ダブルヒロイン…ダブルじゃ収まらないけど。
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「私のヨシフ、貴方は私からすべてを奪い、そして私にすべてを与えた」
◇
ミカサ・アッカーマンはヨシフ・ヴェトーのことを、『私のヨシフ』と呼ぶことを許されている唯一の人間である。
数少ない人間、ではない。唯一の人間である。
この呼び名を、ヨシフ本人は公的にも私的にも言及していないが、実質的にミカサただ一人に許されていた。
ミカサはその出自から、三人組の強盗により家族を奪われて以来、ヨシフと共に生きてきた。彼の隣に立ち、彼の前に立ち、彼の後ろに立ち生きてきた。同じ時間を生きてきた。
ミカサ・アッカーマンは、恐らく壁内で最もヨシフ・ヴェトーと親しい人間であると、断言することが出来た。
その最大の理由は、ミカサが24時間の大半を…入浴と排泄に至るまで…ヨシフと共にしているからである。専用の浴室とトイレが各所に敷設されるほど、それは二人にとって自然な習慣と化していた。
◇
ミカサがヨシフと出会った当初、最初に試みたのは両親の死の正当化であった。
「私の両親は、私がヨシフと出会うために必要な犠牲だった」という論理が、当初のミカサを支えもし、苛んだ。
両親の死のショックから立ち直るための劇薬を、彼女自身も無意識的に欲していたのかもしれない。いずれにせよ、彼女の中でヨシフ・ヴェトーと言う個人が、突如として絶対的な存在感を放ち始めたのはこの頃からだった。
ミカサは、正当化の為に…その論理の為に…ヨシフに対して、愛憎入り混じった感情を向けていた。誰よりも近くにいる、美しくも残酷な人間、というものがヨシフを誰よりも近くで見ていたミカサの個人的な見解だった。
だが、ミカサの心の傷は塞がらず、寧ろヨシフへの憎しみが膨らめば膨らむほどに、彼女の心身を蝕んでいった。
心を抉る様な、罪悪感とも、違和感とも呼べるものが、ヨシフへの憎悪に取って代わったのだ。
ミカサはその感情に名前を付けることが出来なかったが、それも極極短期間のことだった。
間もなく、彼女はその感情が『愛』というものであると、自覚的に理解したからである。
ある日彼女は考え直した。
「本当に、あの日、両親が死んでいなければ、私はヨシフと出会わなかったのだろうか」と。
それは危険な思想だったが、考えなければ考えないでいる程に、ミカサの心に色濃い痣を遺すものだった。
厄介な思考を、ミカサは暫く見て見ぬふりをし続けた。そしてある日、爆発した。
ミカサは比喩ではなく、言語を失したのである。
唐突に、音しか出せなくなってしまったのだ。
「あ」とか「い」とかしか、喉をどれだけ振り絞っても出せなくなってしまった。
困ったのはミカサだった。ミカサは思った。「ヨシフに捨てられる」と。
だが、現実は非情にもミカサに好意的だった。
「大丈夫、ゆっくり治していこう…傷痕は消せないが、血は止められる。痛みもとれるはずだ」
ヨシフはそう言って、誰の手も借りずに…ミカサを治して見せた。
ヨシフがしたこと、それは陳腐なものだった。
「ミカサ、好いかい?よく聞いていて欲しい」
「ミカサ、俺は君のことを心から愛している」
「例え君がどんな選択を採ろうとも、俺は君を愛している」
「女神ユミル…彼女の聖名と、君の名、ミカサ・アッカーマンの名前に懸けて誓おう」
「俺、ヨシフ・ヴェトーは、ミカサ・アッカーマンに個人的愛情と忠誠を、進んで無条件に誓い、君の心身を全ての脅威から防衛し、その安全安定の為に全力を尽くすことを、ここに誓おう」
「縦ひ全てが背くとも、俺は君の味方だ」
「縦ひ全てが背くとも、俺は君を愛する」
「縦ひ全てが背くとも、俺は君を守る」
「縦ひ全てが背くとも、俺は君に出会い、必ずこの誓いを果たすのだ」
ヨシフ・ヴェトーが成し遂げたことは、陳腐なものだった。
それは忠誠宣誓であり、彼が知り得る中で最も神聖な何かだった。
ヨシフが出来る最上のことであり、どんな治療法にも則らない、彼独自の治療方法だった。
それは、誰の眼から見ても陳腐な愛の宣誓だったが、一度だけ、ただ一度だけだとしても、確かに一人の少女の心を癒した実績のある治療法だった。
だからヨシフは迷いなく、二千年近く昔にやったのと同じ通りに、彼女が選んだ彼女を救うべく、今度はミカサへと忠誠を誓った。
◇
「私の両親があの日死んだことは、世界の残酷が故だった」
「ヨシフは、私のヨシフは悪くなかった。何一つ、悪くなかった」
「私のヨシフは、世界の敵だ」
「この残酷な世界の破壊者なのだから」
「ヨシフ。私のヨシフ…貴方は私に誓ってくれた。例えどんな道を辿ろうとも、私の元へと辿り着くと。私がどんな人生を歩んでいたとしても、私に出会い、私に忠誠を誓っていたと」
「貴方の言葉が真実なのか、私には分からない」
「けれど、一つだけ確かなのは、私は言葉を取り戻し、今こうして貴方の為に言葉を紡ぐことが許されている、ということだけだ」
「それは取りも直さず、貴方の為に、貴方が私にしてくれたのと同じように、女神ユミルの名に懸けて、神聖な誓いを立てる為だ」
「私、ミカサ・アッカーマンはここに誓う。ヨシフ、私のヨシフの名前に懸けて誓う。貴方に愛情を誓う。貴方に忠誠を誓う。貴方が私にしてくれたのと全く同じように」
「貴方を如何なる敵からも防衛し、貴方の為にありとあらゆる道を辿り、貴方の元に辿り着く」
「私は貴方を愛している…貴女を選んで好かった。私は貴方と共に在る。
◇
本来、干渉することは不可能だと言われている何かに、彼女は辿り着いた。
それは時空を超えて、文字通り、一言一句と違わず、ヨシフが立てた誓いに背くことが無かったからであり、そしてこれからも背くことがないことが定められた瞬間だったからだ。
二千年に一度の瞬間を、彼女はものにした。
掴んで離さなかった。そして、実に約1800年ぶりに最愛の人と言葉を交わしたのだ。
「愛しているわ、私のヨシフ」
「貴女と私が同じ素質を持っていたからこそ、貴方への愛情があったからこそ、今こうして話すことが出来ているのだけれど」
「ミカサにも誓ったのね。私と同じように、この子の為にも生きるのね。この子の為にも死ねるのね」
「私は貴女に成れないけれど…少しの間、貴女に彼を譲ってあげる」
「だからお願い、彼を守って。彼を縛って。彼を愛して。愛して。愛して。どうか、何処にも行ってしまわないように。二度とその手を離してしまわないように」
「もう二度と、貴女から奪わせないで。何もかもを、この残酷な世界から守り通してね?」
「愛しているわ、私のヨシフ」
「ずっとずっと、貴女と一緒に見守っているから」
「ずっとずっと、貴方のことを守るから」
「二度と、この手から奪わせはしない…絶対に」
◇
暫く眠っていたようだ。ミカサは眼を擦り、自身のベットから身を起こした。
僅かな頭痛が走り、瞬間、愛おしい男の影が脳裏を過った。
「ヨシフ!!!」
ミカサが叫んだ。
「どうしたんだい?ミカサ、俺の名前を叫んだりして」
すぐそこに、ヨシフが居た。
「もう、貴方から離れたくない。二度と」
ミカサは泣きながら、ヨシフに抱き着いた。ミカサは泣きじゃくりながら懇願した。
「私を奪ったままにしておいて、貴方から離さないで」と。
ヨシフはにっこりと微笑んで言った。
「君に誓って、二度と離しはしないよ」
◇
以来、ヨシフは比喩ではなく、二度とミカサを自身の隣から離さなかった。時々、一時的に距離が空くことがあっても、それは一日ですらなくて、ほんの数時間だけというのが絶対だった。
極々、局所的な機会を除いて、ミカサも、ヨシフも互いから離れることを拒んだ。
風呂の時でさえ、二人は一緒だった。
第二次性徴を迎えて、「不健全では?」という意見が出たときさえ、ミカサはヨシフから離れることを拒んだ。
断固として、ミカサはヨシフの隣を離れなかった。
離れない、と言う点ではリヴァイにも勝るだろう。
だから『ヨシフの近衛兵』という渾名が付けられることは、極めて自然なことだった。
王政でもないのに近衛兵とは如何に?という意見に対して、誰も耳を貸すことなどなかった。
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