進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。


覚悟 ジャン

 

 

 

 

 

「お袋、元気にしてるか?こっちは元気にやってる。帰省から戻って早々、風邪をこじらせたとかで同期が二人死んじまってたのには驚いたよ。でも、それ以外は特に何にもない。退屈な毎日を送ってるよ」

 

「朝起きて、飯食って、訓練して、飯食って、訓練して、飯食って、訓練して、飯食って、寝る…毎日そんな感じだな。同期の首席のアニってやつは、早々に俺たちの中から一抜けして、なんでも中央の将校団に入ったらしい。えらい強くて優秀な奴だと思ってたが…それも相応しくない評価だったみたいだ。無愛想な奴だと思ってたが、上官にも気に入られてるようだった。いや、あの感じだともっと上かな?…まぁいい。とにかく、俺たちは毎日同じことを繰り返してるよ。銃の組み立て、解体。火砲の弾道計算やら、実弾訓練やら、な。あとは行軍訓練だ。あれは正直キツいぜ。シーナ内地からローゼ内地の壁ギリギリまで歩いて行くんだ。何日もかけてな。その間が野宿だし、重い荷物を背負って歩くもんだから、その内に足の裏が平べったくなっちまいそうだ」

 

「水も飯も、不思議と軍隊生活には合うみたいだ。俺の性に合わないのは、このなんていうか…なんだ、アレだよ。暑苦しい感じっていうか、息苦しい感じっていうか…まぁ、そういうのが偶にしんどいなって感じる時はあるよ。でも、不思議と文句垂れても怒鳴られることもないし、注意を受けることもない。俺は意外だったよ…もっと厳しいもんかと思ってた。なんだ、ウチのボスを見直したよ。王政が崩れたって時は、とんでもない野郎だなと幼心に思ったもんだが…案外、悪い奴じゃないみたいだ。思わず聞いちまったんだ、「怒んないんすね」ってさ。そしたら上官が、「それも権利だ」って。なるほど…って納得したよ。規律を守り敬意は払えと言うが、思想は個人におまかせらしい。好い時代になったもんだ…人民保安部も、聞いた話じゃ憲兵団よりも評判がずっと好いって聞くし…この話はここまでにしよう。ずっと続いちまうからよ…」

 

「人間関係も、まぁまぁ…皆見知った顔だしな。悪かねぇよ。だから安心してくれ。あぁ、でも、エレンっていうじゃじゃ馬が居やがってな…アイツは真面目で優秀なんだが…どうにもな、生き急いでやがる。家はシーナの一等地で、親父が中央大学で教授を務めてる所謂インテリのブルジョワ野郎なんだが、特に鼻にもつかないし悪い奴じゃないんだよ。ただ、どうにも壁の中が窮屈で仕方ないって、壁の外に行きたいから親衛隊に入ったって言うくらいの奴でさ…暑苦しいぜ。まぁ、さっきも言ったが悪い奴じゃない。あいつを諫める役回りが板に就いちまったアルミンには同情するけどな」

 

「そういや、この前好いことがあったんだよ…書記長とミカサ師団長にばったり出くわしてよ…肝が冷えたぜ。それはもう、な。でも書記長の方は俺のことも知ってるみたいでさ、逆にミカサ師団長は俺のこと覚えてないみたいだ…ま、まぁ、そう言うこともあるわな…うん。それで、書記長から「君はそのままでいい」って言われて…もうダメかと思ったぜ。知られてるんかッ!?って。隣に居たマルコは終始恐縮してカチンコチンだったな…ははは、アレは珍しいもん見たぜ。あのマルコが「ひゃい!」だとさ!…二度目だったが、やっぱりあの人はヤバいな。なんていうか、ヤバいわ…こう、オーラが見えるぜ。それはもうヤバいわ…」

 

「あぁ、そうだそうだ…マルコのヤツ、また筆記試験で一位だったらしい。今度こそはアルミンに抜かれると思ってたから、アイツ自身も滅法喜んでたよ。アルミンは悔しがってたが…なんでだろうな、嬉しそうだった。…頭の好い奴の考えることはわからん。俺?俺は…まぁ十位以内には残れたぜ。俺はまぁ、まぁまぁだったな…そ、総合成績は悪くないぜ!なんたって不動の一位二位三位が抜けたからな!…不謹慎な話なんだが。事実そうだ。お陰で、今は上位の椅子を巡ってバチバチしてる。俺は傍観者ってとこだ。上位には残りつつ、自分のペースを崩されないように気を付けながらな」

 

「そろそろ次の帰省の話でもするかぁ…。あぁ…っと、上官の話だと冬季演習は今年も無しになるそうだ。代わりに雪が降る前に長期遠征に参加するらしい。だから…次に帰るのは多分冬の直前になりそうだな。次も…マルコと一緒に帰るよ。お袋も、その方が嬉しいだろ?俺も、なんだ、そっちの方が好いなと思ってよ…なんだ、まぁ、そういうことだから…またな!」

 

 

「ジャンよりっと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が部屋でお袋への手紙を認めていると、どたどたと誰かが廊下を走る音が聞こえた。足音はだんだん近づいてきて、俺の部屋の前で止まった。

 

バン!という音と共に、見知った顔が映った。マルコだ。

 

「ジャンッ!!ジャンッ!!大変だ!大変だよッ!」

 

「おいおい、落ち着けよマルコ…どうしたんだよ、そんなに息を荒げて…」

 

「長期遠征の概要が、今さっき発表されたんだ!」

 

「だからって…なんでこんな夜更けに…そもそも発表されたって?」

 

「だーかーらー!言ったじゃないか!僕は情報士官に選ばれたんだって!」

 

「あ、あぁ、そういえばそうだったけな…そ、それで?」

 

「今ちょうど、会議が終わったところなんだ…一番に君に教えておこうと思って…」

 

「おいおい、待てよ、そりゃ機密扱いだろ?」

 

「それでも、だよ」

 

強い意志の籠ったマルコの眼を見て、俺は閉口した。

 

何か、あったらしい。

 

俺は「座って話そうぜ」と、マルコに椅子をすすめた。

 

椅子に座ってから、マルコは俺に顔を寄せて、胸ポケットから取り出した、折りたたまれた書類を出して見せた。

 

「これは…?」

 

「予定さ。長期遠征のね」

 

マルコに見せられた書類には、長期遠征の具体的な予定が書かれていた。日数や移動距離、そして主目標まで。

 

「…」

 

黙って俺の様子を伺うマルコ。

 

読み進めていくと、なるほど…マルコが焦る理由も理解できた。

 

「壁外に、行くのか?」

 

「うんッ!」

 

「…こりゃぁ、なんだ、どういう風の吹き回しだ?」

 

「その時が来たって、上官たちは言ってたよ」

 

「その時が来た?って、どういう意味だよ」

 

「そのままさ…僕の考察で悪いけど、上層部はずっと機が熟すのを待っていたんじゃないかな?」

 

「もう少しわかりやすく言ってもらえるか?」

 

俺がマルコに身を寄せると、マルコは一旦言葉を切ると、居住まいを正して俺に囁いた。

 

「僕たちを第二師団の中核に組織したのだって、元を辿れば全てウォールマリア内地奪還の為なんだ…そもそも、国外勢力の存在が白日の下に晒された今、対人訓練に並んで、未だに対巨人戦闘を主軸にした訓練を受けているのは、僕たちの主戦場が巨人とのものだっていう何よりの根拠なのさ。…要するに、上層部は初めから第二師団を組織し、訓練が十分に行き届いた頃を見計らい、第二次壁外遠征を挙行するつもりだったんだ!」

 

マルコの話は理解できた。だが、わからねぇ。

 

「…わからねぇ。お前の話は理解できたが、なんだってそのことを俺に教えるんだ?」

 

「…」

 

マルコは少し黙ってから、俺と目を合わせて言った。

 

「君に、生き残って欲しいからさ!」

 

「…前回は、誰も死ななかったんだろ?」

 

「前回と今回は状況がまるで違うんだ…今回は死人が出るかもしれないと、上官も言ってた。敵の規模が未だ未知数であることに加えて、市街地での遭遇戦に対して、僕たちは十分な対抗手段がとれないのが実情だからね。市街地を全部砲弾で吹き飛ばすなんて、そんな無茶は出来ないよ。それに…」

 

「な、なんだよ…」

 

マルコは言葉を切ると、周囲を注意深く見回し、それから俺の耳に口を寄せて小さい声で言った。

 

「敵の巨人化能力者が現れるかもしれない…」

 

「おい、マルコ、そりゃ流石にダメなんじゃねぇか?」

 

「ダメだよ!でも、いざという時、君が逃げようが戦おうが生き残れるように、と思ってね」

 

「自分の心配しろよ…」

 

「僕は後方で指揮所の手伝いと情報伝達が仕事だからね…前線で戦う君たちよりは安全さ」

 

マルコはそう言いつつも、不安げだった。

 

「油断は、するなよ?」

 

「勿論さ…君もね」

 

「あぁ…にしても、そうなると…流石に手紙には書けねぇよな?」

 

「うん。防諜でね、残念だけど」

 

「……巨人、見たことあるか?」

 

「無いよ…でも、訓練通りにやれば、大丈夫なはず…」

 

「あぁ、そうだな…」

 

俺はお袋への手紙に、「帰りが遅くなったらごめん」と書き足してからベッドに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練に次ぐ訓練の毎日の中で、俺は漠然と自分の死について考えるようになった。

 

壁外遠征は二度目だとは聞いていた。最初の遠征にはボスも出たらしい。…へへ、すげぇ度胸だと思う。誰も願って巨人と戦いたくはねぇ。俺だってそうだ。

 

あの後、正式に第二師団にも壁外遠征の内容が公表された。大体、マルコが教えてくれた通りだった。

 

巨人化能力者に注意せよ、という警告が上官の口から出た時、いよいよ現実なんだって思った。壁の外の、そのまた向こうの海っていうデカい塩の湖の、更に向こうにあるデカい国。敵国のマーレってとこから、俺たちの見たこともないデカい船に兵隊をのせて、俺たちの島に攻めて来るらしい。

 

なんて現実味のない世界だろう。俺は暗然としたね。

 

本当に勝てるんだろうか?とか、本当に戦い続けられるんだろうか?とか…前まで考えもしなかったことばかり考えるようになった。

 

遠征が発表されてから色々な違和感が目についた。

 

火砲訓練の最中、サシャが珍しく弾を外したり。マルコが試験で凡ミスを連発したり。エレンが珍しくしんみりしていたり。

 

皆、思うところがあるんだろうか?

 

それとも単なる俺の勘違いなんだろうか?

 

気持ちがどんどん内向きに向かっていく感覚は、なんとも気持ちの悪いものだった。

 

いよいよ遠征が近くなると、シーナ内地は以前にもまして賑わっていた。色々な用事で沢山の人が入って来ては入れ替わった。

 

初めて見るものも沢山あった。巨大な鉄の塊みたいな…自分で勝手に動く、『自動車』ってやつらしい。

 

似たようなので『戦車』っていう、大砲を載せた鉄の塊も動いていた。

 

訓練で何度も見た、火砲牽引馬車もいつも通り見えて安心した。全くの別世界に来たような心地になった。

 

立体機動装置に使われていたガスを、液化させることに技術アカデミーが成功したらしい。お陰で、燃料問題が解決して、一気に研究が加速したようだ。白っぽい分厚い板は、巨人から生成された装甲板らしく、独特の剥離構造で衝撃や破片、弾丸から乗員を保護するらしい。

 

空を見上げると、大きな影が見えて、聞けば『観測気球』と言うらしい。もっと進んだ飛行艇やらも開発が進んでいると、アルミンが鼻息荒く教えてくれた…。

 

あの後も色々なものを聞かせられたり、見せられたりしたが…何が何だか、俺には理解できなかった。

 

アルミンとマルコは兄弟みたいにずっと話し込んでいる。だが、今回はアルミンに軍配が上がったようだ。文系のマルコも、この分野では理工系のアルミンに敵わないみたいだな。

 

最後に、一人一人にベストが配られた。文字通り胸部と腰回りを防護するヨロイみたいだった。渡されて驚いたのは、その軽さだった。このベストにも、例の巨人が生成する装甲板が使われているらしい。分厚さに対して、重さは大したことがなかった。ベストと服の間に物を挟むなと言われた。弾丸の衝撃で怪我をする原因になるらしい。

 

…俺は、途方もない何かに翻弄されているような気がしてきた。

 

昨日までの世界が全部嘘みたいだ。これも、全て情報秘匿の為なんだろうか?だとしたら…

 

俺はいよいよ、気を引き締めた。覚悟を決めるほかなさそうだ…。壁外。行くぞ、壁外!

 

 

 

 

 




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