星は見守る。
地上に何があろうと、人が災いに苛まれていようと。
差し伸べる手もなく、切り捨てる剣もなく。
ただ見守るのみである。
その瞳を、人に預けて。
#1 出会いは鮮烈にして呆気なく
夏休み。
それは全ての学生へ瞬きの間に訪れる
その間の学生は思い思いの日々を過ごすものである。ある者は酸いも甘いも噛み締めた素敵な想い出を得るために、ある者は願い続けてきた夢を叶える力を求めるために、またある者は実に子供らしい即物的な快楽を得るために、各々その期間を過ごす。
そうして学生が思い思いに過ごす期間を迎えた雄英高校一年生の緑谷出久は、家の中でもビーチでもない、しかし大人も子供もこぞって賑わいを見せる街中…だが、どこをどう見ても先進的な景色が広がる島の上にいた。
「ここが…世界中の科学者が集まって様々な研究を続けている学術人工移動都市、I・アイランド…!!」
「HAHAHA!!その通り!個性研究・ヒーローアイテムの開発のために世界各国から天才たちが集まっている場所さ!近々その研究発表会とレセプションパーティーがあってね、私も招待されたのさ!」
出久の師匠兼高校教師兼『平和の象徴』のオールマイトは腰に拳を当てて胸を張るように答える。そうすると周辺にいる観光客たちが本人の存在を認知してしまう。そうすると瞬く間に全員の視線が彼一人に釘付けになった瞬間、
『オールマイトオオオォォォ!!!!』
まさに怒号の名にふさわしい歓声と共になだれ込むように大量の観光客がオールマイトの元へ雪崩れていく。サインや握手、激しいキスの雨に降らされている彼の傍にいたはずの緑谷は、いつの間にか溺れるようにして人込みへと消えていった…。
「緑谷しょうねぇぇん!!!???」
そうして観光客たちによる独善的なくんずほぐれつの嵐が過ぎさってから少しして、二人は時計台の前で一抹の疲れを癒していた。
「それで…オールマイト、なぜここに?」
「あぁ、昔からの親友と待ち合わせをしていてね」
「オールマイトの…親友…!?」
そうしていると遠くからホッピングのようなもので飛び跳ねるようにしてこちらに近づく女性が一人。そうして最後に高く跳びあがったかと思えばそのままオールマイトの飛び込みながら、
「マイトおじさま~!!!」
「メリッサ~!!久しぶりじゃないか!!」
そうして二人ハグをしながら緑谷の目の前でお互いを懐かしむようにして親しげに話し始める。その和気藹々さに若干気後れのようなものを感じながらその会話を聞いていく。…聞いて言える限りだと、オールマイトの言う通り昔馴染みらしく、どうやら何かサプライズをしたくてオールマイトに招待状を送ったとのこと…あと研究の話もしているようで、どうやら守秘義務上の問題であまり知らないらしい。
あまりに会話のテンポがよくてアワアワとしていたらオールマイトがこちらに気付いて言う。
「あぁ、紹介するよ、彼女は私の親友の娘のメリッサ・シールド」
「メリッサ・シールドです!初めまして!」
「(金髪碧眼の長身メガネのこの人は本人じゃなくて娘だったんだ…)初めまして!雄英高校ヒーロー科一年、緑谷出久と言います!」
自己紹介を躱しながら差し伸ばしてきた手をおずおずとしながら握手で応えていると、
「雄英高校…!ひょっとしてマイトおじさまの?」
「はい、生徒です!」
「…すごいわ、マイトおじさまの教え子なんて!!」
そう言ってメリッサは体ごと近づいてぐるぐると出久の周りを回りながらドギマギとしている彼の事を楽しそうに矢継ぎ早に聞いて回っていると、コホンとオールマイトが小さく咳を一つして、
「…ハッ!!つい夢中になって…こっちです!ついてきてください!」
そう言ってメリッサは床に放置していたメカメカしいホッピングが細い帯のようになると、メジャーを巻き取るようにどんどんと小さくなっていき、両指でつまめるほどまで縮小したのをポケットに入れて駆け出していく。その背中を男二人は笑って追いかけていく。
そうして無事にメリッサ考案のサプライズは無事に成功し、デヴィッド・シールドとの顔合わせを済ませた出久はメリッサにI・アイランドを案内されていた。そこかしこにあるアトラクションやコスチューム、来場しているヒーローに目を輝かせていた。
「最新アイテムの実演とかサイン会とか、いろいろやってるみたい!」
「さすがI・EXPO!」
そうしてある一つのパビリオンを推してくるメリッサの言葉に乗った出久はそのまま中に入って、メリッサによるアイテム解説を聴いていた。
「この深海スーツは深海7000mまで耐えられるのよ!」
「ふ か い … !」
「そうなのか?」
「「…え?」」
割って入るように聞こえた声の方に振り向くと、齢にして10歳を過ぎた頃だろう身の丈の背には白銀の長髪が靡き、純白のワンピースから淡い小麦色の肌が覗いているが、何より目に付くのが肩よりも広いつばの麦わら帽子を被っていて身長差的に顔が見えないでいた。
「人間は、生身で7000mの深海へは行けないのか?」
再び二人に問う声音は、本当に不思議そうな心をそのままに映しているようだった。困惑を何とか取り繕いながらメリッサが答える。
「…そう言うことに向いた『個性』でない限りは…難しいと思うよ?」
「……そうなのか?
見た目にあった高い声音には、なぜかとても
「…?どうした?答えられぬのか?」
「あぁ~!?いや…えぇっと、僕も同じ意見…かな?少なくとも僕は、このスーツがないととても無理だと…思う」
頭にあった言葉を特に精査することなく口にしていくと、一・二度と俯いたのちに言う。
「そう言うモノなのだな。
「「いえ…どういたしまして」」
そう言って帽子の子が他のアイテムが展示されている所へと向かおうとするところにメリッサが言う。
「良ければ…!一緒に見ていかない?」
「…なぜ?」
振り向いてそう言う彼女は出久の方につばの先を向けていた。
「その…ここにあるほとんどが、パパの作った特許を基にしてて…もっといろんな人にパパの凄いところを教えたいの!」
「…その
「そういうことなの!良ければでいいの、どうかな?」
メリッサがそう言うと、帽子の子のつばが下向きになってしばらく考えている。その間に緑谷はメリッサに寄って耳打つ。
「(…ねぇ、どうしてまた急に?)」
「(もしかしたら迷子かもって思っちゃって)」
「(あぁ…そう言うこと)」
確かにあれくらいの身長の子供はI・アイランドにいないわけではないが、大体が家族と一緒になって行動しているか若しくはアトラクションに参加していて観覧席に親がいることが多い。展示場に子供がポツンと一人というのは逆にそれはそれで変ではあったな、と今更になって出久はそう思った。
納得が済んだ出久は耳打ちをしたせいできめ細やかで綺麗な横顔に触れ合うほど近く見えていたことに気付き、
(…近い!!)
「…一つ尋ねても良いか?」
「うん!何でも聞いて!」
「そちの
「………はひぇ!?」
さっきまでの白磁のごとき顔色が瞬く間に真っ赤に染め上げていった。もちろん隣の
「にゃにをいってらっしゃるのでしょうかあなたは!?」
「…違うのか?」
「「違います!!」」
「そうか…残念だ」
「「((残念!?))」」
何を思ってらっしゃるのかこのませた幼女は!?と心の中でキレながら叫んでいることを幼女に全く悟らせないように、仏のような笑みを携えながら時を流れるのを待っていた二人に向けて口を開く。
「まぁよかろう。
「「よかった……ハァ」」
何か、どっと疲れを溜めた二人であった。
そうしてメリッサと出久の間に子供を挟むようにして歩き、展示されているアイテムやコスチュームの前で止まってはメリッサが解説を、出久はそれを基にした彼なりの所見を子供に話し込んでいった。そうして色々と見ていく間に話はどんどんと彼ら自身の話になっていった。
「
「うん、僕は日本の雄英高校のヒーロー科一年。メリッサさんはI・アイランドにあるアカデミーで勉強してるんだ」
「そうよ、あなたは?」
「
「…え?」
「それは…どうして?」
「思うに
「まぁ…」
「そう、だけど…」
この子の言う通り、緑谷であればヒーローになるための知識や技術を、メリッサであればアイテムやコスチュームを作成・運用するための知識を学ばなけれないけない。お互いに多少は関わるところはあるが、究極は別世界に住んでいることは間違いない。それがこの子供の言う『在る立場』が違うという事なのだろう。と、そう二人の脳内で結論づくが、どうしても納得のいくような言葉を聴けないでいることが二人の心をもどかしくさせていた。
「故、気にすることはない」
「とは、言っても…」
「……」
そう言ってメリッサと出久は互いを見ては子供を見てと繰り返していた。視線の移動が分かるのか少し肩を震わせて言う。
「かか…!なんだその動きは!
「めめめめめめめおめおめおめおめおめおと!?!?」
「…め、おと?」
明らかに焦って訂正しようにも口元がうまく動かない出久と、そもそも言葉が古すぎて伝わっていない様子のメリッサという両極端の反応が、余計に子供の腹を笑わせる。
「
かかか!ととても幼女とは思えない威厳のある笑いが場内に響く。その笑い声を抑えようと何かしら弁解しているが全く意に介さないので余計に捲し立てる出久を見ておかしく見えて子供は余計に笑い、さらにメリッサも釣られる様にして笑い始める。
「ふふっ!!出久くん変なの!あはは!」
「メリッサさんまで!?もう笑わないでぇ!!」
「たのしそうやね みどりやくん」
出久の耳に届いた瞬間石の如く喉も体も固まって動かなくなる。可愛げのある冷めた声音にはとっても聞きなじみがあった。ギギギ…と振り向けば、宇宙服とラバースーツを足して二で割ったようなヒーロースーツを纏う同級生女子がいた。
「タノシソウヤネ」
(二回言った…!)
「こほん…
「緑谷、聞いちゃった」
「麗日さん!八百万さん!?耳郎さんまで!?」
「…お友達?」「学友か?」
隣で揃って呟く二人にやんわりと説明をしていくと、やっと合点がいった二人は小さく頷いて、こちらもやんわりとした自己紹介を済ませるとメリッサが言う。
「近くのカフェ、行きませんか?」
そうして歩いて数分した所にあるカフェにて同行していた女性陣が頼んだカップを手に取っていく。残って二人の中で一人、立ち尽くしたままボーっとしている子供がいた。先頭に立つが何もしないので店員さんが困るような笑顔を向けて「お客さま…ご注文をどうぞ…?」とずっと固まっていた。いよいよ後ろが気になっていた緑谷が子供の背中から声をかける。
「どうしたの?注文しないの?」
「…
「何って…欲しい飲み物を買ったんだよ?」
そう言うとまた深くかぶる帽子のつばが下がって何か考え込んでいるようだったが、さほどの時間を置かずに顔を上げて、
「………あぁ、これが
「…しょうひ」
「なるほどな。これが
対面する店員さんの顔がどんどんと固まっていき、頬がどんどん細かく痙攣を始めていた。雰囲気がどんどんと暗くなっていくので緑谷が口を出す。
「それで!君は何が飲みたいのかな!?定番のコーヒーかないやミルクティーとかの方が良かったかないやでも普通にオレンジジュースとかのソフトドリンクの方が良かったりするのかなあホットココアがあるよこれならどうかな!?」
「…!ココアが、あるのか?ここには?」
「…うん、ほらここ」
と言ってメニュー表の上に指さすところには白字でしっかりと“ココア ホット アイス”と書かれていた。それが見えたのか閉まっていた口が僅かに開く。そして言う。
「ココアのホットを頼む」
「…サイズは如何なさいますか?」
「一番大きいもので良い」
そう言うと待ってましたとばかりにレジのキー音が鳴り響き終わったかと思えば支払方法を尋ねられるとそのままぴったりの額の現金を渡して受取口へと向かおうとするときにくるっと店員の方へ振り向いて、
「少し良いか?」
「…なんでしょうか?」
「今日に限って、
「…少しお待ちください」
そう言って店員が奥の方へと入って行って少しすると、一人の男の店員と一緒に戻ってきた。多分店長なのだろうとアタリを付けた緑谷はそれでも子供の言葉を変に思った。
「お待たせしました。確認なのですが…本日に限ってお客様の後に来られるお客様のお会計に関して、支払いはお客様がする…という事でよろしいですか?」
「そうだ」
「…分かりました。支払先の名義を教えてください」
そう言うと、深くかぶっていた帽子のつばを持っておもむろに脱ぐ。子供らしい可愛くて幼気の残る顔に銀の長髪が小さく揺れる。しかし何よりも、その子供の持つ瞳が翡翠のように煌めいていた。それを見た瞬間、訝しげに見ていた店長だろう男性が顔を青ざめたかと思えばみるみると立ち姿を正していく。
「
「(巫女…?)」
「委細承知いたしました。ごゆるりとお寛ぎいただけますと幸いでございます」
そう言うと店長の男は半身を90度に曲げる見事なお辞儀をして、美しい顔を帽子で隠し直した子供を見送っていった。そうして店長は両手を口に合わせて言う。直前、緑谷は急いで両耳を塞ぐ。
「本日は御方の計らいにより、本日に限って以後お会計される方全員のお支払いを無料とさせていただきます!!」
「YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!」
プレゼント・マイク先生に負けず劣らずの大歓声が店内外に反響してなおさら頭がグワングワンとする中、緑谷は目の前を白黒の景色になりながらなんとか注文を済ませて外に出る。
先ほどまでの様子とはかけ離れた、精魂が抜け出たようなボロボロの状態で数あるガーデンテーブルのひとつの椅子ににしな垂れる姿に、麗日が、
「…どしたの?」
「…なにも、なかったよ」
「ふぅん…そっか!」
と言って再び3人で続けられた女子会の波に乗る麗日。たまたま向かい合う形に座っていた、底が地面についたうえで身の丈以上もあるカップに差さっているストローからこくこくと飲む帽子の子供が一言。
「軟弱だな」
「……精進します」
そう言うと子供は緑谷から視線を外して隣のガーデンテーブルで和気藹々と会話を盛り上げている様子を見ながら言う。
「訊くが、あれがいわゆる女子会などというのだろう?」
「…多分、そうだと思うよ」
「それぞれが飲むモノの話でない話で盛り上がっているが…なぜだ?」
「僕にも、分からないよ。多分…みんなが話したいから買っただけだと、思うよ…?」
「ほう、あくまで会話が主だということか」
「あまりそういう機会がないから、よく分からないけど」
「そうか。これについては参考程度に留め置くとするか」
そう言うと女子たちの笑いを目と耳で聞きながらまたストローを含んで一、二度と吸い上げてその味に笑みをこぼす。その光景に少し緑谷は笑いを溢す。
「…なんだ?」
「…うんうん、なんでもない」
「おまたせしました」
そう言って緑谷が頼んでいたドリンクの入ったグラスが置かれる。その声に聞きなじみがあったのでふと顔を揚げたら、そこにはいつも教室で見ていた染め色の金髪の軽そうな顔をした同級生がいた。
「上鳴君!峰田君も!どうしてここに?」
「EXPOの期間中だけ臨時バイトがあったんだよ」
「給料もらえるうえに休みの時間はI・アイランドを見て回れるし…何より美女とのステキな出会いができるしな!!!」
最後の方は語気を強めながら思いっきり目線の先にいる
「(どこで出会ったんだあの超絶美人によ!?)」
「(俺たちに紹介してくれるよな?するよな?しろよ!?)」
「(二人とも落ち着いて…!)」
「彼らも雄英生なの?」
同席する3人に問うが、
「まぁ…ね?」
「そうとは…言えますわね?」
「大変遺憾だけどね」
ひそひそと苦い顔をしながら答えるのを知らずに、子供が言う。
「緑谷」
「…なに?」
「
言葉のひとつも捻りだせないほど素早く、怒りの涙を携えた二名の手が緑谷の襟をつかみ上げる。
「お前緑谷どういうことだおらあぁん!?」
「事と次第によっちゃあオイラの『もぎもぎ』が火を噴くぞあぁん!?」
「…そう言えば思っとったんやけど…緑谷君、あの子とどこで知り合ったん?」
「そうだそうだ!」「どこで知り合ったんだよ!?」
「ほんとに偶然だったんだって!麗日さんたちと会ったパビリオンの中で一人で見ていたから迷子だと思ってただけなんです!!」
そう言うが雄英生たちの疑いの視線が消えることはなく、一人がメリッサに尋ねる。
「実際はどうだったのですか?」
「…うん。緑谷君の言う通り、あの子一人で展示を見ていたから私が『一緒に見ていかない?』って言ったの」
そう言って雄英生全員が子供の方へと視線を集中させると、気付いたのかこちらの方を向いたように言う。
「ん。迷い子の所を除いたら間違いはないの」
「「「「「よかった~…え?」」」」」
「…なんだ?「
「「「「「「「そんな…ねぇ?」」」」」」」
「あんまり強がらんでええんよ?」
「ほんとのことを言っても誰も責めませんわ」
「うちらに正直に話してみて」
雄英女子の三人が立て続けに言うと子供は小さくため息をつくと被っていた帽子を取って、
「吾を、怒らせるつもりか?」
瞬間、全員が固まる。風に靡く白銀の髪と淡い小麦色の肌、そしてロングスカートのワンピースを着た子供が、その小さな手で半身を覆いうくらいの大きなつばの帽子を持っているという儚さと可憐さの詰まった少女であるはずなのに、たった二つしかない翡翠色の瞳から伝わる圧倒的な『圧』をその場にいる全員が真正面から食らう。にこやかだった顔は一瞬にして真顔になり、晴れやかだった雰囲気は一瞬にして消えて凍り付くような寒さが背筋を伝っていく。鼠が蛇に睨まれたように子供の瞳から逸らそうにも動くこともできず、ただ鼓動がだんだんと速くなっていくのを感じることしかできなかった。
瞬間、突風が彼我をすり抜ける。
「おぉ!!そこにいたのかみんな!!」
砂埃を立てて静止したところにいたのは、全身を鎧のようなヒーローコスチュームを着こなして直立する眼鏡を掛けた男がいた。
『飯田君!どうしてここに!?』
振り向いて飯田が答える。
「俺は両親の代理で招待されたんだ。君たちこそどうしてここ?」
そう言って雄英女子、バイト男子2人組、緑谷の順で経緯とメリッサの事を軽く説明していると、飯田の真正面にいた子供に気が付く。
「君は…初めましてになるな。俺は飯田天哉、雄英高校ヒーロー科一年の学級委員長だが、君の名前は?」
「…?名など聞いてどうするのだ?」
「袖振り合うも他生の縁ということわざが俺の生まれた国にある。せっかく知り合ったのだから友誼を深めたいと思っている。どうだろうか?」
そう言うとさっきまでの圧し潰すような瞳が鳴りを潜めた本人は、おもむろに空を見上げ始める。何をしているのだろうと雄英生&メリッサは不思議がっていると、その子供が口を開ける。
「
そう言われ、呼ばれた四人は互いの不思議そうな顔を見合いながら子供の方へと寄っていく。すると子供を中心に四人のいる場所が円状に突如光り出す。
「うわぁ!?」「なにが…!?」「何事ですの!?」「何のつもりだ、君!?」
いきなりの出来事で焦りながらも、3人は無意識にメリッサを一番奥にするように位置を変えながら子供を見る。
「危害を加えるつもりなどない。ただ少し“音を届かぬようにした”だけだ」
「…音を、届かないように?」
「そうだ。
改めて他意はないと子供が眉尻を下げながら改めて言ったことで飯田、緑谷、八百万の三人は疑義的な目を解いて踏み込みを浅くした。
「
そう言うと飯田が小さく手を上げて、
「……質問だが、いいだろうか?」
「なんだ?」
「…もしも、仮に、君から聞いたことを後ろにいるみんなに伝えたとして…君から危害を加えるという事はないと考えてもいいのか?」
「…飯田さん!」
「八百万さん、訊くべきだ。真偽を置いておくとしても、ここだけは譲れない。……そうだろう?」
咎めるような口調で寄りながら言う八百万に対して、毅然とし多態度で子供を見続ける飯田を、止める言葉を見つける言葉を見つけられなかった八百万はぐっと黙り込んだ。
「…それで、どうなんだ?」
「語気が荒いように思うが…まぁ良いか。結論から言えば
そう言うと四人は互いを見ながらそれぞれで思いを巡らせながら、小声で話始める。
「(…どうする、皆?)」
「(
「(…俺も賛成だ。ここまで深刻な問題になるとは気づかず、もし訳ないばかりだ)」
「(ううん…!イイダ君のせいじゃないし、ここにいる誰のせいでもないと思うから。そこまで気落ちしないで)」
「(メリッサさん…感謝する。緑谷君、君はどう思う?)」
「(僕は、聞こうと思ってる。)」
「(本気か…?)」「(本気ですの…?)」
「(どうして、そう思ったの?)」
メリッサに問われた緑谷は、ゆっくりと話し出す。
「(あの子は、何も知らないんだ。ついさっきまで、“買い物”がどういうモノかすら知識程度にしかなかったんだ)」
そう言うと3人は僅かに目を見開く。そのまま緑谷は続けて言う。
「(それほど“普通”を知らなさすぎるのが、かわいそうに見えちゃって)」
続けざまに言おうとした口を少し閉じて、緑谷は一呼吸おいて続ける。
「(それに…どこか寂しそうだったから)」
そう言う緑谷を3人はやれやれと言わんばかりに小さく首を振って子供の方を向くと、閉じていた翡翠色の瞳を開いて言う。
「決まったか?」
「はい。聞かせてくれるかな?」
堂々と、だれ一人として逸らすことも縮こまることもなく言う4人を、子供は歯を見せて笑い、口にする。
「
子供…ルカの名前と、続く言葉を聞いた瞬間、緑谷の頭は掴まれ、押し込まれるように地面に向けさせられた。
続き、頑張って書きました!
良ければ高評価、お気に入り、感想など遠慮なくお願いします!
主はとってもチョロいので応援の言葉が多いほど頑張れる人間です!