もしもMyGoのそよが百合営業カフェでバイトを始めたら   作:りょーへい

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side2-β. 花火後の屋台巡り 後編

 

 

 〇火花

 

果乃子「純加さん、喉乾きませんか?」

純加「いや、だいじょう——」

果乃子「そうですよね、乾きますよね。それじゃ付き合ってあげるので買いにいきましょう」

純加「??? まぁいーけど」

果乃子「ひめちゃんたちは何か飲みたい?」

陽芽「……私甘いやつだったら何でもいーから果乃子にお任せで!」

美月「私はだい——」

陽芽「矢野はお茶系だって」

美月「ちょっと陽芽——」

陽芽(いいから黙ってて)

そよ「……私は紅茶系をお願いしていい?」

果乃子「……分かりました。それじゃ行きましょう」

純加「へいへい」

 

 3人で姉妹見送り中

 

そよ「それじゃ私たちはこの辺で座って待ってよっか」

陽芽「待って! 最後にあそこにあるチョコバナナだけ買いたい!」

美月「あんたまだ食べれたの?」

陽芽「いや、もーあんまりお腹入らないから1本だけ買って、2人とも手伝って♪」

美月「どれだけ食べたいのよ……」

そよ「まぁチョコバナナも夏祭りの定番だもんね。私も一口なら食べたいからいいかな」

 

 お嬢ちゃんたちべっぴんさんだから一本オマケね!

 あっ、結構です~

 

陽芽「可愛いのはそうなんだけどさー、お腹いっぱいのときにオマケされてもしょうがないよねー」

そよ「陽芽ちゃんは自分の可愛さに絶対の自信があるよね~。チョコバナナ、先に食べてるよ?」

陽芽「どうぞー。あ、夏八木さんもちゃんと可愛いよ?」

そよ「そんなついでみたいなフォローで言われても微妙だけど、ありがと♪」

美月「私は?」

陽芽「えっ?」

美月「私はどうなのよ? 何も言わないってことは可愛くないってこと?」

陽芽「いやっ、ほら矢野は可愛い系って路線じゃないでしょ? なんていうかその~……ねぇ夏八木さんっ!」

そよ「チョコバナナおいしーな~♪」

陽芽「無視!?」

美月「……いいわよ。あんたから見たら私は可愛くないってことは分かったから」

陽芽「~~~~~ッ! はいはい! 矢野は可愛いし美人だし! 私にとって理想のスタイルだし! 女性として魅力に溢れてるよ! 恥ずかしいから言わせんな!」

美月「べ、別にそこまで言えなんて言ってないでしょ!?」

陽芽「お前がいじけんのが悪いんだろ!」

美月「いじけてなんかないわよ! だいたいアンタは……!」

陽芽「矢野の方こそ……!」

 

 今日で何度見たか分からない凸凹姉妹のイチャ争いをよそに、そよはチョコバナナを食べつつ1人思いに耽る。

 

そよ(……さっきは果乃子ちゃん、なんで純加さんと2人になろうとしたんだろうな……2人になって、何を話してるんだろう……)

 

 とっくに花火が終わった夜空を眺めるそよは、物足りなさを覚えて無性に落ち着かなかった。

 

 

 

純加「で? あたしと2人になりたかったってことは、何かあったの? またひめちゃんのことで……」

果乃子「……ひめちゃんのことがなかったら、純加さんと2人になっちゃいけないんですか?」

純加「へっ? い、いやそんなことないけど、今までがそうだったから……」

果乃子「……なんで夏八木さんと花火見てたんですか? 私たちのとこに戻らないで」

純加「ん? なんでそんな話……それが聞きたくて連れ出したの?」

果乃子「違いますけどやましいことがないなら答えてください」

純加「そ、そんな早口で圧かけないでよ~。えっと、そよちゃんと合流してみんなのところに戻る途中で花火が始まって、でも人ゴミで全然進まなかったし、そよちゃんも下駄の鼻緒が切れかけたって言って歩きづらそうだから……って、あの後そよちゃん大丈夫だったかな? 無理してないといいけど……」

果乃子(……歩きずらそうにしてたっけ? 屋台回ってるときとかも別に普通だった気がするけど……もうどっちでもいいか)

果乃子「……それでこっちに来るのを諦めて2人で花火見てたんですね。わた……こっちは一向に返信ないから心配して、……探しに行こうってひめちゃんたちと話してたのに……」

純加「それで果乃子ちゃんが来てくれたんだ。でもそこで矢野ちゃんを行かせたらひめちゃんと2人になれたのに、惜しいことしたねー」

果乃子「……ひめちゃんが『姉妹でしょ』、とかなんとか言ったからです。というか私が迎えに行ったこと、純加さんはなんとも思ってないんですね。やっぱりお邪魔だったんじゃないですか?」

純加「いやいや、嬉しかったけどあのときは驚きもあったからさ! まさか果乃子ちゃんがひめちゃんから離れてまであたしのとこに来るなんて思わなかったんだもん」

果乃子「……はぁ~」

純加「今度は溜息なんかついちゃって、可愛い妹から幸せが逃げちゃうでしょ?」

果乃子「うるさいですね。妹だの、ひめちゃんだの、なんだの」

純加「そして急にキレる妹!? キレ所もよく分からないし!」

果乃子「私がひめちゃんと2人になれるように気を遣ってくれたのは素直に嬉しかったです。射的で欲しかった人形取ってくれたのも、まぁ……よかったですよ?」

純加「そ、そっか……」

果乃子「でも私は今日ひめちゃんとだけじゃなくて、純加さんともお祭りに来てるんですよ? なのに私に変に気遣って離れてくし、せっかくの花火は私と見ようとしないし」

純加「……それだけ聞くと、果乃子ちゃんがあたしと一緒に楽しみたかったみたいに聞こえるよ?」

果乃子「純加さんが! 私と楽しみたかったんだろうなって、慮ってあげたんです! 人のことばっかで自分を大事にしないダメ姉の代わりに、私が大事にしてあげてるんです! 純加さんがそんな体たらくだからですよ!」 

純加「……分かってよ果乃子ちゃん。あたしの我侭より、果乃子ちゃんを大事にしたかった故だって」

果乃子「じゃあその我侭を今言ってみてください。そしたら許します」

純加「もう許す許さないのレベルになってたんだ……」

果乃子「そうですか特にないならもういいです戻りましょう」

純加「まっ……! ~~~~~っ、ほ、ホントは果乃子ちゃんとずっと2人で回りたかったし、花火だって2人で見たかった! 果乃子ちゃんの言った通りだよ、せっかくの花火だったんだよ!? そんな夢見るに決まってる! でも……あたしがそう思うなら、果乃子ちゃんだってひめちゃんとそうしたかったんだろうなって思ったら……」

果乃子「……だから、一歩引いて()()1人で気持ち押し殺したんですか」

純加「……」

果乃子「……これ」巾着袋から取り出す

純加「……これって、線香花火? いつの間に買ってたの?」

果乃子「いつだっていいでしょう。そんなことより、打ち上げ花火じゃないですけど、少しでも純加さんの我侭を叶えましょう」

純加「……果乃子ちゃん。本当にありがとね」

 

 2つの火の玉がパチパチと弾ける様子を、花の名を冠する姉妹が静かに見守っている。

 

純加「打ち上げ花火も綺麗だけどさ。線香花火にしかない風情もあるよね」

果乃子「私はどちらかというとこっちの方が好きです。静かで、落ち着きますから」

純加「それならひめちゃんとも……ダメだな、どうしてもひめちゃんの名前を出そうとしちゃうや」

果乃子「……私が今までそればっかりでしたし、純加さんの性分もありますから。少しくらいなら多めに見ますよ」

純加「そりゃどーも。……ねぇ果乃子ちゃん」

果乃子「なんですか?」

純加「浴衣、本当に似合ってて可愛いよ。最初見たときは照れ隠しで大げさにダル絡みしちゃったけど、本心から思ってることだから。しつこいかもしれないけど、どうしてもちゃんと伝えたくってさ」

果乃子「……純加さんはどんな服でも似合うとか可愛いと言うから、軽く聞こえるんですよ……」

純加「確かにそうだ、気を付けないと。……でさ、果乃子ちゃん。花火のとき、あたしを探しに来たのはひめちゃんに言われたからって、ホント?」

果乃子「……なんでそんなこと今さら聞くんですか。嘘つく必要がないでしょう。そっちこそ、私が純加さんを見つけたとき夏八木さんと何話してたか詳細に教えてください」

純加「果乃子ちゃんこそ妙なとこ気にするな~。えっと、確かそよちゃんの家は高層マンションだから花火見やすいけど、1人で見てたから寂しかったとか、誰かと見るのはすごく楽しいって。その流れでなんか冗談的にあたしと2人だからドキドキするとかなんとか……そういう雑談だよ?」

果乃子「……向こうは冗談のつもりだったんですね?」

純加「そりゃそうでしょー。そよちゃんってよく冗談言う子でしょ?」

果乃子(本当に冗談ならいいんですけど。……色んな意味で)

 

 果乃子はチラッと姉を盗み見る。

 八方美人の鈍感バカ姉は、無邪気にもキラキラした顔で線香花火を楽しんでる。

 いや、眩しく見えるのは花火が原因なのか、それとも……この人が私の特別だからだろうか。

 辺りは暗く、私達以外誰もいない。まるでそれは……。

 姉の家に泊まった日のことや、朗読劇の暗闇がフラッシュバックした瞬間、心の中でも何かが弾けて着火される。

 

純加「あっ、花火もう落ちちゃったや」

果乃子「私もです。……純加さんの、よく見るとギリギリで小さい花火が残ってますよ?」

純加「えっホント——」

 

 純加は花火に視線を凝らす。

 その瞬間、頬に幽かな柔らかい感触を受けた気がして、思わずそっちへ首を回す。

 視界に映る愛妹は、暗闇でもはっきり分かるくらい顔を赤くしていた。

 

純加「か、果乃子ちゃん? 今もしかしてキ——」

果乃子「すいません、やっぱり勘違いでした。あんまり遅くなるとひめちゃんたちに悪いですし戻りましょうか」スタスタ

純加「ちょ、果乃子ちゃんってば! 誤魔化さないでよ! あたしにとってはチョー大事なことだよ!?」

果乃子「知りませんっ! それ以上しつこいと口聞きませんよ!?」ズンズン……

純加「うわーん! あたしの妹が横暴すぎて辛いよー!」タタタッ……

 

 

 2人が陽芽たちのところへ戻ったとき、ちょうど閉会のアナウンスが流れた。

 祭りに大方満足した5人は、それから駅に向かい解散したのだった。

 

 

〇おまけ 花火が始まる直前の妹

 

陽芽「花火見る場所、なんとか取れたね!」

美月「そよさんも純加さんと合流できたんでしょう? ならあとは安心して待てるわね」

陽芽「それにしても、まさか夏八木さんが迷子になるなんて……ププッ、来たらからかってやろーっと」

美月「アンタね……ほどほどにしなさいよ?」

陽芽「でもさー、こんな機会滅多にないよ? 果乃子もそう思わない?」

果乃子「……」スマホガン見

陽芽「果乃子?」

果乃子「……えっ?」

陽芽「いや、どうかした? さっきからずっとスマホ見てるけど」

果乃子「……ううん。純加さんがいつまで経っても返信しないなって思って」

美月「そう言えば純加さんたちは花火に間に合うのかしら……って、もう始まる時間じゃない!」

陽芽「うわっ、マジかー。でも下手に動いてすれ違うのも面倒だよね。ここで待ってた方がいいんじゃない?」

美月「確かにそうね。私達だけで花火を楽しむのも気が引けるけど……」

果乃子「……私、ちょっと探しに行ってくるよ」

陽芽「えっ、果乃子!?」

果乃子「すぐ戻ってくるから、ここで待ってて!」

 

 タタタッ……

 

果乃子(何やってるのあの人。こんな一番大事なときに来ないなんて、世話が焼ける姉だな……)

 

 ハッ、ハッ、ハッ……

 ヒュ~、ドンッ!!

 

果乃子(って始まっちゃった! 早く見つけないと碌に見れないかも……)

 

 嫌な結末が頭を過ったとき、どこかから大声が聞こえて思わず足を止める。

 

 打ち上げ花火もいいけど、線香花火もまたいいよ~!

 今ならみーんな打ち上げ花火に夢中で誰もいないからすぐ買えるよ~!

 

果乃子(……念のため。一緒に見れなかった用に。……そう、さっきひめちゃんと2人にしてくれたお礼もしなきゃだし。それに、こういう機会にこそ純加さんの気持ちに応えてあげるべきだし……)

 

 屋台まで走る。金を置く。花火をひったくる。そのまま走り去る。

 

果乃子(……私、何やってるんだろうな。あの人の気遣い通り、ひめちゃんと一緒にいればよかっただろうに。どうしてひめちゃん放って純加さんのために駆けずり回ってるんだろう)

 

 ハァ、ハァ……

 

果乃子(あれかな? 最初に浴衣褒めちぎられて恥ずかしかったから、ついキツめに突き放したことに罪悪感でもあるのかな? それとも単純に姉妹として心配してとか? いやそれはないか……)

 

 純加さんの今の状況が思い出される。あの人は今、夏八木さんと合流してこちらに向かってるはずで。

 そして今は花火が始まっていて、純加さんと夏八木さんは2人っきりで……。

 

果乃子(……いつもは求めてないのにしつこく絡んでくるくせして、どうしてこういうときに限って傍にいないんですかっ!!)

 

 どこだ。茶髪で髪型盛ってるギャル風のあの人は。

 いつもさりげなく助けてくれる、頼れる大人な内面にマッチした、シックな浴衣を着ていつもより少しだけ格好良いあの人は。

 花火に負けないくらい、明るくて元気な笑顔を咲かせる私の姉は、どこっ!?

 

果乃子(……いたっ!)

 

 道の端っこで、派手に花火が上がってるのに目もくれず、面と向かい合ってる女性2人の片方を捉える。

 空気を読むという発想もなく、一直線に駆け寄って、一瞬でも早く私を認知させようと声を上げた。

 

「——純加さん、見つけましたよっ!!」

 




今週日曜に本編続き上げます。
視点はそよではなく果乃子視点で進みます。
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