進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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サシャ・ブラウスが、コーバを崇拝するに至るまで

サシャ・ブラウスが、コーバを崇拝するに至るまで。

 

 

 

 

 

 

 

ウォールローゼ南区ダウパー村出身のサシャ・ブラウスは、飢えを知る者だった。

 

飢え、飢えとは何か、多くの者はその本質を理解していない。特に、比較的食糧事情が豊かなウォールローゼ、シーナ内地に住まう者たちにとっては、飢えとは縁遠い概念だった。

 

ウォールローゼ内地の中でも辺境で、狩猟を生業として生きる一族に生まれた、サシャにとって、猟果の有無は飢えに直結した。

 

だからこそ、サシャにとって肉を食うという行為は、一種勲章的であり、神聖な意味合いすら伴った。

 

食料の安定供給とは程遠い環境下で成人と呼べるまでに彼女が成長できたのも、肉を食ってきたからであると同時に、肉を食うために必要な素養を常人以上に有していたからに他ならない。

 

そんな彼女にとって、飢えからの救済とは、奇跡か或いは神の御業に等しい行いだった。

 

845年にウォールマリアが巨人により破られてから、ウォールローゼ内地にも難民が押し寄せた。それにより、彼女は生まれて何度目かの飢えに遭遇した。

 

そして、その飢えを解消するために、当時新設されたばかりだった親衛隊幼年部第一期生へと志願し、あえなく落選した。

 

この時、ただ落選しただけだったならば、彼女の飢えは増幅するばかりだっただろう。だが、現実はその世界の残酷さを忘れたように、サシャにとって好意的な進展を見せたのだ。

 

まず第一に、彼女の出身一族である、狩猟民族…言うまでもなく壁内での少数派…に、大規模な農園或いは牧場の経営権が移譲、もしくは全面的に委ねられた。これは約25万人に及ぶ、ウォールマリア内地からの難民の移住計画に伴い、同志コーバが主導した農業と酪農の集産化の一側面から見た結果だった。

 

巨人により奪われたウォールマリア内地からの難民の移住計画には、多くの面でウォールローゼ、シーナ内地の人民を優先する傾向が見られたが、その中でも旧王制時代に冷遇され、顧みられてこなかった少数派への優遇政策が目立った。

 

旧王制時代の大規模な土地所有者から、全面的にその権利を合法的…武力を背景として…に放棄させたことで、未開拓の土地を含めた広大な領土が新たに齎され、その運営を同志コーバから委任された少数派の中に、サシャの生家ブラウス一族が名を連ねていたのである。

 

意図しない形で、大量の余剰労働力と、未開拓の生存圏を獲得するに至った政府は、五年後を見越して悔いなき選択をしたと言えよう。

 

このような背景から、サシャの一族は飢えから解放されただけでなく、公的地位を向上され、政府にも一目置かれる牧場経営責任者として成長したのである。

 

彼女がこのことを知ったのは、ウォールシーナ内地での親衛隊幼年部への初の受験に落選したことが判明した翌日の出来事であった。

 

生まれて初めて父から送られた手紙に、サシャの一族が飢えから、この先五年間は完全に解放された背景が、そのすべてが記されていた。

 

そして、ここからがサシャ個人にとっての福音の始まりだった。

 

差出人が実の父親からだったこと、その内容が見たことも聞いたこともない、同志書記長閣下…コーバ…という個人への感激に満ちていたことがきっかけとなり、彼女に生まれて初めてのファンレターを認めさせたのだ。

 

同志コーバに向けて認められた手紙の内容は、大まかに言えばこうだ。

 

「同志書記長閣下、同志コーバ、私の一族を飢えから救ってくれてありがとうございます。貴方の為に、私も何かお手伝いがしたいのですが、親衛隊幼年部の受験には落選してしまいました。何か代わりになるものがあれば、何なりと仰ってください。私に出来ることであればなんであっても、必ず力になります」

 

幾分訛りの強い語感と、狩猟人らしい少々粗野な字面で、しかし情熱の伝わる手紙が認められ、投函された。

 

本来、一青年の、ましてや親衛隊幼年部に落選した身であるサシャの手紙が、コーバに…取りも直さず、国家の頂点に行きつくことは殆どあり得なかった。例え目に触れられたとしても、流し読みにされて、他の書類と手紙の海に沈んだはずだった。

 

だが、サシャ・ブラウスの手紙は、何の因果か全くの障害を受けずに、真っ直ぐコーバの下に辿り着き、彼の眼にしかと触れられ、読み込まれたのである。

 

 

 

 

 

 

サシャは手紙を出してから三日後、故郷の村に帰還した。英雄の凱旋とまではいかなかったが、彼女の果敢なチャレンジを讃える祝賀会がブラウス一族の内輪で開かれた。

 

久方ぶりの帰宅だった。彼女を待っていたのは、豪勢な食事だった。

 

若い鷄をしめた、貴重な鳥の丸焼きが、幾つも用意されていた。狩猟民族の血を忘れたわけではなかったが、牧場経営の成功なくしてはありつけなかった食事ばかりだった。

 

食事に大いに満足して、親衛隊幼年部への落選を忘れた頃、丁度そのころ合いに、一通の手紙が彼女の下に届けられたのだ。

 

差出人は、ヨシフ・"コーバ"・ヴェトー。サシャが手紙を先に出した、その宛先の張本人からだった。

 

恐る恐る、サシャは何とも好い香りのする上質紙に認められた、コーバからの返信に目を通した。

 

コーバからの返信の内容はこうだ。

 

「お手紙、拝見しました。私は数ある陳情の手紙を読んできましたが、中でも貴女の手紙には大いに心動かされました。貴女の情熱をここで絶やすことは国家の損失だと確信しました。ので、是非とも私の近くで力になって頂きたいのです。三年後、親衛隊幼年部第四期への受験を、私は推奨します。三年の内に、試験内容を見直し、然るべき人材が私の近くに集まる様に手を尽くします。恐縮ですが、私に是非とも三年間の猶予を頂きたいのです。返信には及びません。なぜなら三年後、貴女とは直接お会いする機会が運命として定められているのですから。では、三年後お会いしましょう」

 

サシャは生まれて初めて認めた手紙に返信が寄越されたことにまず驚き、次いでコーバ本人の直筆であることに驚き、最後にはその内容の眩しさに目を回した。

 

サシャは返信を、思いつく限りの美辞麗句で埋め尽くし、何度となく書き直し、送るまいかと悩み抜き、文字通り三年間を一通の手紙上での約束を叶えるために費やした。

 

かくして三年後、返信をせずに、耐えに耐えた状態で受けた親衛隊幼年部第四期生への志願に見事当選したのである。

 

果たして、サシャが心待ちにしたコーバとの直接対面は、思わぬ形で成されることとなった。

 

 

 

 

 

 

それは、戦友であり相棒であるコニー・スプリンガーと共に、官舎に付属している食堂で夕食を摂ろうと、給食の列にトレーを抱えて並んだ時のことだった。

 

「君がサシャ・ブラウス君だね?三年間、待たせたね。長かったろうに、君にこうして直接会えて私は嬉しいよ…初めまして、私はヨシフ・ヴェトー…どうだろう?今日は私も君たちと夕飯を共にできないだろうか?」

 

がやがやと人群れが波打ち、引き潮の様にサシャとコニー、それからもう一人を残して人垣の輪を描いた。

 

「こりゃ、何かの夢でも見てるのか?」とは、コニーが咄嗟に零した言葉だった。

 

次の瞬間、ドッと歓声が上がった。

 

誰ともなく、叫んだ。

 

「同志書記長閣下!なぜこんなところに!」

 

ガラン!とサシャが給食のトレーを落っことした音がよく響いた。

 

「本当に、約束を…あ、えっと…」

 

サシャの口からはそれっきり言葉が出なかった。

 

代わりのトレーをコーバが二人分持ってきて、一枚をサシャに手渡すと、もう一枚を自身で抱えて、誰を抜かすこともなく、あたかもそれが自然であることの様に列の最後尾に並んだ。

 

「あの、お手紙、読みました。何回も何回も…えぇっと…こ、こっちは相棒のコニーでして、えっと」

 

急いで最後尾に…コーバの真後ろに並び直したサシャは、顔を真っ赤にしながら、どもりながらもコーバに話しかけた。湯気でもあげそうな様子だった。

 

「それは嬉しいね。自分で書いた甲斐があったよ…ここだけの話、何時も有能な代筆がいるお陰で何をするにも自分一人では上手く行かなくてね…書き損じていなかったかな?大丈夫だったかい?」

 

「そそそそ、それぁもう!最高でした!」

 

「そんなに褒められると照れるよ…私もね、君からの手紙は何度となく読み返したよ…人のことは言えないけれど、私も君に負けないくらい字にクセがあってね、あれでもマシになった方なんだよ」

 

「そんな、滅相もない!あ、あの、それで、一緒に、本当にご一緒して頂けるんですか?」

 

「勿論!喜んで、今日限りと言わず、次の機会にもご一緒させて欲しいものだよ」

 

「こ、こちらこそ、喜んで!」

 

コニーは終始恐縮していたが、サシャは食事の手を止めては、遠巻きに同窓の衆人環視の下を自覚しながらも、何度となくコーバに話しかけ、談議に話の花を咲かせた。

 

「ごちそうさまでした。これから人民会議があってね、ここいらで私はお暇しよう…。それじゃあまたね、同志サシャ・ブラウス君」

 

「今度は、私が、私が狩った獲物を御馳走します!ですから、また!」

 

「あぁ、また今度ね」

 

サシャは常々誰よりも長く食堂に居座ったが、この日ばかりは食の速いコーバを官舎の門前まで見送るために、味わうことを忘れたように夕飯を食らい尽くし、ぴったりとコーバの後に続いて誰よりも早く食堂を後にした。

 

コーバを見送った後、サシャは人生で二度目の手紙を認めた。宛先は実家、父親へ向けての報告だった。

 

サシャは文面でこう語った。

 

「同志コーバは凄い!火砲の専門知識に留まらず、あらゆる点で超越的だ!私は今日、夕飯をご一緒できたことを一生涯の名誉にしたい!そしていつか、誰よりも近くで同志コーバを支えたい!」

 

夕飯中、コーバと話しながら、サシャは心底その記憶力と、自身が最も得意とする火砲術の専門知識への追随に舌を巻いた。政治だけでなく、軍事にも造詣が深いことはサシャを感激させた。

 

自分の生きている世界と、コーバの生きている世界が繋がったという実感に打ち震えて、サシャは生まれて初めて興奮で眠れぬ夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

此処からは全くの余談であるが、サシャ・ブラウスの得た感動を補足するべく、親衛隊幼年部第四期生の中での彼女の評判について語ろう。

 

まず第一に、その成績に関して、直属の上官を務めるヒストリア・レイスは以下の様に語った。

 

「本能的で、尚且つ判断力の果断さは群を抜いています。一方で、座学に関してはギリギリ及第点を越す程度に留まり、この点は相方のコニー・スプリンガーにも数値的に劣ります」

 

次いで、第二にサシャが最も高い評価を受けている火砲術の教官を務める、リコ・ブレツェンスカは以下のように語った。因みに、リコ教官は旧駐屯兵団、現ミットラス赤軍から志願して親衛隊第一期生に入営、見事首席で卒業した逸材である。

 

「火砲術に関して言えば、サシャは天才的です。観測手を務めるコニー・スプリンガーと組ませた時の彼女の砲手としての勘の鋭さには、天性のものがあります。一方で、座学中には昼寝もすることが多く、それでもどうして弾道計算の講義だけは点数としても抜群なのか理解に苦しみます。恐らく今後とも私には理解はできないでしょうが…それでも砲手として傑出した勘と、その勘に基づいた弾道修正能力に長けていることは認めざるを得ません」

 

最後に、同期であり入営から二年目の849年の時点で総合成績で首席を維持し続けているアニ・レオンハートと、彼女と同室で旧憲兵団、現公安警察軍志望から転向して親衛隊幼年部第四期への途中入営を果たしたヒッチ・ドリスの意見に耳を傾けて欲しい。

 

アニ曰く「サシャ・ブラウス…火砲術の成績だけは負けていることは確かだよ。まぁ、体術は私が勝っているし、筆記だとコニー・スプリンガーに圧倒されてる印象かな…私?私は筆記はマルコ・ボットに負けてるけど、その点以外では体術でも立体機動でも一位を維持してるけど…それが、どうかしたの?こういうゴシップはヒッチに聞きなよ、あの子は私よりも耳聡いからさ」

 

ヒッチ曰く「要領の悪い子、って印象かな?でもバカじゃないよ。本当にバカだったら火砲術での仮想敵撃破数でぶっちぎりの一位を維持出来ないハズ…まぁ、体術で独自の拳法を編み出してコニーと競い合ってる点は擁護できないかな…あれ、どうしよう、バカじゃないって言った手前自信なくなってきた…」

 

サシャ・ブラウスと、彼女の相方のコニー・スプリンガー訓練生に関する証言は一旦は、これで以上とする。

 

 

 

 

 




本二次創作品の中でのサシャの立ち位置は、空の魔王ことハンス・ウルリヒ何某と同じです。
*=絶対に死なせないから安心してね。


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