ハンドラー・ウォルター先生概念。   作:ヤマ

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 その火は、世界を超えてなお未だ絶えることなく。


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 024

 

 そうして二日後。つまり作戦決行当日である。

 俺は一人、最終確認を行っていた。作戦前ということもあるが、リオから依頼を受けた当初より状況が複雑化しているため、自分なりに整理する必要があると考えたからだ。

 連邦生徒会長の残した『何か』は正体不明の少女。

 同施設のシステムが吐き出した『key()』の用途は不明。

 廃墟内を徘徊するオートマタの出所は不明。

 その場所を封鎖していた連邦生徒会長の意図も不明。

 ……改めて考えてみても何一つ分からないままだが、これもまた一つの情報である。これらの不明な情報を少しでも解明していくために、俺たちは仕事をしているのだから。

 ただ、そう考えると、今回の作戦はどこまでいっても俺たちの都合によって仕組まれた作戦でしかないという事実も浮き彫りになる。

 アリスを観察するという目的のために、ゲーム開発部も、ヴェリタスも、エンジニア部も、セミナーも、C&Cでさえも、全員が俺たちに巻き込まれた被害者と言えるだろう。

 そんな思惑しかない今作戦は、各陣営の目的が異なる。

 ゲーム開発部は言わずもがな、G.Bible解析のため『鏡』の奪取。

 ヴェリタスは、ヒマリが開発した『鏡』を預かっていたにも関わらず没収されたという事実を隠蔽するために奪還を目論んでいる。もっとも、既にヒマリはその事実を把握しているので、隠蔽は無意味なのだが。

 エンジニア部は……どうやら面白そう、という興味本位での参加のようだ。ただし、ウタハはアリスに対して何らかの確認のために動いている節があるので注意する必要はあるだろう。

 セミナー及びC&Cは、『鏡』の防衛。

 そして俺たちはアリスの観察。

 こうして並べると、今作戦はやはり『鏡』を中心に行われるため、鏡争奪作戦というヒマリの命名は相応しいように思えた。

 リオの命名を貶める意図は決してない。

 ともあれ。

 今回の作戦でアリスの戦闘を観察する都合上、ヒマリを通じて既にセミナーにはゲーム開発部主軸の襲撃があることを密告している。

 ゲーム開発部には悪いが、奇襲が成功されては観察も何もない。

 とは言え、そのままC&Cとゲーム開発部が戦った場合モモイたちに勝ち目はないので、俺は必然襲撃側の指揮をしなくてはならないのだが──

 

「先に言っておくけれど……先生。今回の作戦において、シッテムの箱の使用を禁止するわ」

 

 と、リオから事前に釘を刺された。

 それは戦力差や状況を鑑みるに至極当然の要求であり、指摘としては正しいものだったのだが、しかし致命的に言葉が欠けている。

 

「……それはハッキング等への使用を禁止する、という意味合いで良いな」

「? ええ」

「はあ……」

 

 俺の問いに対して不思議そうに答えるリオ。

 やはり悪気は無かったらしい。当然のことを訊かれて困惑しているようでさえあった。

 そしてヒマリは、この会議で何度目か分からない大きな溜息を吐く。

 

「……リオ。先生に伝わったから良いものの、いい加減『察してくれるだろう』で伝える情報を省かないでください。今の発言は下手をすれば、『死んでこい』と捉えられても仕方ありませんよ」

「……そういう意図はなかったのだけれど」

「だから嫌われるんですよ」

「…………」

 

 容赦の無い追撃だったが、今のヒマリの発言がいつものような皮肉めいた口調ではなく、諭すような口調だったためだろう、リオは目を逸らして黙り込んだ。

 ヒマリの言わんとしたことを理解したらしい。

 忘れられがちだが、戦場において俺が生身で生存できる理由は、シッテムの箱、アロナの防御機構があるからだ。その使用を禁止されてしまえば、俺はいとも容易く流れ弾で死に絶えるに違いない。

 ヒマリの言う通り、実質的な死刑宣告である。

 その事実に気付いたらしいリオは、

 

「……私が伝えたかったのは、先生がシッテムの箱をハッキングに使用した場合、今回の作戦が成立しないということよ」

 

 と言い訳のように続けた。

 

「シッテムの箱の能力は、サンクトゥムタワーの件で私も把握しているわ。あの時──連邦生徒会長が失踪した際、連邦生徒会はサンクトゥムタワーの制御権を失った。それからと言うもの、サンクトゥムタワーは外部に晒され続けたにも関わらず、誰も掌握できなかった。キヴォトスの全てを担うあの塔を、どれだけ経っても攻略できずにいた」

 

 俺がキヴォトスで目が覚めた当時の状況は、随分と混沌としたものだったのだろう。

 三大学園のゲヘナ、トリニティ、ミレニアムからそれなりの立場の人間が集って直訴しに来ることなど、今にして思えば普通ではない。

 

「ウォルター先生。貴方が来るまではね」

「…………」

「貴方の話によれば、シッテムの箱がサンクトゥムタワーの掌握にかかった時間は二十秒以内。それに比べ、外部から遮断されていることで守られているミレニアムのセキュリティが六秒も外部と繋がってしまえば、無防備も同然よ。一瞬で掌握されて終わりでしょうね」

 

 リオは諦観したかのように淡々と言う。

 六秒というのは、ゲーム開発部たちが組み立てた作戦において、エンジニア部とヴェリタスが協力した際に発生する、セミナーのセキュリティが外部のネットワークに接続される時間である。

 この時に、ヴェリタスではなくアロナがハッキングした場合、侵入どころかミレニアムの全システムを掌握されてしまいかねないと、リオは主張しているのだ。

 そして、その懸念は正しい。

 今までの仕事から分かるように──カイザーという大企業を相手にしたことからも分かるように、アロナが介入した時点で、セキュリティというものは意味を為さなくなる。

 バックドアが作成されてしまえば、ミレニアムは全ての制御を失うだろう。

 

「……生徒会長としては肝の冷える話よ」

 

 リオは嘆息する。

 まあ、彼女の立場からしたら当然だろう。俺がこの力を乱用する人間だった場合、ミレニアムに限らず、キヴォトスの全てが破滅へと向かってしまうかもしれないのだから。

 そう考えると、ある意味アロナはキヴォトスのkey()なのかもしれんと、少し思った。

 ……あのファイルも、アロナのような少女のAIであれば良かったのだが、そこまで都合良く事は運ぶまい。

 

「ああ、それと……先生。作戦中に先導するようなことはしないでくださいね。あとで擁護するつもりではいますが、主導したと思われると面倒ですので」

「……そうだな。俺もある程度の悪評は覚悟しているが、別の仕事にまで影響を及ぼしたくはない」

 

 ヒマリの忠告に俺は頷く。

 以前ならいざ知らず、元魑魅一座を世話している今となってはシャーレに住む人間は多い。俺の収入が彼女たちの生活に直結することを考えると、俺の評判が悪化しても構わない、とは言っていられない。

 とは言え、ユウカからの信用低下は覚悟しておかなくてはならないだろう。

 普段はユウカを誤魔化すために苦心していたが、もしかすると今後彼女が来なくなるかもしれないことを思うと、寂しいような気持ちが湧いてくるので不思議だった。

 

「ところで、先生。ロイを帰さなくても良かったのではないですか?」

「……何故そこでロイの名前が出てくる。あいつは無関係だろう」

 

 三人で作戦内容を粗方詰め終えた頃、ヒマリが俺に対して唐突にそんなことを言ったので、俺はやや戸惑いながら答えた。

 今回の作戦にロイは無関係だと何度も彼女たちには伝えたはずなのだが。

 

「いえ、随分と彼女の動向を気にされているようでしたので。そんなに心配なら側にいてもらった方が良いと思いますよ」

「……そんなつもりはなかったが」

「ミレニアムの駅を出たかどうかとか、シャーレに無事に着いたかどうかとか。娘を心配する父親みたいですね」

「…………」

 

 ヒマリの言葉に、上手く返事ができない。

 心配──しているのだろうか、俺は。

 あの後、ミレニアムの駅を出たことをヒマリに訊き、ロイがシャーレに戻ったことをサホからの報告で確認し、現在はアビドスに来ていることをホシノから聞いているため、ロイが作戦に巻き込まれることはない。

 心配など不要のはずだ。

 ならば俺は──期待しているのだろうか。

 ロイが621のように、俺の指示を無視して行動することを。

 621のように、俺の手から離れることを。

 その想像は随分と身勝手極まりないが……もしもこの先、ロイが俺と敵対するようなことがあれば。

 それもまた、望ましい終わりなのかもしれん、と。

 俺は、そんなことを思った。

 

 025

 

 今作戦において、()()()()()()()()からの障害は、数え切れないほどに存在する。

 前提として、『鏡』の置かれた生徒会の差押品保管所は、セミナーが使用しているミレニアムタワーの最上階区画にあり、その西側に位置している。

 入口から差押品保管所へ辿り着くためには、四百四十二台の監視カメラと五十二体の警備口ボット、違法企業から押収した戦闘ロボット数十体を突破する必要があるようだ。

 その中でも一番の障害となるのは、最上階へ向かうために『エレベーター』を使用する必要があることだろう。このエレベーターは、生徒会の役員等、限られた人間のみ通過を許可する指紋認証システムが採用されているため、当然ゲーム開発部は使用できない。

 仮にエレベーターを突破したとて、セミナー所属の生徒、武装した警備員が配備されている上に、最上階は各部屋ごとにセキュリティシステムと連動したセクションで分けられているため、シャッターを下ろして他の部屋と隔離する機能もあるようだ。

 万が一シャッターが下りた場合、これもまた生徒会メンバーの指紋でしか解除ができない。

 そこで強引に突破しようと試みた場合、登録されてない指紋や強い衝撃が与えられると、別のチタン製シャッターが下りる仕様であり、その解除には生徒会役員の指紋と虹彩、この二つの認証が必要になるようだ。

 更に、そもそもエレベーターへ認可されていない人間が侵入した場合、最上階全てのセクションにシャッターが下ろされるようになっている。

 ……ルビコンにいた頃であれば、621に『障害は全て消していけ』と命令しているだろう。

 それほどまでに、ミレニアムのセキュリティは厳重だった。

 とは言え、無敵というわけでもない。

 まず、外部電力を遮断する方式に弱い。電力を絶つと自然に外部のネットワークに接続され、一時的にハッキングの隙が生まれる。

 エンジニア部製作の小型EMPを使用し、その隙を狙ってシステムを無効化した場合、外部に接続される時間は約六秒。

 その六秒こそが、リオの言った致命的な隙である。……アロナの使用は禁止されているが。

 

「ってことで、まずはアリスが最上階に通じるエレベーターの指紋認証システムをゴリ押しで扉ごと破壊します」

『──光よ!!』

 

 モモイの一言と同時、地震と見紛うほどの振動をもって、アリスが『光の剣・スーパーノヴァ』をエレベーター目掛けて射撃した。

 この衝撃で一時的に最上階のシャッターは下りるだろうが、侵入は時間をおいて行うため支障はない。

 今、ミレニアムタワーに繋がるエレベーター前にいるのはアリス一人だけである。俺を含め他の人員は別の場所で待機しているのだが、それでもアリスが砲撃したであろうことは通信を介さずとも確認できた。

 何度か見ているが、慣れることのない恐るべき破壊力である。アリスの『光の剣』により、エレベーターの扉は見るも無惨な姿へと変えられてしまった。

 攻撃力という点においては、やはりアリスの暴力的な破壊力は脅威と見るべきだろう──もっとも、力の扱いが上手いわけではないので、もしもホシノやヒナと実際に戦ったとしても、アリスに勝ち目はないだろうが。

 

『くっ!? や、やられてしまいました……! ふ、復活の呪文……を……』

 

 実際、今エレベーター前で待機していたC&C──室笠(むろかさ)アカネと言う眼鏡をかけたメイド服の少女(C&Cは表向きはメイド部として通しているらしい。メイド部が何なのかは謎だが)は、アリスを拘束した。

 エージェントの一人、コールサイン『03(ゼロスリー)』だったか。

 戦闘力は申し分ないようだ──少なくとも、戦闘の技術という点において、アリスが足元にも及ばないことは確認できた。

 彼女はアリスを拘束し、控えていたユウカと会話する。

 

『それにしても……まさか「指紋認識システム」を突破するためとはいえ、無理やり扉を撃ち破るだなんて』

『確認しました。エレベーターのセキュリティロックをすぐに修理するのは難しそうです。対処としては、丸ごと取り換えるしか……』

『そう、じゃあ新しいのに交換──……ううん、ちょっと待って……そうね。一番強力そうなセキュリティを購入して、急いで取り換えて。ただし、エンジニア部製じゃないもので』

 

 ユウカはどうやら、俺たちがエンジニア部と結託していることを思い出し、罠の可能性を考慮して別企業の製品を使用するよう指示を出したようだ。

 慎重だ。流石はリオの後輩と言うべきか。

 

『……今回に関しては、裏目に出ているけれど』

 

 ユウカの様子を一部始終見ていたリオは、同情するように言う。

 ゲーム開発部側の作戦を知っている身としては、後輩がまんまと罠にかかっている姿に心苦しさを感じずにはいられないのだろう。

 

「うぅっ! アリスが連れていかれちゃった!」

「落ち着いてモモイ、計画通りだよ」

「アリスちゃん待ってて……すぐに助けてあげるから」

 

 アリスがアカネに反省部屋へと連れて行かれることは作戦通りなのだが、俺たちにとってはやや都合が悪い展開である。

 アリスの観察という目的にそぐわないからだ。

 しかしだからと言って、俺たちに都合の良い作戦変更ができるはずもなく、この場面において、アリスが拘束されることは許容せざるを得なかった。

 まあ、彼女の破壊力という点は観察できた上、彼女が()()()に拘束されることについてはリオの許可が下りたので、あまり気にしても仕方のない部分ではあるのだが。

 

「とりあえず……一つ目の仕掛けは、上手く行った感じかな。そうだよね、先生?」

「エンジニア部はどうだ。ユウカが誘導に乗っていることは確認したが……」

「それもちょうど連絡が来てたよ、『こちらエンジニア部、トロイの木馬を侵入させることに成功した』……ってね」

 

 ヴェリタスの一人、ハレの言葉を聞いて、俺はセミナーが完全に罠にかかったことを確認する。

 要するに、ユウカが懸念していたエンジニア部製のものは当然罠であり、その上で、次点で強力な別企業のセキュリティも罠だった、ということだ。

 

「ひゅーっ、それは一安心。もし失敗してたら、アリスが意味もなく監禁されただけ……ってことになるところだった」

「じゃあ、次のステップに移ろうか」

「はあ、緊張する……。こんな気持ち、古代史研究会の建物を襲撃した時以来」

 

 碌でもない緊張である。

 理解できない、というわけでもないが。

 ルビコンでの俺たちの仕事は、概ね正当性の無い襲撃や奇襲だった。

 今となっては、懐かしくさえ──ある。

 

「ヒビキとウタハ先輩は?」

「もう『お客さん』を出迎える準備は出来てるって」

「良いね、さすが」

「やってるのは決して良いことじゃないけどね……」

「マキとコトリの方は?」

『こっちも準備OK、待機中だよ~』

「それじゃ、第二段階、だね」

 

 表向き、今回の作戦において俺の仕事は少ない。

 精々彼女たちの戦闘の指揮をする程度だが……仕事は仕事だ。

 最低でもユウカに嫌われることは覚悟して、仕事を遂行するとしよう。

 

「それでは……先生!」

「──作戦開始」

 

 026

 

 それからというもの、作戦は概ね俺たちの思惑通りに進んだ。

 より正確に言うのならば、ゲーム開発部の立てた計画通りに状況は推移している。

 エレベーターのセキュリティは、エンジニア部の罠により指紋認証システムの書き換えに成功。侵入者である俺たちの認証を通し、反対にセミナーの認証は通らないように設定された。

 また、バックドアがEMPにより作成され、一時的に監視カメラをハッキング。ヴェリタスとエンジニア部が囮となってC&Cの一人を誘導し、アカネの隔離に成功。

 更に、別のビルに控えていたC&C──角楯(かくだて)カリンという狙撃手の対応はウタハ含むエンジニア部が対応することで難を逃れた。

 事前に聞いていたC&Cの人員は四名。

 その内の二名は居場所が割れ、両者ともに戦闘中。

 ミレニアム最強と名高いリーダーの美甘(みかも)ネルは今作戦に参加していないため、残るC&Cは一人となる。

 問題は、その一人の居場所が割れていないこと。

 先程、概ね思惑通り、と言ったのはこのためだ。

 本来であればアカネと同時に閉じ込める予定だったのだが、どうやら最後の一人は行方知れずらしい。

 これは俺たちがモモイに伝えていないという意味ではなく、それを統率するリオでさえ居場所を把握していないため、本当に行方知れずなのだ。

 リオ曰く『よく分からない娘』、とのことだったが……。

 

「さっきの停電、ウタハ先輩とヒビキの策が成功したってことだよね?」

「うん、そのはず。あ、先生。足元暗いので、気をつけてくださいね。ここさえ抜ければ──」

 

 そして、不安要素はもう一つ。

 その一人が──美甘ネルに次ぐ実力者であるということだ。

 

「お、やっと来たね!」

「!?」

「遅かったねー、だいぶ待ってたよ~」

 

 その少女は、たった一人でそこにいた。

 まるで待ち伏せていたかのように。

 情報が漏れていたかのように、俺たちが来るのを待っていたのだ。

 

「ようこそ、ゲーム開発部! それに、えっと……先輩、だっけ?」

 

 アッシュグレーの長髪を──床にまで届きそうなその長髪をたなびかせて、人懐っこい笑みを浮かべて俺たちへ語りかける。

 

「あ、違う違う、思い出した! 『先生』だ! ずっと会えるのを楽しみにしてたんだよ~?」

「あ、アスナ先輩!? どうしてここに!?」

「どうしてって言われても~……何となく?」

『……一之瀬(いちのせ)アスナ。まさか、先回りしているなんて』

 

 ミドリの驚愕が多分に含まれた疑問に、一切の裏表を感じさせずにアスナと呼ばれた少女は答えた。

 普段の俺であれば、彼女がとぼけている可能性を疑うところだが……不思議なことに、アスナのその発言に何一つ裏はないだろうと直感した。

 直感させられた。

 それを保証するかのように、続けてリオは言う。

 

『念の為言っておくけれど……私は作戦内容をC&Cには伝えていないわ。だからこれは……そうね。彼女の勘、とでも言うべきかしら』

『……リオの言うことは本当です、先生。非科学的ですが……彼女の勘に基づく行動は天才の私でも読めません。野生的というか、何というか……』

「……理屈ではない、ということか」

 

 強いて言うなら──嗅覚か。

 正解を引き当てる、嗅覚。

 

「そう! 予感とか直感とか、そういうのってあるでしょ? ここで待ってたら先生にも、あなたたちにも会えるんじゃないかなー、って、そんな予感がしてたから!」

「難しい言葉じゃないのに、全然何言ってるか分からない……」

 

 屈託の無い、開けっ広げな笑顔のまま、本能のままに語る少女に。

 俺は、自身の警戒が引き上がるような感覚を覚えた。

 

「……それにしても」

 

 と、ここでアスナは、ちら、と俺を見た。

 見て、それからじっと見て。

 あは、と笑った。

 

()()()。……先生、本当に人間?」

 

 まるで火薬庫みたい、と。

 無邪気な笑みを保ったまま、楽しそうに、そう言った。

 これもまた、アスナの直感から来る物言いであり、大して深い意味はないのだろう──彼女は野生的に、思うがままにそう言ったのだろう。

 ()()()()()()()、そう言っただけに過ぎない。

 実際、アスナはそれを俺に言った後、すぐに興味を失ったかのようにモモイとミドリへ向き直った。

 

「さっ、じゃあ始めよっか?」

「えっと、念のために訊くのですが、何を……?」

「戦闘を! 私、戦うのが大好きなの!」

 

 じゃら、と彼女はアサルトライフルを構える。

 仕事の時間、ということだろう。

 

「あ、そうだ。まだ自己紹介してなかったね」

 

 作戦も何も関係ないと言わんばかりに、ただただ楽しそうに笑う彼女の笑みは、どこまでも不敵に見えた。

 

「C&Cコールサイン・01(ゼロワン)、アスナ! 行くよっ!」









 鏡争奪戦は変更点以外は結構カットしちゃいます。短くてごめんね。
 あと、ここのリオは解釈が若干みなさまと合わなくなるかもしれません。
 ご了承ください。
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