進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。


ユミルの居場所 ヒストリア&ユミル

 

 

 

 

 

 

 

848年前後。国会議事堂地下壕…通称コーバの巣…にて、ユミル…後にユミル・レンズを名乗ることとなる女人は、完全武装の親衛隊に囲まれて、ヨシフ・ヴェトーと向かい合っていた。

 

ケニー・アッカーマン親衛隊最高指導者、リヴァイ・アッカーマン親衛隊上級指導者、ミカサ・アッカーマン親衛隊上級指導者は、装備する対人立体機動装置のアンカーの射出孔を、鋭敏にもユミルのうなじに向けて、臨戦態勢をとっていた。他の…ケニー及びリヴァイ直下の生え抜きの…精鋭たちも彼らの指揮官に倣い、その手にした最新式自動小銃の銃口を、少女ユミルへと向けて不動の姿勢をとっていた。

 

この場でコーバを近衛することを許されたのは、旧調査兵団の過酷かつ絶望的な壁外での戦闘において、抜群の戦闘能力を認められた極々一握りの者たちだった。エルド・ジン、オルオ・ボザド、ペトラ・ラル、グンタ・シュルツ、ミケ・ザカリアス、ナナバ…。地下壕を超精鋭で埋め尽くすのには訳があった。

 

だが、そんな針の筵の中で、脂汗を滲ませるユミルを、ただ一人ヨシフ・ヴェトーだけは、温もりと親愛の籠った瞳で見つめていた。微笑を浮かべて、目の前で硬くなっている…急遽招集された…ユミルと相対していた。

 

「同志書記長閣下…私は、何故ここに呼ばれたのでしょうか?」

 

ユミルは、硬質な声で、果たして無理矢理にその一言を吐き出した。

 

コーバは言った。

 

「私は…いいや、ここでは俺は、だな。」

 

「同志ユミル。俺はこう見えて記憶力が好くてだな。親衛隊幼年部に入った第四期生の名前と、それから戸籍情報は全部この頭に入ってるんだ」

 

「親衛隊は一応は公的な組織だが、実質は言うまでもなく俺の個人的な私兵集団だってことは、君も理解しているだろう?」

 

「なら、俺自身が誰よりも候補者たちのことを頭に入れておかなくちゃならない訳だ」

 

「だから、この頭には軽ーい脳みそに加えて、君たちがどこで生まれ、どこから来たのか、何が好きなのか、何が嫌いなのか、誰々の顔と名前はどうなのか…全部入っているんだ」

 

「全員分の情報を頭に詰め込むとき、間違いがあったら失礼になると思っててね、一度、新入りが入るたびに情報を洗ってもらってるんだ。そこにいる、ハンジとエルヴィンの手を借りてね」

 

コーバはそう言って、直立不動で自身の背後に侍り、冷たい表情を浮かべたハンジ・ゾエとエルヴィン・スミスの両名に向けて、拳を作ると、後ろ向きに親指を指した。

 

「洗ってみると、大概は問題ないんだよ。でも今年は違った」

 

ヨシフは一度言葉を切ると、声をかけるまでもなく、ハンジが差し出した書類を後ろ手に受け取り、目の前の机に静かに広げて見せた。ユミル、彼女にも見えるよう。

 

「今年、入ってきた幼年部四期生の内、四人だけ戸籍に間違いがあったんだ。いや、正確には確認できなかったんだよ、居住実態ってやつがさ」

 

「他の三人分は、そのうちの一人からもう聞いて済んでいるんだが…君には敢えて問おう、君は何処からやってきたんだい?どんな人生を送ってきたんだい?俺はそのことに、非常に興味がある」

 

「俺は眼が好くてね、視えるんだよ。嘘か本当なのか、敵なのか味方なのか…さぁ、正直に話しておくれ?虚妄を吐く口は、この場には不要なことくらい…君にも理解できるだろう?誠意には福音を、虚偽には制裁を…これが俺の信条ってやつなんだが…どうだい?シンプルだろう?」

 

ずいっと身を乗り出して、ヨシフはユミルの顔を覗き込んだ。

 

ユミルは数度瞬きをして、それからゆっくりと自身の半生について語り始めた。

 

 

 

 

 

 

ユミルは語った。自分が壁外に存在するマーレという国で生まれたこと。名もなき孤児だったこと。物乞いをして食いつなぎ、ある日、とあるカルトの教祖に祭り上げられたこと。そのカルトが政府に弾圧されて、自らもその存在を否定されて、過酷な運命を辿ったこと。無垢の巨人に身を変えられて、六十年もの長きを彷徨ったこと。偶然にも、巨人化能力を有する少年を食い殺し、その力を継承したこと。845年に壁が破られた時、その混乱に乗じて虚偽の戸籍を詐称し、壁内に潜り込んだこと。移住した先の開拓村で、偶然見かけたヒストリア・レイスに、その生い立ちと生き様に、共感と憧憬を抱いて親衛隊第四期へ志願したこと。

 

そして今日、自身は死をも覚悟して、この場所に立っていることを。

 

 

 

 

 

 

 

「私は、壁外で味わえなかった自由を、壁内でもう十分に味わわせていただきました…貴方のお陰です、同志コーバ。貴方のお陰で、私は壁外でさえ苦しんだ飢えを、一度として覚えることもなく、今日まで一人の人間として暮らしてらこれたのです。…同志ヒストリアにも、何度かお目通りが叶い…だからもう、悔いはありません」

 

ユミルは親衛隊に囲まれる中で、粛々と膝を折り、祈るようにコーバに首を垂れて言った。

 

「憧れも、自由も、もう十分すぎるくらい満喫しました。どうぞ、この命と引き換えに…これまでの私の嘘を清算させてください」

 

ユミルの言葉は本物だった。彼女はうなじを差し出したまま、微動だにせずにコーバの言葉を待った。

 

「君の話は全て理解した…嘘ではないことも、誠意を示してくれていることも…なら、今度は私が示す番だ」

 

コーバはそう言うと、手を上げ、それからゆっくりと下げる動作をした。瞬間、親衛隊の面々が、それまで頑なに保持してきた臨戦態勢を解き、両腕を後ろに組み、直立不動の姿勢をとった。揃った音が聞こえる様だった。

 

「彼らは君の誠意に応え、その勇気に敬意をしめしているんだ…そして、私も…ミカサ、彼女を呼んでくれ」

 

コーバが言うと、ミカサはこくりと頷き、地下壕の入り口の鋼鉄のドアを開き、ある一人を招き入れた。

 

招き入れられたのは、ヒストリア・レイスだった。

 

「同志コーバ…これは、一体…」

 

ユミルが戸惑うように、眩しいものを見るように目を細めて、ヒストリアへと視線を途切れ途切れに送った。

 

そんな彼女を見かねて、ヒストリアは敢えて大股でズンズンとユミルとコーバの間を取り持つように進み出た。そして、ピシャリと音が聞こえてくるような、『心臓を捧げよ』と完璧な最敬礼をヨシフに向けて捧げてから、ユミルの方に向き直り、跪く彼女の手を取った。

 

ヒストリアは言った。

 

「ユミル、私は一つ謝らなければならないことがあります」

 

「実は、貴女が私の元に入営して直ぐに、貴女が他の訓練生とは異なる、特異な経歴の持ち主であることには気づいていたんです」

 

「そのことを知っていて、貴女の誠実さを試すようなことをしてしまった…だから、ごめんなさい」

 

「貴女の独白を、今の今まで壁越しに聞いていました…私も、貴女への共感を抱いていたからこそ…何度か、自分から話しかけるようなことをしたのだと、今ならそう思えます」

 

「さぁ、立ってください…貴女には、初めから恥ずべきところなど何一つないのだから。最早、私や同志コーバと同じ、人民の一人なのだから」

 

ヒストリアに手を引かれ、ユミルは戸惑いを隠せぬままに立ち上がり、改めてヨシフと向き合った。

 

自分が何一つ責められないことに困惑を隠せないユミル。ヒストリアは彼女の背中に手を置くと、ゆっくりと摩りながら、同志コーバに向き直り、口を開いた。

 

「同志コーバ、恐縮ながらこの場を借りて一つ提案したいことがあります」

 

「それはなんだね?忌憚なく言ってみたまえ、同志ヒストリア」

 

「私は貴方からこの命を、忌まわしい王家の人間の魔の手から救っていただきました」

 

「私は彼女が、同志ユミルが親衛隊の一員として十二分の素養と、求められ得る忠誠に適う資格を有することを知っています!そこで、彼女を私の家族として迎えたいのです」

 

唐突な提案に、驚いたのは、しかしユミル一人だけだった。まるで最初からこの場にいる全員が結末を知っていたかのような落ち着きぶりだった。

 

ヒストリアの言葉に、ヨシフはにっこりと清涼な笑みを浮かべて言った。

 

「私も、同志ユミルの処遇に関しては、誰よりも彼女に期待をかけている、同志ヒストリアに一任するつもりだったんだ…これは好い、そうだ、折角だし同志ユミルを君の養子に迎えてみないかね?そうすれば君の母君の、レンズの姓名を名乗る事が出来るはずだ…ユミル・レンズ…うむ、好い響きだ」

 

「私も同志コーバに同感です!将来ある同志ユミルを私と母の家族に迎え入れることが出来れば、それは何よりのことだと愚考します」

 

ヒストリアは自身と母の境遇から、ユミルに手を差し伸べることは必然のことであるとまで言い切った。

 

ヨシフは満足げに笑うと、親衛隊を地下壕の外へ退出するように言い、人払いを済ませてから、自身の執務机の引き出しから一枚の書類を取り出し、ペンと共にユミルの前へ差し出した。

 

「同志ヒストリアはこう言ってくれている。後は君が、同志ユミルが同意すれば済む話だよ」

 

差し出された書類は、養子縁組の為の公文書だった。養子を受け入れることに希望する欄と、その仲介人の欄には、ヒストリア・レイスとヨシフ・ヴェトー両名のサインが既に記されていた。

 

「本当に?本当に、私で好いんでしょうか?私が、こんなに好い目を見ても?」

 

ユミルは震える手でペンを握りながら、空に名を書き、ペン先を彷徨わせながら最後の確認をとった。

 

ヒストリアは、ユミルの震える手を優しく、覆うように握ると、ペン先を書類に触れさせた。インクがじわじわと書類に滲んだ。

 

ヒストリアとヨシフはそれぞれ、最後の迷いを断ち切るように言った。

 

「ユミル、貴女はもう自由なのだから、もっとわがままになっても好いのです。私は、私がそうして貰ったように貴女の救いになりたい。私も母も、同志コーバがいなければ、到に否定され、失われた命だったのだから」

 

「同志ユミル…君はこの瞬間から私とヒストリアの我が子なのだよ。壁内人民の誰にも、君のことを、君の選択を否定させやしないと誓うよ。さぁ、ペンを持って、その肩から力を抜いて…君自身の未来を、自身の選択で掴みたまえ」

 

ユミルは自身の名前に、レンズの姓を加えて書類の欄を埋めると、ヒストリアの胸に顔を埋めた。ユミルの瞳から涙が零れ落ち、ヒストリアのフェルトグラウ色の制服を濡らした。

 

 

 

 

 

 

特別徽章授与式を終えてから、ユミル・レンズは自身の『家』への帰路に就いた。シーナ内地の一等地の、煉瓦造りの立派な一軒家だった。

 

煙突からは白い炊事の煙が天へと続いていた。眩しいような、心地いいような。こそばゆい様な気持ちで、ユミル・レンズは玄関のドアに手を掛けた。

 

「ただいま帰りました」

 

ドアを開き、そう言うと、間もなく戸籍上の祖母…ヒストリアの母が顔を出した。

 

「あら、お帰りなさい…ヒストリアは会議に出席してから帰るって、今朝言ってたわよ?どうしましょう、もうお夕飯を食べちゃいましょうか?」

 

夕飯の支度を丁度終えたようだった。香ばしいパンの香りと、それからワインを加えて煮詰めた肉入りのシチューのなんとも好い香りが漂ってきた。

 

「同志ヒストリアを、母さんを待ってから、それから夕飯でもいいですか?」

 

遠慮がちにユミルが言うと、彼女の、まだまだ若い祖母は笑った。

 

「ふふふ、勿論!自分の孫のお願いだもの…それにしても、本当にまさかよね?まさかこの年で孫が出来るなんて!」

 

「あの子、同志コーバもお呼びするって、だから今日は豪勢にしておいたのよ…冷めないうちに帰ってくるといいわね」

 

「それは、本当に楽しみです」

 

「十位入賞おめでとう…大変だったんじゃない?」

 

「いえ、寧ろもう少し好い順位を狙えばよかったなと…」

 

「ヒストリアも言ってたわよ?本当は次席でもおかしくなかったって」

 

「そ、そうだったんですか…少し、勿体ないことしたかなぁ」

 

ユミルと祖母の話が盛り上がりを見せたころ、玄関のドアが開く音がした。

 

「ただいま!今日は同志コーバもご一緒ですよ!」

 

「いやいや、嬉しいことにお呼ばれされてね…さぁ、冷めない内に頂こう」

 

「お帰りなさい!お、お父さん、お母さん…」

 

コートを脱いで、夕飯の席に着いた二人を見て、ヒストリアの母もキッチンへ向かった。

 

進んで二人分の色違いのコートを受け取りハンガーに掛けてから、ユミルの照れくさそうな声が家に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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