蓮ノ空に戻ってきてから、瑠璃乃は作曲に頭を悩ませていた。
さやか「お疲れ様です。瑠璃乃さん。だいぶ参っているようですね」
花帆「旅行自体はうまくいったって言ってなかった?」
そこに、花帆とさやかがやってきた。瑠璃乃にどうだったの?と、聞くと、瑠璃乃は『アハハ…』と、苦笑する。
瑠璃乃「うん。楽しかったし、3 人にも楽しんでもらえたと思う。改めて、たくさんいい歌詞も思いついた。みんなのおかげで。それはいいんだけど、いいんだけど……今度はなんか、ただ全部見せただけみたいになっちゃって」
さやか「それの何かまずいんですか?」
瑠璃乃「はあ、見てもらった方が早いかも」
瑠璃乃が花帆とさやかに作った歌詞を見せる。そこには……。
花帆「どれどれ……? こ、これは…カオス……」
さやか「カオスの意味としては、大地と海と空すらの混ざり合った混沌を指す言葉でもあるので間違ってはいないかもしれませんね。能登の混沌が詰まっている、いい曲かもしれません」
瑠璃乃「フォローになってないよ!」
さやかの全然フォローになってない言葉に『バタン!』と、机に倒れ込む瑠璃乃。
花帆「全部乗せたい気持ちは分かるんだけど……」
瑠璃乃「う。どうすればいいかな?」
さやか「……瑠璃乃さん。昔、綴理先輩が曲を作る時に言っていたことがあります。たくさんの思いが溢れてしまっているのなら、必要なのはそれらをまとめる、1本のリボンだと 」
綴理がかつて話した、想いを纏めるための1本のリボン。それはそのまま、今の瑠璃乃に当てはまる。
瑠璃乃「1本のリボン……ありがとう。さやかちゃん、花帆ちゃんも。ルリ、もう少し考えてみるよ」
―――翌日の放課後、瑠璃乃は校庭でギターを弾き語りしながら曲を作っていた。
吟子「瑠璃乃先輩」
瑠璃乃「あ、吟子ちゃん。ヤッホー」
そこに、吟子がやってきた。
吟子「探していました。花帆先輩たちから聞いて。その? 曲がうまくいってないとか」
瑠璃乃「あはは……。せっかく能登までついてきてくれたのに不甲斐ないばかり………」
吟子「いえ、むしろ最後まで力にならせてください。地元を愛する者同士です」
瑠璃乃「ありがとう。吟子ちゃん」
苦笑する瑠璃乃。吟子は隣に座り、
吟子「歌詞、見せてもらってもいいですか?」
瑠璃乃「はい」
吟子が歌詞を見る。―――と、
吟子「……なるほど。"カオスを感じられるよ"などと、花帆先輩が言っていましたが……」
瑠璃乃「まとめが欲しいんだ。ぎゅっとここに溢れている気持ちを絞ってさ。さやかちゃんは1本のリボンって言ってくれたけど」
吟子「絞るですか?そういえば、瑠璃乃の先輩は言ってましたよね。私たちに能登を案内してくれたルートも色々絞った末の結論だったって」
瑠璃乃「う、うん。1日じゃ回り切れないからね〜」
能登は広い。名所すべてを一日で回ることは間違いなくできない。
だからこそ、瑠璃乃は迷いながらあのコースを選んでいた。
吟子「どうしてあのセレクトだったんですか? やっぱり能登の自然を感じられるから?」
瑠璃乃「あれは巡って気づいたことだから……」
吟子「なんとなくですけど、瑠璃乃先輩が選んだ場所1個1個に、気持ちをまとめる鍵があると思うんです」
吟子の言葉。瑠璃乃の選んだ場所の共通点―――。
瑠璃乃「待ってね。ちゃんと考える。イカキングはやっぱり能登に来たみんなが、分かりやすく興味を持てる場所だと思って。でも巌門もコスモアイルも、そうか……。きっと来た人が楽しめる。そんな確信があったからかも」
吟子「そうですか。今回も私たちに 1人1人に合わせて選んでくれたんですね。実際旅をした私たちはとても楽しかったですよ」
瑠璃乃「それが、ルリは何よりも嬉しかった――吟子ちゃん?」
吟子はそんな瑠璃乃の様子を、微笑みながら見つめていた。
吟子「ああいえ、すみません。私と瑠璃乃先輩はやっぱり違うなと思って。私が時間のない中で金沢を案内するなら、きっと1番深く金沢を知れる場所を優先します。もちろん楽しんでほしいとは思いますけど、瑠璃乃先輩はまず楽しんでくれることが1番なんだな、と」
瑠璃乃「それはそうかな? 究極、なんだかわかんないけど楽しかったって言われたら満足」
吟子「私は絶対へこみますね。それは。だから、やっぱりその瑠璃乃先輩の思いやりが根っこにあるんだと思います」
瑠璃乃「……"能登はやさしや土までも"。って。吟子ちゃんも聞いたことあるよね?」
吟子「あ、はい。石川県民なら大体知ってるんじゃないですか?」
瑠璃乃「かもね。ルリはこの言葉が好き。能登は土まで優しい。だから誰が来ても楽しめると思うんだ。――あ」
瑠璃乃は―――、何かに気づく。
瑠璃乃「きっとそうだ。これが能登の観光をまとめるための一番大切なこと。ルリの気持ちは能登そのものなんだ」
吟子「何と言うか、改めて聞くと能登って瑠璃乃先輩みたいですね」
瑠璃乃「そっか、泉ちゃんにも似たようなことを言われたな。だとしたら、ルリにとってこんなに誇らしいことはないよ」
瑠璃乃は話を続ける。
瑠璃乃「みんなに能登を案内できたことは本当に嬉しかった。楽しかった。能登にもっと胸を張っていいよってそう言われて。でも分かった。気になってた。けど違ったんだ。能登は、ルリの心。まずはルリに胸を張ることが大事だったんだ」
そして、顔を上げる瑠璃乃。
瑠璃乃「"能登はやさしや土までも"。きっとみんな楽しめる場所だよ。能登は、ルリみたいな場所だから!」
そして翌日、――蓮ノ空スクールアイドルクラブ部室。
瑠璃乃「皆さん。皆さんのおかげでできました。【おいでよ!石川大観光II】」
セラス「ツー!!」
さやか「あ、能登大観光から変えたんですね」
瑠璃乃「うん、金沢に負けず劣らず、絶対観光すべき石川の名所を歌う曲だからね」
瑠璃乃の作った新たな"おいでよ!石川大観光"。能登の素晴らしさが、誰にも伝わるように作られていた。
姫芽「もう! るりちゃん、先輩の地元は世界一だーー!」
吟子「金沢だって負けてないけど……、まあいいでしょう。同じ石川です」
負けず嫌いな吟子。だが、同じ石川なのでPRできることは素直に喜ばしい。
花帆「うん、すっごく楽しそうなのにとっても優しくて。能登が本当に素敵な場所なんだっていうのが伝わってくる」
泉「実際に足を運んだ。私から見ても会心の出来だ。それに、これならきっと能登のスクールアイドルたちも喜んでくれるのではないかな」
セラス「今度はこの歌詞通りに、みんなで旅行したいです!!」
セラスの言葉に、湧くスクールアイドルクラブ。
小鈴「あ、めちゃくちゃいいですね。いつ行きましょうか?」
さやか「また1つ、叶えなければいけない夢ができましたね。瑠璃乃さん。素敵な曲だと思います」
花帆「うん。すっごい良かったよ!」
瑠璃乃「ありがとう。おかげさまで。吟子ちゃんも」
吟子「私は何もできていませんよ。でも歌詞を見た。みんなの反応が全てだと思う」
さやか「はい、能登に行きたいという気持ちが湧き上がってくる素晴らしい曲になったかと」
瑠璃乃「みんなで歌って、みんなで行こうね。能登の大観光! うん、絶対! おいでよ。ルリの、自慢の地元に!!」
― つづく ―
アニメが1月に始まるまでに、また新たな活動記録は果たして出るのか?