もしもMyGoのそよが百合営業カフェでバイトを始めたら 作:りょーへい
雨宮果乃子 VS 橘純加
橘「果乃子、どっちがお婆様か教えてくれるかしら?」
雨宮「どうでもいいですけど、そのババの呼び方やめませんか? ……こっちです」
橘「そう、なら逆を引かないとね……(ピラッ)あら、反対を引いたのに……」
雨宮「お姉……純加さんなら私を信じるって、信じただけです」
橘「嬉しいこと言ってくれるのね」
雨宮「……事実を言っただけです」
橘「それじゃ今度は私の番。こっちにお婆様がいるわ。さぁ、果乃子はどっちを引くのかしら?」
雨宮「こっちです」
橘「あら、なんで嘘を言ってないって分かったのかしら?」
雨宮「はぁ……お姉様はこの場面で、私に嘘をつきません」
橘「なるほど。どうやらあなたが相手じゃ敗北は避けられなかったみたいね。……ふふっ」
果乃子「……なんで負けたのに満足そうなんですか……まったく……」
そよ(……何見せつけてるんだろう。つまんないな)
そよ「はーい、それじゃシャッフルしちゃいますから次いきましょうね~」
橘純加 VS 白鷺陽芽
橘「一度、本気のあなたとぶつかってみたかったのよ」
白鷺「(……?)そうですか? でも私だって、負けませんから!」
橘「私もよ。特に、あなたにだけはね」
白鷺「え?」
橘「クスクス。勝負を盛り上げるための冗談よ」
果乃子(もう、純加さんってば……)
橘「それじゃこっちを引くこうかしら」
白鷺「あっそっちはお婆様ですよ?」ニッコリ
橘「あら、そう来るのね……そうだ。気づいていたかしら、白鷺さん」
白鷺「何にですか?」
橘「あなた、嘘をつくときの笑顔はいつもよりほんの少しだけ固いのよ?」
白鷺「……えー、そうですかー?」僅かに口角を上げる
橘「悪いわね、デタラメよ。でも今ので嘘をついてるのは分かったわ」ピラッ
白鷺「あっ……やられました。流石橘さんですね! でも次は私が勝ってみせます!」
純加「ありがとう。でも私こそ、簡単には譲れないわ。——他の勝負でもね」
果乃子「もういい加減にしてくだいっ! さっさと次やりますよ!」
そよ(果乃子ちゃんはなんであんなに顔赤くしてるんだろ? 陽芽ちゃんと親密そうな純加さんに怒ったのかな?)
美月「陽芽。思ったのだけど、あの場面でババかどうか自分から言うのはあまり意味なかったんじゃないかしら」
陽芽「うん。面白いかなってやってみたんだけど、意味ないってやってみて気づいた」
そよ「陽芽ちゃんらしいね~」
陽芽「あははっ♪ ……ところでそれ、どういう意味?」
美月「そういうところよ」
橘純加 VS 夏八木そよ
橘「思えばあなたも随分リーベに馴染んだわね」カードに指をかけながらガン見
夏八木「そ、そうですけど……それより、そんなに顔を見られなくてもいいんじゃ……」
橘「あら、これはあなたの顔を良く見るゲームなのよ? あなただって良く分かってるでしょう?」
夏八木「それはそうですけどっ……」トランプで顔を隠す
陽芽「あ、ズルイ! それはひきょーだぞー夏八木さん!」
美月「右に同じね。ここまで来てみんなしてこなかったことをするのは許されないわ」
そよ「ご、ゴメンゴメン。つい……」
そよ(何か恥ずかし過ぎて落ち着かないんだけど、でも……悪くないかも)
果乃子(何がどうなってつい、なんだか……別にいいけど)
純加(顔は一瞬隠されたけど、なんか今までより読みやすい? 私の読みが間違ってなければ……こっちかな)
そよ「あっ……(終わっちゃう……)」引かれそうなカードにグッと力を籠める
橘「……珍しく品性に欠ける振る舞いね。らしくないわよ、夏八木さん?」
夏八木「……失礼しましたわ。私としたことが……橘様との勝負に、つい熱くなり過ぎたみたいで……」
橘「そう。こちらとしては本気で相手してもらった実感があまりないのだけど?」
夏八木「き、気のせいですよ? 次こそは負けませんから♪」
果乃子「どうでもいいですけど、負けたらさっさと次の準備してくださいね」
そよ「(イラッ!)……ゴメンね~。すぐ次の勝負始めようね~」
夏八木そよ VS 雨宮果乃子
橘「ふふっ。果乃子、姉としてあなたの勝利を応援しているわ」
雨宮「……勝手にしてください」
夏八木「(ブチッ!)……お姉様がせっかく気にかけてくださってるのに、相変わらず素気ないのね。そんな調子だといつか本当に愛想尽かされてしまうわよ?」ピラッ
雨宮「(ムカッ!)…………これで愛想尽かされるならとっくの昔に姉妹解消されてますよ」ピラッ
夏八木「それだけ愛されてる自覚があるなら、なおのこと返してあげないと。……姉妹を持たない私からすると、あなた相当恵まれてるわよ?」ピラッ
雨宮「羨ましい、と言いたいんですか?」ピラッ
夏八木「……そうかもしれないわね」ピラッ
陽芽(あれ? この2人って、こんなにバチバチした仲だっけ? なんか怖いんだけど……)
純加(そよちゃんも挑発的だけど……果乃子ちゃんも、どうしてこう敵を作ろうとするかな……)
美月「白熱してるわね。2人がこんなに勝負に熱くなるとは思わなかったわ」
2人(この能天気さが羨ましい!)
雨宮「あぁ、姉妹が欲しいなら店長がサロンに復帰したら組めますね。店長もキャストとして1年生の設定がありますから」ピラッ
夏八木「そうなのね。それはそれで素敵だけど、個人的には姉より妹になってみたいの」ピラッ
雨宮「なら諦めるしかありませんね」ピラッ
夏八木「あっ、そぉだぁ! 乙女の心臓という小説で、妹が姉から離れて行く話があるじゃない? リーベではそんなことが起きなければいいわよね~、雨宮さん?」ピラッ
雨宮「…………」ピラッ
夏八木「ふふっ、冗談に決まってるじゃない。真に受けないで頂戴?」ピラッ
雨宮「……随分意地の悪い冗談を吐かれるのですね」
3人(この2人、いつまでババ引き続けてるんだろう……)
そよ(ふふっ、
雨宮「……あの話の結末について、私とは解釈が違うようですね」ピラッ
そよ「えっ?」
雨宮「エルナは……妹は、姉から離れて2人は終わったわけじゃありません。お互い違えたしまった関係を終らせて、新たに始めるために
そよ「……詭弁じゃない。あれは別れたまま終わる以外の何物でもない結末でしょ」ピラッ
雨宮「違います。そうなりたくないから、それまでを断ち切ったんです。例え離れ離れになって……2人の距離が変わってしまっても。
そよ「夢のある素敵な解釈するね。その分現実味が無くて一般的ではないかな」ピラッ
雨宮「俗世の物差しなんて知りません。
そよ(……ッ! これ以上馬鹿げた妄言に付き合ってられない!)
そよは今までの流れに逆らって、もう片方のカードを引き抜く。
碌に確認もせず、さりとて周りを意識して勢い任せにならないよう手札と一緒に捨てた。
そよ「……あははっ、話をしてたらいつの間にか揃っちゃった。
果乃子「はい、私の負けみたいですね。
そよ「……なんの話してるのかよく分かんないな~♪」
純加「ちょっとちょっと2人とも! もう終わったでしょ! そのギスギスは止めようね!」
2人「別にギスギスなんてしてません(よ~?)」
陽芽「何故か息は合ってるし! もう仲良いのか悪いのか分からなくなるって!」
2人(仲良いことは絶対ないんだけど……)
「皆さん、いつまでやってるんですか? もう雨も上がってますよー?」
いつまでも戻らない私たちの様子を見に来たのか、店長の声がサロンに飛んできた。
今さらながら雨が止むまでの時間潰しでババ抜きをしていたことを思い出す。
(あぁ……あのときのお気楽ムードが懐かしいな……。ま、もう終わったからいっか)
「ふぅ、疲れた~! 仕事以上に疲れた気がする~!」
「陽芽、アンタね……問題発言よ?」
「いやいや矢野ちゃん、ひめちゃんの気持ちも分かるって」
「そうですね純加さん。みんなで遊ぶつもりが、いつの間にか本気の勝負になりましたもんね♪」
「……夏八木さん、誰がきっかけででこうなったと思ってるんですか」
はて、誰のうっかりアドバイスのせいだろう。
記憶にございませんな。
黙ってとぼけてると、純加さんが片付けたトランプを店長に返していた。
「舞さん、どれくらい時間経ってました?」
「もう1時間以上やってましたよ?」
「ホントですか? そんなに経ってたんだー」
「みなさんそんなに熱中してたなんて、よっぽど気に入ったんですね!」
「気に入ったわけじゃないですけど……」
「……違います」
店長の言葉に陽芽ちゃんと果乃子ちゃんがすかさず否定する。
気持ちは分かるけど、ここまで濃い時間を過ごしたからにはいい雰囲気で終わらせたい。
仕方ないので私はバランスを取りにいった。
「あはは……楽しかったのはホントですけどね」
「みんな素直じゃないなー。矢野ちゃんを見習って楽しそうにすればいいのにー」
「す、純加さん! 私もトランプなんて遊びに熱中する年じゃありませんよ!」
「よく言えたな! あんなに無気になっといて!」
(陽芽ちゃんも人のこと言えないと思うけど……)
「まぁ本当にイベントに利用するかは考えておくとして、みなさんそろそろ帰ってくださいねー」
「はーい」
(……なんか不穏なこと言ってるけど突っ込まないでおこ)
本当にリーベのイベントでやることになったら、今度はどんな感じになるんだろう。
今日みたいにバチバチしないで、もっと気楽なものになったらいいな。
ババ抜きもお開きということで、みんなでサロンからバックヤードに向けて歩き始めた。
そこで私はふと昔のことを思いだして、何気なく口にする。
「そういえばこんなにトランプで遊んだのも、この前バンドメンバーに無理やり巻き込まれたとき以来かな~?」
そんな、私の独り言みたいな発言を陽芽ちゃんが拾ってくれた。
「無理やり巻き込まれるんだ……夏八木さんのバンドメンバーって面白い人たちなんだね」
「面白いっていうか、変わった子が多いよ。そのときも雨が降ったからって無理やり私の家に押しかけてきたし」
「何か今日の流れと似てるねー」
カラカラ笑う純加さんに、私もつられたように笑う。
「そうですね。まぁバンドの子たちはみんなよりよっぽど分かりやすかったですけど」
「矢野みたいな感じ?」
「まぁ……そんな感じ♪」
「も、もういいじゃない! 途中からはそんなに負けなかったんだから……」
「確かにね! これなら定期的にババ抜きやっても楽しそうだね!」
純加さんの発言に、果乃子ちゃんを皮切りに私たちは各々正直な反応を返した。
「……こんな疲れるババ抜きはそんなにやりたくないです……」
「あはは……すみません純加さん。私も果乃子ちゃんに同意です」
「なんだかんだいい勝負ばっかりだったもんね。白熱しすぎて私も疲れちゃったなー」
「わ、私は……別にまたやってもいいけど……」
美月ちゃんだけはどうやらまたやりたいみたいだった。
遊び足りない子どもみたいな美月ちゃんに、陽芽ちゃんはやれやれといった顔を向ける。
「はいはい、じゃまた今度付き合ってやるから」
「何よその投げやりな態度は!」
「はいはい矢野ちゃん、今日はもう帰ろうね」
「ひめちゃん、帰ろ?」
バックヤードに着いた私たちはそれぞれ帰り支度を始める。
私もみんなに倣いつつ、昔のことを思い出していた。
あの日。MyGOのみんなが家に上がり込んだ日は雨のせいでCRYCHICを思い出して憂鬱だったのに。
同じく雨が降っていた今日は、そんなブルーになることもなかった。
ノスタルジックな気分に浸る余裕もないくらい、本気でババ抜きなんかに臨んでたのもあるかもしれないけど。
それ以上に、きっとみんなと遊んでる時間がそれなりに楽しかったというのも、ある気がする。
(……雨が降っても降らなくても。たまになら、私もまたやりたいかな)
そう思えるくらいには、みんなとのお嬢様ババ抜きはいい思い出になっていた。
いや、どうせならトランプ以外の楽しい思い出も作りたいな。
そんな機会を夢見つつ、みんなに挨拶して帰路に着くのだった。