進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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楓流様 誤字報告ありがとうございます。


ハンジはダメ男に引っ掛かりそうだよね…というお話。

面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。


爆発 ハンジ&モブリット

 

 

 

 

 

巨人の正体が元人間だった、と言う事実はハンジ・ゾエに少なくない衝撃を与えた。

 

「私のこれまでの研究は…こんな結末を望んでいた訳じゃなかったんじゃない、かなぁ…」

 

グリシャによる情報開示後、副官…今は中央大学総務部長…であるモブリット・バーナーに、ハンジはそのように零していた。

 

巨人ロスとも言える、短期間の燃え尽き症候群に掛かったハンジは、日頃の高いテンションや気さくな人柄は鳴りを潜めて、代わりに知性的で穏やかな…良くも悪くも…鎮静された人格が前面に現れていた。

 

互いに壁内の学府で長官を務める者同士、エルヴィンとは活発な議論を続けていたが、それでも、人生の目標のような物が思いもよらぬ形で解消されてしまったショックは、ハンジと中央大学巨人研究所全体に停滞を齎した。

 

このような状況に、モブリットが密かに安堵していたことは此処だけの話…。

 

 

 

 

 

 

 

ハンジが穏やかで停滞した時間に生きている状況下を、好しとする者がいるのと同様に、それを好しとしない者もまた存在した。

 

その筆頭は、我らが同志コーバだった。

 

彼にとって、中央大学は単なる学び舎ではなかった。学び舎である以上に、コーバはハンジ達に対して、壁内全体の文明度を牽引する役割を期待していたからだ。

 

既に新技術の多くが研究・開発されている中、中央大学の弛緩した雰囲気に対して、コーバは批判的だった。

 

そして時に、そのトップであるハンジが元気をなくしてしまっては元も子もない。何か彼女を奮い立たせる為の説得材料…起爆剤…が必要だと、そのようにコーバは考えた。

 

「同志ハンジ…今度一緒に食事でもどうだろう?君に話したいことがあるんだ」

 

「コーバ…勿論、貴方からの御誘いなら喜んで」

 

コーバの誘いに、ハンジはなんとも理性的な反応を示し、しっとりとした声で受け応えた。

 

コーバは日頃なら抱き着いてきても可笑しくないハンジの影も形もないことにショックを受けたが、尚のこと、彼女の生気を取り戻す必要性を認識した。

 

気合を入れ直したコーバは、ミカサに一時間だけ席を外してもらい、ハンジと二人きりで…一対一での対話に挑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

コーバが起爆剤に選んだのは、その通りに、『爆発』に関してだった。

 

「ハンジ、私は今『爆発』に関して、壁内の技術力の応用による、画期的な兵器の開発を構想しているんだが」

 

「どうだね?やってみないか?」

 

コーバからの誘いに、ハンジは食事の手を止めて、小さく俯いた。

 

「折角だけれど…今は、イイかな…」

 

「イイと言うと?」

 

「研究、ちょっと疲れちゃって…」

 

「…やらない、ってことだね?」

 

「うん…ねぇ、同志コーバ」

 

「なんだい、同志ハンジ?」

 

「これまでの、人類が積み重ねてきた犠牲は…無駄、だったんだろうか…って、そう考えちゃう時って、なあい?」

 

「…」

 

「私はね、ちょっと、考えさせられたよ…好い時代になったよね、ご飯も美味しくなったし、お肉も普通に食べれる機会が増えたし、空を飛べるかもしれないし…でも、それって私たちのお陰っていうよりかは、君のお陰なんだと思うんだ…私たちは、何処か過去に取り残されたまま、壁の中に囚われたままなんじゃないかって…思っちゃうんだよ」

 

「…」

 

ハンジの葛藤に晒されて、コーバもまた食事の手を止め、目の前のハンジの伏せられた瞳に目を向けた。

 

膝の上で、凍えるように手が重ねられていた。しおらしいハンジを、しかし、らしくないという言葉だけで済ませるつもりは、初めからコーバにそのつもりはなかった。

 

コーバは席を立ち、椅子をハンジの隣に横づけると、彼女の肩を抱いた。

 

「…休んでもいい」

 

「え……?」

 

「しばらく、研究から離れても好い。君の椅子はずっとそのままにしておくから。だから、休んでも好い」

 

「私がいなくなっても、大丈夫ってことかな?」

 

「違う。そうじゃない。君の代わりはいない。ただ、嫌なら休んでも、立ち止まっても好いってことだ。囚われたままでいるより、休んで、それで逃げられるなら、それが好い」

 

「よく、わかんないよ…」

 

ハンジが俯いて言った。コーバは更に身を寄せると、肩を伝い、ハンジの手を握った。

 

「俺は逃げても好いと言ってるんだ。これまで逃げてこなかったとか、逃げたくないとかじゃなくて。好きにすれば好いと言ってるんだ。誰のお陰でもいいじゃないか。まだ壁の外を知ったばかりだろう?壁の中に囚われたままだなんて、当たり前だ。囚われたままでいることが悪いんじゃない。それ自体は悪くないだろう?投げ出しても、逃げても、囚われたままでも好いじゃないか。俺は今のハンジも好きだよ。休むことが必要なら立ち止まればいい。必要なんだから当然だ。だが、君は愕然としたんじゃないのか?これまで信じてきた正義を信じられなくなったんじゃないか?事実を知って、怖くなったんじゃないか?どこに行くかもわからない、世界の行く末に…」

 

「君の言う通りかもね、怖くなっちゃったのかもしれない…戦い続けられるのか、とかさ…」

 

「……人は誰しも、太陽にも芸術家にも成り得る」

 

「…?いきなりどうしたんだい?」

 

コーバはハンジを強く抱き寄せると、顔を近づけて言った。

 

コーバの瞳が収縮して、トパーズとエメラルドを混ぜ込んだような光がキラキラと瞬いた。ハンジは、その光に充てられて頬を赤らめた。うっとりと、コーバの瞳と瞳を重ねた。

 

「誰しもが、自ら光を放つ太陽に成れるわけではない。だが、同様に誰しもが光を放つ何かを生み出せる芸術家になれる訳じゃない」

 

「う、うん…そうかも、しれないね」

 

「俺には成し遂げられないことが、ハンジ、君なら出来ることを。俺は知っている」

 

「う、うん…ちょ、顔近…」

 

「散々言葉を並べたが、結局言いたかったことは一つだけなんだ」

 

「うん。うん…」

 

コーバはハンジの瞳を覗き込みながら、厳かに唇をハンジの唇に…

 

 

 

 

 

 

 

 

ハンジの唇にコーバの唇が触れる寸前で、コーバの顔がハンジの目の前から消えた。

 

いつの間にか、ハンジの膝にお腹にめり込む様に、コーバの頭が…。

 

「あ、アレ?」

 

「ハンジ!!!頼む、俺には君が必要なんだ!!!」

 

コーバはハンジの腹に頭を突っ込みながら、全身全霊で頭を下げていた。

 

「え、あ、あれれ?コーバ、ちょ、ちょっと…」

 

「君が頷くまでこの手を離しはしない!!!」

 

ガシリ、と腰を引くハンジを抱き締めて、コーバが叫んだ。

 

ハンジは期待した自分が恥ずかしいやら、ここまでの真剣さを吹き飛ばす展開に困惑しながら…毒気を抜かれた様な表情で、コーバの肩に手をやった…が、動かない!?

 

「あの、だから、ここまでの話は?芸術家とか、太陽とかは…何だったのさ…」

 

「そんなことはどうでも好い!頼む、俺に力を貸してくれ!!!ハンジ!」

 

コーバは最早、土下座する勢いだった。

 

「ねぇってば…休んでいイイんでしょ?」

 

「あぁ、でも戻ってこい!俺にはハンジが必要なんだ!まだまだ作って欲しい物が沢山あるんだ!!」

 

「あ、ちょっと、息がくすぐったいよぉ…」

 

「ハンジーーー!!頼む、俺を助けてくれ!俺を支えてくれぇ~!俺には、お前しかいないんだーーー!!」

 

「もぉぉっ!しょうがないなぁ…ふふふ、本当、何時ものカッコいい君はどうしちゃったのさ?ふふ、ねぇ、他のヒトにも言ってるんでしょ?君、ねぇ?」

 

「実は、言って…る…でも、ホントのホントに、俺にはお前しかいないんだ!俺の考えてることをものにできるのは、ハンジしかいないんだ!俺の芸術家は、お前しかいないんだッ!!」

 

「私は君お抱えの芸術家なのかい?」

 

「そうだ!だからッ!!」

 

「あ、あー…もう!いいよその先は言わなくっても…もう十分。君の想いは伝わったからさ…」

 

ハンジが溜息を吐くと、コーバが顔をぐりぐりとハンジの腹に押し付けた。情けない姿に、ハンジの顔が綻んでいるのは言うまでもない。

 

いつの間にか、憂いを捨て去ったような表情を浮かべていた。本人ですら気づかない間に、感情が動き、心の模様替えを済ませてしまったらしい。

 

コーバはちらりとハンジの顔色を窺ってから、今度は正面から彼女のことを抱き締めた。耳元に息が当たる。

 

「ハンジーーー!!」

 

「はーぁーいー!なんだい、コーバ?」

 

聴こえてるよ?とハンジの優しい声が、すぐ耳元に返ってきた。

 

コーバは口元を緩めたまま、頭の中の記憶を浚った。

 

「装甲貫徹能力を有するロケット弾を、ガス噴射技術を応用して…そうだ、カチューシャを開発できないだろうか?」

 

唐突な申し出は、今思えば何時ものことで…情けない、縋りついた格好のまま、声だけがお仕事モードになっている、ちぐはぐなコーバの様子に、弱くてどうしようもないコーバの姿に、ハンジは幻滅するどころか笑みを深くしてしまった。

 

声に隠せない甘さが、駄々洩れとなり、ハンジの両腕はいつの間にかコーバの背中にまわっていた。

 

「ふふふ…なんだい、突然…コーバ君は仕方ないなぁ…それで、今度は何を作って欲しいんだい?」

 

「ロケット弾で面制圧が可能な兵器を…足の速い車両に乗っけてだな…あぁ、えぇっと…」

 

「ゆっくりで、いいよ?大丈夫、君の提案は何時聞いても的確で面白いし、新鮮だからね…さぁ、一つ一つ…私に君のことを教えて?」

 

「そうだな…先ずはトラックを確保して…そっちはエルヴィンに回すとして、兵器の方はハンジに作ってもらおうかな」

 

「ふむふむ…それで?…」

 

「それで…」

 

進退を問われる様な緊張感は過ぎ去っていた。食事もほったらかしにして、いつの間にやら、ハンジとコーバが一塊に抱き合って構想を練る時間に変わっていた。

 

ハンジの纏っていた憂いは遠く、薄く引き伸ばされて、まんまとコーバに圧し潰されていた。

 

情けなくて情けなくて、どうしようもない姿を晒すコーバを、ハンジは自分でも理解できないくらいには好きで、好きで、可愛らしく感じていた。

 

コーバにその自覚があったのかはさておき、情けなくて可愛いコーバのお陰で、ハンジはいつの間にか研究意欲に満ち満ちていて、コーバに頼まれれば頼まれた分だけ頑張れそうだった。

 

一時間後、ミカサが入室する頃には、二人とも抱き合ったまま研究の為の意見交換に花を咲かせており、ミカサの「近すぎます。離れてください、ゾエ所長」という声が掛かるまで、みっちりぴったりの状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、コーバがハンジの研究室を訪れた際に、モブリットから「同志コーバ!どうか所長にお金の使い方ってものを教えてやって下さい!!」と泣きつかれることになるのだが…それはまた別のお話である。

 

尚、会話は以下の模様。

 

「経理部から今年三度目の苦情が来てます!領収書も切らずに、あればあるだけ使っちゃうんですよおぉぉぉッ!!」

 

「ハハハハ!!モブリット君、諦めたまえ!芸術には投資が必要なのだよ!」

 

「スミス学長には「私では彼女を説得できない」と断られてしまったんです!!お願いします!同志コーバが最後の砦なんです!」

 

「なら私にも出来ない理由があるよ!」

 

「なんですかそれはッ!?」

 

「彼女に開発するように言ったのは私だからね!!」

 

「うわああああああ!!!じゃあ、もうダメだあああああ(絶望)」

 

「モブリット君じゃないか!どうしたんだい奇声をあげたりして!」

 

「ゾエ所長!貴女の話ですよ!!ぬわあああああん」

 

「あはははは!モブリット君が壊れちゃったよ!あれ?同志コーバじゃないか!いらっしゃい、お茶でもしていくかい?」

 

「抱き合っとる場合ですかッ!!」

 

「おぉ!モブリット君が直った!私のお陰だね!」

 

「壊れてるのも貴女の所為ですよおぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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