急く様に過ごす人の営みを。
穏やかに眠る星の鼓動を。
しかして『神』は動かず。
訪れ得ぬ時が来るまで。
子供から『お呼ばれ』されなかった残りの雄英生は、その外側からボーっと無音の会話を見ていた。特に
「…ねぇ、なんでデク君と百ちゃん、飯田君、メリッサさんが呼ばれたと思う?」
「さぁ?あの子なりに何か考えがあるんじゃないの?」
「峰田~名前なんてそんなに仰々しいもんか?」
「おいらに訊いても答えられるわけねぇだろ~?」
「…もしかしてお忍び的なヤツなんかな?ほら!お姫様っぽいし!…響歌ちゃん、何してんの?」
「いや?なぁんにも?」
そう言って伸びていたイヤホンジャックをするすると通常の長さにまで戻しながらストローを咥えてドリンクを吸いながら考える。
(床に挿しても聞こえてくるのは足音と話し声、付け加えるとしてもカフェの店内BGM程度…あの光ってる場所だけが誰もいないかのように
そう結論付けて話している5人を見ながらもう一度吸い上げて口にやってきたひんやりとした甘味を楽しんでいると、唐突に四人が揃って子供に向かってお辞儀をかます姿を見て、口からストローが離れていく。
「おいおい、なにやってんだアイツら?」
「…なんかヤバいことになってんのかな?」
「…まさか、合法ロ「言わせないよ」イギャアア!」
言わせまいと急遽伸ばしたジャックを無造作に峰田の体にぶっさす。峰田は何も乗っていないのに車酔いを経験して椅子にしなだれかかる。
何か二言三言子供の口が動くと全員が顔を上げて代表するように緑谷が前に出て子供と握手する様子が見えた。その様子を見た外野の一同はほっと一息を吐いて各々が話し出す。
「…なんとかなったみたいだな」「やね、どんな名前やと思う?」「…銀髪褐色美少女、めっっっちゃ可愛い名前だろうなぁ…!」「言葉だけはさんせー」
緑谷達で何か話していると床を照らす光が消えて、全員がこっちに来る。
「デクく~ん!お話は済んだん~?」
「…まぁ、なんとかね!」
「それで、銀髪褐色ワンピ美少女ちゃんの名前は聞かせてくれることになったのかよ?」
「あぁ…みんなで話し合った結果、名前だけならという事になった」
「ほ~ん?それで?君の名前はなんていうの?」
そう耳郎が訪ねると本人の口が動く。
「ルカという。よしなに」
「ルカちゃんか~!可愛い名前やね!」「そうなんだ。よろしくルカちゃん」「…想像以上に可愛い名前だったな」「…あぁ、あえてセクシー系と思ってたおいらがバカだったよ…」
瞬間に色めき立ったようににぎわい始めるなかで外野にいたもどかしさが始めたのか、各々がルカと握手や買ったドリンクを持って写真を取り始める。みんながルカに集中しているさまを緑谷はそわそわしながら見守り、その間に八百万や飯田がメリッサに他の雄英生も既に来ていることや明日の一般公開日の時に全員で見学することを伝えていると、思いついたかのように麗日が話す。
「ルカちゃんも一緒に見学せぇへん?」
「
「うん!クラスメイトも紹介したいし!どうかな?」
期待のまなざしを注がれるルカは、少し申し訳なさそうな顔をしながら、
「
「そっか…でも今日いっぱいはいけるってことやろ?」
「まぁ………そうなるな」
かなり時間を溜めながら言った答え聞くと勢い付いた麗日はルカの手を取ってどこかに行こうとすると、
ドカアアアァァァアアアン!!!
そこそこの地響きと共に爆音が場内に響く。音につられるようにそのまま全員がタイムアタック系のアトラクションのある場所へ向かうと、とてつもなく見知った赤いツンツン頭の男がいた。
「切島君!どうしてここに!?」
「ん?おぉ緑谷じゃねーか!俺はあいつの付き添いだよ!」
そう言って親指で指す先には、これまた見知った金のツンツン頭の、それはもう途轍もなく見知った男がコスチューム姿でいた。
「…かっちゃんも!?」
口に出して間もなくステージいる女性によって合図がされるとそのまま両手から爆煙を出しながら岩山を俊敏に動いて回る。途中で少々荒い言葉を叫ぶさまに緑谷は脳内を白くするが、そのまま流れるようにタイムアタックは終了する。
〔結果は15秒!最速記録を上回って堂々のトップです!〕
そうして戻ろうとする爆轟がふと上を向いたところに
その様子を見ていたメリッサがそっと口走る。
「…あの二人っていつも喧嘩してるの?」
「いつもの事です…」「男の因縁ってヤツです…!」
「仲が良いんですね…!」「よく
聞いた本人と麗日に引っ張り込まれるようにしてついてきた少女がそう言うのに合わせるように緑谷のタイムアタックが始まる。自信なさそうにしながらもなんだかんだでロボを壊して回っている緑谷を見ながらルカが言う。
「時に
「もちろん速い方やと思うよ?クラスの中でも速さやったらいつも上の方やし。飯田君的にはどう思う?」
「同感だ。俺の『個性』は平面上でなら負けることはないだろうが、爆豪君や緑谷君みたいな立体的な機動速度では劣ってしまうからな。見習いたいところだ」
「…そうか。
八百万と耳郎の方を向いて言うと二人して頷きながら言う。
「そうだね。『個性』の向き不向きもあるし」
「
「そうか。
そうすると次の挑戦者が来たのか、合図をしたと同時に観客席に一気に冷風が吹きかかる。そのまま岩山の坂を津波の様に氷がみるみると侵食していく。
『轟君!?』
「彼もクラスメイトなの!?さすがヒーローの卵ね…!」
そう言われてまんざらでもなさそうに頬を緩ませるクラスメイトがいる中で、文字通り飛んで行った爆豪が轟に突っかかる。その様子を心底不思議そうに見守りながらルカが言う。
「なぜあやつはまた飛んで行ったのだ?」
「……プライド、じゃないかな」
雄英男衆が爆豪の乱暴狼藉を止めるべく駆け出していき、しかし残念なことにホログラムスクリーンにばっちりとその姿が映し出されているのをまざまざと見せつけられる雄英女子陣一同は肩を小さくするのだった。
しかし一人、ルカはふんわりと浮くようにして裸足で手すりに立つ。
「ルカちゃん?」「ルカ様、いかがしましたか?」
「いやなに、最後に
不意な言葉に疑問符が浮かぶ4人に向けてルカが言う。
「さきに
曖昧な言いまわしで問われた四人は少し考えを巡らして、さっきの床を光らせたあの『個性』の事なのだろうと思い当たる。しかしその唐突な物言いとあまりに当たり前のことを訊いてくるルカをちょっと変に思いながら言う。
「あの『個性』のことやんな?結構キラキラしてて綺麗やったよ!」
「音を消す『個性』っぽいなぁーって感じかな?分かんないけど」
各々がそう返すと、小さくそうか」と言って前を向くルカに今度は耳郎が言う。
「…もしかして、参加するつもり?」
「然り、少し気が乗った」
そう言って一枚の羽毛が地に落ちるようにゆったりと会場に降りたルカはそのまま喧騒のする方へと進んでいき、進行役の女性に話しかける。
「
「かわいい…………コホン…きみもしたいの?」
目を奪われながらも普通に対応した女性に、後ろのつばを抑えるようにして顔を見せながらルカは応える。
「そうだ。ちょっとした余興よ」
そうして女性は意気揚々と新しいチャレンジャーという大義名分を行使して雄英男子五人衆を退散させて準備が整ったことがヘッドセットから伝わった女性が言う。
〔さて準備が整ったところで、次のチャレンジャーのお嬢ちゃん!準備はいいかな!?〕
そう言って顎に指をあてて何か考えるようなそぶりを見せて、ハッとした顔をして言う。
「一つ結っておくが、
〔おぉ…!自信があるみたいですね!〕
言った言葉を戯れのように軽く受け流す女性を薄くした目で見たルカは目の前の岩山の方に目を移して考える。
(…すでに敷いた『内域』におる“ヴィランロボ”なる
(さきの者ら*2のようにすることも烏兎の心地がしてよいだろう…。しかしさきの
少し口角を上向けながらそっと呟く。
「童心に還るのも、一興よな」
ルカを中心に、予兆もなく岩山とフィールド全体が呑み込まれるように一瞬で淡く光る。普通の人間である緑谷や飯田はすぐさま気付いてその場から去ろうと動き、何か変だなとさすがに思い至った爆豪、轟、切島の三人も二人の後を追うようにルカの近くから遠ざかって様子素を見る。しかしおもちゃ程度のアルゴリズムしか組まれていないロボットは何も感じることなくただ立ち尽くしていた。
〔ではスタート[ドゴゴゴゴゴゴゴオオオオォォン…!!]・・・へ?」
『…は?』
十の爆風が巨大な一つの空気の圧となって観客席となって襲い掛かる。反応しようにあまりの唐突さに誰も声も出ずに目を閉じて真正面から風を受けることしかできなかった。それも一瞬の事で、風が落ち着いた頃合いから各々が目を開けると、岩山とその周りから十の煙がゆったりと上がっている。そして最後に全員の目を集めたスクリーンには一つの英単語が上がっていた。
「…『Error』。計測…不能?」
それは機械の異常、もしくは観測限界を超えた時にしか表示されない単語。
それは通常の人間では到底表示が不可能で、プロヒーローでも限られた人間しか恒常的に表示することはできない文字。
故に、暗黙に規格外の意味を表す単語として一般に認知された存在である。
これをもう少し年を食った学生が行えば逸材と囃し立てられただろう。あるいは無名のプロヒーローが行えば時の人として歓声を送られただろう。しかし、これを齢にして10に届くか判らない子供が行ったが故に、彼女に送られた言葉はなく…爽やかな風の音のみがしめやかに耳へ届く。
いつの間にか地面を照らしていた床はその光を失い、その場を去ろうとするルカは一言。
「忠告はいらなかったようだ」
そう言って付き添ってくれている
固まるようにして子供を待っていた雄英生とメリッサに対して晴れやかな、少し困ったような顔をしながら言う。
「良い眺めであった。次はどこへ行く?」
Iアイランドの一角、口と手足を縛られた男の横で通話をする男がいた。
「予定通りにブツは受け取った」
通話先から何かを聞き取った男は訝し気に言う。
「…なにオールマイトが?…うろたえるな、こちらで対応する」
淡泊に、冷徹に言葉を締めくくって通話を切る。
「この島に、オールマイト…」
小さく呟いて考えを巡らせる。
しかし、嘲るように口元を歪めながら言葉を続ける。
「
コンテナの周りで準備を進める部下に指示を送る男の目は、一度も揺らぐこともなかった。
所変わってデヴィッド・シールドの研究室の一角。彼の盟友の為に
(…なぜ、これほどまでに『個性』数値が急激に下がっている!?過去最大の減少値…AFOと戦った後の数値に比べておよそ倍の数値…!過去のデータでは段階的に数値が下がっていたはずなのになぜこんな唐突に…彼の体に一体なにが…!?)
彼自身にとっては驚天動地に近い絶望を伝えるものと同等だった。彼を…彼の背負う『平和の象徴』という存在そのものが消滅する恐怖を知らせる警鐘が、デヴィッドの耳元で鳴り続けるような心地さえしてきていた。
伝う汗に気付くことなく椅子を回してオールマイトの方を向く。
「なぜ…突然こんなことになったんだ…!?」
「…デイヴ。私だって人間だ…老いもするし、あちこちにガタが出るものさ」
そう言う彼の心境は別にあった。OFAという『個性』の秘密、そしてそれにまつわる邪悪な影がデイヴを…メリッサを関わらせまいとする気遣いと、明かせない罪悪感の板挟みになっていた。ごまかすようにして、オールマイトは彼の方を向いて続ける。
「今も素晴らしいヒーローたちが日々己を
語り掛けるようにして紡ぐが、デヴィッドはその険しく思い詰めるような顔をほぐすことはなかった。絞り出すようにデヴィッドが話始める。
「ヴィラン犯罪率が一桁台に留まっている国は
「君がアメリカに残ってくれれば…と、何度思ったことだろうか…」
一度言葉を切り、大きくため息を吐いて続けた言葉がオールマイトの心にズシンとのしかかるように来る。ポッドから降りてデヴィッドの肩を持ちながら、オールマイトは言う。
「それほどまで悲観しなくてもいい。プロヒーローもサポーターも、みんなで力の合わせて明日の平和を守ろうと頑張っている。たとえ私がいなくなったとしても、平和そのものは彼らによって保たれると「しかし…!」…」
「しかし、AFOのような凶悪なヴィランが、どこかに現れたときは……!」
握り拳を尚更締めていうデヴィッドに、その名を呼んで言う。
「その時の為にも、私はまだ『平和の象徴』を降りるつもりはないよ」
その時に脳裏には
希望はもうすでに実りつつあるのだと、オールマイトは確信していた。
そう思いながらもオールマイトはデヴィッドの発言に少し引っかかるものを思い出す。
「そう言えばデイヴ、さっき君が言ったヴィラン犯罪率が一桁台に留まっている国は、いったいどこなんだ?」
そう口にするとピシッと、さっきまでの思いつめた顔が驚きを隠せない表情へと変わっていく。
「…君ともあろうものが、知らないのか?」
「……あ、あぁ。間を見つけては世の情勢を頭に入れてはいるのだが…どうにも追いつかない状態でな」
頭をさすりながらオールマイトが言うと、ある種納得がいったような雰囲気を出しながら応える。
「そうか、トップヒーローならではの理由だな。…簡単だよ。ここI・アイランドの筆頭スポンサーだよ」
「この島の筆頭株主…なら欧米に本社のある主要企業ではないのか?」
「違うよ。というよりも、そもそもこの島は国立だ。そして設立したのは我がアメリカでもなければヨーロッパの列強国でもない」
「…ならどこだと言うんだ?まさか日本という訳でもないだろう?」
遠回しに過ぎる言い方にそろそろ堪忍袋が悲鳴を上げてきたオールマイトは急かすように言うと、デヴィッドは静かに答える。
「……ある意味で日本と縁のある国だよ」
一瞬顔に影が入るデイヴの顔をオールマイトは訝し気に見る。
「…何か言えない理由でもあるのか?」
「いや、そういう訳じゃない…。ただ、愛国者故の屈辱感というモノを噛み締めているだけだよ」
「…もったいぶらずに教えてくれよデイヴ」
そう言うと大きく深呼吸を二度して、ゆっくりと話し出す。
「歴代大統領が口を揃えて『必敗する』と言わしめながら、その成立も内情も一切不明の国。
我がアメリカとの戦いに二度も勝利した、最強にして
そうして時が過ぎて短針が6を向いて太陽が海へと沈み込む絶景が見れるころになる。海沿いの庭園ではカップルたちが海を見ながらお互いのパートナーを想い合っている時に、
「プレオープン…コレガ?」
「アシタ…オレタチドウナッチマウンダ?」
「ヤメロヨ…カンガエタクモナイゼ」
明日に軽く絶望する二人に各パビリオンを楽しんでいた者たちが呼びかけながら合流する。くたくたの顔にねぎらいの言葉を書けてもつっけんどんな言葉を返す二人に緑谷が二枚の小さな紙を見せる。
「…これ、レセプションパーティーのチケット?」
「そうやで、メリッサさんがわざわざ用意してくれたんよ?感謝しいや?」
「「俺たちの労働は、報われたあぁぁ!!」」
みるみると活気を取り戻した二人はひしりと互いをハグしながら叫ぶ。そうしてしばらく泣いてお礼のお辞儀を繰り返す二人がやっと落ち着いたころ合いに、ふと一人の少女が見当たらないことに気付く。
「なぁ、あの銀髪褐色ロリっ子はどうしたんだよ?」
「ルカちゃん?あの子は先にレセプションパーティーの会場に向かったよ。やることがあるんだって、ね?」
耳たぶをふよふよと揺らしながら隣の八百万を見ながら言うと、小さく頷いてから言う。
「…えぇ。とてもお忙しいらしいですが、来ていただいたらお話しする程度の時間はいただけるとのことでしたわ」
「だって。二人とも気合入れなよ?例えばそう…服とかね?」
そう言えば…!とビクつく二人の前に立った飯田は学級委員長らしい熱意と規律ある号令の中に集合時間を設けて一同は解散した。
麗日と耳郎は八百万と一緒にパーティードレスを選びに向かい、雄英男子の大半は部屋で正装に着替え、緑谷はメリッサに時間を使っていた。
時を同じくして、ルカはセントラルタワーの屋上にて紫紺の大空を見ていた。先ほどまでの純白のワンピースから変わって暗い蒼銀を基調としながらアクセントに極小の金色をちりばめた、まるで夜空のような風合いを見せるミモレ丈のホルターネックドレスを纏い、ネイビーブラックのハイヒールを履いていた。
夜の暗黒に溶け込んでる最中に己の体を照らす程度に床を光らせる。誰一人と観客はいない幻想的な光景の中、唐突に話し出す。
「由は解した。狙いを知った。意図も悟った。現に
天に向かって、辺りに響くことなく独り言ちるように、誰に伝えるでもなくただ真っ直ぐに、星に向かって言う。疑義を隠し切れずにいた顔は唐突に息を呑む。
「感謝を土産に、真正面から堂々と入るため…と」
呟くように反芻すると数秒瞳を瞑り、再び開いて言う。
「透いた。名代の責務、改めて承った」
そう言って彼女を照らす光は消え、地上の光源と月の光が彼女を照らす。
「黒を識らねば白と解らず。濃を解さぬ者即ち淡を語れず。なるほど…
小さく…しかして力ある少女の笑いは夜空に吸い込まれていき、少女はその場を立ち去る。
そうして少しばかり時が過ぎたセントラルタワー二階のパーティー会場では、会場全員の視線がたった一人の少女に注がれていた。その立ち姿に幼さはなく、トレイからグラスを取って会場を進む姿に気品があり、彼女自身が放つ少女らしからぬ不思議な妖艶さに見惚れていた。老若男女も立場や地位の隔たり無く全員からの視線に、いっそ何一つとして反応を示さないその様子に、周囲は次第にクールな印象を持ち始め、各々が隣近くの人間と彼女をネタに会話を弾ませ始める。
それはNO.1ヒーローと呼び声高いオールマイトですらも、隣にいたデヴィッドに話かけていた。
「なぁデイヴ、可憐でクールな少女はいったい何者だい?」
「……それなら自分で聞いてくるといいさ。君くらいなら話しかけても問題はないだろうし、僕はそれを肴に
「急にドライになるなぁ君も…。よし、一丁いってみるかな!」
少々煽り気味の顔でグラスの中身を目の前で回す親友に飽きれを隠さず溢してから気合を入れたオールマイトは緩い歩幅で近づき、相手も気づいたかのようにこちらの方を向く。互いの視線が交わる中でオールマイトが先陣を切る。
「初めまして、素敵なドレスを着た少女!私の名前はオールマイト!日本という国でヒーローをやっているものだ!良ければ君の名前を教えてほしい!」
そう言うと余裕綽々とした表情の少女の瞳が一瞬大きく見開いたが、それも一瞬の事ですぐに元のクールな表情に戻して、
「貴方が…では返そう。
瞬間ざわめきが消え、もう一度全員がとろけるような視線から驚愕の目に変えて件の少女を、穴を開けるように見る。真正面から相対するオールマイトのにこやかな鉄仮面の裏側はこうであった。
(…デイヴ!やったな!?!?めっちゃ心臓が止まらないんだけどどうしてくれるんだ!?!?後でたっぷりお仕置きしてやるからな覚悟しとけよデイヴ!!)
それはもうガン焦りであった。
所作と顔面だけは鋼の意思で余裕に振る舞いながらオールマイトは続ける。
「あなたがあの!はなしには聞いていたが、まさかこのような場で会えるとは思っていなかったよ!あえてとても嬉しく思う!ルカ少女と呼んでもいいかな?」
そう言って彼らしい二ッとした笑顔で無意識にオールマイトはグラスを持ち換えて開けた右手を前に差し出す。手と顔を一瞬で一往復して視たルカは、小さく笑みをこぼして、その手を握って応える。
「こちらこそ。其方の学徒共々よろしくしたいところだ。名は好きに呼ぶが良い」
握手に答えてくれたことに一応の安心を感じながら、発言にとても気になる内容があった。途轍もないことになっているような、そんな妙な予感もついでに感じていた。
「ではそのようにさせてもらおう!先程ルカ少女、君が言った言葉に少々気になる事を言っていたような気がするのだが…」
「?…あぁ、学徒共々、というところか?なに…其方、日本で雄英高校なる学び舎で教導者となっていると聞いたが…違うか?」
「……いや、その通りだ。確かに私は有英高校のヒーロー科の教員として今は活動しているとも。ちなみに誰から聞いたかを教えてくれないか?」
「お前の学徒たちだ。たしか…みどり?うら…なんとかだとか、数にして10人ほどの雄英生なる一団と
(言葉の一つ一つに嘘を感じない…これはマジっぽいぞ…?)
結構やばい予感を抱きながら考えているとルカが続ける。
「顔を見せればよかろう。名は分からずともそれで把握できよう」
「それはありがたいが、一体どうやって?」
「いま見せよう」
そう言うとルカは空いている手の平を前にかざす。すると光の鱗粉が宙を舞い始める。その手を軽く横に滑らせると光の粒子が手から弾けるように飛び出て、その数を指数関数的に爆増すると、それぞれの光に色が付き始め、ホログラムスクリーンの様に空中に顔が浮き上がっていく。
出来上がっていく顔を見ていくうちに背中に垂れる冷や汗がいよいよ止まらなくなっていった。
(何してんだよ有精卵たち!?!?)
気が抜けすぎてもはや今のフォームが解けるんじゃないかと心配になりながらも口を開く。
「確かに私の高校の生徒だったよ。何か彼らが粗相をしてはいなかったかな?」
「
「それなら何よりです。だが彼らもまだまだ有精卵!生徒たちが優秀な鳳になれるよう、我々教師全員でしっかりと育て上げていくつもりだとも!!」
「飽くなき向上心、実に爽快であることよ。その努力が実ることを遠くから願っている」
宣言するように胸を張って言うオールマイトに、満足げな表情を僅かにチラつかせるルカがそう返して、二人の初対面は終わりを告げた。
周りから少なくない拍手に送られて互いの身を離していくオールマイトは、笑顔のまま親友の方へと向かっていく。それはもうニコニコとしながらお皿に乗る料理を頬張る親友に向けて、
「デイヴ!一言くらい寄越してもよかったんじゃあないかな!?」
「あんな表情をするオールマイトは久々に見たよ!グラスの中身が美味かったよ!」
「楽しんでるな親友…!!!こっちは最後まで冷や汗ものだったんだぞ!?」
オールマイトの冷や汗が流れている顔を見ながらグラスを傾けるデヴィッドは、それはそれは楽しそうに緩んだ頬を隠すことなく見せていた。
そうして数分が経ってパーティーの進行がステージに立って話始めると、その中で乾杯の音頭をオールマイトにお願いするという声が会場に響く。そこかしこから俄かに拍手の音と興奮の声がわめき立っていき、小さな声で隣にいるデヴィッドに問う。
「…聞いてないぞ…?」
「オールマイトが来るとなったらそうなるさ、行ってこい」
「やれやれ…今日の私の運気はいつにも増して減っているようだ…」
心の中でため息を吐きながら歩いている間に音頭の原稿を書き上げていき、いざステージに立って話し始めたその時だった。
E M E R G E N C Y
会場内中央にある巨大モニターに、耳を貫くような警告音と共に表示される。その後立て続けに自動音声が緊急事態を島中に宣言し始める。会場内は次第に困惑が伝搬していくその瞬間、入場側のドアから一斉に覆面の人間がぞろぞろと入り込んでくる。全員がその方向に向きながら、銃口を見た瞬間短い悲鳴があちこちから響く。
「動くな!この島の警備は、我々が掌握した…!」
最後に入る銀の仮面をした赤紙の男が会場内にいる人間に向けて嘲笑う様に、そう宣言した。
ここまでの読了に感謝します!
頑張っていくぞ!書きたいことはいっぱいあるんだ!
ただ遅いだけでな!
…というわけで次で枯渇しますのでお時間いただきたく思います。
感想・評価遠慮なくしてくれよな!
あ、今日奏章Ⅱ来ますね!
色々と考察捗る題目でワクワクが止まりませんね!