TSキャラは曇らせてなんぼとかって話だが、曇らされて喜ぶ奴がいる訳ねェだろ!行くぞォォォオ!!!!

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鬱TSをブッ飛ばしたい

 突然神を名乗る毛玉に、『お主は今からTS主人公の鬱小説の世界に転生する』と言われたら。

 模範解答は、「おぉ神様、お前を今ここで殺していいか?」だと私は思う。

 

 

 どうも、ついさっき死んだ男だ。んで、死んだらいきなりさっきの様なやり取りが発生した。どういうことだってばよ。

 

『不満か』

「不満だ」

 

 そういう界隈が好きな人には悪いが、私はTSが嫌いだ。

 いや、厳密に言うなら、TS主人公を扱う全年齢向けの作品が余り好みではない、と言った方がいいか。理由は、だいたいその作品で主人公がTSする意味を余り感じ取れないから……という、まぁそんな所だ。

 

 R18は大歓迎なんだがな。TSキャラ自体は好きだし、メス墜ちという概念は見るだけなら素晴らしい。

 そんな矛盾した価値観を抱えた男です。対戦よろしくお願いします。

 

『なんじゃ、エロければええんかい』

「人の心勝手に読まないでくれます?」

『安心せい、TS主人公がエロい目に遭う魔法少女モノの作品じゃ』

「安心出来ないな?今のセリフでどう安心出来ると思った?」

 

 つか、ちゃんとエロ要素あんのかよ。主人公に憑依転生とかじゃなくてよかった。私その作品知らないけど、ドンマイ主人公。

 

「いや待て…騙されんぞ?その小説、書籍化されてんじゃあないだろうな?」

『勿論じゃ。KADOKAWA文庫かその辺りじゃったかな』

「やっぱりな!じゃあ少なくともR18ではねェじゃねぇか!巫山戯んな!」

 

 文庫として出す為に直接的な描写は避けてるヤツじゃねぇか。あぁ言うの嫌いだっつってんだろ。前戯だけやって挿入れないエロ漫画見てる気分になるんだわ。

 

『まぁ、その世界が危険な事は儂もわかっておる』

「え〜?ホントにござるか〜?」

『マジじゃマジ。その証拠に、お主に転生特典を授けよう!何個でもいいぞ』

「急に太っ腹になるじゃん?なに?詐欺なの?」

『儂神ぞ。んな事する訳なかろう』

 

 それもそうか、神様だもんな。人の心分からないで有名な上位者だもんな。

 

『めっちゃ不敬』

「スンマセンした」

『謝らんで良いわ。もう慣れたワイ』

 

 いやホントごめんて。

 

「んじゃまぁ……取り敢えず戦闘慣れした体と、ブッ飛ばせる力と、その世界で通用する武器が欲しい」

『なんじゃめっちゃありきたりじゃの』

「悪かったな個性が無くてよ」

『そうじゃな。取り敢えず武器は1日一本支給してやろう』

「太っ腹なのかケチなのかわからんヤツやめーや」

『後は何時も通りとして……そうじゃお主、赤子からやり直すか、キャラメイクして──』

「キャラメイクでお願いします」

『OKじゃ。儂のキャラクリは自由度高いぞ。服も作れる』

「マジかよ。結局初期設定で始めるヤツじゃん」

 

 などと言いつつ、結局イケメンにキャラクリした。

 

 

 

 

 

 

 

 

┌(┌^o^)┐

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 という訳で、俺はいつの間にか前世とは変わらないような町並みのど真ん中に放り出されていた。

 

「成る程、ここが小説のハウス痛ってェェ?!!?!」

 

 ウォォォ…いったいなんだ急に?!敵襲か?!

 

「…ん?コレは──」

 

 俺は目の前でゴトリと音を立てた…おそらく俺の頭に直撃したのであろう黄色い箱を持ち上げる。

 

「いやマリオじゃねぇか」

 

 ハテナブロックだった。

 

「成る程ね、コレが1日一本の……なら尚更ハテナブロックはヤベェだろ。天下のマリオだぞ。ハテナブロック叩いたら刃物出て来たとか子供泣くわ」

 

 矢張り上位者は上位者、人の心などわからないし理解しようともしない、ハッキリわかんだね。

 

 取り敢えずここを移動しよう。さっきから通行人の目が痛い。

 

 

 

 

 という訳でやってきました大きな公園!寝虎公園と言うらしい。その名の通り、公園の真ん中に大きな寝そべった虎の遊具がある。

 にしてもカスみてぇな名前だなマジで。

 

「では、転生後の準備運動……ナウ!」

 

 ハテナブロックをそこら辺のベンチに置いて、軽く屈伸、伸脚をしてからそのまま疾走。公園の外周を3秒ほどで一周し、進路を変えて疾走からの跳躍、側転、前転を挟んでから再度跳躍し、5m以上はある虎の遊具を軽く飛び越える。

 

「うっはッ!こりゃすげぇや!」

 

 空中で飛び込み選手の如くクルクルと態勢を変えながら、綺麗にスタッと着地。そして周囲から上がる歓声。

 おっと、どうやら目立っちまったみたいだな……キャラメイクでイケメンにした甲斐があったと言うもの!

 

「おい見ろよ!スゲーぜ!」

 

 フッ、もっと目に焼き付けろ幼き者共。なんなら握手とかしに来ても………

 

「マリオの奴だ!」

「でっけー!」

「叩いたらキノコ出るのかな!」

 

「そっちかいッッ!!!!」

 

 クソッ!マリオは偉大だったか………

 

 まぁ良い。知りたい事はある程度わかった。準備運動感覚であの運動能力、そして思った通りの動きを出力出来る神経伝達精度。本気なら更に出力を出せるな。伸びしろもあると見た。

 

「って勝手に持っていこうとすんじゃねぇよガキ共め」

「なんだこのおっさん?!」

「さっき凄く飛んでたおっさんだー!」

「逃げろ逃げろー!」

「逃げれると思っていたのか?」

「「「ヒェッ――」」」

 

 しかし回り込まれてしまった。なんでって顔をしているな?教えてやろう……大人からは逃れられない。

 あと誰がおっさんだ!お兄さんダルルォ?!ちゃんと肉体年齢も20だぞコラ。

 

 

 

「ふいぃ……」

 

 子供の相手は疲れる。などと思いながら、私はハテナブロックを置いていたベンチにドカッと座り、準備運動でじわりと出た汗を適当に拭った。

 にしても便利なモンだなこの貰ったスーツ。めっちゃ夏真っ盛りの中、長袖長ズボンだってのに全然暑くねぇ。なんか生半可な衝撃じゃ絶対に破けたりはしないらしいし、どういう素材なんだろうね?

 

 まぁンな事はどうでも良いや。取り敢えず今後の動きだが……あの毛玉神から聞いた話だと、この世界は魔法少女モノの世界観してて、鬱で、主人公がTSしてて、鬱で、エログロ要素があって、鬱で、ドロドロした胸糞描写があって、鬱らしい。

 

「………ほ〜ん、成る程な?」

 

 いや成る程じゃないがね?つまりは毎日の様に怪人やらなんやらがそこら辺で暴れると言う訳だ。おまけに面倒事は怪人だけでは無さそうなのだ。

 ………何だそれ地獄かね?

 

 あの毛玉はどうにかなるとか言ってたが、一人でどうにか出来るんですかねコレ。

 

「………所で」

 

 さっきのガキの一人が私の隣……つまりベンチの隅をチラチラと見ていてな、それで気づいた。

 

 な〜んか女子がこっち見てんだけど。白いフードの下からこっち見てる目ェが死んでんだけど怖。

 

「やぁ、こんにちは。良い天気ですね」

「ッ………」

 

 まぁいい天気だったのはさっきまでだったけどな。

 

「こん……にちは………」

 

 緊張しちゃってェ……まぁこんなハテナブロック持った怪しい奴に声かけられたらそうもなるか……いや、こっちチラチラ見てたこの女も悪いと私思います。

 

「君は遊ばないのかい?」

「…………」

 

 不味い、変なお兄さんの分際で馴れ馴れしかったかこの台詞……

 

「ん?」

 

 待て?なんでこんな静かなんだ?さっきまで大人も子供も帰る気配無かったろ。

 

 この一瞬で、公園にいた人間が消え去ったってのか?

 

「おじさん」

 

 うわビックリした。さっきこのおなごをチラチラ見てたガキか。突然横から話しかけるんじゃないよ。心臓止まるでしょ。

 

「少年、お母さんやお友達は何処行ったか知ってるか?」

「うん。こっちだよ」

 

 そう言うと、ガキは私の手を掴んで引っ張ろうt力強っ?!

 なんだこのガキ?!ただのガキじゃあねェ!スタンド使いか!

 

「ッ……カット(断絶)

「おや?」

 

 わー!腕が斬れた!子供の腕がスプラッタになった!

 もう片方の手を掴んでるおなごが斬ったのかなァ?!状況と台詞的に!てかいつの間に掴んでたのかね!

 

「こっちだ…!」

「うぉぉお?!」

 

 私は自由になった腕で咄嗟にハテナブロックを掴み、この白コートのおなごに手を引かれるまま走り出す。つか、どいつもこいつも力強えな?!それとあのガキの様な何かはどうなった?!

 

「おやおやおや…コレはコレは、何処へ行くのですかな?姫様』

「違う…っ!オレは、オレは姫なんかじゃない……!」

 

 わー、頭から真っ二つに割れて中から蜘蛛みたいな人型怪人が出て来やがったぞ。割とコッテコテだな。一蘭の豚骨ラーメンくらいのコテコテさだ。

 

 んでまぁ、魔法少女モノの世界観にそういう感じのスパイスか、成る程な?

 

「そんじゃ……そらっ!」

「えっ?ひゃっ?!」

 

 手を引っ張るおなごを逆に引き寄せ、ハテナブロックとおなごをそれぞれ脇に抱える。そして私は、派手に力を込めた両足で地面を蹴り、勢い良く飛び上がる!

 

「サァラダバー!!!」

 

 

 

『矢張りあの男もですか。ですが、逃しはしませんよ』

 

 

 

 

 

 

 

 ハッハァ!見て見て!私今屋根の上を飛んだり走ったりしてる!まるでバトル系の創作物みてぇだなオイ!一応バトル系の世界だったわ!

 

《悪性魔力を検知。次元境界を生成します。お住まいの方々は、端末に従って避難して下さい》

 

「ア?」

「え、あ、そんな……」

 

 そこら辺の電柱に備え付けられていたスピーカーから、そんな台詞が響く。それと同時に、遠くの地面からハニカム構造の透明な膜が瞬時に空へ伸びて、私達とその周囲数十メートルをドーム状に覆った。

 

『あーあ、閉じ込められてしまいましたね』

「うわきた。こっち来んなマジで」

 

 赤と黒のイヤな色をした蜘蛛怪人が、背中から生える八本の足からそれぞれ糸を出し、電柱に貼っつけて振り子のように高速移動しながら近づいてくる。

 お前それ、多分普通に走ったほうが速くね?ここ住宅街だぞ。それにその移動方法は親愛なる隣人の特権だろうが。テメェどう見ても隣人要素ねぇだろ。

 

『フッ!』

「うわっキメ─うわっ殺意タケェ?!」

 

 背中の脚で作り上げた蜘蛛の巣を飛ばして来たから避けたけど殺意タケェな!電柱と2つ程の家の角がバターみたいに斬れた上に吹っ飛んだぞ?!いつでも降りれる様に道側に寄っておいて良かった……あ、ゴメンな少年。親には誤魔化しておいてくれ。

 

『ちょこまかと………!』

「ハッ!サイコロステーキにされてたまるかっての!」

 

 気配で蜘蛛の巣が飛んでくる位置を予測して、左右に飛んだり、跳躍による急加速で回避する私。

 

「くぅ、んっ…くそっ」

「ん?オイオイじっとしてろ!あっ待って、脇がこそばウェッヘッヘッ!」

「ちゃんとして!死ぬよアンタ!」

「ウィイッス!!!」

 

 おなごは脇に抱えられた状態のままモゾモゾと動き、片腕と首を少ない可動域の限界まで後ろに向ける。

 

ディナイアル(否定)!」

 

 おなごがそう口にすると、かざされた手の先から飛んで来る蜘蛛の巣が、あらぬ方向へ吹き飛び、跡形もなく破裂する。

 

『ッ…おやおやおや!其処までお仕置きされたいのですね!』

「ひっ…あ……」

「ほ〜……まぁ兎も角サンキューだ少女。これで充分間に合うぜェ!」

 

 なんかおなごが不穏な感じになってるが、それは後だ。目の前には、ハニカム構造の壁が見える。

 

 取り敢えずハテナブロックを投げてみた。結果は良い意味で予想してたのと違って、液体にモノを落としたみたいにすり抜けた。コレなら………

 

「行けるぜェェェェ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

アレェェェェェェエ?!!?!」

 

 …………いや、私は出れた。前のめり気味な態勢で走ってたから、頭がハニカム構造の壁を貫通したのは確実だ。

 だが次の瞬間、引っ張られる様な感覚によって上半身が固定され、爆走していた下半身はそのまま宙へと投げ出された。後は重力に従って自由落下である。頭痛ぇなオイ!

 

 逆様の景色に、ハニカム構造の壁越しに私を見ていた少女と目が合う。

 

「大丈夫か少女。今そっから出して──」

 

 直ぐに立ち上がり、少女の手を取ろうとしたが、手に伝わったのは平たい感触だった。さっきまでガバガバに通していたハニカム構造は、ちゃんと壁の役割を果たしていた。

 いや、今になって壁面すんじゃねぇよマジで。

 

「クソッ、どうなってやがる?」

「………オレの事はいいよ」

「ア?」

「オレの事なんていいから、お前は早―くぁっ?!」

『ハイハイハイ、其処までですよ人間』

 

 少女の体に糸が巻きつき、一瞬で拘束する。

 

『そこの人間も確保しておきたかったが……まぁいいでしょう。さ、大人しく来てくださいね〜。この邪魔な壁が消え次第、早く帰らないとですので』

 

 あークソッ!殴っても蹴っても全然壊れんなこの壁ェ!何で出来てんだよマジで!これじゃああの少女を助けることが出来ねぇだろうが!

 何か……コイツでどうにかなるか?

 

「…………ありがと」

「ッ?!」

 

 引きずられる少女が、そう口にする。

 

「オレを助けようとしてくれて、ありがと……っ」

 

 TS主人公の鬱小説と言ったあの毛玉の言葉と、目の前で涙を流す少女を脳内で反復させる。

 直ぐにハテナブロックを拾い、ハニカム構造の壁を殴りつける。

 

「きっとアンタは、オレの事っ…なんも、知らないんだろうけど……嬉しンンっ?!」

『大人しくしろと言った筈だが……まったく手のかかる母胎だ』

 

 糸で口を塞がれ、そのまま引きずられていく。それでもずっと、私に逃げて欲しいと…そういう顔を少女は向けていた。

 

 

 

 

 実に、いい子だ。

 

 

 初対面だが、私はあの少女を好ましく思っている。

 

 

 だっていい子だし。いい子なオーラが全身から溢れ出ている。

 

 

 きっとあの少女は、私に逃げて欲しいと願い続けるだろう。あの蜘蛛怪人は、どうせ諦めて逃げるとか考えているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「ンな訳ねェだろ虫野郎」

 

 殴り続けた事によってひび割れたハニカム構造の壁に、勢い良くハテナブロックをブン投げる。

 壁を突き破ったハテナブロックは、壁が砕けた音で振り返っていた蜘蛛野郎が咄嗟に作った巣で受け止められた。

 

『ッ?!なんだこの箱は?!ワタシの糸で斬り裂けないだと?!』

ッングム(どうして)?!」

 

 人ってのは臆病だ(個人の感性です)特に現代人はな(個人の感性です)子供の頃は誰だって他人を助けてヒーローになってみたいのに、力は無く、度胸しかないんだ(個人のry)その度胸も歳を重ねるにつれ無くなって……最終的に、見返りが無いだとか、そういう適当な事を言って見て見ぬふりをしてしまう大人の出来上がりだ(個人ry)

 でもそれは仕方の無い事だよな。みんな自分を最優先にしたい。私も自分が最優先だ。みんな力が無いなりに、自分を守ってる。

 

 でもよォ、他人を助ける度胸と力があるのなら話は別だよなァ?!まぁ度胸に関しては持ち前だけどよォ、今は力もあるんだァ…なら、助けてやらねぇと行けねぇよなァ!つかここで助けなかったら宝の持ち腐れもいいとこだぜ!

 

 それによォ!

 

 

 

 

 

 

 

「TSキャラは曇らせてなんぼとかって話だが、曇らされて喜ぶ奴がいる訳ねェだろ!行くぞォォォオ!!!!」

 

 破れた箇所から体を滑り込ませ、直ぐ様跳躍し、受け止められたハテナブロックブロックごと蜘蛛野郎の頭を蹴り飛ばす!

 蜘蛛の巣越しにハテナブロックの角が直撃した蜘蛛野郎は、そのまま錐揉み回転しながら吹き飛んでいった。ハッ!ザマァ見やがれってんだ。

 

「よ、大丈夫か少女」

「ンンッ──ぷはっ!アンタ、どうして?!」

「お前がいい子だから!」

「……は?え、は?」

 

 呆ける少女を余所に、私は彼女を拘束する糸を引き千切り、蜘蛛野郎の方へ向き直る。

 あ、手に切り傷が…まぁええか!

 

『………いいでしょう。このワタシの顔を傷つけた報いとして………先ずは貴様からブチ殺してやるぞ人間がァ!!!』

「やってみろよォ!!!」

 

 蜘蛛野郎は直ぐに態勢を立て直すと、4本の太い糸を束ねた斬撃を2つ撃ち出す。

 だがまァ、その何でも斬れそうな糸の対処法は、既に見当がついてんのよ!

 

「ドラァッ!」

 

 地面に転がっていたハテナブロックを蹴り飛ばす。

 テメェもテメェだぜ、さっきから衝撃を与えてるってのに武器を出す気ねェ感じしやがって。

 

「私の後ろに隠れてな!」

 

 そう後ろの少女に言いながら、糸の斬撃とハテナブロックが衝突した事によって生じた爆風と煙を耐える。

 

 そして、爆風の発生地点から飛んできた得物を、この手で掴み取る。

 

『ハッ、巣で細切れにならなかったからと言って、糸を束ねればこれこの通オァァァァァアッ?!!?!?!』

 

 詰めの甘い蜘蛛野郎だ。慢心か?なんかの王様にでもなってからにしろよそういうの。

 顔に衝撃を受け、縦回転してブッ倒れる蜘蛛野郎を見ながら、片方の手で柄を握り直し、もう片方の手で鎖を手繰り寄せる。

 自由落下した鉄塊が、地面を砕く。

 

 いいねぇコレ。モーニングスターなんて初めて触るが、妙に手に馴染むじゃないの!

 

『ッ……魔導具だとォ?そんなモノで……このワタシの顔を傷つけるだとォォォ?!』

「ハッハァ!いい顔だなナチュラルの玩具野郎!(?)来いよ!テメェのヌメヌメした甲殻をブチ割ってやるぜ!」

 

 潰れた2つの片目からドクドクと紫色の血液を垂れ流しながらも、怒りを顕にする蜘蛛野郎。ソイツの背中の八本脚から、シャキンという小気味よい音と共に刃が飛び出る。

 そして私も、鉄球の表面全体を覆うように、ジャキンと無数の刃を展開させ、吶喊する!

 

『シャアァァァ!!!』

「キェェェアァァァア!!!」

 

 八本の脚と鉄球の応酬。初めはモーニングスターの一振りで3本程の脚の連携攻撃をブッ壊していたが、攻撃速度の都合上、圧され始めたので直ぐに無駄に長い鎖を腕に巻き付け、リーチを短くして攻撃速度を上げる。

 ガハハ!フィジカルギフテッドによるゴリ押し攻撃だ!脚しか出まい!まぁその人間的な手は防御に使ってる様だが、攻撃速度に追いつけてねェなァ!その内モゲるんじゃねェかァ!

 

『舐めるなァ!』

「そっちがなァ!」

 

 鉄球を弾いたからってなんだ!鉄球が無くなりゃ拳でぶっ飛ばすぞ!今のアッパーカットの様にな!

 

『効かn─』

「ワァァァァァア!!!!」

 

 コレ拳効いてねぇ!現代兵器とか通じないタイプか成る程な!

 直ぐに鎖を腕に巻き付け鉄球を手繰り寄せ、鉄球の直ぐ下辺りを掴んで蜘蛛野郎の頭部を上からブッ叩き、今度はこの鉄球で下からアッパーカットでブッ飛ばす!

 

『クソ…がァァァア!!!』

 

 蜘蛛野郎は直ぐに態勢を整え、糸の斬撃を発射。私はソレをモーニングスターのリーチを活かして迎撃するが、その隙間を練って蜘蛛野郎が近づいてきた。

 

 俺は脚の刃を鎖で防ぎながら鉄球を手繰り寄せ、後ろからの攻撃を蜘蛛野郎が避けるのを利用して距離を取り、改めて鉄球を振り回し、激しい剣戟を繰り返す。

 

「ハッハァ!さっきからキレてばっかだな!敬語はどうした敬語はァ!」

『黙っていろ家畜めがッ!』

「豚箱の隅で暮らしてそうな虫野郎がエラい態度だなオイ!」

『ッ…決めたぞ!先程は殺すと言ったが貴様は殺さない!先ずは意識のあるままその邪魔な生殖器を細切れにしてやる!』

「ち〇こを細切れ!?言ってることもヤろうとしてる事もさっきから過激が過ぎるなコイツ!地上波の限界はマスターベーションで精子を撃ち出すまでなんだぞ!」

『意味のわからん事を!余裕な態度も今の内だ。生殖器を細切れにした後は、性転換させゆっくりと生体魔力を搾り取ってやろう!公園で攫った家畜共と同じ様にな!』

「マジかよ嘘だろ?!想像していたけど一番聞きたくなかった言葉が出やがった!チクショウ帰りたくなって来たぞ!」

『もう遅いわ!』

 

 プシッ

 

 痛ッ─なんだ?腕から血が…いつの間に攻撃を受け──

 

 プシッ

 

 ッ!いや違ぇ!いつの間にか、私の周りに奴の糸が張り巡らされているだと?!

 

『ようやく気づいたか。だがもう遅い、脱出不可能よ。張り巡るは面影糸、一度入れば生きては出れぬ我が秘奥義──』

 

 

 

 

 雁搦斬糸切牢(がんがらざしきろう)

 

 

 

 

 なんだそのカッコイイ名前は!必殺技ってか!敵が必殺技なんか使ってんじゃねぇよ!

 

『どうやらその体の脆さは生物基準の様だな。自由に動いて良いぞ?少しでも動けば、貴様の四肢は千切れ飛ぶがな』 

「チィッ……!」

 

 蜘蛛野郎は、張り巡らされた糸の上を悠々と歩きながら、私の方へ近づいてくる。背中の脚の刃同士を擦り合わせ、割れた口を舌なめずりしながら。

 

『まぁ動かずとも、貴様の生殖器は八つ裂きだが』

 

 アカン殺られる!私の息子♂が斬刑に処されてしまう!TSさせられる前に物理的にTSさせられてまう!まだ私童貞なのに!

 

『フフフッ……』

 

 ヤッベェ!怖ェ!TS鬱小説でTSする、それは正しく死を意味する!物理的な死じゃねぇ、そんな死よりも恐ろしい人間的な死だ!だってTS鬱小説だぞ?!それと蜘蛛野郎の台詞から察するに、TSの先に待っているのは陵辱だ!私は詳しいんだ!体験はしたことは無いが、参考資料(エロ漫画)を読んでりや容易に想像出来ちまう!快楽の地獄と言う恐ろしさを!

 おまけに生体魔力?だかを搾り取るとまで言っていた。つまり触手と丸呑み系のジャンルがあるのは確定的に明らか!私そんな目に会いたくないんだがァ!

 

 ギャアァァァ!!!走馬灯がついでに私の最悪なTS性活を高解像度で想像しやがった!死ぬ前に怖くするのヤメロ!

 

『死ねェェェェ!!!!』

 

 イヤァァァァァ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

リジェクト(拒絶)!!!」

 

「ッ?!」

『何ィィ?!』

 

 おなごォ!!!ナイスゥ!!!

 突如私と蜘蛛野郎の間に現れた水色のクリスタル風味な壁が、私の息子♂目掛けて飛び掛かろうとしていた蜘蛛野郎の行く手を阻んでいた。おそらく後ろで縮こまっていた少女が私の息子♂を助けてくれたのだろう。神の使いか?GOD_syoujyoだな!(確信)

 

「待ってろ、今からその糸を─『貴様ァァァッ!!!』ひっ……!」

『この糞袋女がァ!産めるからって特別に扱っていりゃ、面倒な事ばっかしやがって!後でコイツと同じ様に生体魔力を搾り取って使い捨ててやるからなァ!!!』

「あ……ぃや、やだ……アレ、だけは……」

『そうだ、テメェはもう絞られるだけの雌なんだよ!大人しくそこで震えて──』

 

 

 

 

 

 

「なぁ君」

「――ッ!」

 

 蜘蛛野郎の声で震えていた子供に、私は優しく声をかける。

 

「君にアイツの嫌らしい脚は一本たりとも触れさせはしない」

 

 子供が、顔を上げる。

 

「だから君も頑張れ」

 

 この子供がなんなのかは知ったこっちゃない。

 まだまぁ、私がこの子に言えるのは、こんな事だけだが……

 

 それでも─

 

「ここで頑張ったら君、めっちゃカッコイイぜ」

 

 大人として、ガキにシケた顔させていられるかよ。

 

「〜ッッ!……うん!」

『人間ンンンン!!!』

 

 ヨシッ!(確認猫)

 

「ス〜ッ……カット(断絶)!」

 

 私の周りに張り巡らされている大量の糸が、数本千切れ飛ぶ。

 

『クソがァァァ!!!』

カット(断絶)!カット(断絶)!カット(断絶)!…カット(断絶)!」

『このッ、珍しくも無い拒絶魔法の分際でェェェ!!!』

カット(断絶)カット(断絶)カット(断絶)カット(断絶)カット(断絶)カット(断絶)カット(断絶)……!」

『このワタシがァ!止められると思うなァァァ!!!』

 

 

 

 

 

「カッコよかったぜ、少年(・・)

 

 

カット(断絶)!」

 

 一際大きく少年が単略詠唱を叫び終えると同時に、蜘蛛野郎は吹き飛んだ。

 私は、ぶん投げた鉄球に繋がる鎖を掴み、引き寄せ、振り回して、中途半端に残った全ての糸を千切り飛ばす。

 

「フィナーレだ」

 

 蜘蛛野郎に吶喊。向こうも直ぐに態勢を立て直すと私の攻撃に対応する。

 

「ドラァ!」

『ッガ…ァ?!』

 

 数十回にも及ぶ高速の剣戟。だがその中で私は蜘蛛野郎の人間的な腕の骨を砕いた。

 そして至近距離でありながら鉄球を投擲。蜘蛛野郎は腕のダメージがありながらも、ソレを避け反撃しようとする。

 

 が、私はもうそこにいない。その投擲はただの目眩まし程度の囮だバカめ!その一瞬の隙に蜘蛛野郎の八本の脚、その片側の4本に鎖を巻き付けながら背中に周り込み、鉄球を引き寄せてその脚を叩き割る。

 

『ヤメッ──グアァァァア?!!?』

 

 一発で折れなかったか。

 

「でもまぁ、どうやらそのヌメヌメした甲殻の下は、私達と同じ強度の様だ………なァ?!」

『ギャアァァァァァァァァァア!!!』

 

 蜘蛛野郎の背中を片足で蹴りつつ、鎖を一気に引っ張って、千切れかけていた脚を引き千切る。

 おっと紫の血が。浴びたくねぇから離よ。何が感染るかわかったもんじゃねぇし。

 

『ハァーッ!ハァーッ!ハァーッ!お、お前は………』

「ア?」

『何なんだ、お前はァ?!』

 

 

「OK、じゃあもう一度説明しよう」

 

 ブン殴る。頭だけではない。体を、腕を背中を、脚を、殺意の高い鉄球で必要以上に殴打し続け、切り傷と打撲傷で全身を覆い尽くして行く。

 

「私の名は起白廻醒(おきしろかいせい)。一度死んでから数時間前に、たった一人でこの世界に転生して来た………ただの人間だ」

『貴様の何処ガハァッ?!』

 

 蜘蛛野郎の顔を殴って黙らせ、体を鎖で縛り、背負投げの要領で地面に何回も叩きつける。

 

「後は知ってるだろう。ハテナブロックを拾って、公園で準備運動をした」

 

 蜘蛛野郎を壁に叩きつけ、刃を収めた鉄球を蹴ってぶつける。そして鎖で引き寄せて、また蹴ってぶつける。徐々にスピードを上げながらソレを繰り返す。

 

「そこで訳ありなガキと出会って……今、そのガキに嫌らしい事をしようとする最低な奴をぶっ潰して、彼を助けようとしている」

 

 最早喋れない程にベコベコになった蜘蛛野郎を引っ張って、もう一度背負投げの要領で地面に叩きつける。

 

「それが、この私だ」

 

 最後に、血と空気を吐き出す事しか出来なくなった顔へ向かって、再度刃を展開した鉄球を、渾身の力で叩きつけた。

 

 ………死んだか?死んだな?ヨシッ!

 

「どうだ少年!君に嫌らしい事をしようとした蜘蛛野郎を、潰して潰して潰して、醜い肉塊に変えてやり─おっと…そうだな」

 

 こっちにバッと走って来て、勢い良く抱きついてきたガキの頭を撫でる。

 

「頑張ったな、少年」

「ん……ッ………ありがと」

 

 ハッハッハ、泣くがよい泣くがよい。私の服で涙を……あの、鼻噛むのはやめてくれない?うぉ…ママエアロ。これ言ったら絶対嫌われるから言わないけど、背丈にしてはデカい胸の感触が良いのでヨシッ!

 

 そういや、神様から貰ったコレにも感謝しないとな。記念に名前をつけてやろう…………

 

 シュピネルブレッヒェン(蜘蛛砕き)、そう名付けたよ。

 

 

 

 …………急に恥ずかしくなってきた。やっぱ無しで!ここカットでお願いします!

 

 無理?そんなー………

 

 

 

 

 

 

┌(┌^o^)┐

 

 

 

 

 

 

 

 音もなく崩れていくハニカム構造のドームを、宙に浮きながら見つめる影が3つ。

 

 その3人は皆、少女であった。それぞれ色も形も違う、派手でフリフリした可愛らしい服を纏い、その手に大きさも殺意も少女らしからぬ得物を携えていた。

 

「はい、既に魔神の眷属(デモンズ・ヘンチマン)は処理されていました。処理した者はおそらく転生異能生命体(リンカー)かと。そしてもう一つ、その彼らが探していた受胎魔女と特徴が一致する性転者(リバーサー)も一緒です………はい、了解しました」

 

 少女の一人が、インカムから手を離し、後ろにいる残りの2人へ顔を向ける。

 

「作戦変更。コレより、転生異能生命体(リンカー)の排除、及び受胎魔女と思しき性転者(リバーサー)の回収を遂行します」

「「了解」」

 

 その目に光は無く、絶望という濃い闇で濁り切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 『リジェクション・ウィッチ♡』と言う小説があった。蜘蛛野郎を倒したあのバカが転生した世界の元ネタである。

 第一巻を、主人公『梓澤(あずさわ)にとり』が本作の敵役である『魔神の眷属(デモンズ・ヘンチマン)』に連れ去られ、魔女と呼ばれる存在へ女体化させられ、その上数少ない魔毒耐性を持っていたと言う理由で陵辱と出産を経験し、一度は逃げるも、友達にも家族にも裏切られ、更には自分と同じくTSさせられたお陰で魔神の眷属達と戦う事が出来る魔女達にも命を狙われ、最後にはあの蜘蛛野郎に連れて帰らされ、全てに絶望して復讐の化身となる……という展開で〆た作品だ。

 

 勿論一般受けはしなかったが、年齢制限ギリギリの陵辱描写や、その容赦ない展開から、その手の人達に人気の一冊である。

 

 だが!そんな世界に転生してきた原作を知らない一人のバカのお陰で、主人公の復讐者フラグがブチ折れてしまった!

 そのせいで、この世界の原作開始前の時間軸に転生し、原作開始まで裏で着々と準備を進めていた同じ転生者の皆々様の計画が、一気にご破産になったのである。

 

 はてさて、コレからどうなりますことやら。








プロットなんてモノはねェんだ。先ず大勢に読まれる読まれない以前に、書くかどうかすらわかんねぇからな。てなわけで、ここまで楽しく読んでくれたら何よりだぜ。

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