もしもMyGoのそよが百合営業カフェでバイトを始めたら   作:りょーへい

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サイドストーリー2  夏祭り
side2-1. 夏祭りと浴衣


 

 

 〇月×日

 

 今日のリーベは営業日だけど、私だけオフのシフト。

 なので私は、放課後MyGOのバンド練習に参加していた。

 今は練習終わりにライブハウスのカフェでお茶している。

 他のメンバーたち(楽奈ちゃんは帰った)がワイワイ騒いでるのを端から眺めていると、スマホに通知が届く。

 見るとリーべのグループチャットが動いていた。

 

純加『そよちゃんお疲れ~! 明日の夜って空いてる? みんなで夏祭り行かないかって話になってさ~』

陽芽『場所はリーベから電車で20分くらい離れたところのやつ! 打ち上げ花火もあるんだってさ~』

美月『集合時間と花火の予定時刻はこんな感じよ。そよさんの都合はどうかしら?』

 

 明日は学校もリーベも休みで、美月ちゃんが載せてくれた時間帯にも予定はない。

 というか純加さんからこんな連絡が来た時点で、他の予定なんて入れるわけがない。

 ……いやもちろん、リーベのみんなと遊びに行くのも楽しそうと思ってるけど。

 

そよ『みんなお疲れ様です。私も予定空いてるから参加するね♪』

純加『よーし、それじゃ明日はみんなでお祭りと花火楽しんじゃおっかー!』

陽芽『矢野、こういうときは浴衣着てくるんだぞ』

美月『アンタね……私のことバカにし過ぎよ。それくらい分かっているわ』

純加『じゃあ矢野ちゃん。浴衣の下に下着付けちゃダメなのは?』

美月『そんないかがわしい迷信にだって騙されませんよ!』

 

 よかった。碌に遊ばなさそうな美月ちゃんでも夏祭りは浴衣を着るという常識ぐらいは分かってるみたいで。

 ついでに妙な迷信を真に受けてないことにも一安心。

 でも1人だけチャットに参加しないなと思っていると、純加さんも同じことを思ったのか話を振っていた。

 

純加『あ、果乃子ちゃんも浴衣着てきてね? 可愛い妹の可愛い浴衣姿、お姉様は楽しみにしてるんだぞー?」

果乃子『別に可愛いかどうかは知りませんけどちゃんと着て行きますから黙ってください』

純加『ぐすん……妹の冷たさがこの猛暑でも変わらず突き刺さるよ……』

そよ『あはは……とにかく明日は楽しみにしておきますね♪』

 

 チャットでも相変わらずな2人のやりとりを流して私がオチに持っていく。

 とにもかくにも、明日はリーベのみんなと夏祭りに行くことになった。

 胸に湧き上がるこのウキウキ感は、学校の友達やMyGOのメンバーとじゃ生まれない。

 それくらい、リーベのみんなと遊びに出かけるのは特別だった。

 

(私も浴衣準備しないと。あ、そういえば……)

 

 前にMyGOのメンバーで夏祭りに行ったとき着た浴衣を思い出す。

 白地に華やかな向日葵をあしらった浴衣。

 帯はこげ茶色と白のコントラストになっていて、銀の花の帯留めを使った。

 

(あの浴衣、帯留めまで含めて一式で気に入ってるんだよね。明日も着ていきたいな)

 

 明日こそ、あの浴衣はとても合っていると思うから。

 なぜなら浴衣に染められている向日葵には、私には大事な意味を持ち合わせているから。

 向日葵の花言葉はいくつかあるけど、その中でも意識してるのが憧れ。

 そして有名だけど、重すぎて口にするには恥ずかしい意味がある。

 

 (あの言葉まんまじゃないんだけど、それに近い思いがあるからかな? どうしても意識しちゃうんだよね、あの意味——)

 

「……ちゃん。そよちゃん?」

「——えっ、燈ちゃん? どうかした?」

「あ、明日ね。そよちゃん家の近くで花火大会があるって……。それであのちゃんが、そよちゃんの家が穴場だからそこで見ようって言い出してて……」

「つか人の家を花火の穴場スポット扱いするとか、流石愛音って感じ」

「ふふーん、でしょ?」

「いや面の皮の厚さを皮肉ったんだけど。お前嫌味通じないの?」

「リッキーほどひねくれてないだけですー! それでどう? 明日家に行っていー?」

 

 なかなかタイムリーな話に同じ祭りかと疑ったけど、立地的に違うはずだから安心して警戒を解いた。

 あと立希ちゃんの言う事には大いに同意だし、丁度明日に予定が出来たこのタイミングは断るのに都合が良い。

 大体この女は厚かましく人の家に上がり込み過ぎなんだ。

 今日という今日は遠慮なく蹴り返してやろう。

 私は最初だけわざとらしく笑顔を向けながら返答を突きつける。

 

「ごめんね。明日は予定入っちゃったんだ~。——だから人の家当てにしないで、自分の足で駆けずり回って穴場探してね」

「ちぇー、せっかく楽に楽しめると思ったのにー。映えそうな写真撮ってSNSにあげれると思ったのにー」

 

 項垂れてぶちぶち文句垂れるピンク頭に、冷めた目でざまあみろと思いながら席を立つ。

 こんな無駄話に付き合うくらいなら、早く帰って浴衣の用意をしたかった。

 

「じゃ、私そろそろ帰るから」

「私たちも帰ろう、燈」

「う、うん……じゃあね、あのちゃん……」

「いや私も帰るから置いてくなー!」

 

 喚いている人を無視して、私は明日の夏祭りのことを考える。

 リーベのみんなと行く祭りってどんな感じなんだろう。まぁ、きっと落ち着いた雰囲気にはならないよね。

 そういえば、ギャルな純加さんの浴衣姿ってどんな感じだろ? やっぱり普通より派手だったり濃い感じかな。

 というか花火が一番楽しみ。高層マンションのテラスから見る花火よりは、見栄えは劣るかもしれないけど。

 私にとってはそれよりも誰と見るかが大事だった。

 

(……せっかくお気に入りの浴衣着ていくんだから、ちょっとでも褒めてくれたりしないかな……)

 

 唯一私のことを褒めてくれる人に自意識過剰な期待を抱きながら、いつもより早足気味で帰った。

 

 

 

 そして明くる日の夕方。

 開催場所の最寄り駅で集合だったのだけど、集合時間ギリギリに滑り込むように私は到着した。

 みんな揃っているところを見ると、やっぱり私待ちだったみたい。

 

「ごめんなさいっ、浴衣の着付けに手間取って……」

 

 嘘である。

 浴衣を着るのは問題なかったのだけど、髪型が決まらなかったり他に合う帯やアクセがないか探したりするうちに遅くなってしまったのだ。

 前に着たときは何も迷わなかったのに。

 今日会うメンツを考えると、気楽に考えられなかった。

 

「いえ、時間丁度なのだから謝るほどじゃないわ」

「そーだって! まぁ夏八木さんが時間ギリギリに来るのって珍しいイメージだったけど」

「あはは、私もいつもはこうならないように気を付けてるつもりなんだけどな~」

 

 美月ちゃんと陽芽ちゃんに暖かく迎い入れてもらいながら輪に混じる。

 陽芽ちゃんは薄い水色の下地に桜の浴衣を着ている。

 可愛らしさが前面に出ていて、良い意味で陽芽ちゃんにぴったりだった。

 対して美月ちゃんの浴衣は赤地に白い花の模様がある。

 黒髪に赤が映えていて、美月ちゃんのイメージに合っていた。

 

「2人とも浴衣似合ってるね。どっちもらしさがあって良いと思うな」

「ありがと! 夏八木さんこそ向日葵の浴衣可愛い! まさに夏八木って感じ♪」

「意味不明よ陽芽。私としては銀の帯留がいいアクセントになってると思うわ」

「ふふっ、どっちも気に入ってるところだから嬉しいよ? ありがと♪」

 

 なんて話しながら、チラリと目当ての人へ視線を向ける。

 純加さんは不機嫌そうにそっぽ向く果乃子ちゃんのご機嫌取りに必死みたいだった。

 

「果乃子ちゃ~ん、機嫌直してよ~。しつこく絡んだのは謝るから~」

「ならこんな人の多いところでいつも以上にベタベタしないでください。恥ずかしい……」

「分かった、もうしないから! っていうか、人目がなかったら嫌じゃないってこと……?」

「——ひめちゃん。揃ったみたいだから行こ?」

「ちょっ果乃子ちゃん分かった! もう調子乗らないから許して! お願いお姉様を見捨てないで~」

「……本当にうるさいですね……」

 

 どうやら果乃子ちゃんへの絡みがしつこすぎたのか、純加さんは妹のへそを曲げてしまったらしい。

 仕方ないので苦笑いの陽芽ちゃんと一緒に宥めつつ、私たちは祭りの会場へと移動し始めた。

 

 最後尾を歩く私は果乃子ちゃんたちの浴衣も盗み見る。

 果乃子ちゃんの浴衣は藍色の生地に大人しい花柄のもの。

 普段()あまり主張しない果乃子ちゃんらしく、青色の髪にも合っていて中々良いチョイスだと素直に思う。

 そして純加さんの浴衣は……イメージしてたような、けばけばしいものじゃなかった。

 白地にグレーの格子柄で、シックな印象の浴衣を着ている。

 

(ギャルな人なら浴衣も派手だったり着崩したりするかと思ったけど。髪型盛ってるだけで後は普通なんだな……)

 

 とはいえカッコいい系の浴衣が純加さんに似合ってるから決まって見える。

 純加さんの頼りになるお姉さん的な、大人っぽいところにマッチしてるように思う。

 それに私としては、変にゲテモノ路線へ走られるよりシンプルなコーデの方が好ましい。

 つまり一言にまとめるなら、ギャルっぽくない純加さんも素敵、ということ。

 なんて感想を言って、純加さんからは期待していた言葉を貰いたかったのに。

 その人は今も妹にご執心らしく、あれこれと話しかけていた。

 果乃子ちゃんはそれすら鬱陶しそうだけど。

 

(こんな時まで妹に夢中なんだもんなぁ。……せっかくギリギリまでおしゃれに気を遣ったのに……)

 

 私は内心かなりガックリしつつ、それを表に出さないよう笑顔でみんなとおしゃべりしつつ会場まで歩いた。

 




※後書き※

このサイドストーリーはイフの話なので、本編に一切関係はありません。
あと完全に思いつきで書いてるのでいつも以上に色々粗いと思います。
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