進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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『聞いてよゲルガー!』 ナナバ&ゲルガー

 

 

 

 

 

旧調査兵団出身の将校であるナナバは、その日も、いつも通りに戦友ゲルガーの下へと走った。

 

「聞いてよゲルガー!」

 

「またかよナナバ!」

 

何度繰り返したことだろう…そう思えるほどに、二人の息は合っていた。

 

事実、この言葉は合言葉と化しており、二人の間だけで通じる秘密の暗号だった。

 

暗号の内容?

 

それは無論、『またコーバを誘い損ねた!』である。

 

 

 

 

 

 

 

ナナバはゲルガーの部屋に突撃すると、扉をバン!と押し開き、叫んだ。

 

「聞いてよゲルガー!」

 

「またかよ、ナナバ!」

 

親衛隊本部に敷設された官舎の自室で、非番なのを好いことに酒瓶を抱いて雑誌を眺めていたゲルガーが、応えるように叫び、ナナバを迎え入れた。

 

「またなんだよ!今回は上手く行くと思ったのに…最後の最後でまたミカサが出てきてね!それで、『ヨシフは今から私たちとの会合があるので』だって!」

 

「ははーん…そうやって、遠ざけられた訳だな…で、実際のところは?」

 

ゲルガーが聞くと、ナナバは顔を紅潮させた。

 

「絶対嘘に決まってるよ!だって真昼時だよ?私だってコーバの将校団の一員なんだから、会合があれば事前に告知を受けてるはずなのに!」

 

「確かに、俺とお前が非番でいるのに、招集がかかったらおかしいわな。ほんで…?」

 

ゲルガーが酒瓶に口を付けながら話を勧めた。

 

ナナバは肩を落として顔に手を遣って言った。

 

「はぁ~…失敗も失敗さ…今日こそは夕食に誘おうと思ったのに…いいや、実際もう喉のところまで言葉が出てきてたのにッ!」

 

「ほえ~…そりゃあ、大変だったなぁ…それより、話しに来たってこたぁ、今晩も奢ってくれるんだろ?」

 

「ゲルガー!聞いてるのかい?もうッ!酒の話なんか、今はどうでもいいだろう?今晩も、ちゃんと奢るからさぁ!」

 

ゲルガーが雑誌から視線を上げて、ナナバと目を合わせながら夜の酒の話をすると、ナナバは理解しているが『話を真剣に聞いて欲しい』と叫んだ。

 

対するゲルガーはちっとも懲りた様子ではなかったが、それでも雑誌を一旦閉じて、ナナバに向き合った。

 

「で、それでどうしたんだよ?誘えたのか?パパ・コーバには、昼時、会えたんだろう?ミカサが来るまで、上手く行かなかったのかよ?」

 

「ふふ…でも、今日は結構敢闘した方なんだよ?だって、昼食はご一緒出来たんだもの。これで夕飯も一緒とか…ないかな?流石にないよねぇぇ…」

 

「無いだろうなぁ…あのミカサが離しても、リヴァイ師団長が離さないだろうぜ?…ほれで、口説いたのか?どうなんだ?」

 

「え?口説いたのかだって?そ、それはね、ちょっとテンパっちゃったっていうか…」

 

「へへっ…ナナバのヘタレが出たぞ」

 

「ヘタレじゃないよ!緊張、そうさ、武者震いってヤツさ!だから、今回も仕方ないというか…あぁ、私のバカ!もっと、もう少し勇気が出せればなぁ…」

 

「パパ・コーバも大した男だぜ…オレもお前も、五年前には調査兵団に入って、何度となく壁外にも出て生き残って来たってのに…その経験が全然活かせてねぇなぁ…こうやって何時も言い訳並べて反省会開くんだもんなぁ?」

 

ゲルガーが面白そうに笑った。ナナバはゲルガーの言葉に頷いてしまいたいような、悔しい様な調子で言葉を続けた。

 

「初めて壁外に出た時、巨人との戦闘の時だって、こんなにはならなかったのに…やっぱり、コーバは凄い…そうだ、きっと彼が凄いから…うん。私が弱っちゃうのも仕方ない!」

 

「言い訳って…そこは何も言わずに『そうだな!』って頷いてよ…ま、まぁ、言い訳なんだけどね、結局…」

 

ゲルガーはナナバの百面相を面白がりつつ、戦友に向けて「ミカサの方が一枚上手だな」と、年下に敗北を重ねている痛い事実を突いた。

 

「くぅ~…ミカサ、あの子は本当に…何というか…」

 

「恨めしいかよ?」

 

「え?恨めしい?…それは、ちょっと違うかな?」

 

「じゃあ何か?どんな心境なんだ?」

 

「じゃあ何って…羨ましい、かな?」

 

「羨ましいって…」

 

ゲルガーはナナバの明け透けな言葉に絶句した。何度も聞いてきたはずだが、やはり聞く度に言葉を失うらしい。

 

「あの子は、コーバとずっと一緒じゃないか。私なんて、今日みたいな奇跡が起きないか、会食に誘われでもしない限り一緒にご飯も食べられないのに…」

 

「親父とお袋が死んでってのは知ってるんだろ?出自ってやつよ」

 

「出自?その話は勿論知ってるけど…それでも、だよ…」

 

「ミカサに言えんのかよ…っては聞かないが、結局、ミカサのことは嫌ってるわけじゃないんだろう?」

 

「まぁ、百歩譲ってコーバから私を引き離そうとするのは許してあげる…それは、きっと私がミカサでも同じことをするだろうから…」

 

「なら、甘んじて受け入れたらどうだ?ここが私の限界ですって」

 

「でも!それでも四六時中ずっと一緒なのはズルい!ズルいったらズルいんだ!私も、コーバの隣に侍りたいのに!」

 

「壁内じゃあ、俺たちもパパ・コーバには近い方だろうに…」

 

「壁内の中じゃあ、そりゃぁ上から数えた方が早いだろうね…でも、それだって五番手か、好くて三番手さ!」

 

「五番だぁ?何の話だよ?飲める酒の量の話か?」

 

「何の話だよって…立体機動の腕前の話だよ!一位はリヴァイ師団長、二位はミカサ、三位はミケ大佐、四番と五番は…多分、私か君だろう?」

 

「お前、それは流石になぁ…」

 

ゲルガーの脳裏には、リヴァイ直下の精鋭四人の顔が浮かんでいた。そのことはナナバにも見抜かれていたようで…

 

「オルオとかエルドとかペトラとかグンタとか…そこは抜きだよ?だって、四人ともアッカーマン戦闘団所属じゃないか…リヴァイ師団長が傍に居るんだからね、そりゃあね腕も成績も上がるさ」

 

「うぅん、上手く言い繕ったもんだなぁ」

 

「いやいやいや、やっぱり個人の力量を考えた時、壁内で五指には入るはず!私だって…努力してるんだから、前以上に練度は上がってるはずだもんっ」

 

「お前が自分で思う分には好いんじゃないかぁ?オルオ辺りには直接言ったらキレられそうだが…」

 

「まぁ、飲んだくれのゲルガーに言っても仕方ない話さ!」

 

「それより、今晩もヴォドカで頼むぜ?俺はあれじゃなきゃもう満足できないんだよ!」

 

ゲルガーは雑誌と、それから空になった空き瓶を脇に置くと、大仰な身振りでナナバに注文を付けた。

 

「…え、またヴォドカ!?今日もアレを飲むのかい?アレはお酒じゃなくて、もう消毒液じゃないか!」

 

「そこが好いんだろうが!」

 

「はぁ…ま、いいさ、私は代金を払うだけだし。呑まされるワケじゃないからね…でも、ヴォドカって君ねぇ、本当に長生きできないよ?」

 

「人生は短く太くって、好く言うだろう?いつ死ぬかもわからないんだからな」

 

「短く太くって…調査兵団時代の悪いクセが、そのまんまだね…私たちはもう調査兵じゃなくて、コーバを、彼個人を支える為の親衛隊なんだよ?壁内だってこれからも変わるだろうし、もうかなり変わったんだよ?」

 

「なら、酒は百薬の長だってことで…俺が酒を飲むのは健康の為だ!」

 

「百薬の長って、君ねぇ…健康は第一に!いつ何時でも、彼からの呼び声がかかっても好いようにしなくちゃッ!」

 

「へいへい…ふあぁ~…そろそろ日も暮れるなぁ」

 

「それで?今日は何処で飲むつもりなんだい?何時ものお店?それとも表通りのバーにでも行くのかな?」

 

「何時もの!」

 

「何時ものお店…かぁ、あのちょっと怪しい感じのトコでしょ?」

 

「そうそう!ヴォドカはさぁ、あそこでしか出してくれないんだよ!だから仕方ない」

 

「だと思ったよ…お酒と結婚でもしてるみたいだ」

 

「そういうお前はどうなんだ?結婚願望でもあるのか?」

 

「私はコーバ一筋さ!永遠に、彼のことを追い続けるよ!求められたら喜んでこの身も心も捧げるのに…今すぐにだって!」

 

「あー熱い熱い熱い…火傷しちまうよ」

 

「えへへ…少し熱く語りすぎちゃったかなぁ?…さ、行こうよ!今日は君、非番だろう?」

 

「なんだよ、ナナバ、お前も飲むつもりか?」

 

「こうなったら私も飲まなきゃやってられないよね、まぁ、私はワインとか軽いのにしておくけど」

 

ナナバとゲルガーは日が沈んでから、シーナ内地の酒場に繰り出した。

 

酒の入ったゲルガーがウェイトレスに軽くあしらわれて、楽し気に嘆くのを、今度はナナバが聞く番だった。

 

ワインをちびちび舐めながら、ナナバはゲルガーの泣き上戸、笑い上戸に付き合った。

 

帰り道、千鳥足のゲルガーを部屋に帰してから、ナナバは夜の親衛隊本部を歩き、自室への帰路に就いた。

 

騒がしくも愉快な一日で、それはナナバに言わせれば、『コーバが齎した当たり障りのない壁内世界の日常の一頁』だった。

 

 

 

 

 

 

旧調査兵団に所属していたナナバにとって、コーバとの出会いは劇的な何かではなかった。

 

まだミットラス共産党が地下街で燻ぶっている頃に、偶然ナナバがコーバのことを見かけて一目惚れしたのがきっかけだった。

 

その時、丁度隣に居たのもゲルガーだった。

 

当時は今に比べてまだ若く、調査兵団に志願するくらいだから壁外への情熱と言う点でも他に抜きんでていた。二人は訓練生時代に知り合って以来、どうにも気の合う仲で、おまけに話す機会、互いを知る機会にも恵まれて、気の置けない関係性だった。

 

壁外に出て、残酷な現実を知ったショックもあったのかもしれないが…とにかく、ナナバは一瞬にしてその人生を文字通りに全振りする勢いで、コーバに身も心も奪われてしまったのだ。

 

ナナバがコーバに惚れ込んだその日が、『聞いてよゲルガー!』の始まりだった。

 

コーバに惚れたその日の内に、感動に打ち震えるナナバは隣部屋のゲルガーの下へ行き、叫んだ。

 

「聞いてよゲルガー!私、ミットラス共産党に入ってきたんだ!」

 

「おいおい、いきなりなんだよ、ナナバ…それにミットラス共産党ってお前、何もそんな過激なのに入らなくたって…」

 

酒瓶片手に苦笑したゲルガーを後目に、ナナバは言った。

 

「私は夢を掴んだのかもしれない…本当の夢を!」

 

「おい夢ってなぁ…壁外調査でいつ死ぬかも分からないってのに…人類へ心臓を捧げたんじゃないのかよ?」

 

茶化すようにゲルガーが言うと、ナナバは真剣な目つきで答えた。

 

「うぅん、申し訳ないけど私の心臓は返して貰わなくちゃ…どんなことがあっても、もうコーバに捧げることにしたんだからね」

 

「わぁ…コイツはマジだな…で?どうするんだよ?ていうか、俺たちの夢はどうなるんだ?調査兵団で生き残るって話は、どこいったんだよ?」

 

ゲルガーは冷や汗をピロリと一筋かいて言った。対するナナバは沈痛な面持ちだ。

 

「ごめん!ゲルガー!コーバが、彼こそが私の夢なんだ!調査兵団で名を挙げるっていうのも…」

 

「あーあーあー聞こえないね!ったく、もう、分かったよ…そんで、その夢ってやつの為にどうするつもりなんだ?」

 

「親衛隊に入ろうと思う!調査兵団は死んでも辞めなくちゃ…」

 

「あのお堅いキース団長に殺されないことを祈ってるよ…にしても、お前が、あのナナバがこうなるたぁ…一体全体、どんなヤツなのかねぇ」

 

この時、ゲルガーは「俺も一目見てみたい」と言ってしまい、翌日文字通り一目見ることになる。

 

そこで、ゲルガーは妙にナナバの惚れ具合に納得。

 

「これじゃあ、仕方ないな」と零して、それ以来、ナナバの恋路を応援する側にまわった。

 

結局、ナナバが調査兵団を辞めるより早く、ミットラス共産党による政権奪取が達成されたため、ナナバもそしてゲルガーも、二人とも五体満足の状態で親衛隊に入営することが叶ったのだった。

 

入営直後、ナナバとゲルガーは幸運にも、或いは不運にもリヴァイとミカサを連れたコーバに遭遇してしまった。

 

 

 

 

 

 

コーバはその場でミカサとリヴァイを後ろに置くと、一歩進み出て二人の肩に手を乗せ語り掛けた。爽やかな、絶世の美男子であるコーバがすると、なんとも様になっていた。

 

「やぁ!同志ナナバ君と、それから同志ゲルガー君…ふむふむ、今日はお酒を飲んでいないみたいだねそれは結構…」

 

ゲルガーの目の前で、眼を瞑り鼻を鳴らして見せたコーバの、なんとも人好きのする微笑みに、あのゲルガーですらクラっと来てしまった。思わず赤くなった顔を俯かせたゲルガーの視線の先には、コーバのコートの中から覗く酒瓶が…。

 

万事休す!?

 

正に、堕とされるッ!状況だった。

 

「勤務態度は良好だね…しかし、生憎私の手には余分な酒瓶が一瓶あってね、私は飲まないから…どうだろう?ゲルガー君にでも差し上げようか?ここで出逢ったのも何かの縁だ…はい、試供品だが、酒精は君好みのキツさだと思うよ?」

 

コーバはゲルガーの胸に、その透明に透き通った酒瓶を押し付けた。

 

「勤務時間後に呑みたまえ」

 

そう言われて、ゲルガーは咄嗟に「は、はい!書記長閣下!」と答えた。

 

その晩、ヴォドカの味を知ったゲルガーがコーバの忠実なシンパの一人に変わったことは言うまでもないことだが…以降、ゲルガーはコーバのことを親しみを込めて『パパ・コーバ』と呼ぶようになった。

 

この呼び名は、コーバが現人民保安部に付属して創設した『国家の子供』…孤児や捨て子達…の為の家…養育施設…で生まれた言葉だったが、ゲルガーが使い始めて以降、旧調査兵団を中心に急速に普及することとなった。

 

『パパ・コーバ』の呼び名に、ナナバは複雑な思いを抱いたらしく…

 

「コーバが私のパパ…いやいやいや、どっちかっていうと配偶者に納まりたいかな、なんて…」

 

と、そのように独り言ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

ゲルガーは親愛から、ナナバは恋慕と憧憬から、個人的にコーバを支持する理由が出来た二人は、特に違和感も、疑問も抱くことなく親衛隊に馴染んでいった。

 

元よりその才覚があったのか、ナナバとゲルガーは旧調査兵団と旧中央第一憲兵を中核として組織され、以降『武装』が進む親衛隊の中でも、瞬く間に出世街道に乗り、正式にコーバ直属の将校団の一員として認められるなど、一目置かれる存在となっていた。

 

将校団の一員に任命された日、ナナバは感動の余り珍しく強い酒を飲み、ゲルガーにその『酒癖』の悪さを発見された。以後、ナナバが強い酒に手を出すことは無かったが…その誓いも、コーバとの会食時には薄れるようで、会食に招かれて隣の席に座れた日などもう…感動と緊張を和らげるべく痛飲しては、「貴方を心の底から愛しています!コーバ!貴方の為なら私はどんな汚れ仕事でも喜んで!」と、隣のコーバに唐突に宣誓し出す『失態』を重ねていた。

 

生憎、ナナバには記憶が無いらしく…面白いから、と言う理由で周囲も誰も教えてくれないので、自分が未だにコーバへとその思いの丈を伝えられないでいると、そう思い込んでいるのはナナバ一人だけであった。

 

恒例行事の様にもなってきているし、何より当のコーバが、その都度自分の手で…飽きも倦みもせず…酔い潰れるナナバを介抱するものだから、誰も止めることもできなかった。

 

このような背景を無論知っているミカサからしてみると、『忠実だが危ない奴』判定を、その身から出た錆により食らっているナナバを意識的にコーバから遠ざけるのは、近衛としても…そして一人の女としても…当然の処置であった。

 

 

 

 

 




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