進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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移動の自由

ミットラス共産党政府が最初に手を付けたのは、壁内での移動の自由化であった。

 

これにより、以前までは生まれた壁より内側には入る事さえ苦労した壁内での行き来が改善され、最も外縁部に位置するシガンシナ区等の住民も気兼ねなくウォールシーナ内へ入ることが可能になったのである。

 

人民はこの新法に大いに沸き立った。そして、我先にと旧王都であるウォールシーナ内地へと足を運んだ。人々は列を成してこのシーナ内地や、解放された王城へと向かい、その数は日に日に膨れ上がった。社会現象となった内地巡礼の後押しにより、経済が活性化したことは言うまでもなく、またシーナ内地は連日連夜お祭り騒ぎの様相を呈した。

 

ここにも一組、生まれて初めてシーナ内地に足を踏み入れる親子がいた。

 

エレン・イェーガーとその父グリシャである。

 

ただ、彼らは列に並ぶことなく、技術アカデミーの開発した壁吊り下げ式エレベーターの利用を許されて、優先的に入場することが出来た。

 

エレベーターの終着点、王城最寄りの壁の頂上で、彼らの特権的待遇の大本とも呼ぶべき人が待っていた。

 

「久しぶりだな!ミカサ」

 

待っていたのは幼馴染であるミカサ・アッカーマンだった。黒で統一された制服の胸元には親衛隊幼年部総長の徽章がチカチカ煌いていた。

 

直立不動で二人を迎えたミカサは、厳格なまでに折り目正しく、二人の客人を迎えた。

 

「エレンも元気そうで何より。おじさんも、お久ぶりです」

 

「ご家族のことで大変だったろうに…立派に成長したね」

 

グリシャがそう言うと、ミカサは一瞬目を伏せたが、間もなく強い意志の籠った目で言い切った。

 

「家族のことはご心配なく。今は同志コーバや同志リヴァイが私の家族です」

 

「そ、そうか、君が好いなら好いんだ」

 

「はい。お気遣い感謝します」

 

グリシャが気圧される程の威を放つミカサに、エレンは違和感を覚えた。

 

「なぁ、ミカサ、なんかあったのかよ?」

 

「いえ、なにも…。さぁ、王城…いいえ、元王城でしたね、今はミットラス共産党本部をご案内しましょう…」

 

「……」

 

エレンは違和感の追及を許されぬ、有無を言わさぬミカサの態度に負けて、口をつぐんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごいよ、父さん!これが元王城かぁ…」

 

「こらこら。はしゃぎすぎて物を壊すんじゃないぞ?」

 

高い天井に金の額縁に納められた絵画や、無数の彫刻。見事な装飾品に囲まれて、エレンは大いにはしゃいでいた。ふかふかの赤い絨毯や、太陽の光を大胆に取り入れる大きな窓ガラス。全てが規格外だった。

 

その規格外から最も遠く離れたシガンシナ区からの客人は他にもいたようで、

 

「あれ?もしかしてエレンも呼ばれたの?」

 

「アルミン!どうしてここに…って、そういうことか、ミカサの奴も、何も別々に呼ばなくたってよかっただろうに…」

 

シガンシナ区から御呼ばれした先客の金髪の少年は、エレンの数少ない友達の一人であるアルミン・アルレルトとその祖父だったようだ。

 

「にしても、ミカサも随分変わっていたよね」

 

アルミンの言葉にエレンも頷いた。

 

「あぁ、一緒に遊んでいた時とは比べ物にならない…一瞬、別人かと思ったよ」

 

「それにあの制服…言っちゃ悪いけど、少し不気味だよね」

 

「あぁ、なんか、冷たい鉄みたいな感じだった」

 

アルミンとエレンがおしゃべりに興じていると、大広間の扉がおもむろに開き、中から数人の男女が現れた。全員がつい先ほどまで自分たちが不気味だと呼んでいた黒一色の制服を着て、ピカピカに磨かれたブーツをはき、胸に金属製の十字の徽章を付けていた。

 

アルミンとエレンは会話が聞かれていたような気がして不安になったが、叱られることなく、その場にいる全員が広間へと通された。

 

アルミンとエレンを待っていたのは、やはりミカサと、それから見覚えのない若く、そして美しい男性だった。

 

男性は一際上等な灰色の制服を一人だけ身に着けており、昨日までそこには王が居たであろう玉座に腰かけていた。両脇を背の高い帽子をかぶった男と、背の低い頭の後ろを刈り上げた目つきの鋭い男に、守られるように固められていた。

 

そして、男性の斜め前に侍るようにミカサが立っていた。

 

エレンたちが状況を呑み込めずにいると、灰色の制服を着た立派な男が口を開いた。

 

「初めまして、私はヨシフ・ヴェトー。皆からはコーバと呼ばれている。君たちのことはミカサから聞いているよ…だが、改めて自己紹介をしてもらえるかな?君たちの口から君たちの名前を聞いておきたい」

 

目の前にいるのが現政権の最高権力者、つまりは壁内人類のトップに君臨している人物だと理解したとたんに、エレンとアルミンは足元が覚束ないような感覚を覚えた。

 

「は、初めまして、俺は、私は、エレン・イェーガーと言います。ミカサとは幼馴染で…」

 

「ぼ、僕も同じく幼馴染で、アルミン、アルミン・アルレルトと言います!」

 

二人が勇気を結集させて名乗ると、コーバはにっこりと優しい笑みを浮かべた。

 

「ありがとう。ご苦労を掛けたね。今日はごちそうもあるから、ゆっくりしていってね」

 

「ゆっくりしていってね」は半ば命令だったが、それでも「ごちそう」の文言の方が、食べ盛りのエレンとアルミンには冴えて聞こえたらしい。

 

二人は顔を綻ばせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しそうにはしゃぎながら貴賓室へとミカサに案内されていく二人を見送ってから、コーバはある一人の男と対峙していた。

 

男の名はグリシャ・イェーガー。先ほどまで目の前で緊張していたエレン・イェーガーの父である。

 

コーバはその、魔眼とも称される美しくも強烈な視線でグリシャを刺し貫くと、変な動きが出来ないように、両脇に侍るケニーとリヴァイにも臨戦態勢をとるように密かに指示を送った。

 

「改めて、君の名前を聞きたい。」

 

コーバが言うと、グリシャは一筋汗を垂らし、それから口を開けた。

 

「私は、グリシャ・イェーガー…医師を生業にしております…こちらの内地にも幾度か足を運んだことが…」

 

「そんなことは知っている」

 

「では、私に何をお望みですかな?」

 

「マーレが憎いか?」

 

「!?」

 

『マーレ』の一言で、グリシャは豹変した。目を剥き、発汗し、そして手足に力が漲った。

 

「どこまで、ご存知なのか、お伺いしても?」

 

グリシャが跪く勢いで、上目遣いで玉座のコーバに擦り寄った。リヴァイとケニーがそれぞれが隠し持つ得物に手を伸ばしかけ、コーバの手に制されて元の直立不動に戻った。

 

コーバはずいっと身を前に傾けると、グリシャを、そのカリスマの魔眼で見定めながら、言った。

 

「真の王家であるレイス家のことも、古代にエルディア人が成し遂げたことも…全部だ」

 

「は、ははは…全部、ですか」

 

グリシャが膝から崩れ落ちた。それは今日この日まで隠し通してきた色々な重荷を、図らずも共有できる存在に巡り会えた事実への自然な反応だと言えた。

 

「全部…ご存知だというなら、今頃になって、何故私を?」

 

「俺の記憶は特殊でな。全てにおいて古すぎるんだ。だから、好い感じに新しい今のマーレを知るお前に、我ら壁内人類の産業革命の舵取りに一役買って欲しいわけだよ」

 

コーバはにんまりと笑って見せた。卑劣なまでの微笑みに、グリシャはゾッとした。まるですべてを見透かされているかのような感覚だった。

 

だが、グリシャも家族を持つ身だ。今後、ミットラス共産党政府と折衝できる機会が次に待っているとも限らない。家族のためにと、グリシャは一歩踏み出した。

 

「その引き換えに、私は何を?」

 

「俺がユミルに言って、寿命を普通の人間のものと同じくらいに伸ばしてやってもいい」

 

「ユミル?まさかッ!?そんなことがあり得るはずがッ……!」

 

聞けば聞くほどに、男の言葉には謎が纏わりついた。だが、明らかに男に嘘を吐くメリットも、その仕草も見当たらないことが、グリシャを困惑させた。

 

「俺だって保証は出来ないが、俺が言えば、ユミルは頷くはずだぜ?」

 

「貴方が何者なのか…途方もなさ過ぎて、私には理解できない…」

 

「なら、理解できないままでいい。ただ、家族の為に働くことを誓ってもらおう。その為に今日、ミカサに言って皆を呼んでもらった」

 

暗に息子を人質にとったと宣言したコーバ。だが、グリシャは冷静さを失わず、かといって合点が言った様子もなく、全く仕方なしという具合に顔を上げた。

 

「わ、分かりました…えぇっと…」

 

「書記長閣下と呼ぶように」

 

呼び方に迷っていると、いつの間にかエレンたちを置いて戻ってきたミカサが言った。

 

「では書記長閣下…私は、私の知り得る限りの知識と技術を惜しみなく壁内人類…エルディア人のために使うことを誓います」

 

「それでよろしい…俺も、いや、ミットラス共産党政府はエルディア人の保護存続の為に活動するとともに、その活動に協力的なありとあらゆる存在に対して敬意と、相応しい待遇を約束しよう」

 

ここに、壁外を知る二人の人間が出会った。

 

「手始めに君たちはシーナ内地へと移り住むといい。研究機関や学び舎も内地に集中しているからね、手配は任せてくれたまえ」

 

「お気遣い感謝いたします。書記長閣下…」

 

 

 

 

 

 

グリシャとコーバが出会ってから数週間後、エレンとアルミンの一家は親族も連れてシーナ内地に目下建造中の、官舎への入居を許された。

 

またグリシャは物理学や化学の教師として、ハンジ・ゾエが巨人研究所所長兼学長を務める、ミットラス中央大学の教授に任命された。

 

ミットラス中央大学、通称中央大学では、エレベーター式で幼年部、中等部、高等部まで学業を修めることができ、高等部以降は大学に残って研究を続ける道と、エルヴィン・スミスが長官を務める科学技術アカデミーに参加する道、一般職に就職する三つの道が用意されている。

 

学費は全て国庫が負担し、その多くを旧王家の遺産の運用により賄う計画である。

 

また、これら学業に加えて、奨励されているのが軍事教練である。

 

幼年部総長をミカサ・アッカーマンが務める親衛隊のほかにも、旧駐屯・憲兵団が統合された正規軍と軍警察にも幼年部が存在し、幼少期からの心身の健全な育成に加えて、軍事的ノウハウの蓄積と、国家規模での武装化が推し進められている。

 

人民による政府を謳うミットラス中央ソヴィエト政府は、二年を一期として、三期ごとに投票で書記長以下要職を決める選挙制度を導入することを発表した。

 

各期間の短縮・延長の有無さえ、人民に委ねられている、というのが建前ではあったが…事実、現状に不満を抱く人民は旧王制に依存し、甘い汁を啜って来た者たちを除けば、存在しなかった。

 

無血革命から早くも三ヶ月。時に845年の春のことであった。

 




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