西風騎士団のワーカホリック侍   作:POTROT

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31話

『俺たちは、どうすればこの戦いを勝てるか?』

 

 勿論の事だが、今回の決戦における最大の決勝点は、俺とウェンティ、将軍、そして鍾離殿による三つ巴だ。

 これに勝利した陣営こそが、そのまま覇を得ることになるだろう。

 

 しかし、今回の決戦にある要素はそれだけでは無い。

 我々モンド陣営であれば神の眼を保持した実力者達が居るし、稲妻陣営には社奉行の神里兄妹に、天領奉行の九条裟羅、そして幕府軍の精鋭達が控えている。

 そして璃月陣営にはそれぞれ非常に高い実力を持つ夜蘭さんと、もう一人の白髪の女性。

 更にはスネージナヤのファデュイ共も居るし、何が起こるかわからない、あらゆる場面において何をしでかすかわかったモノではない、最大にして最恐の変数たる旅人も居ると来た。

 それら全てを考慮に入れた上で、最も勝つ確率の高い戦術を取る必要がある。

 

 そこで、我々が選択したのは────

 

「短期決戦! 短期決戦だ! 電撃戦を仕掛ける! 我々は日が落ちる前に雷神、岩神を共に下し、ファデュイを打ち払い、その足で船員達を回収、モンドへと帰還する! 総員、死なない事を最優先とし、少しでもヨシノリに有利な場面を作れ!」

 

 現状において、我々の抱える最大の弱点は、『継戦能力の低さ』だ。

 稲妻陣営であれば自陣の本拠地であるということもあって万全な兵站が用意されているし、ファデュイ共はその兵站の恩恵を受けることができる。

 璃月陣営に関してはそもそもそんな事を考える必要すら無い岩神に加え、恐らく自前で食料を用意できるし、何処でも十分な休息を取れるであろう白髪の女性と、超長期の任務も難なくこなすことが出来る夜蘭さんの三人体勢。継戦能力は計り知れない程に高いと言える。

 

 それに対して、我々モンド陣営にまともな兵站など無ければ、食糧は船に積んであるだけなのでそれを使うのならその都度取りに行く必要が出て来るし、構成するメンバーはアルベド君を除いて純正の人間ばかり。

 戦場の過酷な環境下に、疲労は溜まる一方だろう。

 

 つまるところ、戦いが長引けば長引くほど、こちら側だけが不利になってゆくのだ。

 故にこそ、短期決戦。故にこそ、電撃戦。

 全員が全員、万全の状態で、かつ確実に全力で戦える今日一日の間に、勝負を決めに行く。

 

「作戦、開始!!」

『応!!』

 

 ディルックさんの号令を受けて皆が一斉に船から降り立ったら、それぞれアルベド君とスクロース、ロサリア嬢とフィッシュル君、ディルックさんと占星術師、そして俺とウェンティのような二人一組を作り、ヤシオリ島を駆ける。

 まず我々が行うのは、鍾離殿……即ち、岩神の捜索だ。

 

 現状、居場所のハッキリとわかっている将軍とは違い、岩神はその居場所が割れていない。

 もしこの状況で我々が稲妻陣営に戦いを仕掛けに行き、将軍と俺との勝負が始まったのならば、彼は間違いなく息を潜め、互いが消耗したところで漁夫の利を狙いに来るだろう。

 それを防ぐためにまずはヤシオリ島全域を捜索。岩神を発見し、これを叩く。

 そうすれば後は戦いを感知した将軍が文字通り飛んで来るはずなので、そのタイミングで三つ巴へと持ち込む。そう言う作戦になったのだ。

 

「とは言え、そもそも見つかるかどうか……まともな場所に隠れているかどうかさえもわからんのだよなぁ……」

 

 岩神とは、文字通り岩の神である。

 そして、大地とは即ち岩である。

 いやまぁ厳密に言えば違うのであろうが、しかし岩王帝君がその権能で以て作り上げた孤雲閣が、一つの生態系を育むに足る大地として機能しているところを見れば、その等式は十分に成り立っていると言える。

 

 そんな岩の神のことだ。

 地面の中に空間を確保してその中に隠れたりする事など、それこそ造作もない事というもの。

 いくら探し回ったところで、地面の中に隠れられてしまえばこちらには見つけようがない。

 もし地中の気配を拾えるとしたらそれは俺くらいのものであろうが、俺とて地中の存在の気配を探ることは難しい。

 

 地中には気配があまりにも多すぎるのだ。

 虫は勿論、モグラやらそれ以外の小さな者どもやらと……一つ一つは小さいにしても、それらが無数に集まり、幾重もの層を為している中を探るなど、砂山の何処かに埋まっている宝石を掘らずに見つけ出せと言われているようなものだ。

 

「そうだね、確かにじいさんってば、本気出したら手段なんて選んでくれなさそうだし。なんかもう海の底とかにでも隠れてるんじゃないの?」

「いや、それは無い」

「え? 何で?」

「鍾離殿は海が苦手なのだ」

 

 正確には海が、ではなく海の生物が、と言うべきであろう。

 鍾離殿に海鮮系の料理を出したことが何度かあるのだが、毎度毎度いつも通りのすました顔で、それとなく断るのだ。

 しっかり海鮮とわからない程度に調理すれば食えるらしいが、それも食った後で何だか微妙な顔になるし、逆に活け造りなんて作っていってやれば少しでも料理から距離を取ろうとする。

 そこから鍾離殿は海が苦手なのだと判断したのだが……

 

「……いや、海の下ならば関係無いのか……?」

 

 海の中ではなく、海の下の地面の中に隠れているのであれば、海とはあまり関係が無い。

 それに、俺が鍾離殿の海鮮嫌いを把握していると彼が知っているのならば、そこは無いだろうと俺に思わせることも十分に可能。

 実際、俺はほんの少し前までそういう思考になっていた。

 そう考えれば、確かに海の下は彼が隠れる位置の有力な候補にはなり得るだろう。

 

「……だがまぁ、うん。見つけるのは現実的では無いな」

 

 一概に海の下とは言っても、その海があまりにも広大すぎるのだ。

 稲妻は島国であり、その四方を完全に海で囲われている。

 この中を探すとなれば、相当な時間をかけることになるだろう。

 それも1日や2日といった話ではなく、年単位の時間が必要になる。

 

 と言うか、海の下で無くとも地中に隠れられてしまった時点で相当な時間を費やすハメになる事は必至だ。

 勿論だが、我々にわざわざ地中を掘り返して彼を探すなどといった無駄な時間は存在しない。

 今回の作戦はあくまでも短期決戦。

 彼の捜索にかけて良い時間は、元より昼の十二時までと定められている。

 もし定刻までに彼が見つからなかったのならば、大人しく雷電将軍と戦い、彼を誘き出す事になるだろう。

 

「取り敢えず今は地上の探せる部分のみを────……っと」

「わぷっ!?」

 

 ウェンティの口を塞ぎ、木の上へと登る。

 こちらの方へとやって来る誰かの気配を感じたのだ。

 ウェンティに静かにするようジェスチャーで伝えてから、葉の隙間を覗いてその気配の主の姿を確認する。

 そうすれば見えたのは、特徴的な装備を纏ったファデュイの先遣隊達だった。

 

「なんだ、ファデュイか」

 

 そう呟いて俺は剣気を飛ばす。

 先遣隊達は何が起こったかもわからないまま、身体を真っ二つに割られて即死した。

 

「うえっ!? い、いいの!?」

「どうせ船が停泊している時点で見つかるのは時間の問題だ。ならば見つけた片端から片付け、少しでも敵に情報が伝わるのを遅らせると同時に、敵の戦力を削いだほうが良い。特にファデュイは見つけ次第殺す」

 

 天領奉行の元同僚、元部下、元上司の人達ならば流石に殺さないが、ファデュイなら話は別だ。

 既に捨てたとは言え未だ家族や友人達が住み、俺の様々な思い出の詰まった愛しき生まれ故郷。

 それを踏み荒らした罪は、その命で以て償ってもらう。

 

「え、えぇ……敵の罠かもしれないけど……」

「その時はその時だ。どのみち数時間後には全面戦争になる。それが早まるだけだ」

 

 ……と言うか正直な話、将軍との決戦の前にはファデュイ共は全滅させておきたい。

 執行官(ファトゥス)を最低でも二人殺さねばならないとなると、流石に面倒が過ぎる。

 隊長がナタ近辺に居るという話から、あの博士(クソ野郎)よりも強い奴が来るとは思わないが、それでも連中は全員が全員、相当な強さを持っているはずだ。

 少なくとも一人。たった一人だけでも将軍と戦う前に潰しておきたい。

 そうすればだいぶ楽に─────

 

「うひゃぁーーーッ!?」

「…………ん?」

 

 不意に、遠くの方から絹を裂くような甲高い悲鳴が響いて来た。

 それも、実に聞き覚えのある声だ。

 

「あれ? この声って、まさか……」

 

 どうやらウェンティもこの声の主に心当たりがあるらしい。

 今度は二人して葉の隙間から声のした方を覗いてみれば、そこに居たのは先遣隊達の死体を見て顔を真っ青にしているパイモンと、神妙な顔つきの旅人、そして────

 

「あ?」

 

 愚人集(ファデュイ)執行官(ファトゥス)、その第十一位、公子(タルタリヤ)であった。




友人「書けよ」
俺「え? いや今他に書きたいのが……」
友人「書けよ」
俺「き、気が向いたら……」
友人「書けよ」
俺「アッハイ」
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