進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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参参伍伍様 誤字報告ありがとうございました。

昨日は胃腸痛が酷くて投稿サボっちゃいました。

面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。


ライナー、魂の絶唱

 

 

 

 

 

「私、ライナー・ブラウンは、ヒストリア・レイス親衛隊上級指導者個人を如何なる脅威からも防衛することを誓い、ヒストリア・レイス個人に絶対の忠誠を誓い心臓を捧げます!!私はヒストリア・レイスに命じられる如何なる命令にも忠実に服することを誓います!私はヒストリア・レイス親衛隊上級指導者に忠誠を誓う上で、親衛隊隊規に忠実に従うことを誓います!これらの誓いを立てる上で、私、ライナー・ブラウンは、如何なる状況下においても、親衛隊隊員として弛まぬ努力で軍務に励み、ヒストリア・レイスの命令に服する上で必要な如何なる手段・条件にも従い、怠慢を敵として厳粛にヒストリア・レイス個人に奉仕することを誓います!この誓いに背いた時、私は親衛隊隊規に則った懲戒処分と、ヒストリア・レイス個人からの軽蔑の視線と罵倒を甘んじて受け入れます!!!」

 

「今、ここで考えたのか…?」

 

「はいッ!!」

 

「……それで、その言葉は本当なんだな?信じていいんだな?」

 

「はいッ!!信じてくださいッ!!」

 

「…ライナー・ブラウンの監督権を本時刻を以てヒストリア・レイスに委任する。以後、手綱を握っておくように…」

 

「畏まりました。我が総統」

 

地下室に響き渡った絶唱は、拘束三日目のライナーによるものだった。

 

目隠しが突然取り払われ、コーバとヒストリアが登場したことで、彼の心拍数は上昇した。

 

コーバは言った。

 

「私に忠誠を誓わなくても好いんだよ。君が、別の個人、別の思想、別の共同体に忠誠を誓いたければそれでもいい…ただし、マーレはダメだ」

 

「…同志ライナー・ブラウン…貴方には賢明な判断を期待します」

 

「ヒストリアもこう言っている。さぁ…どうする?今日で最期だ…そろそろ皆、里帰りから帰って来る頃だからね」

 

「……」コク

 

「頷いたね?」

 

「……」コク

 

「よろしい…マスクを取っ払ってあげよう…ミカサ、いいよ、私がする…」

 

部屋の暗い影の中からミカサがにゅっと現れたことにライナーは驚きを隠せなかった。気配を絶つ技術もさることながら何時から居たのか見当もつかなかったからだ。

 

とても汚い状態のライナーを、しかしコーバは平然と触れていた。三方から冷淡な視線に貫かれて、ライナーは生きた心地がしなかった。

 

地獄の三日間が終わり、久しぶりに吸い込んだ空気は美味しかった。涙が出そうになるのをぐっとこらえて、ライナーは冒頭の聖句を並べ立てた。

 

ライナーの忠誠宣誓に、一瞬静まり返る場。だが、間もなく最初に回復したコーバがその誓いを認め、続いてヒストリアからも認められたことで、ライナーの助命は成った。

 

コーバは言った。

 

「今後、君には心身の保護が権利として与えられる。マーレ当局による親類縁者への累が及ばぬように、君には一時的に死んでもらう。アニやベルトルト君と同様に、巨人化能力を奪われて戦死したことにしておくよ。その間は、全くの別人として生活してもらう…とはいえ、どれもこれも我々がマーレとの最初の接触を終えてから効果を発揮するものなのだが…まぁ、早いに越したことはない。無論、君も知っての通り、君は死んでいない訳だ。巨人化能力もそのままだ。そこで、君には各種装甲板を生成する任務に就いてもらう。これは我が国が将来直面する国防上の課題に対して、極めて重要な案件だから、心するように…私からは以上だ。後は…身綺麗にしてから、ヒストリアに従い新しい任務に就きたまえ…」

 

「はい…同志書記長閣下」

 

「よろしい…君は丈夫なんだな…それじゃあ、ヒストリア、後は頼んだよ?」

 

そう言ってコーバはヒストリアの頬に『チュッ』と、何でもないことの様に口付けると、その場を後にした。ミカサもいつの間にやら消えていて、部屋には拘束されたあられもない姿のままのライナーと、その監督を任せられたヒストリアだけになった。

 

ライナーは内心で思った。

 

「(天使と二人きりだッ!!うっほほーーいッ!…結婚したい……)」

 

コーバによる牽制も、彼の恋心を焚きつけてしまったようだ…。

 

ライナーに対しては稀に見る逆効果を発揮しながら、ヒストリアは暫く頬をさすりさすり…俯いたまま動かなかった。

 

「…ほ、頬にキスされてしまった…はぅ……」

 

ヒストリアの顔が見る見る赤くなっていき、耳まで火照って真っ赤になるまで直ぐだった。

 

ライナーがまるでいないものの様に、ヒストリアは隠す様子もなく、立ったまま悶えていた。

 

「同志コーバ…私も、大好きですぅ……ぅぅ…ふぁ…ふぅ…くらくら、しちゃいますね…」

 

おでこを押さえて赤い顔を手で扇いで冷ます。そんなヒストリアを観ながら、ライナーは思った。

 

「(うぶなんだな!!俺の天使は!!)」

 

ダメだこいつは。そもそも、現実的にヒストリアにはその恋心を認識されている一方で、その感情を認められていないに等しい扱いを受けていることを理解していない。

 

ヒストリアは「ふぅぅぅ~」と、震える吐息を漏らしてから、ライナーに向き合った。

 

ライナーからは、逆さまに凛々しい軍服姿のヒストリアが見えていた。

 

「さぁ!同志ライナー・ブラウン、貴方には国の為、コーバの為、その能力を十全に発揮するべき場所が用意されています!直ぐに着替えて、一刻も早くコーバの為に共に働く喜びに目覚めてください!いいですね?」

 

「(ひ、ヒストリア…俺の天使…ふふ…カッコいい所もあるんだなぁ…)」

 

「いいですか?聞いていますか?同志ライナー・ブラウン。貴方の頑張りは即ち私の頑張りに繋がります…逆を言えば、貴方の怠慢は私の怠慢に繋がるのです。もっともっと、私は同志コーバのお傍に行きたい…出世の為の道具扱いして申し訳ないのですが…でも、貴方は嬉しいんじゃないですか?顔、ニヤついてますよ?気づいてましたか?」

 

「(ヒストリア!?…ヒストリアが意地悪な表情を浮かべてるッ!小悪魔ヒストリアだ!俺の天使は悪魔属性も持ってたのかッ!?)」

 

「…貴方には頑張って頂かないと。同志コーバは私に期待してくれています。ならば、その期待に応えるのが当然です…そのためには、そうですね…貴方の頑張りに応じてご褒美をあげましょう」

 

「ご褒美ッ!?」

 

「えぇ…ご褒美です。…何が好いですか?デート、とかでしょうか?(秘密警察の監視付き…というのは言わないでおきましょうか…)」

 

「デート!!デート!?デートッ!?」

 

「うわぁ……まぁ、いいです。あの人の為なら、喜んで貴方ともデートしてあげます…それでは、鍵を外しますので少し待っていてください」

 

「デート!デート!デート!」

 

ライナーは言葉を持たぬ獣と化した。明らかに常全の状態ではない彼に、流石のヒストリアも恐怖を覚えたため、急いで部下の兵士たちが呼ばれ、数人がかりで監視を受けながら拘束を解かれた。

 

解放後、ライナーは全身と胃腸の洗浄とをグリシャ監督の下で受けた。グリシャは自身も尋問を受けた経験がある為か、青い顔をしながらも、マーレの手先であったライナーには厳しい視線を向けて、医師としては的確な指示を出していた。

 

身綺麗になってから、新しい身分証を受け取ったライナーはヒストリアの後に続いて地下牢を出た。実に拘束から三日後のことだった。

 

やつれて痩せた印象を与えるライナーの風貌には、しかし生気が戻ってきていた。新しい職場である、ハンジ麾下の巨人研究所に着くころには、もうすっかり元の角ばった男の顔に戻っていた。

 

途中、馬車を乗り継ぎながら向かった巨人研究所では、到着早々に眼鏡をギラギラと光らせるハンジの歓迎が待っていた。

 

「君のことはかなり前から知ってたんだけど…これで堂々と研究できるね!さぁ、早くこっちにおいでよ!君の能力について、隅の隅まで研究するのが私の仕事だからさ!!勿論、省けるところは省くよ?コーバ君も時間ないって言ってたし…私だって彼に褒められたいし…ほらほら、何で服なんか着てるのさ?早く脱いで!それから裏庭に来たら巨人化するんだから、そのつもりでいてね?」

 

小さい声で「最初は耐久試験から」とハンジが零すのを、ライナーは青い顔で聴いていた。

 

なるほど、向かった先では逃亡防止の為だけに使われるには多種多様な口径の火砲がずらりと並べられており、これからどんな実験が行われるのかを如実なまでに見る者に伝えていた。

 

逃げるか?と内心で漏らしそうになるライナーだが、横を見れば…そこにはこちらに期待の籠った目を向けるヒストリアの顔があった。

 

漢ライナー…彼は自分の愛の為に、自ら進んでドマゾでなければ耐えられない諸実験への参加を願い出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライナーが猛烈な砲撃に耐えたり耐えられなかったりしている頃、コーバはベッドで横になっていた。

 

ベルトルトを拘束し、ライナーを拘束してからの四日間近く、コーバは満足な睡眠がとれていなかった。

 

寝ようとはするのだが、眠る事が出来ないでいた。

 

ライナーを解放してから、ようやく彼は眠りにつくことが出来たのである。

 

寝息が聞こえてくる頃、同じベッドで彼に添い寝していたミカサ・アッカーマンは、コーバの手が小刻みに震えていることに気が付いた。

 

「…ベルトルトを、殺してから…だよね…」

 

ベルトルトの息の根を止めてから、コーバの手は震えていた。気づかない程だったかもしれないが、間もなく物を持つにも困るほどに震えるようになってしまった。

 

一晩で収まったが、気を抜くと震えることがある。

 

コーバにとって、初めての人殺しだった。

 

革命時代とて、強盗まがいのことはしても、殺しは頑なに禁じていた。

 

最後の中央第一憲兵失陥の為に、やむをえず憲兵を数人始末させたが、それもケニーや彼の手勢により為されたことだった。

 

ミカサが思うに、コーバは逃げることを拒否したのだ。

 

どこかで自分の身を綺麗に保とうとする、醜い自分を嫌悪していたのではないか…と、その殻を破り捨てる為に、ベルトルトを自身の手で始末したのではないか…と、ミカサは理解していた。

 

ミカサは自身を抱き締めるコーバの頭を抱いて、胸に顔を埋めさせた。寝息が温かく、彼女の胸元を湿らせていく。

 

常々、コーバとミカサは離れることを拒んできた。コーバは常にミカサを近くに置き、それはどんな時もほとんど例外が無かった。

 

ベルトルトを始末した晩、コーバがアニをベッドで抱いている横でも、ミカサは影の中で平然と立っていた。アニを信用していないからでも、コーバへの独占欲がそうさせるわけでも無かったが、ともかくミカサには例えコーバが行為中であっても、その傍から離れるという選択肢は存在しないのである。

 

特別の理由がない限り、ミカサがコーバから離れることはないのだ。

 

コーバが怯えているのなら、体を震えさせているのなら、それは尚のことだった。

 

コーバが静かにパラノイアに侵されていく過程を、或いは克服する一部始終を、ミカサは彼の隣で見守り続けるだろう。

 

 

 

 

 

 




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