もしもMyGoのそよが百合営業カフェでバイトを始めたら 作:りょーへい
一日目
10月16日 月曜 終業後 とある女の子たちの帰り道
「美月ちゃん、ゴメンね。こんなこと言いふらすべきじゃないって分かってるんだけど、1人で抱えきれなくて……聞いてくれる?」
「えぇ。正直私に向いてるとは思えないけど、それでそよさんの助けになれるなら」
「ありがとう。実は……」
…………………………。
「私、身近な人どうしでこういうことあるの初めてで……1人しゃどうしても抱えきれなかったんだ。美月ちゃんは、どう思う……?」
「…………そ、そんな……ウソよね、陽芽……?」
「美月ちゃん?」
「ごめんなさい、私これで帰るわ……」
「待って! もしかして美月ちゃん、陽芽ちゃんのこと……」
「やめて! もう放っといて!」
二日目
10月17日 火曜 リーベ営業前
「美月ちゃん、昨日はゴメンね。知らなかったとはいえ、美月ちゃんのこと凄く傷つけちゃって……」
「……いえ、確かにショックだったけど、そよさんが悪いわけじゃないわ。それと……やっぱり見間違いや勘違いということはないの……?」
「ううん、間違いないよ。こんなこと、不確かなら言いふらしちゃいけないと思ってるから。でもそれで美月ちゃんに嫌な思いをさせたのも確かだから、責任とって私が美月ちゃんを支えるよ」
「私は、別に問題ないわ……」
「本当に? これからも陽芽ちゃんといつもみたいにサロンで仲睦ましく触れ合える?」
「……それは」
「あとね、もしかしてだけど昨日のこと陽芽ちゃんに確かめようだなんて考えてないよね?」
「どうしていけないの? 私達は本音で話し合うって約束してるのだから、問題ないはず……」
「あのね、美月ちゃん。それで問題なかったなら陽芽ちゃんは果乃子ちゃんとの関係を話してたんじゃないかな?」
「……そうかも、しれないわね……」
「そんな約束してたなら、たぶん余計美月ちゃんだけには知られたくなかったんだよ。もし知られたら、もう一緒には居づらくなっちゃうんじゃないかな?」
「そんなの、もう2度と御免よ!」
「そうだよね。ならまずはそうはならないように、陽芽ちゃんに問い質すのはやめとこう?」
「でも、私このままじゃ……陽芽とまっすぐ向き合えないわ」
「だから、私に任せて? デリケートな問題だからすぐには難しいけど、さりげなく話を聞いて、いずれ美月ちゃんへ話すよう説得するから。美月ちゃんこういうのは……」
「そうね。苦手だわ」
「だよね。だから今は私を信じて? 美月ちゃんはいつも通り陽芽ちゃんに接してあげて欲しいな」
「分かったわ……」
同日 営業中 あるお姉様の休憩中
「やっぱり陽芽ちゃんといつも通り接するのは難しい?」
「……ごめんなさい。あの話のことがどうしても頭によぎるの……」
「美月ちゃんはそこが悪いところだと思う」
「え? どういうこと?」
「私が聞かなかったら、1人でその辛い思いを抱え込もうとしてたでしょ?」
「当然じゃない。こんなこと人に言うべきじゃないわ。そんなことしたらまた私は迷惑になってしまうわ……!」
「——大丈夫だよ。私だけは大丈夫だから」
「どうしてそう言えるの!? 今そう言ってくれていても、いずれそよさんだって迷惑に思うわよ!」
「だって、美月ちゃんが今こうして苦しんでるの、私のせいなんだから」
「……それは違うわ。前も言ったけど、あなたは知らなかったんだから」
「もし美月ちゃんが逆の立場だったら、そう言い訳して私の事知らんぷりする? って、真面目な美月ちゃんに愚問だったね」
「…………ごめんなさい、そよさん。どうしたらいいの? 陽芽と普段通り接しなきゃいけないのに、あの話も受け入れなきゃいけないのに! やっぱり無理で、さっきも不自然に逃げてしまって……!」
「そうだよ美月ちゃん。それでいいの。私にだけは頼って? 私がきっとなんとかしてみせるから。私を信じて?」
「そよさん……でも何か考えがあるの?」
「うん。あのね……」
・
・
・
「……っていう設定で演技して?」
「え、えっと……協力してもらってる身で言うのも何だけど……無理矢理過ぎないかしら?」
「信憑性とかどうでもいいんだよ。サロンで大事なのは仲直りするっていう結果だけだから」
「それも……そうかしら?」
「それじゃ、あまり長くサロンを空けるわけにもいかないし、そろそろ行こっか」
「ま、まだ心の準備ができてないのだけど……分かったわ。あの、そよさん……」
「うん?」
「助けてくれて……ありがとう。あなたと友達になれて、よかったわ」
「……どういたしまして♪」
四日目
10月 19日 リーベ終業後 ワックにて
「純加さん、陽芽ちゃんのことは放っておくべきだと思います」
「えっそう? さっきは喧嘩になりそうだったのに、そうは見えなかったけど……」
「ごめんなさい、言葉足らずでした。実は昨日陽芽ちゃんと話してさりげなく様子を探ったんですけど、どうやら果乃子ちゃんによく相談してるみたいだったんです」
「…………そっか……」
「あの2人って、まさに親友って感じで仲良いですよね。学校もリーベの行き帰りもいつも一緒だから、きっと果乃子ちゃんが陽芽ちゃんの話を聞いて気持ちの整理に一役買ってくれてるんだと思うんです」
「……いや、やっぱり一応年長者としてあたしもひめちゃんから話を……」
「そう、ですね……。確かに純加さんが話を聞けたら一番いいと思うんですけど……」
「何か問題が?」
「実は私も陽芽ちゃんから話を聞こうとしたんです。でもそのとき陽芽ちゃん、果乃子ちゃんと約束してるからって言って遠慮したんです」
「約束?」
「はい、『お互い悩み事があったら、まず最初にお互いを頼ろう』、って」
「……そんな約束してたんだ……」
「……純加さん、実はこれ陽芽ちゃんには内緒って言われてるので……」
「分かってるって。そういうことなら確かにあたしからいってもそよちゃんと結果は変わらないね」
「どうでしょう。純加さんは頼りになる先輩ですからもしかしたら話すかもしれないですけど」
「ううん、果乃子ちゃんが話聞いてくれてるなら信じて任せるよ」
「……果乃子ちゃんを信頼してるんですね」
「そりゃもちろん! 可愛い妹だからね!」
「……あの、前から気になってんですけど、果乃子ちゃんって陽芽ちゃんのこと、好きですよね? 恋愛として」
「…………あ~、そう見えるかもしれないけど別に違うんじゃ~」
「やっぱりそうですよね。ごめんなさい、余りにも果乃子ちゃんから陽芽ちゃんに向ける態度だけ違うから邪推しちゃって」
「あ、あはは……」
「よかったです。もし恋愛として好きなら今の構図は果乃子ちゃんにとって都合良すぎてちょっと心配だったんです」
「……え?」
「だって、美月ちゃんは陽芽ちゃんのこと好きじゃないですか。恋愛として。あ、これは本人に確認しました」
「う、うん……」
「その美月ちゃんが陽芽ちゃんと仲違いしいてるから、もし果乃子ちゃんが陽芽ちゃんのこと好きなら今の関係が続くように動きますよね? 恋敵を排除するために」
「…………」
「でもそうじゃないなら、果乃子ちゃんもまっすぐ陽芽ちゃんに寄り添って2人の仲直りに協力しますよね。安心しました」
「……果乃子ちゃんは、そんな子じゃないから大丈夫だよ」
「ですよね! 姉役の純加さんがそういうなら私も信じられます♪」
※昨日、10月18日にそよと陽芽が2人で話した事実はありません※
五日目
10月20日 金曜 リーべ営業中 ある女の子の休憩時間、バックヤードにて
ガチャッ
「あれ、夏八木さん? もう交代の時間?」
「ううん、まだちょっとだけ時間あるんだけど、サロンも忙しくないから少しだけ早く休憩取らせてもらったの。陽芽ちゃんに話したいことがあったから」
「それって……」
「うん。美月ちゃんのことだけど……」
「……矢野がどうかしたの?」
「話を聞いてるんだけど、美月ちゃんとしてはすぐに整理できそうにないことみたいで……あまり力になれなくてゴメンね、陽芽ちゃんも今のままじゃ辛いだろうに」
「私は大丈夫だよ。大事なのは矢野が……大丈夫になることだから。本当は私が助けになれればいいんだけど」
「他ならぬ陽芽ちゃんのことで悩んでるから、今はまだ上手く話しづらいんだよ。美月ちゃんがその辺不器用なのは知ってるでしょ?」
「…………そりゃまぁ。ていうか私のことで悩んでるならそれを教えてくれたって……!」
「私もできるならそうしたかったけど、流石に私から言える内容じゃなくて。美月ちゃんも黙ってるから余計に……」
「……はぁ。矢野は何悩んでるっていうんだよ……」
「……それでね、美月ちゃんを心配する陽芽ちゃんまで辛いのは嫌だから。私でよければ愚痴を聞くよ?」
「…………矢野の力になってもらってるのに、私のことまで負担させたくないよ」
「別に負担だなんて……。って違うか。やっぱり私じゃ頼りづらいよね?」
「そういうこと言ってるんじゃ……」
「別におかしなことじゃないよ。私たち、会ってまだ一月も経ってないんだよ? そんな私より話しやすい人を頼った方が良いと思う。陽芽ちゃんのためにも、陽芽ちゃんを大切に想っていて心配してくれる友達のためにも」
「……そっか。きっと果乃子にも心配かけてるよね」
「うん。きっと、些細なことでも力になりたいって思ってるよ」
「……でも、私はやっぱり矢野の力になりたいよ……」
「大丈夫! きっともう少しの間だけだから、美月ちゃんのことは任せて? 陽芽ちゃんには美月ちゃんが立ち直ったときのためにも元気でいて欲しいんだ。美月ちゃんとすんなり仲直りするためにも、ね?」
「でも、私は矢野ほど悩んでるわけじゃ……」
「美月ちゃんも、私に相談してから少し気が楽になったって言ってたんだ。吐き出して楽になるようなことなら話した方がいいと思うな。変に溜め込んで肝心なときに相手にきちんと向き合えなかったら、きっと後悔しちゃうよ?」
「……それは……そう、だね」
「それじゃあ——美月ちゃんのことは、私に任せてね」
「……うん」
五日目
10月20日 金曜 リーベ営業終了後
「美月ちゃん……大丈夫?」
「正直……かなり参ってるわ。そよさんがいてくれなかったら、とっくに爆発してたと思う」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど。美月ちゃんは凄く頑張って堪えてるよ? 本音を言い合うって約束したのにいつまでも話さない相手を待ち続けてるんだから」
「そうね。そのうち話してくれるって信じてたけど。……もう陽芽が私以外の人を選ぶのはいいの。姉妹の……私達の約束を忘れたみたいに、私に隠し事するのが……話そうとしてくれないことが耐えられない……」
「……もういっそ、美月ちゃんから聞いてみる? 2人も隠すつもり無いみたいに営業中からべったりしてるぐらいだし……最悪前みたいにリーベから陽芽ちゃんがいなくなっちゃうかもだけど……」
「そんなの嫌よ! 例え陽芽を間宮さんにとられたとしても、もう離れ離れは2度と嫌!」
「……そっか。なら待つしかないね。大丈夫、美月ちゃんには私が着いてるから! 1人だって思わないで? もしかしたら陽芽ちゃんも言おうとしてるけど、なかなか踏ん切りがつかないだけかもしれないし」
「……ありがとうそよさん。私達の関係が完全に壊れないように守ってくれて」
「……美月ちゃんは陽芽ちゃんと何度も喧嘩してきたって言ったよね? なら今回もきっと大丈夫だよ。陽芽ちゃんが話してくれるって信じて、私と一緒に待とう? 何度喧嘩しても仲直りできた2人なら、いつか何とかなるよ!」
「えぇ……いつになるか分からないけど……何とか、待ってみるわ……」