

「そうね。もしかしたら心境の変化があるかもしれないし。でも話した感じ、相当頑なよ?」

「あの人だって、見た目ほど聞き分けがいいわけじゃないから。覚悟しといてよ?」

 

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