進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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R15の限界に挑戦。鬱エレクチオンな内容。

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絶望

 

 

 

 

 

ライナーが次に目を覚ました時、視界は真っ暗だった。何も見えない。体は肌寒く、裸で拘束されていた。

 

「何が起こっているんだ?」とライナーは思った。

 

そして、虚ろな意識のまま顔を、かろうじて動かせる顔を小さく左右に動かした。

 

顔を動かしたことで、彼の意識が戻ったことを知った、この一件の黒幕が声を掛けた。穏やかな声だった。

 

「やあ、ライナー・ブラウン君。君のことを見るのは随分久しぶりのことに感じているよ。実際、君を最後に見たのは去年の閲兵式でのことだからね。けれど、君が今年の春から何をしてきたのか、私はよーく知っている。恐らく君自身が知らないことまで知っているだろう」

 

「んーんーんー!!(同志コーバ!?いったい何が!?)」

 

壁内人類の頂点が、あられもない姿で拘束されている自分の目の前にいる。

 

だが、それだけではライナーに全てを悟らせるには不十分だったようだ。ライナーは心の底から、兵士として驚愕し、動揺していた。

 

「ははは…何と言っとるのかわからんよ。言っておくが、君にはいくつかの罪状があってだな…まず防諜違反罪、身分の詐称、破壊工作、大量殺人…まぁ、こんなものかな?まず、だ。事の重大事を整理しよう。お互いにとって最善の結果を選択するためにもね?」

 

「……」

 

ライナーはようやく、自分が何の咎でこの場にいるのか完全に理解した。どうやって?だとか、なぜ?だとかの疑問は尽きなかったが…それでも、自分が既にマーレの戦士であること、それは取りも直さず巨人化能力者であることが判明しているという現実を直視せざるを得なかった。

 

身動ぎ一つできない状態で、ライナーの心だけが忙しなく揺れ動いていた。

 

コーバはライナーの動揺を理解しつつ、またその境遇に心から同情しつつも、壁内の最高指導者として責任を果たすべく話を続けた。

 

「まずは簡単に君の今の状況を説明しよう。君は今、特殊な椅子に拘束されている状態だ。これはダリス・ザックレーの屋敷を押収した時に出てきたものでね、なんというか色々な意味で特殊な拘束器具なんだ。生前のザックレー曰く『ささやかな芸術』作品らしい…私はそうは思わないが。芸術とは個人の内面的な価値観に寄って十人十色だからね、彼にとってはそうだったんだろう」

 

ライナーはまだ自分の状況を測りかねていたが、次のコーバの言葉で深い絶望感を感じることになった。

 

「はっきりと言っておく。排泄器官と君の口は直結している。君が戦士であろうとすればするほど、暫くは自分の排泄物だけの食生活になる。戦士としての自分を取るならば、そうだな…自分の中から出た物が自分の中に戻ってくるとでも考えてくれたまえ」

 

「んーッ!?」

 

「ははは…もがいとる、もがいとる。まぁ無駄なんだが。…ライナー・ブラウン君、これは熟慮した結果なんだ。私は暴力と拷問を法律で禁止しているからね。恐怖と暴力によって人を幸せにできた例はないんだよ。だが…割りたい口も確かにここにあるわけだ。そこで考えたのが、君に羞恥と尊厳の危機を味わってもらおうという…雑な考えで悪いね。でも、壁内を守る為なんだ。君には暴力も拷問をしないから安心して欲しい。代わりに自分の糞便を食ってもらうが…殺されたり、痛い思いをすることはないんだからね。一応補足すれば、私は別に君たちに個人的な恨みがあるワケじゃないんだ。寧ろ、同情している。幼いころから厳しい環境下で育てられたんだ。殺人を国家の命令で強いられて…さぞかし辛かっただろう。だが…君たちが味方であるという確信が持てるまで、君たちが私たちを害さないと確信が持てるまで、私は鬼にでも悪魔にでもなるつもりだ」

 

「……」

 

「巨人化したければすればいい。ただし、殺せるのは私ひとりだけ。この場にヒストリアが居るかもしれない状況で、君にその選択肢が採れるとは思えない。おまけにここは地下だ。厚い岩盤に挟まれて圧死するのがオチだ。くれぐれも、無駄死には選ばないことだ」

 

「…んーーーッ!!」

 

「ヒストリアが心配かな?…安心したまえ、彼女はサンドイッチを運ばされただけだよ。君を医務室に運ぼうとして、そのまま連行された。さて、ここからが本題だ。君にはいくつかの選択肢が与えられる。一つ一つ、注意して答えることだ。猿轡も、マスクも外さないから首を振るか、頷くかで答えたまえ。いいね?」

 

「…」

 

ライナーはヒストリアの名前が出るとぴたりと動きを止めた。沈静された様子を確認してから、コーバはライナーに問い、ライナーはこくりと頷いた。

 

「よろしい。予め教えておこう…ベルトルト君とアニ君も君と同じように身柄を拘束されている。これは事実だ。そして…彼らは既に尋問を終えている。理解したかな?」

 

「…」コクリ

 

「よろしい。では…第一問だ。何度でも聞くが、一日に一度しか聞かないから慎重に答えるように。…君はマーレの戦士としての自分を捨てて、壁内に帰順する覚悟があるか?」

 

「……」

 

コーバからの問いに、ライナーは直ぐには答えられなかった。動きを止めたライナーを、しかしコーバは淡々と見つめるばかり。そこには侮蔑も無ければ、同情もなかった。

 

「……(俺は…俺はどうすればいいんだ…戦士としてマーレに殉じるべきか?兵士として壁内に殉じるべきか?…どちらかを捨てなければ、俺はこのまま無様な姿を晒し続けたまま生かされることになる…この男なら、ヨシフ・ヴェトーならやりかねない…あぁ、ヒストリアッ!俺はどうすればいいんだッ!?戦士として今ここで死ぬべきなのか?だがどうやって…身動ぎ一つできないこんな状態で…自傷だって出来ない…口は無理矢理開けっ放しにされているし、目隠しされていて何があるのかもわからない…故郷に帰る為、その為にどんな手段も厭わないつもりが…あぁ、ヒストリア、君は無事なのか?君もこんな姿に??裸に剝かれたヒストリア…うッッ!?…いかん!ダメだダメだ!危ない所だった!…ふぅ…ああ、俺はどうすれば…)」

 

ライナーが頷くこともできず、首を振ることもできないまま時間が過ぎていった。

 

ただ静かに自問自答が続き、一時間近くコーバは言葉も発さずにライナーの答えを待ち続けた。

 

「ふむ…そろそろ次に行かないとな。さぁ、今日の答えを聞こう。君はどうするんだ?」

 

「……」フルフル

 

「…そうか、今日は『否』なんだね?ああ、それでもいいさ。私はね……。栄養は点滴だから安心したまえ。じゃあ、また明日」

 

ライナーは初日、戦士でいることを選んだ。そこには「一日くらいなら大丈夫だ」という楽観的観測があった。

 

アニとベルトルトが口を割らない限り、いいや、例え割ったとしても自分だけは戦士のままでいよう。ライナーは幼少期の苦難を思い出して、そう固く誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライナーが地獄の夜を過ごしている頃、別室ではベルトルトが同様の状態で尋問を受けていた。

 

睡眠薬と鎮静剤を過剰摂取したライナーと比べて、ベルトルトは基準値にぎりぎり届く程度の量しか摂取していなかったため、早々に目を覚ましていた。

 

アニに誘われて、時間通りに彼女を部屋に招き入れたベルトルトは、警戒しつつも彼女の提供するお茶を一緒に口にしてしまった。自分と同じものを飲むアニの姿を確認してから、注意深くカップを手に取ったベルトルトだったが…まさか自分と一緒に意識を失うまで薬入りのお茶を摂取するとは考えていなかったようである。

 

先に意識を喪失したアニに動揺したのも束の間、自分もあっけなく意識を手放してしまったのだ。

 

コーバからの密命を受けたアニの精神力と覚悟に対して、ベルトルトは微塵の疑いも抱かなかった。今も、抱いていなかった。

 

アニも自分と同様に拘束されていると聴いて、ベルトルトは簡単に戦意を喪失したが、それでも一日目はライナー同様に首を振った。

 

ベルトルトの方が与しやすい、と判断したコーバは二日後、ベルトルトの元にアニと共に訪れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珍しく目隠しが取り払われた。瞬間、眩い光の世界。天井から下がる電球が、ベルトルトの顔を照らしていた。

 

ギギィっと、重たい鉄の扉が開く音とともに、二人の人影が入ってきた。コーバと…アニだった。

 

「んーー!!」

 

見たところ、彼女は服も着ているし何の問題もないように見えた。ベルトルトが安堵の声を上げた。

 

だが、アニがコーバの一歩先に進み出たところで、歓喜と安堵は絶望に塗り替えられてしまう。

 

「アニ」と優しく語り掛けたかと思えば、コーバが彼女の体を後ろから抱き締めたのである。

 

手や指が、衣服越しに彼女の体をゆっくりと見せつけるように這いまわった。

 

「……」

 

ベルトルトは絶句した。

 

だが、絶望はこんなものでは終わらなかった。

 

唐突に、コーバの美貌がアニの耳元から首筋を辿り、立て続けに甘い水音を漏らしたのである。

 

「ふ…う…あ…やぁ…」と、か細い声でアニが啼いた。

 

点々と赤い斑点が、虫刺されのような鬱血の痕が現れた。

 

甘いような切ない様なアニの声に、ベルトルトは眼を血走らせた。

 

耳に何事か囁きながら、アニと睦み逢うコーバを、ベルトルトは憎しみと羨望の入り混じった目で見つめる事しか出来なかった。

 

「ちゅ」「ちゅ」と、立て続けにコーバの唇がアニの耳たぶに押し付けられ、アニが体をびくりと震わせた。

 

コーバの手がわっしと、アニの胸のふくらみを鷲掴む寸前…

 

「おや、おやおや…見てたんだね?ベルトルト君…」

 

「はあ~」と荒い息を漏らすアニとは対照的に、小ざっぱりとして落ち着いた様子のコーバが目元を僅かに細めて、ベルトルトに語り掛けた。

 

背中と腰をぴったりと押し付け合って、今にも倒れそうなアニを支えるコーバの姿に、ベルトルトの感情はぐちゃぐちゃになっていた。

 

「(アニ!アニになんてことを!殺してやる!殺してやる!ヨシフ・ヴェトーッ!!)」

 

「(あぁ…でも、どうして!?アニ、君はどうしてそんなに切なそうな声を漏らすんだッ!!クソクソクソッ!!)」

 

「(あのアニが…あんな、あんな声で、顔で…うっ…ううぅッ…なんで僕は…こんな状況で…)」

 

「(そうだ、アニは無理矢理!そうだ!アニは無理矢理あんな、あんな奴の手籠めにッ!!アニ!アニ!僕が!僕が助けるからね!アニ!)」

 

ベルトルトの脳裏を言葉の羅列が錯綜した。入り乱れる無意味な感傷が、積み重ねられ、塗り重ねられ、次第にベルトルトに正気ではない正気を取り戻させた。

 

自分に都合の好い結末だけを脳裏に思い描いて、ベルトルトは残酷な現実に、全く根拠のない自信と戦意を携えて挑みかかった。

 

「んーー!!んーーー!!(アニを離せ!!島の悪魔めッ!!好色な悪魔めッ!!)」

 

「おーおー…なんだ、逆効果か……まあこういう反応もあるわな…」

 

「ふー…ふぅ…ふぅ…」

 

威勢を上げたベルトルトに対して、コーバは只管に冷淡だった。荒い息を戻せずにいる、アニを背後から抱きしめながら、コーバは思案顔で虚空を見上げていた。

 

上気した頬に差す朱色が、潤んだ瞳が、鼻にかかったもどかし気な声が…そのすべてがベルトルトを現在進行形で狂わせていた。

 

だが、そんなことはお構いなしに、アニは誰に言われるでもなく尻を突き出しては、コーバの腰に押し付けてを繰り返していた。

 

首筋に垂れる汗が、斜めの線を引いて、光を返した。

 

だが、年不相応な色気を放つアニを腕の中に閉じ込めながらも、コーバは冷静だった。時折、薪を絶やさぬ竈門番のようにアニの耳や首筋に吸い付いては、やるせない声を漏らさせてベルトルトの様子を注意深く観察していた。

 

そして、アニも、そしてベルトルトも我慢の限界が来るといった頃合いを見計らって、ようやく口を開いた。

 

「さて、もう十分観察したことだし…ベルトルト君、今日で三日目になるが…どうする?これで最期だ。正直言って、君のことは気に入っているわけでも恐れているわけでも無い。同情はするが、特別に目を掛けてきたわけでも無い。君には、随分と殺されたからね。少し腹も立てている。無論、相対的な話になるが…」

 

「んー!!(アニ!アニ!早く彼女を解放しろ!僕のアニを解放しろ!この悪魔め!!)」

 

「どんな神の名を借りたところで、殺戮には責任が伴う。最終的に、行動したのは自分だからだ。どんな国家の名を借りようとも、どんな高名な学者や宗教家の名を借りようとも、殺戮が齎すものは荒廃と虚しさだけだ。分別を弁えない者には、然るべき罰が必要だ…とはいえ、君に乱暴を働くつもりはない。戦意を呼び覚ましてしまうし、何より出血させかねない」

 

「……」フルフル

 

ベルトルトははっきりと首を振った。

 

コーバは落胆した様子もなく、ただ淡々とその選択を見届けた。

 

「翻意は無いんだね?」と三度聞いたが、ベルトルトの答えは一緒だった。コーバの眼が、緑色と橙色の瞳が、ぎゅぎゅぎゅと収縮した。猫目の様に鋭く、冷淡な瞳に変わっていった。

 

コーバは、いよいよ、けじめをつける気になったらしい。腹が立ったのかもしれないし、自分の女を盗られるかもしれないと、ベルトルトの執着に不安を感じたのかもしれない。

 

いずれにせよ、コーバは最も残酷な方法でベルトルトの運命を決めることにした。

 

コーバは突然、アニを一際強く抱きしめると、彼女の顔を振り向かせて、グイっと近づけた。唇と唇が殆ど触れていた。はみはみと、アニの口が物欲しそうに動いていた。そんな状態で、コーバはアニに問うた。

 

「ベルトルト・フーバー君…君の答えは拒絶なんだな?…いいだろう。いいさ。それも選択だ。君の選択だ。…アニ、君にも選んでもらおうか。俺と、こいつ…どっちが好い?好みの問題さ。簡単だろう?好きな方に、キスして欲しい」

 

コーバがそう言って、アニの体を支える力を緩めた瞬間だった。アニの体が迷いもなくコーバの方に伸びて、彼の唇に噛みついた。

 

アニが一心不乱にコーバの下唇に吸い付いていた。舌も、入れたがっているのかもしれない。はふはふと、大好物にありついた犬みたいな様子だった。

 

コーバはほんのわずかに口角を上げて、それからベルトルトの方に目を遣った。

 

「………」

 

ベルトルトは、信じられないといった表情を浮かべていた。うんともすんとも言わない。余程ショックだったらしい。

 

身体を翻して、抱き合う男女の様相を呈したアニとコーバに、しかしベルトルトの眼は釘付けだった。

 

コーバが鉄の扉を三度叩くと、扉が開いてハンジとリヴァイが入ってきた。

 

「いいなぁ~…ねぇねぇ、後で私にも『ちゅう』してよ!!」

 

「うるせぇぞ、ハンジ…おい、さっさとやっちまおう…こいつといいライナーと言い…汚ぇ……」

 

騒がしさに、ベルトルトは理性を取り戻したようだ。

 

見ればハンジの手にはブリキのバケツと分厚い毛布が。ベルトルトは最悪の事態に思い至り、体をのたうち回らせた。

 

「残念だ。ベルトルト君…こうなってはどうしようもない。さあ、もう予め決めておいたんだ。血も流せないからね、必然、こういう手になる」

 

コーバはそう言うと、アニに一際深く口付けてから、ハンジから水に浸した毛布を受け取り、それでベルトルトの鼻と口を抑えつけた。

 

「アニのお陰で決心がついたよ…もともと、俺の思想だと大量殺戮兵器は存在しない・使わないが最上だからね…君の存在は不都合だったってわけさ…。そういうことで、悪いがこのまま死んでくれ。…安心して欲しい。君は名誉の戦死を遂げたんだ。君の家族に累が及ぶことはないよ」

 

そう言って、コーバは誰の手も借りずにベルトルトが死ぬまで、濡れた毛布で彼の呼吸を奪い続けた。

 

ハンジもリヴァイも、そしてアニも、その様子をこれと言って同情することもなく冷静に見守っていた。三人とも、事前に知っていたのだ。そして、すべてに同意してこの場にいた。

 

痙攣が始まり、それも済んでしまうころ、ベルトルトは陸の上で溺死という何とも不思議な死を遂げた。公式発表では首吊り自殺と言うことになり、彼の葬儀にはアニとコーバ、そしてライナーも参列する予定が用意されていた。

 

ベルトルトの死亡後、アニはコーバに抱き着いたまま部屋を後にした。彼女がベルトルトのことを振り返ることはなかった。

 

 

 

 

 

 




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