あらゆる星は、小さき星が供にある。
形も、大きさも、区別なく、差別なく。
寄ることも、離れることもなく、ただ廻る。
けれども星は、その身が大きく、重いほど“供”を増やす。
まるで、己が身を守るように。
灼熱の陽光が外に出す人を須らく小麦色にせんと輝いている8月のある日。とある山中にて何の変哲もないバスがコンクリート無使用ながらそれとなく整備されている山道の中腹で停まっていた。バスの近くにいるのは男一人に女二人の合計三名のみ。雄英高校ヒーロー科1年担A組担任教師のイレイザーヘッドは今まさに崖の下へ落ちる生徒を見送りながら合宿所の提供者兼応援教師兼プロヒーローのマンダレイとピクシーボブの方に向かって小さく頭を下げる。
「改めて、協力ありがとうございます」
「いいのいいの!あの子たち、今年の期待株なんでしょ?」「だとしてもかなり無茶なスケジュールだとは思うけど?」
二人からの軽い追究の言葉を受けて二人の目をを見ながら話していく。
「理解の上です。ですが、現状の
「ふぅ~ん…?
「ボブ、ニヤつかないの」
「青少年健全育成基本法に引っかかるようなことしないでくださいよ」
「ナ……ナンノコトカニャ~…ニャハハハ…」
とても妙齢の美女がしてはいけないような顔を背けて露骨な小声で言うピクシーボブをほんのり白い目で見つめたマンダレイは、そう言えばとある事を思い出して再びイレイザーヘッドの方を向いて訊く。
「そう言えば今回の合宿に新しくヒーローが合流するって話は聞いてる?」
「…あぁ、話は聞いている。…ですが」
「まぁ心配よね。
そう言っているとマンダレイの付ける猫耳型の装置から接近反応が鳴る。それを知らせる前に空から人間が降ってきた。二人は少し足幅を広げて待っている土煙の向こうを注視する。すると青年のような声が場に響く。
「イレイザーヘッド、マンダレイ、並びにピクシーボブ!合ってる!?」
「……あぁ、俺がイレイザーヘッド、こっちがマンダレイ。で、あっちのアレがピクシーボブだ」
「よかった!集合場所間違ってなかったんだな!」
「……まずは自己紹介をしてくれないか?」
そう言うと土煙を払うように前に出てきたのは三人、全員がスーツ姿をしているが、一人は高校生と変わりない容貌でミドルヘアーの女性、一人は三人の中で一番小さい中学生程度の背格好のモノクルをかけた男子、もう一人は一番背が高くて大学生くらいの細くも筋肉は確かにある見た目をした男だった。そうして男が前に出て快活な声で言う。
「ごめん!俺たちは雄英高校の合宿への合流メンバーだ!俺はデニ!女のコイツはスノ!ちんまいコイツはクイ!よろしく!」「ちんまい言うな」
「君たちが?」
「その通り!短い間になると思うがよろしく頼む!」
そう言って二人の前に右手を伸ばしてきた。マンダレイとイレイザーヘッドは一瞬互いを見合わせて、その握手に応えた。
「よろしく。それで、合流するとは聞いているが、具体的な内容の説明が欲しい」
少し目を見開きながら男は答える。
「おーけー、俺たちの仕事は基本的に合宿所と周辺の警戒だ。上司からは合宿の雑用くらいしてこいとは言われてるけどな!」
そう言うと奥にいた女性、スノが近づきながら言う。
「経緯としては
「それはありがたいな。本当に実力があるなら…だがね」
最後まで奥にいた少年がその場で出した言葉にちいさくうなずいて口を開く。
「……まぁ信用されないよね。あんな資料じゃね~…」
「こちらでも事前にHN*1の資料を見させてもらったが、名前と『個性』、見た目以外の情報がほとんど記載されていなかった。それを信じろというのは酷だと思うが?」
「…言い返せない。どうする?」「当然でしょうとも」「身から出た錆だね」「…それもそうか」
そう言いながら少し離れた三人は少し小話をして、そうしてまた元の状態に戻ってスノが口を開く。
「という訳で、我々も今さっき降りていった子供たちと同じことをしようと思います」
「『魔獣の森』を突破するってこと?」
「はい。
「………へぇ?」
瞬間、マンダレイの先ほどまでの懐疑的な目が一瞬にして猫のように細く鋭い目へと変わる。口元も獲物を捕らえ、威嚇する様な凄絶さを醸し出す笑みへと変わっていく。弾き者だったピクシーボブも似たようで、額の血管が僅かに浮かんでいた。
「言ったわねぇ?」
「吐いた唾は吞みませんので…それで判断してくれれば…」
「マンダレイ、ピクシーボブ。どうですか?」
「「やれるもんなのならやってみなさい」」
そう挑発めいた、矜持を滲ませた声で言った二人、そしてイレイザーヘッドはその後条件や合図のタイミングの詳細を詰め始める。
・制限時間は30分であり、30分未満で目的地へ到着すること。
・学生用とは別の『対敵用の土塊魔獣』を用意するため、制限時間内にそれら全てを撃破したうえで目的地に到着すること。
・制限時間以内に到着できなければ実力不足と判断して合流を拒否、こちらが要望するヒーローと交代すること。
・合図はマンダレイの『個性:テレパス』によるものとすること。
粗方の条件が決まり、ピクシーボブとマンダレイと連れてきた男の子―――クイの方を見て睨むような視線を送って―――は乗ってきた車に、イレイザーヘッドはそのままバスに乗って離れていく。その車の影が見えなくなるまで見届けたデニ、クイ、スノの三人は連絡を待つ間に軽く身をほぐし始める。手足の関節を軽く振りながらスノが小さくため息を吐いた口で話す。
「はぁ…初めての外国人との交流だったのに……なんか疎遠にしちゃった」
「…まぁ、なんとかなるんじゃない?」
「諦めんなよ!何とかなるって!きっと!」
「よく言うわよそんなこと…あ、デニ。現地集合とか言ってたけど、あんたはココ来るまでどこ行ってたのよ?」
「【巫女】様にご挨拶をと思って東京までな」
「うわぁ…」「我が兄ながらそれはないわ…」
「引くことはないだろ!」
「そんなに出世したいわけ…?」「兄さんそれはないよさすがに」
まるで養豚場にいるブタを見るような目を向ける二人へあたふたとしながら返す。
「だから!
「はぁ!?言うに事欠いてよくも「まぁまぁ、姉さんこそさっきまでデパートにあるコスメのコーナー見てたじゃん」クイも余計なことは言わなくてもいいのよ!大体あんただってさっきまで本屋なんかに行って「言わない約束だったでしょ!」うるさいお返しよ!!!」
顔色を深紅に染め上げたスノがクイの脳天に拳骨を落とす。相手は蹲った。二人を見ながらなんとか呼吸を元に戻したデニが言う。
「…そんなことだろうと思ったから挨拶しに行ったんだよ」
そう言って懐から小さな封筒を二人に向けて差し出す。怪訝な顔をしながら受け取る二人は封筒の中を取り出して、みるみると顔色が変わっていく。そこにはとてもよく見知った偉い人の顔が印刷されている横長の紙が5枚入っていた。
「これ、どうしたのよ!」「兄さんこれって」
「この国の金だよ。文字通り身の着のままこっちに飛ばされたんだ、これくらいは貰わなきゃ仕事もできないってもんだ」
そう言うと二人は俄かに満面の笑みにしたかと思えばスッと真顔に戻して言う。
「「…どう使うのこれ?」」
「そこから……だよな」
そうしてデニによる“普通”講習が始まったことで、新しい知識や価値観が二人の脳内に“!”と“?”の花畑を作っていくこと数分後、俄かにワクワクを抑えられないような顔で妄想を繰り広げる二人が出来上がった。その何とも言えない表情を苦笑しながら見ていたデニは一言。
「……これで良かったのか?」
『お三方、準備の程は如何かしら?』
唐突に脳内にさっきまで聞いていたかうぃあげのある大人の女性の声が響く。潮が引いて行くように元の島た表情へと戻ったクイとスノの顔を見てデニは心の中でほっと溜息をつく。そのまま脳内アナウンスが続く。
『5カウント後にスタートよ。よろしくね!』
「だとさ、どうする?」「いつも通りでいいんじゃない?」「兄さんと姉さんに任せる」
「…んじゃ、いつも通りにってことで。俺が
「「ん」」
『5秒前!』
『4』
『3』
『2』
『1』
『スタート!』
3人の脳に響いた直後、言葉も足音もなく…彼らは消え去っていた。
合宿所に到着したヒーロー&教師の3人のうちの一人、ピクシーボブはグラスに映る状況を眺めながらにやりとした口元で言う。
「キティたちにしては上々の速さねぇ~!う~んもっと追加しちゃお!」
「程々にね~、それで3人の方はどう?」
「う~ん……と」
そう言うと少し止まったピクシーボブを少し変に思ったマンダレイが再度声をかけるが、返事も動きも起こさなかった。頭を少し傾けながら近づいて再度尋ねる。
「ボブ、どうしたの?」
「……速すぎる」
「…はい?」
少し口元を震わせながら続ける。
「あいつら…このままだと
「ほんとに?用意した魔獣たちは?」
「めちゃんこ強いやつを置いていってるけど…!また!?」
「何を焦ってるの?」
「アタシの魔獣、あいつらに近づいた瞬間に
「どういうことですか?」
気になったのか近づいてくる相澤の方を向きながらボブが答える。
「あいつら…こっちが用意した魔獣を一匹も壊さずに魔獣の支配権を奪ってってるのよ!」
「…ほんとですか?」
「ほんとよ!だとしてもこの速さは信じられない!!!」
「くそッ…!このッ!」と荒げながら答える彼女の両手はナニカを操るように動かしていくがその額から流れる汗が止まることはなく、悪態を漏れ出しながらも応戦を続けていく。
残り、あと17分。
ところ変わって森の中、高速道路の白線のように目まぐるしく移り変わっていく背景をバックに
「こいつら、それなりに強いのかな?」
「さあね、まぁ単純なぶん奪りやすくはあったけど」
「使い心地はどうだ?」
「良くはないわよ?指示系統、思考ルーチン、反応行動のどれも杜撰だし、運動性能もエネルギー不足を感じるわ。だから
そう言いながら背後で追随する魔獣の白銀の線を指しながら言うスノはそのまま続けて話す。
「それでデニ」
「なに?」
「あの二人どうだった?」
「あぁ…マンダレイという女性はさっきの説明通り、『個性因子』を経由させた脳波同調によるテレパスだよ*2。でも
「…逆に不便じゃない?」
「大まかな命令とか指示なら問題なさそうだし、細かいところは通信機器をうまく使えばいいと思うけど?」
クイが挟んだ言葉がすとんと腑に落ちたようでスノは少し目を見開かせながら話す。
「なるほどね、前時代的だけれど。じゃあ男の方は?」
「あのイレイザーヘッドという男の方はどうやら『個性因子』への直接干渉*3によって『個性』の発動を止められるらしい」
「ふぅん、
「多分な。まぁ
「まぁそれはね」
クイが返した言葉はデニの耳を素通りし、一瞬周囲をぐるっと見回して声を張り上げる。
「人形さんが揃って登場みたいだ!数は10と少し!奪るか捨てるかは任せる!」
「両方ともごめんだわ、第三の選択よ」
そう言ったスノの言葉に短い鼻息で返事した二人も足を止めることなく進み続ける。すると後方に追随していた魔獣たちが一気に加速をはじめ、3人を追い越していったかと思うと3人に襲い掛かろうとする魔獣たちを逆に襲い掛かっていく。ある者は吹き飛ばされ、ある者は顔を殴り潰され、ある者はよけきれずに片腕をなくしながらも応戦をするなど、まるで巨大生物たちの同族争いの様相を呈する場を3人は真っすぐに駆け抜ける。
そうして足止めを食らっている魔獣たちとすれ違う瞬間、スノは魔獣の肌を軽く叩いて過ぎていく。すると叩かれた場所が痣のような白銀色に光りはじめ、そこを起点に白銀の光が肌の上を瞬く間に駆け巡っていく。すると魔獣は次第に力を抜き始め、後ろにいる同族だった魔獣に襲い掛かっていく。
「結局奪ってんじゃねえか!まぁこういう時にスノの『浸食』は使えるよな~!将棋みてぇで!」
「成績自体は低かったっての!それよりもショウギって何!?」
「この国のボードゲームらしいよ。チェスのちょっと難しいやつだって」
「アンタは何で知ってるのよ!あとチェスって何よ!」
やいのやいのと騒がしくしながらも、全く速度が落ちることなく彼らは駆ける。
場所は戻って合宿所、神妙な顔つきをしているピクシーボブを横目にマンダレイは森の方を見つめていた。
(…残りあと4分。ボブの見立てだとそろそろって話らしいけど)
そう思っていたのも束の間、森林の奥のさらに暗がりが動く。そしてそのまま足音はこちらへと近づいてきて、
「お待たせしました!」
森から出た開口一番の言葉が合宿所の前の広場に響く。デニ、スノ、クイの3人の姿がそこにあった。
「時間はどうですか?」
「残り3分ジャスト。…ま、宣言通りの事はやってのけたようでなによりだ」
「イレイザー」
「…素性はどうあれ、今は信用しましょう。校長からの確認も取れましたし」
「そうなの?」
「『隠しすぎて伝えるのを忘れていた』という言葉をもらいましたよ」
「そう…なら」
前を向きながらマンダレイは3人を見て言う。
「これから合宿の間、ここの警備は任せるわ。よろしくね!」
「「「こちらこそ、よろしくお願いします」」」
そう言ってマンダレイとデニ、スノ、クイの3人はどちらともなく近づいて握手を始めていく。相澤も3人からの握手に答えるが、ただ一人いかにも不満ですというように頬をかわいく膨らませる女が横にいた。
「ボブ?握手くらい応えてあげたら?」
「分かってるわよ!でもこの悔しさは抜けないのよ!!!」
軽く地団駄を踏み鳴らすボブの所に3人のうちの一人の男が向かっていって言う。
「明日がある!ならもっと良くなれる!さ、顔を上げて!」
そう言いながら下を向くボブの肩をデニが持ってグイッと胸を張るようにして前を向かせる。そして一瞬、目が合った。
「よろしく!」
デニが一言口にして右手を前に差し出してくる。見開いた目が右往左往しながら徐々に火照る顔を冷ますように両手を扇いで少し経ってから、おずおずとボブが彼の手に応えて言う。
「………よろしく」
そうして握った手を軽く振る様を見るマンダレイは額に手を当てながら軽く首を振って、二度軽く手を叩く。
「はいはいそこまでにねー。デニ…さんでいいかな?」
「呼び捨てでいいぞ!二人もそうだろ?」
「別に」「構わないけど?」
「ということで」
「なら改めてよろしく3人とも。他のメンバーにも紹介したいし打ち合わせとかもしたいから一度合宿所に行きましょうか」
そうして6人は合宿所に入って、三人はプッシーキャッツの残りメンバーの虎とラグドールとの挨拶を済ませ、雄英生が来るまでの4時間を打ち合わせやお昼ご飯、雑談に興じることとなった。
「そう言えば三人の『個性』ってなんなの~?」
ラグドールの何の気のない言葉が紡がれると三人は一瞬お互いを見つめ、我先にとデニが声を上げる。
「俺のは『解析』。見える者なら分子構造から物理法則まで全部お見通し、てな!」
「へぇ~!あちきの『サーチ』と同じ感じか~!何人までなら同時に見れるの~?」
「生憎一人だけだ!その代わり一人の事の全部分かっちゃうけど!」
一人の女の肩が僅かに跳ねるがそのまま会話が続く。
「へぇ~狭く深いタイプな感じ?」
「その通り!もちろん広げないわけじゃないけどな!」
「なるほどね、じゃあクイは?」
納得感を首で表現しながらマンダレイがつなげてクイが口を開く。
「僕は『停止』。方向性は『能力』を止める方だけど」
「…俺と一緒か。発動条件は教えられるか?」
「教えるも何も、
そう言われて各々が『個性』を発動しようとするが文字通りうんともすんとも言わず、あったものがなくなってしまったように感じるほどだった。「切りますね」と言った直後、もう一度『個性』を発動させると何事もなかったようにキャッツの4人と相澤の個性はしっかりと効果を現した。
「強力だな、これは」
「僕のはあくまで『範囲』指定ですから。もちろん個人にフォーカスできないわけじゃないですけどね」
「運用するなら個人フォーカスの方が私たち的にもやりやすいかもね、私たちが使えなくちゃ本末転倒だし」
「そうですか、ならそうします」
そう締めくくると最後に残った一人の女性…クイの方にヒーロー5人の視線が刺さる。
「…分かりました。説明したいのでロボットか人形かあれば貸してくれませんか?」
「良いわよそれくらい。むしろ私の方が知りたいくらいだし」
と言いながらピクシーボブの『個性』で作られた猫型の土塊人形がテーブルに現れる。そうするとその猫に一瞬だけ触れて、猫の体中を光の痣が駆け巡る。
「私のは『浸食』。見た通り誰かの制御にある物を奪う力です」
そう言いながら土塊の猫がスノの腕を伝って登るようにして頭の上に座ると己の前足をなめるようにして毛繕いを始める。それに何よりも反応を示したのがピクシーボブだった。
「それよ!ほんとにどうやってるのか知りたいし、なんなら私が作った時よりも機敏に動いてない?」
「まぁ…『浸食』ですから、制御権を奪ってしまえば中身を弄ったりはできますので…」
「それがよく分からないのよ!」
犬歯を剥き出しにしていうボブを両側の同僚が宥めるなかでクイが続ける。
「『浸食』と言ってる通り、この猫人形にはほんのりですが私自身が入っているので…簡単に言ってしまえばこの子は私自身の分身みたいなものです」
「…という事は、その猫がもし破壊されたりしたら」
「もちろん多少の反動はありますよ。まぁせいぜいがピリッとする程度ですけど」
「「「へぇ~」」」「「なるほどな」」
そんなこんなで話が盛り上がって時が過ぎること6時間ほど、雄英生たちがボロボロになって合宿所に到着して活力を食事で補給して、各々の身体の疲れを取りに浴場へ向かい、その曇ったガラスドアを開け、その先にの光景に言葉が漏れ出る。
『露天風呂だああぁぁ!!』
「風呂場ではしゃぐな!ケガをしてからでは遅いのだから!」
「そうだぞ。君たちはこれからが本番なんだろ?ならちゃんと疲れはとっておかないとね」
「「「「それはそう……ん?」」」」
ごもっともな言葉に思わず返事するが、全く聞いた覚えのない声音が岩造りの風呂から響く。そこには己と同学年か少し下くらいの少年のような見た目の男の子がお湯に浸っていた。風呂の縁に重ねた両腕の上に顎を乗せて心地よさそうな顔をこちらに向けながら言う。
「雄英生のみんな、お疲れさま。とりあえず風呂に入ったら?」
言葉に促されるように男子一同はそれぞれに身を綺麗にして風呂に入ってその温かさを享受し、ほぐされるように体を軽く浮かばせる。そしてある程度経ってから件の少年の方を向いて言う。
『…どなたでしょうか?』
「僕?僕はこの合宿所とその周辺を期間限定で警備をするヒーローの一人。…まぁ有体に言えば君たちの護衛だよ」
それを聞いた飯田がここぞとばかりに掛けた眼鏡を光らせて、
「我々の合宿を恙なく終わらせるために……!感謝いたします!」
「いいのいいの」
ヒーローを名乗る少年の周辺に少なからずの生徒が集まって各々が訊き出していく。
「あの、あなたのヒーロー名は何ですか?」
「クイって呼んでよ、君の名前は?」
「緑谷です!」
「あの!メインの活動って何なんスか!?」
「基本的にはパトロールとか、事件の未然処理とかかな」
「未然処理とはどのように行うのですか!?」
「事前に犯行計画とかを見つけ出して、メンバーとか時期とかいろいろ探って、敵が事を起こす前に一網打尽って感じ?」
『おぉ…!!』
そうして生徒たちの言葉にそれなりの丁寧さを持って返していくごとに生徒それぞれの口から感心の言葉を漏らしている中で一人だけが、その小さな体を木板の壁へと向けていた。
「…ぶっちゃけ求められてんのって、こっからなんすよ…」
「峰田、君?」
「入浴時間をずらしていないこと、それって要は、壁の向こうに夢が詰まってるってことなんスよ…」
「峰田君!!!それは男としても恥ずべき行為だぞ!」
大声で張り上げてもまるで頭に入っていない様子の峰田は頭にある『もぎもぎ』に手を添えながら言う。
「壁は乗り越えるために在る…!!」
そうしてもぎもぎを取ろうにも外れるどころが
「いた!?なんで!?
「まぁそんなことだろうとは思っていたよ…」
「クイさん?」
そう言って風呂から出て、激痛に悶える峰田の頭を掴み上げて顔面を相対させながら言う。
「峰田君……でいいよね?」
「オイラの
「そりゃそうだよ、君たちの担任からも言われたからね」
「相澤先生が?」
「うん。変に元気のある奴が出てくるだろうからってことでね。まぁ今日だけしかしないけどね」
「ど…どうしてですか?」
「そんな暇がなくなるだけだよ。明日からわかる。…あぁ、出水く~ん。もう降りていいからね~」
そう言うと壁から頭だけを出した小さな男の子が男子風呂の方を一瞬見た後、そのままいなくなった。
「…あの子は?」
「マンダレイさんの甥っ子なんだって。詳しくは知らないよ」
そのまま「ごゆっくり~」と言ってクイは峰田の頭を引っ掴んだまま風呂場を去っていった。その後二度ほど峰田の絶叫が宿から響くが、他の雄英生の耳は疲労によって遠ざかっていたので何一つとして届くことはなかった。
同日の東京都港区六本木…とあるNo.1ヒーローの事務所兼自宅にて、【
先ほどまで仕事していた雄英高校から自宅への帰路を進んでいくと、ちょっとした違和感が目に入ってきた。伽藍堂で光のないはずの我が家が、暖かい光によって照らされていたからだ。持っていた違和感は疑念と不思議さへと変わるものの、そのまま鍵を開けて一歩踏み入って、その心中は一気に驚愕へと塗り替えられていた。玄関が明るいだけでなく、奥から香ばしい匂いが漂ってきて、ないはずの
しかしなによりも……
「おかえりなさい」
「一日、お疲れさまでございました」
【星の巫女】の名代であるはずの少女…ルカがそこにいたのだから。
ここまでの読了に感謝いたします!
GWには【本題】を始めたいところでございます…が、なんとかやる気を持続させることの難しさを私自身が最も知っていることですので…
なんとかする!がんばる!()
という訳で高評価、ここすき、お気に入り、感想など遠慮なく送ってくれるととても嬉しいです!外部からの燃料供給は大事ですから!