修羅場と化したあの朝の出来事から早くも放課後。俺はなんとか生き残ることが出来ていた。まぁ昼休みは結構危なかったけど…。
「真中ぁー今日これから暇?」
…これだよ。朝のアレで懲りてないのかこのポニテはッ。お前のせいで今日の昼休みは生きた心地がしなかったんだぞッ!と心中で突っ込むが表には出さない俺を誰か褒めてくれ。
「暇っていえば暇だけどよ、お前先輩達に部活誘われてたじゃん?そっちに行かなくていいのか?」
「あー昨日の朝のアレ?ないない。てか朝にも言ったけど、あたし高校で部活するつもりないしね。そういう真中は?」
原作通り部活入る気ないのな。でもさつきの運動神経を考えるに、柔道とか空手じゃないにしてもバスケとかサッカーとか候補はいくらでもあると思う。
ま、こいつの決めることだし別にいいけどさ。それにさつきって貧乏学生だったような気もしなくもない。兄弟多くて母子家庭だったような…。
「俺はまだ決めてないだけで、どっかには入ろうとは思ってる。けどもったいねぇよなー。俺にもお前くらい運動神経あれば絶対運動部入ってんのに」
「へー…美少女二人も侍らせてるモテ男君が部活にねぇ。あ、今はあたしもいれて三人か。っていうか何よもう。褒めたって何も出ないわよ?」
こいつってば本当にメンタル強いよなぁ。周囲にこれでもかって見られてるってのに、周りを煽る煽る。マジでやめて下さい。割と本気で。
「侍らせてる云々の話はマジでやめろっての。ここ最近マジで生きた心地しねぇんだから。それに別に褒めてるつもりはねぇよ」
周囲の奴らからの死ね死ねオーラが凄い。前世の時には、モテまくってた奴にこんな感情を自分が向けていたなんて思いもしなかった。因果応報とはよく出来た四文字熟語だ。
帰る準備をしながらさつきと話していると、「ちょっと待ったぁー!」とここ最近絡んでくるクラスメイトの声が俺とさつきの会話を中断させた。
朝の時と授業間の休み時間、さらには昼休みに放課後までとは…。外村の奴凄い執念だな。
「なぁ、良いじゃん真中。俺達と一緒に映研やろうぜ?な!?」
「だから何度も言ってるけど俺は興味ねぇんだって。それに…もし仮にお前達の作る『映像研究部』に俺が入ったとしても、お前達のしたい事は出来ないぞ?」
俺とさつきの机の間にグワっと入って来たのは、小宮山と類友である外村ヒロシだ。
さつきの奴は嫌そうな顔を外村に向けていて、俺と外村の会話に入ってこようとはしない。懸命な判断。俺もさつきの立場なら絶対に無視するだろう。
「それでも良い!とにかくお前が入ってくれればあとはこっちでどうにかする!だから頼むッ」
俺の机の上に頭を擦り付けてお願いしてくるこの馬鹿を俺だけでなく、隣の席のさつきを含め教室中の奴らが見ている。あまりにも必死な外村の様子に、真中入ってやれよという視線があちらこちらから飛んでくる。
お前ら人の事だと思いやがってと心中で罵り、さてと目の前で頭を下げている男に思考を戻そう。
映像研究部。略して映研。原作で真中達が青春を送った部活だ。俺としてはどうしても映研に入らなければならないという考えはない。
それというのも、俺が原作の真中と違って映画というものにそこまで思い入れがないのが理由だ。そんな奴が外村の作る映研に入って何をすればいいというのだろう。
外村や小宮山と一緒になって東城達の水着姿やらに興奮していればいいのか?……それは色々な意味でアウトだろう。
でもまぁ、こいつと話すのもわりと楽しいと思っている俺がいるのも事実。どうしようかね。
「はぁ…いいじゃん真中。そいつの部活入ってあげれば」
「お前そんな簡単に「おおっ!!北大路もっと言ってくれ!」」
「あんたは黙ってなさいよ。いい真中、こいつってばこんなにしつこいのよ?入るって言わなきゃ少なくても一学期の間中、絶対に付き纏われるって。もしかしたらそれ以降も…だからここは入ってあげなって。正直、休み時間からこっちうるさくてしょうがないんだよね」
はっはっは。北大路さつき、歯に着せぬその物言い非常に気に入ったぞ…とでも言うと思ってんのかッ!!でも、さつきの言うことも一理ある…。
「…分かった、分かったよ。外村の作る部活に入る。これでいいんだろう?」
「よっしゃああ!!これで俺のサイトはビッグになるぜぇッ」
俺の返事を聞いた外村の反応が今のこれだ。小宮山のそれを彷彿とさせる劇的な反応。これはやってしまったのではないだろうか。
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そして、時間はあっという間に過ぎていった。原作では外村によって東城と二人で体育館の倉庫に閉じ込められたり、さつきと共に怪我をして体育の授業を見学したり、西野がしばらく振りに会いに泉坂高校へ来たりと、一学期という期間には結構イベントがあったように思う。
だが、原作であったそれらのイベントは一つも起こることなく、現在俺は夏休みに入る前の諸注意…つまりは校長先生の『有難い』話を頂戴している真っ最中であった。
「であるからして…」
……何回同じ事言えば気が済むんだよこいつ。言葉とかが違うだけで、内容はどれも一貫して「この学校の生徒という自覚を持って」ってことだしな。
周りを見てみれば、既に飽きて隣同士で話をする奴や、立ったまま寝ている奴など、誰一人として校長の話を聞いている奴はいないのが現実だ。
先生達も本来なら「校長の話をちゃんと聞け!」と怒るところなんだろうが、俺達同様この無駄に長い話を聞くしかない先生達も俺達に同情してか、無視してくれている。
普段こうして話をする機会がない分、校長は張り切って話をしているんだろう。自己満足の何者でもないと思うが、それを指摘できるような奴がいないのも事実。
俺に出来るのは、一秒でも早く校長が満足して話を終えてくれるのを祈ることのみ。と、そんな事を考えていたら一人の救世主が現れた。
「校長先生。そろそろ時間も推していますので、この辺でどうでしょうか?生徒達も校長先生のお話をしっかりと聞いていたようですし」
先生達の並んでいるそこから発せられたそれは、ここにいる校長以外の全ての者達の代弁であり、まっことの英雄だった。そしてそれを発言してくれたのは言うまでもなく…。
「黒川先生がそう言うのなら…」
「ありがとうございます。お前達!校長先生に礼ッ」
俺達一年八組の担任、黒川栞。彼女のカリスマによって、体育館に集まっていた生徒達約1000人は一斉に壇上に立っている校長に向けて礼をしたのだった。
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「いやぁさっすが黒川先生!俺もう限界ギリギリだったんです!あ、肩お揉みします」
「はっはっは。毎年毎年、あのジジイには私もイライラしていたからな。思い切って言ってみるものだ」
ここは俺達、映像研究部に貸し与えられている部室の中だ。長い足を組んで椅子に腰かけた黒川先生の肩を揉んでいるのは、外村と小宮山の二人。
俺はというと、窓の冊子に腰かけてそんな三人を眺めていた。
「でも確かにアレはヤバかったわね。先生が言ってなきゃ、あたしあのハゲをどうしてたかわからないかも」
「北大路さん。その、シャツのボタンが外れてるよ?男の子もいるし直した方が…」
「いいのいいの東城さん。その人の場合、男子に見られたがってるんだから」
部室の反対側に顔を向ければ、女子三人が仲良く?話している。そうそう、外村に誘われて入らざるを得なかった映研だけど、俺以外にも三人の女子が入部することになった。言わずもがな、東城に西野、さつきの三人だな。
さつきの奴は、自分のせいで俺が入ったと分かっているので芋ずる式で入ることになったけど、東城と西野の二人にはびっくりした。
二人は俺がどの部活にも入らないと思っていたらしく、自分達は思い思いの部活に入る気でいたようだ。それも後で知ったことだけど。
東城は原作でも入っていた文芸部に、西野はなんと料理部に入ろうとしていたらしい。なんでも、東城を家に泊めた際に夕食として出した手料理が不評だったのが不満だったとのことだ。
これは本人に言う東城が凄いのか上手くなりたいと向上心のある西野が凄いのか…。まぁ、そんなわけで二人は入部届けを書き終わり、俺に話してからそれぞれ部活の部長に提出するつもりだったらしい。
と、そんな折俺が映研という部活に入ることになったこと、並びに『さつき』もその部活に入るということを知った二人がとった行動は、自分達が書いた入部届けを破り捨て、外村に映像研究部と上に書いた入部届けを出すことだった。
それから起こった狸、狐、鼬の三匹による三竦みの戦いのようだったとは外村の言だ。どの動物が誰を刺しているのか、それは各々で考えてもらいたい。俺は自分の机の上に伏せて縮こまることしか出来なかったからな。
「見せる物もないくせに」
「何か言ったかしら北大路さん?」
「いいえ何も言ってませんわよ西野さん?」
「あぅあぅ…二人とも喧嘩しないで、ね?ね?」
三人のこんな会話は今に始まった事じゃない。この三ヶ月というもの、毎日繰り広げられている光景だ。…気づいたであろうか皆様。そう俺はこの光景を毎日見せられている。休日こそ唯一一人になれる時間だったが、部活に入るにいたり休日出勤も止む無くなった結果がこれだ。
平日は八組の教室で、休日は部室でと三人というか西野とさつきは言い争いとまではいかないが、火花を散らしている。
「あぁそこのお三方ちょっとでいいんで僕の話を聞いてはくれないでしょうか?」
と、今日も今日とて火花を散らしている二人とオロオロとしている三人に向かって外村が話しかけた。実は今日が終業式ということもあり、午後は四人で遊ぼうと話していた矢先、外村に部室に集合という俺はそこまでだが、三人にとっては非常に遺憾な声が掛かったのだ。
この三ヶ月というもの放課後や休日に集まるのはいいものの、何もせずただただ駄弁りながらお菓子を食べるという、部活としてどうかという活動をしていたにも関わらず、部活初日以来来ていない黒川先生も呼んで何をしようというのだろう。
「ゴホンッ今日集まってもらったのは他でもない。夏休みが明けた二学期。泉坂高校が誇る学園祭、嵐泉祭が来る。それに向けて俺達は映画を上映したいと思ってるわけ。ま、映像研究部って部活名だし学園祭で何もしないっていうのは拙いからな」
外村のその言葉にそれでいいよーとばかりに、俺を含めた皆が特に異を唱えることはない。だが、そんな中でふふんとばかりに足を組みどこぞの女幹部のようにしている人物に自然と視線が集まる。
「お前達、嵐泉祭をただの学園祭だと思っているようだが、それは間違いだ。嵐泉祭で売り上げ一位となった部活またはクラスには、ある特典が与えられる」
「特典?」
「そうだ北大路。お前が今考えた事が許されるとしたら…どうだ?」
「早弁出来るんですか!?」
特典という単語から早弁を思いつく女子はお前だけだよ。そんな俺の心中を余所に、黒川先生は東城と西野にも話を振る。二人は「抜き打ちテストなし…」やら「図書室の本の補充…」など、自分の欲望を口に出している。
「お前達の中では東城の物が現実的ではあるが…特典とは休日祝日関係なく、10日間の休みを貰える他学校から少なくないボーナスが貰える。まぁ、赤点をなかった事にしてもらった奴や持ち物検査で見逃してもらった奴などいるがな」
「赤点なし!?」
「持ち物検査回避!?」
赤点なしと叫んだのはさつき。持ち物検査回避と叫んだのは小宮山だ。どっちも理由が容易に想像出来るな。
「そして、生徒達だけでなく私達教師にもその特典は与えられる」
「よっ流石黒川先生。自分の為と素直に言えるあなたを僕は心の底から愛しています!」
外村のゴマすりならぬよいしょならぬ愛の告白を受けても黒川先生は微塵も揺るがない。むしろ俄然調子に乗ったのか、席を立つと自分が座っていた椅子に片足を乗せ、自分の胸に手をやると東城達女子に視線を向ける。
「幸いこの部には、美人どころが私を含め四人いるからな。色香で男子どもを集めれば、売り上げ一位など簡単だ!」
そう言って自分の胸を揉む黒川先生は、何だか残念な人に俺には見えた。
「よ、良ければ僕が揉んで差し上げますよ?ゲヘゲヘ」
「お、俺も!ゲヘゲヘゲヘ」
あぁ、ここにアホ二人がいたな。
と、いうことで、これから嵐泉祭に向けて第二シーズン始まりですかね?
シレっと投稿します。このssまだ読んでくれている方がいるかわかりませんが、完結させたい気持ちは変わっていませんよ?ww
ネット小説漁りブームがまだまだ治まらないうたわれな燕ですが、これからも頑張ります!今年は三十話まで投稿したいかな?
あ、一応言っておきますか。
あけましておめでとうございますww(*^^*)