面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。
アニとコーバが秘密を共有し、契りを交わしてから一夜明けて。
何の変哲もない練兵場での対人格闘技訓練でのことだった。
アニは頗る好調で、それまでの気だるげな様子から一変して、誰よりも真面目に取り組むようになっていた。
同志の変質に、ライナーとベルトルトは違和感を覚えたが、直接聞くには余りにも変化の度合いが大きすぎて、逆に尋ねることが憚られた。
結局、ライナーとベルトルトが、訓練中に彼女の身に何があったのかを問い質すことはなかった。
◇
第四期生には個性的で才能に満ち溢れた者が多く在籍していた。
中でも天才的なのがコニー・スプリンガーとサシャ・ブラウスである。
彼らは野生の勘とも言うべき、兵士としての適性を有しており、そのことで早々に親衛隊上層部(ミカサやヒストリア)からの注目を集めていた。
また、才能という点以外では、経緯こそ知られていないがヒストリアと仲がいい、そばかすが特徴的なユミルという名の第四期生にも注目が集まっていた。
◇
848年の十月七日…ミットラス共産党政府発足から丁度三年目の節目に、同志コーバは人民の記念日として、この日を完全休日とした。
しかし、兵士に完全な休日が無いように、訓練兵である第四期生達にも休日はなかった。
だが、休日がない代わりに、彼らには特別給食がミットラス共産党はもとより、我らが同志コーバの意向により饗された。
特別給食のメニュー内容は、一人当たり一羽の七面鳥の丸焼き、砂糖たっぷりのカップケーキ五つ、微炭酸のエール一リットル、煙草三人分、白パン一斤、牛肉シチュー小鍋一杯分である。
到底一日では食べきれない内容だったが、そこは各自で物々交換に使うなり、有効に活かすことが求められた。
◇
「皆さん、冬季演習は取りやめです!今日はゆっくりと特別給食を味わってください!以上、解散!」
総長様のありがたい計らいで、私たちは七面鳥が冷えるより前に食卓に齧りつくことが出来た。
「同志コーバ万歳!」
特別給食なる聞いたことも見たこともない贅沢な食事が現実のものだとわかった途端に、そんな声があちこちから聞こえてきた。
かくいう私、サシャ・ブラウスもまた、彼らの内の一人だったのだが…。
「軍に入れば飢えない」とか、「中でも親衛隊幼年部は将来の職にも困らない」とか…そういう噂は前々から聞いていた。
だけど、大抵そう言う噂は眉唾だって父は言っていたし、私自身、そんなに贅沢な暮らしを望んで親衛隊に志願したわけではなかった。
あぁ、しかし、なんてこっだがや…。
まるで夢でも見てるみたい…!!
◇
俺の名はコニー・スプリンガー…自身の才能を信じて…ではなく、母親に好い思いをさせてやりたいと思ったから親衛隊に志願した口だった。
とはいえ、記念受験のつもりで挑んだ試験で好成績を出してしまい、ついでに隣にいたサシャ…今、貪るように七面鳥の丸焼きに食いついている…と仲良くなったからという理由もあって、記念で終わらせるのも惜しいと思い、親衛隊に志願した。
俺クラスになると、天才すぎて教官から叱られたりもするのだが、その意味で言えばサシャ…今度はカップケーキで喉を詰まらせている…も同様に天才だった。
全く恋愛感情は湧かないのが不思議なことだが、それ以上に信頼し合える親友、或いは相棒として、行く行くは親衛隊の中でも共に上を目指していきたいと考えていたりする。
「なぁ!お前もそう思うよな!サシャ!」
「むぐぐぐぐぐもごごごごもががもが(カップケーキで喉が…!?)」
「おい!大丈夫かよ!ほら、エールで流し込め!」
「ぬぐぐぐ…んぶ、んぐんぐんぐ…ぷはぁ!助かりましたぁ~」
「いきなりすごい勢いだな…一日で食べ尽くしちまうつもりかよ?」
「それもいいですね…あぁ、でもなんて幸せなんでしょう。冬季の演習が取りやめになって、その代わりに温かい室内で、こんなに美味しい食事を、しかも、お腹いっぱい食べさせて貰えるだなんて…」
「あぁ、確かに、夢みたいな話だったよな、ついこの前まで肉なんて滅多なことでは食べられなかったし」
「それもこれも、コーバさんのお陰なんですよね?」
「コーバさん?あぁ、同志コーバ様々のお陰だなっ!」
「いつか、お会いしてお礼を言いたいです」
「お前、意外と殊勝な奴だよなぁ」
「殊勝とは何ですか!普通ですよ!…冬場に空腹を満たして貰った恩は、永遠に消えないもんです」
「そうかよ。ま、まぁ確かにお礼は言いたいくらい、そんくらい豪勢なもんだよな」
「そうですよ!いつか、直接お会いできたら好いなぁ」
「随分な入れ込み具合だな…恋でもしたか?七面鳥に?」
「あはは、でもそうかもしれませんね。だって美味しい食事を運んできてくれるのって、強い雄にしか出来ないことですから」
「雄とか、いきなり生々しいな」
「ところでコニー、食が進んでないみたいですが、要らないなら貰いますよ?」
「お前が進みすぎなんだよ!サシャ!」
相棒のサシャとは今後とも上手くやっていきたいところだが、ひとさまの食い物にまで手を出しそうなところだけはいただけねぇ。俺がしっかり手綱を握っとかねぇとな!
「あ、どこからか七面鳥が私を呼ぶ声が!!」
「おい待て!!それはジャンの分だ!」
俺が言うが早いか、サシャが真向かいに座っていた同期のジャン…ジャン・キルシュタイン…の手つかずの七面鳥に齧り付いた。
「うおぉおぉおぉ!?何しやがる食い意地女!」
「唾付けたもん勝ちです!」
「うわぁああああ!?汚ねぇ!」
サシャは何を思ったか、ぺろぺろと七面鳥の皮を舐めだした。こんがりと焼き上げられた甘い油を啜るように、むしゃぶりつくサシャの狂乱に、周囲は騒がしくなるばかりだ。
「乙女の唾を汚いとは、貴方、実はモテませんね?」
「モテるし!!」
「あははは、ジャンボが顔を出したぞ」
「マルコも余計なこと言うんじゃねぇ!」
筆記試験でトップだったマルコ…マルコ・ボット…が、ジャンを諫める役に回った。
対して、志願の熱意だけは一番だったエレンとアルミンは対岸の火事といった様子だ。
「アッチはなんだか騒がしいね、エレン」
「あぁ、はしゃぎすぎ、子供じゃあるまいし」
「あぁん?なんだぁ、テメェ!」
「落ち着けって、ジャンボ」
「ジャン・キルシュタインだ!ジャンボじゃねぇ!」
エレンとジャンが取っ組み合いの喧嘩に発展するまでそう時間はかからなかった。
この騒動の元凶であるサシャはといえば、まんまと手に入れたジャンの七面鳥を心底幸せそうに食らっていた。我関せずここに極まれり、だ。
う、ううむ…やっぱし、サシャの手綱ぁ…握れる気がしねぇなぁ。
◇
第四期生達が楽しい祝日を迎えているころ、地下壕の食堂も賑わいを見せていた。
大きな暖炉の前で串刺しの七面鳥が何羽も吊られて、その表面をじっくりとローストされていた。
暖炉番はくじで決まったエルヴィンが務めた。ローストでこんがり焼ける七面鳥からは、なみなみと肉汁が滴り落ちていた。赤い火から少し離れれば、冬の到来を実感できるだろう。
エルヴィンは、滴り落ちて来る甘い甘い肉汁を、下の受け皿で受け止めたものを、更に七面鳥に上からエキスで覆うように深い木の匙で掬ってはかける役目だった。
なんとも言えない香ばしい薫りが地下壕の食堂で充満していた。
幹部連中の中でも、特にコーバと親しい者たちが一堂に会していた。
長い長い食卓の、お誕生日席にコーバが腰を下ろしてから、コーバから夕飯へ招かれた客人たちは、我先にと少しでもコーバに近い席に座りたがった。
一番近い、コーバから見て右手の特等席を掴んだのは、日頃最もコーバと親しいミカサだった。
「ここは私の予約席」だと、ミカサは誇らしげに胸を張った。
次に、コーバの左手に座ったのは、最近…遠征を通じて最も親しくなったナナバだった。
「今日はお招きいただき光栄です、我が同志コーバ」
「同志ナナバ…来てくれて私も嬉しいよ。ゲルガー達からは随分遠い席だが、好いのかい?」
「勿論です。寧ろ、私はゲルガーに勧められてこの席を選びました」
「ならば重畳…ゆっくり味わっていってくれ。今日饗される食べ物は、全て我々がこの三年間、耕し、育んできた旧王家の所領を開墾して得たものだからね」
ナナバとミカサは強く頷き、実に楽しそうにエルヴィンが見守る七面鳥の丸焼きが焼き上がるのを、コーバと談笑しながら待った。
◇
七面鳥が焼き上がり、牛肉のたっぷり入った濃厚なシチューとキンキンに冷やされたエールが席に運ばれてきた。各自、待ちきれないという様子で、中には秘蔵の酒を持参するやんちゃ者もいた。
宴会の音頭をとったのは、我らが同志コーバの信頼が厚く、そして遠征を実際に裏に表に支え、成功に導いたハンジ・ゾエだった。
ハンジは朗々と、タイタン砲開発の苦労と、そのあとの栄光について長々と話してから、コーバにバトンを預けた。
宴会を前にしての丸投げだったが、同志コーバは心から満足げに、今ここで共に生きて御馳走を囲んでいる面々を、その一人一人と目を合わせながら、改めて宴会の音頭をとった。
「今年は遠征も成功して、中々、悪くない一年だったと思う…小難しい話は今度にして、今はこれまでの苦労を互いに労い、私たちが築いたものが何であるか、この場では食事を通じて嚙み締めようではないか」
「諸君、杯をもってくれ」
「乾杯!」
「乾杯!同志コーバ万歳!」
「はっはっはっ!ならば私も…革命万歳!同志万歳!」
息の合った乾杯を合図に、コーバとその戦友たちは、手の込んだ料理や、つい三年前までは想像もつかなかった豊かな食事に舌鼓を打った。
酒が回ってくると、ゲルガーやオルオ、ハンジを中心に、微笑ましい乱闘が起きては、エルヴィンとリヴァイから窘められ、そのしょぼくれた姿がまた、宴席を囲む戦友たちに笑いを齎した。
笑い合い、肩を組合い、夢にまで見た飽食を、文字通り飽きるまで堪能したのだった。
過酷な冬を前にして、ミットラス中央ソヴィエトは再び強固に団結を確かめたのである。
全くの余談であるが、宴席の終わり頃、ナナバがイルゼやハンジと共にコーバを寝室に誘うという事件が発生した。しかし、ナナバからの誘いをミカサが妨害したことで、一時、両者の関係性にひびが入るという珍事に発展した。
しかし、当のコーバには「あんなに二人の間の空気悪かったっけ?」程度の認識しかなく、斜め上の疑問を持ったまま、リヴァイに世話を焼かれて自室へ帰るや否や熟睡してしまった。
色々と騒がしい一日だったが、特に訓練兵たちにとっては大いに英気を養う一日となった。
珈琲藩士様 ジャックランタン様 楓流様 誤字報告ありがとうございます。
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