のじゃロリが痛みに勝てるわけないだろ

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「失われた記憶」というお題でワンドロで書きました。2hかかってるけど、多めに見てください。


爪を剥がすのは誰にでも効く

 ごきげんよう定命の者ども!!(気さくな挨拶) ワシは遥か昔から生き続ける神代の残滓、毀損される神秘を今尚残す不老不死!! 化け狐のけーちゃんじゃ!! 「化け狐のそこ名前にすることないだろ」というツッコミはダメじゃぞ。たま……たまも……?とかいうイキったせいで人カスに封印された奴を鼻で笑えるくらいには長生きなんじゃぞ! 崇め奉るといい!!

 

 

 

「ガガガボガボガボガボガボガボガボ!!!!」

 

「きゅーじゅきゅー、ひゃーーーーく、はい顔あげてー。……どう? 秘密金庫の場所、話す気になった?」

 

「プハーーッ!! ハーーッ!! だから話すも何も本当に覚えてないと」

 

「はいもう一回ねー。いーーーち、にーーーーー」

 

「ガボガボガボガボガボガボガボガボ!!!!」

 

 

 

 今はヤクザに捕まって拷問されておる。

 

 

 

「兄貴、昼休憩っすよもう。あとそんなザブザブ水使ってると水道代で財務のザーさんがキレるっす」

 

「おー、そうか。いよいしょ」

 

「プハーーッ!! ハーーッ!! ようやく休憩か!?」

 

「先休んでな、俺はこいつの爪とか剥いでっから」

 

「うーす」

 

「嘘じゃろ!?!???!? お前も休め!! 定命の者は働いとるうちにすぐ死ぬんじゃから、もっと限られた時間を謳歌」

 

「まずは中指からねー」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛痛゛ッた゛!???!??!」

 

 

 

 一番最近感じた痛みは、家の柱に小指をぶつけた時のもの。それ以外だとうっかり人里に降りたタイミングで空襲に出くわし、爆弾?が直撃した時くらいまで遡らないといけない。そのくらい長く苦痛を感じることはなかったので、拷問がめちゃくちゃ効いておる。というかマジ泣き中じゃ。

 

 

 

「うう……死ぬ……ワシ死なんけど……」

 

「不老不死名乗ってる割に痛みに弱いねえー。威厳もクソもないよ」

 

「む……なんでお主が、ワシが不老不死じゃと? そうそう人に言うことはないのじゃが」

 

「アンタ俺にナンパされてバー入って、酒がぶがぶ飲んでたっしょ? 10分経ったくらいでもうペラペラ話してたよ?」

 

「ナンパした相手を拷問しとるのか!? 最近の若いもんは!?」

 

「バーカ、穏便に情報聞き出すために決まってんじゃん」

 

「馬鹿!??!?!? このワシに!??!??!?」

 

「ダメだこいつ話進まねえ、はいペリペリー」

 

「あ゛ーーーーーーーーーーーーーッワシの薬指の爪がアーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」

 

 

 

 爪が捥がれる痛みとは別に、自分の情けなさに涙が出てくる。いい男じゃと思ったらとんだ拷問野郎じゃし。神話の時代からそうとはいえ、酒に弱すぎるし。こんなもん妖術で全員呪殺すれば大丈夫じゃと思っていたのに、なぜか使えんし、力も出んし。

 

 

 

「にしても吐かないねえ……こんくらい弱っちい子は大体とっくのとうに吐いてるもんなのに」

 

「弱!?!?……いや、弱いとしか言えんなワシの今の惨状……うう……」

 

「躁鬱でかわいー。で、どうなの実際」

 

「うう……ホントに知らんもん……」

 

「知らないってことはないっしょ、ホラ見て」

 

「何じゃ……?」

 

 

 

 目隠しを外されたワシが見せられたのは、バキバキのヤクザもんを引き連れて豪奢な建物を襲撃する狐耳の低身長美少女――紛れもなくワシの写真じゃった。

 

 

 

「我らが“蕃茄會”の敵対組織、“西葫芦舎”。その幹部に一週間で上り詰め、うちの事務所を粉砕しまくり、付いた異名は“狂狐K”」

 

「あ……あわわ……」

 

「そんなアンタが秘密金庫の場所を知らされてない、なんてことがあると思う? 頭の螺子が一本も無くても分かるっしょ」

 

「……いや、その……」

 

「どうした? 弁明ある?」

 

「……えっと、この写真なんじゃけどな。間違いなくワシなんじゃけど」

 

「うん」

 

「恥ずかしながら、こんなことした記憶なくてな」

 

 

 

 拷問ヤクザから表情が消えた。倍怖い。

 

 

 

「……おい、どこまでもすっとぼける気?」

 

「ホ……ホントに覚えてないんじゃよ!! そもそも“西葫芦舎”って何じゃって所からなんじゃが!?!?」

 

「舐めるの、もッ!! 大概に、しろよッ!!」

 

「あっデエ!! “こんくり”とかいうものじゃろそれ!! 頭ガンガン殴っていい硬さじゃないじゃろ!!」

 

「“ナンパ”ってさっき言えてた奴がカタカナ語いまいち知らないから平仮名で言っちゃう奴やるなよ、オラッ!!」

 

「あ゛っ!! ガッ゛、まっ、タンマっ」

 

 

 

 一切の発言を許さないまま、頭部への乱暴は“こんくり”の塊が砕けるまで続いた。血は出ないが頭がクラクラする。

 

 

 

「あ゛ーー……これ脳震盪じゃな……」

 

「……ハアッ、ハアッ……これで、気絶してねえとか……どうなってんの……」

 

「だから言ったじゃろ、ワシ不老不死って」

 

「……その言葉に、嘘はなさそうだね」

 

「うむ。この期に及んで嘘は吐かんよ」

 

「じゃあ死ぬ拷問もできる、か。久しぶりに日本刀使うか」

 

「ア゛ーーーーっタンマタンマ!! せめて今思い出せる限りのこと言うからそれ聞いてから判断しろ!! 記憶を整理せんと思い出すもんも思い出せん!!」

 

「……チッ」

 

 

 

 あっ、舌打ちしつつも椅子に座ってくれたのじゃ。ありがたいのじゃ。

 

 

 

「とは言ってものう……ホントにこんなことしてた記憶ないんじゃが……」

 

「そんなことあってたまるかよ」

 

「いや……ちょっと考えてみてほしいが、誰だって『数年前のこの時期に何してたか言えるか』って聞かれたら怪しいじゃろ?」

 

「……確かに。俺は言えるが、部下共だと覚えてねえだろうな」

 

「怖い部分があったが無視するぞ? ワシもそういう感じじゃ、たぶんそれを不老不死の尺度でやっとるだけだと思う」

 

「……いや誤魔化されねえって。幹部になったら専用の屋敷が与えられるんだ、住所変わったら流石にだろ」

 

「いやー、ワシテキトーに生きとるからな……ちなみに、今の屋敷発言で思い出したことがあるんじゃけど」

 

「なんだ」

 

「そういえば最近『いつからか忘れたけど世話焼いてくる専用の女中がいるのう。そろそろ鬱陶しくなってきたし離れるか』で引っ越したんじゃった。今思えばそれが件の屋敷なんじゃろう」

 

「……数ヶ月前の失踪はまさか」

 

「そういうことじゃろうなあ」

 

「……マジで終わってる……!! こいつから記憶引き出すの無理だろ!!」

 

「あー……すまん……」

 

 

 

 自分の不徳が原因なので頭を抱えられると流石に申し訳なくなる。でもおぬしワシに拷問したしアイコじゃからな。

 

 

 

「……もっと痛めつければ記憶蘇ったりしねえかな」

 

「ワーーーッそのいかにも切れ味の悪そうな鋸はなんじゃ!?!?」

 

「拷問器具だよ」

 

「そりゃそうじゃな!!!! とにかくしまえ!!!! できる限り協力はするのじゃ!!!!」

 

「協力っつっても何も覚えてねえんだろ」

 

「それは……そうじゃな!! ウ゛ーーーっ傀儡術が使えれば誰でも言う事聞かせられるのに、妖術が何故か使えんから……!!」

 

「へえ、そんなのあるんだ。じゃあ俺に撃てよ」

 

「撃っとるんじゃよお……!!」

 

 

 

 実は攻撃は何度か繰り返しておったが、出る気配がせん。こんなことなかったのに……!!と思いつつ、もう一度試そうと呪言を脳内で練って、

 

 

 

「ええいままよっ、急急――」

 

「――兄貴、戻ったっすよー」

 

 

 

 撃ったタイミングで、さっき顔を出していた使い走りが戻ってきて。

 

 

「如律令――あっ」

 

「まだコイツ吐かな――――……? ???」

 

 

 

 気を取られ、術の対象がそっちに向き。そいつの目が急に映ろになった。

 

 

 

「……どうした? おい」

 

「……?? ??」

 

「……のう、そこな坊主。今どうなっとる」

 

「は、い……俺は、あんたの、奴隷です……??」

 

「……おい狐耳。これ傀儡術?」

 

「そうじゃな……もしかして今までのは撃ってたけど効かなかったとかか……??」

 

 

 

 ふと嫌な可能性が頭に浮かんだ。

 

 

 

「のう、おぬし苗字なんじゃ」

 

「あ? 蘆屋だけど」

 

「あっなるほどガチガチに陰陽師の血引いてるんじゃな!? そりゃ効かんわ!!」

 

「……なんだか分かんねえが……俺がお前に有利ってことは変わんねえんだな? その理由がハッキリしただけで」

 

「じゃな。あークソクソ、そりゃ無理じゃ」

 

「でも思えばお前連れてくるとき、驚くほどスムーズに連れ込めたな……それも関係が……」

 

「……それはワシが酒に弱すぎるだけじゃ」

 

「そうか」

 

 

 頷く奴の顔には、何時の間にか笑みが戻っておった。

 

 

「よし」

 

「……のう、そのロープで何する気じゃ? 拷問か?」

 

「ワハハ、そんな野蛮なこともうしないって」

 

「ホッ」

 

「ただちょっとグルグルの芋虫状態にして、運びやすくなったらクソッタレな“西葫芦舎”の連中に殴り込みに行くときに持っていくだけ」

 

「『だけ』の範疇越えとるじゃろ!?!?」

 

「しゃーねえじゃん、秘密金庫の場所分かんねえならお前連れてって傀儡術撃たせて分かる奴に吐いてもらうしかねえもん」

 

「わ、ワシが素直に従うとでも……!!」

 

「大丈夫。そしたら」

 

 

 

 そう言って奴は、ロープと反対の手に錆び錆びの鋸を握りなおした。

 

 

 

「次は“神経”行くから」

 

「あっ」

 

「いやー俺だけが言う事を聞かせられるっていいねえ、他の奴だと拘束しても術で抵抗されるってことだし。……で、どう? 協力してくれる?」

 

「…………」

 

「返事が聞こえないなあ」

 

「…………も」

 

「も?」

 

 

 

「もう人里はこりごりじゃあ~~~…………」

 

 

 

 ちなみにその後、こいつと一緒に大立ち回りをし、まあ色々あって子を為したりした後に山へ戻り。

 また長~~~~い時間が経ち、今日めちゃくちゃ痛い目に会わされた記憶を失い、性懲りもなく人里に降りてまたとんでもないことになるのだが……それは別の話じゃ。


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