アンケートでヒストリア・レイスへの投票数が抜きんでていたので、早速書いてみました。
面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。
旧王家レイス家の元当主ロッド。その妾腹の子として生まれた、ヒストリア・レイスにとって、彼女の運命が動き出した日は、コーバへの愛に目覚めるのと同時だった。
◇
その日は突然だった。王家の血を引く者として、その存在を公に認められることなどなく、不条理にも異物として始末されるだけの命だったヒストリア・レイスとその母親に、その人生に救済を齎した者こそ、ヨシフ・ヴェトーその人だった。
深夜、ロッド・レイスにより召喚されたヒストリアとその母親。待つこと約一時間。馬車と共に死神の足音が聞こえて来たものと覚悟した二人に対して、旧中央第一憲兵を掌握したケニー・アッカーマンは、ロッドからの命令を堂々と拒んだ。
ヒストリアとその母を抹殺することを画策し、無様にもケニーとその麾下兵士らによって、その自らが発した勅命を拒まれたロッドは言った。
「中央第一憲兵の忠誠宣誓はどうしたんだ!」と。
凍えるように冷たい風が吹きすさぶ夜のことだった。
ロッドの声が空しく、彼の所有する牧場の隅に木霊した。
ケニーはニヤリと笑みを浮かべると、吐き捨てるようにロッドに、このように言葉を返した。
「レイス家当主ロッド、俺はお前に忠誠を誓った覚えなどない。俺だけでなく、この場にいる全員がそうだ。最早、旧時代の支配者と化したレイス家への忠誠宣誓など、中央第一憲兵に限らず空虚にも忘れ去られた概念に過ぎない。誰一人として、お前の命令に従う者などいない」
ロッドがわなわなと怒りと屈辱で震えた。そして、その怒りのままに、ケニーへと殴りかからんと、無駄な胆力を発揮した時だった。
ケニー達に続いて、馬車から人影が一人分現れた。月明かりに照らし出され、背筋を伸ばしてロッドの前に立ち塞がったのは、彼の実の娘であり、始祖の巨人の力を継承したばかりだったフリーダ・レイスだった。
「フリーダ!今すぐこの裏切り者たちを殺してしまえ!その為に、ウーリはお前に巨人の力を託したのだから!」
思わぬ応援だと、ロッドが気力を取り戻そうとしたのに対して、フリーダは冷たく言った。
「お父様、そのような冗句を宣うことは以後お控えください。最早、私たちは…いいえ、王族などという特権階級は壁内に存在してはいけないのです」
「ど、どういうことだッ!?何を言っているのか理解しているのか!フリーダ!」
ロッドが叫び、脂汗を垂らし、唾を飛ばした。
フリーダは、ケニーとロッドが乗ってきた馬車に横づけられた、四頭立ての…ロッドの乗ってきた物以上に立派な馬車へと視線を向けると、恭しく一礼してから、実の父親に向けて以下の通りに宣告した。
「お父様…いいえ、同志ロッド。私は同志コーバにより、王家の呪いから解放して頂きました。惰弱な王家を、誰も必要とはしていないのです。今や、同志コーバと同志コーバによる『解放』思想に全てを委ねることこそが、壁内の為に旧王家に出来る最良の行為なのです」
「大規模土地所有者などという、特権階級は革命の敵であり、これより紡がれる同志コーバによる伝説的改革の邪魔をする障害物でしかないのです」
フリーダの言葉に、ロッドは絶句した。
そして、ふと思い出したように…まるで縋りつくような勢いでフリーダに詰め寄ろうとした。だが、縋りつくこと叶わず、ケニーの指示で旧憲兵により羽交い絞めに拘束された。
拘束されながらも、ロッドは悲痛な表情で喚いた。
「フリーダ!!脊髄液はどうした!!どうしたんだ!!まさか、まさか巨人の力をも、王家の全てをもッ!その得体のしれない地下街の破落戸に呉れてやったのか!!」
「誰が、どこの誰がゴロツキだってぇ?おい、もう一度同じ言葉を吐いてみろ!お望みなら俺が直々に三枚に下ろしてやる!!」
ケニーは破落戸という言葉に、耳をピクリと動かすと、ツカツカとロッドの目の前まで進み出た。そして、キツい一撃をその鳩尾に叩き込んだ。
「ゴホッ…ゲホっ!?」
崩れ落ちることも許されず、ケニーの拳に意識を遠く飛ばしたロッドは、それっきり脱力して意識を失った。襤褸雑巾の様に馬車に詰め込まれる実の父親の姿に、フリーダは凍てついた軽蔑と失望の視線を送った。
◇
ケニーと旧中央第一憲兵の面々がロッドと共に退出し、その場にはフリーダとヒストリア、ヒストリアの母親の三人が残された。
状況を掴めないまま、置いてけぼりにされていたヒストリア母娘だったが、間もなく無様な父を収容した馬車が走り去っていくのを見送ったフリーダと、初めて対等に言葉を交わす機会に恵まれた。
ヒストリアもその母も、絶対的な権力者として潜在的にその存在を脳裏に焼き付けられてきた、ロッドの無様極まる姿に困惑していた。
殺されると、どこかで諦観が滲んでいた母娘にとって、ロッドの墜落は一種清涼であり、同時に疑問符が頭を埋め尽くしていた。
言葉を発しようにも、何をどのように聞けばいいのかわからなかった二人は、フリーダの言葉を待った。
フリーダはそんな気持ちを知ってか知らずか、自身よりも背の低いヒストリアに腰を低くして、視線を合わせながらゆっくりと言葉を紡いだ。
「私は貴女達に父に代わって謝らなければなりません。心よりお詫び申し上げます。ただ、どうか理解していただきたい事実が一つあるのです」
「貴女達は、幸運にも同志コーバにより助命されたのだという事実を」
フリーダはそう言うと、改めて四頭立ての馬車の窓越しにこちらを見守る、同志コーバの影に小さく首を垂れた。
言葉では語り尽くせぬ事実を、フリーダは自身の身振りだけで、それだけでヒストリア母娘に理解させた。
続けてフリーダは言った。
「謝意を示すべく、同志コーバは貴女方が生涯生きるのに困らない待遇を保証してくださいました。しかし、これは提案なのですが、同志ヒストリア、貴女にその意志がありさえすれば、私と共に同志コーバのお傍に仕えてはみませんか?」
「…貴女は王家の人間として今日この日より公に認められます。因果なものですが、革命により新たな政権が誕生した今、同志コーバが率いる壁内人類の為にも、同志コーバを新たな指導者として認める貴種が必要とされているのです。穢れも柵もない潔白な貴女ほど、同志コーバを傍で支えるに相応しい貴種は存在しないでしょう」
「是非、悔いなき選択を。私は同志コーバを新たな指導者として認め、あの御方、個人へと忠誠を尽くす覚悟です」
ヒストリアはまだすべてを理解していたわけではなかった。だが、一つだけ、ただ一つだけ理解していることがあった。それは同志コーバという、自分の運命を絶望から掬い上げてくれた誰かが、自分の存在を必要としてくれている事実だった。その事実に、ヒストリアは生まれ落ちて以来、何よりも強い感動を覚えたのだ。
ヒストリアは安堵と感動から涙ぐみ、嗚咽を漏らす母の手を握りながらも、恭しく…フリーダがそうしたのと同じように…四頭立ての馬車の窓越しにこちらを見守る人影に首を垂れた。
ヒストリアは、この日のことを生涯忘れることはないと、そう断言できた。
◇
あの日、新たなる運命に服従して以来、ヒストリアの人生は順風満帆に進展した。
親衛隊幼年部第一期生を首席で卒業後、敬愛して已まない同志コーバ直々の意向で、幼年部総長に就任し、三年間を見事に勤め上げた。
そして三年後、その働きぶりから、事前の約束通りに同志コーバの個人的な近衛兵として、リヴァイ・アッカーマンとミカサ・アッカーマンの双璧に並び立つように、忠実かつ有能な側近として認められるようになっていた。
ヒストリアにとって、コーバは正しく神に等しい存在だった。そしてその点は、同志コーバの率いる政権の最大の支持者として名を連ねる同族、フリーダ・レイスとも見解が一致していた。
壁内に降臨した人類の救世主にして、絶対的指導者である同志コーバ。そんなコーバの傍に侍る事こそ、ヒストリアにとって位人臣を極めることそのものだった。
その美しさと思慮深さから、壁内では漆黒の天使とも称されるヒストリアだが、彼女にとって他者からの評価など眼中になかった。
ヒストリアにとっての価値とは、これ即ち同志コーバの存在であり、彼に認められることだった。
だからヒストリアは努力した。そして、その努力は実り、最側近の一人として、その身を特注品の黒革のロングコートで固める特権を手に入れるに至ったのだ。
そんなヒストリアは常々このように語った。
「私には他者より抜きんでて秀でる点がただ一つだけあることを自負しています」
「それは同志コーバへの忠誠心です。あの御方個人への忠誠心です」
「私は軍旗…紅蓮に染まった自由の翼…に誓いました。この世に存在するありとあらゆる使命を差し置いて、同志コーバの個人的意志を優先し、個人的命令に服し、その実現の為に喜んで心臓を捧げることを」
「私は同様に…吊り下げられた軍旗で赤く染まった…壁に誓いました。同志コーバに指導される壁内人類の進撃の為に、ありとあらゆる苦労を物ともせず、また縦ひ全てが背くとも、同志コーバと共に艱難辛苦を迎え撃ち、同志コーバが掲げる『解放』の理想の為に殉じることを、その為の努力を惜しむことなく、またこの誓いに背こうものならば然るべき懲罰をこの身に甘んじて受けることを」
「同志コーバ、私は貴方の為にこそ死にたい。たとえ貴方に顧みられることがなくとも、貴方への服従こそ我が名誉!貴方への忠誠こそ我が正義!貴方による命令を断行することこそ、我が闘争!」
ヒストリアは建前になど興味がなかった。故に、彼女は純粋無垢に自身の立てた誓いに誰よりも忠実だった。
彼女の忠誠心は、ミカサ・アッカーマンを始めとした彼女の同僚達からも高く評価されていた。
そして、何よりも誰よりも、同志コーバ本人がヒストリアのことを認め、しばしば公の場を借りて大いに称揚した。
同志コーバは言った。
「もしも忠誠心が人の心を持ったならば、その時は必ずや同志ヒストリアの形を持ち、彼女の心身を携えて我々の目の前に姿を現すだろう」
「この世に穢れなき心を持つ者を、私は多く知らない。だが、少なくとも一人だけは知っている。それは取りも直さず、同志ヒストリア・レイスのことだ」
「同志ヒストリア。もしも私が自死を迫られた時、私を撃つように命じる相手が居れば、それは同志ヒストリアか、或いは同志ミカサか、将又同志リヴァイのいずれかであろう」
同志コーバは惜しみのない言葉でヒストリアを褒め称え、言葉だけでなく然るべき報酬を以てその忠誠に報いようとした。
まず最初に、シーナ内地の一軒家を彼女の母親と二人で暮らせるようにと用意し、次いで幼年部総長の要職に任じた。そして更には個人的私兵集団として、他のあらゆる部隊に優先して最良の装備を与えられる壁内の最精鋭師団『ライプシュタンダルテ・デア・フューラー』の実質的参謀長としてミカサ・アッカーマン師団長に次ぐポストに任じ、国防軍少将の階級と共にその第二位指揮権を与えられた。
ヒストリアはコーバから与えられる全ての報酬に、その実質には関係なく、その全てに感激しては、幾度となくその感動を綴った手紙を、今はシーナ内地で穏やかに暮らしている実の母への近況報告を兼ねて送った。
ヒストリアは手紙の中で感動を言葉に変換する術を持たないもどかしさを語っては、母に自分は元気にやっているから心配は無用だと後付けのように付した。
ヒストリアの母は素直に、しかし敬虔に同志コーバとの娘の良好な関係性に喜んだ。
母からの返信にはいつも、「しっかり眠れているのか」「美味しいものは食べられているのか」「危険な目には合っていないのか」という内容が綴られていた。
ヒストリアは大概、三番目の質問以外には明確に「是」を返した。そして三番目の質問には、「如何なる危険に直面しようとも、同志コーバが命じる限り、それは危険ではなく栄光への階である」と書き殴る様な勢いを感じる字面で綴られていた。
ヒストリアの母は娘の心配をしつつ、毎日のように壁内の全家庭に親衛隊より配布された『同志コーバは君を見守っている』ポスターへと祈りを捧げるのだった。
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