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マーレ政府は国交樹立が達成されるや否や、早速貿易と交流の為と称してパラディ島へと人員を派遣した。
派遣された者の多くは植民地出身者で固められ、監視としてマーレ人の兵士が数人派遣されるだけだった。
あからさまなマーレによる嫌悪に対して、パラディ島は沈黙を保ち、抗議の素振りすら見せなかった。
このことに驚きつつ、好都合だと見たマーレ政府は続々と植民地人労働者や目障りな人間を合法的に左遷できる、一種の流刑地としてパラディ島を利用し始めた。
時に、彼らの中には志の高い者、政治的思想の危険性から左遷された者など様々な人材が揃っていた。
マーレ人が少ないことに喜んだのは、パラディ島も一緒だった。
コーバは言った。
「喜べハンジ、革命家が増えるぞ!」
コーバのその言葉通り、彼は開発目覚ましい港湾部に入り浸ると、目ぼしい人材を見つけて引き入れるという作業を繰り返した。
コーバは言った。
「武器、金、兵士、なんでも揃えよう。俺と一緒に革命を起こさないか?世界を変えてみないか?マーレの支配から、真の自由を勝ち取る覚悟はあるか?伝説に名を遺す準備は出来ているか?」
コーバの言葉は情熱に満ちていて、丁重に遇されると勧誘された者たちは感激して直ぐにコーバを信頼するようになった。
協力者を港湾部を中心に増やしていくコーバとは対照的に、本来ならばパラディ島の人間とマーレからの人員の接触を監視する仕事が与えられているマーレ人の兵士たちは、その職務怠慢が目立った。
パラディ島からは慰安物資と称して酒や娯楽品が大量に提供され、彼らの眼を節穴にした。
監視の目を掻い潜った植民地出身の技師や協力者の手により、パラディ島は着々とマーレの先端技術を獲得し、また人員の交代を利用して、マーレ本国内部に親ソヴィエト勢力を構築し始めていた。加えて、人員交代時を利用した、物資…特に大陸原産の作物や加工品を中心に、これらを密輸させることで技術の学習と醸成を画策した。
この間にも、まだ実際には貿易が行われていないにもかかわらず、マーレ政府は大いに現状に満足しており、また左遷されてきたはずのマーレ人の監視兵たちも、居心地の好い職場に旨味を見出したのか、報告書は常に「異常なし」だった。
マーレは国交樹立後半年が経っても、パラディ島に存在する壁内国家の全貌を把握できていなかった。マーレが表面上パラディ島のエルディア人との接触を禁じたように、ソヴィエト政府もまた内地への侵犯を固く禁じていた。
マーレ政府肝いりで、既にかなりの数の人員が送り込まれていたが、彼らは何の成果も得られずに帰国することが殆どであり、中には仮検問所を突破して壁に迫ったものの、壁内への侵入手段を見つけられずに捕縛され、尋問も受けずに帰国させられた例もあった。
もしも、もっと早い段階でマーレがソヴィエト政府が革命によって政権を獲得していたことを知っていれば、島に派遣する人材をより注意深く精査することもあったかもしれない。だが、現実的にはマーレ政府内にはびこるパラディ島とエルディア人を劣等種と見做す偏見や、嫌悪感から一向にその方面の研究が進んでおらず、マーレの内情や技術だけが知らぬ間に、一方的に流出している状態が長く続いていくことになった。
◇
マーレ政府との貿易開始予定時期を目前に控えた頃、ソヴィエト政府はマーレ政府にある要請を打診した。
内容は以下のとおりである。
『マーレ政府との健全で平等な貿易を行うためにも、我が国では既に半年以上の間、港の改築に尽力してまいりました。しかし、現状での開港は現実的ではないため、貿易開始時期の延期を要請いたします。最大の懸念は物資運搬に掛かる労働力の不足があげられます。鉄道網の未整備が大きな問題となっており、貴国の協力を仰ぎたいと考えております。つきましては、資源品目の減額と、一部品目に対して関税を緩めることを考えております』
馬車でしか物資を運べない労働力貧国であり、また未発達の工業貧国であることを、これでもかと強調する内容だった。
これに対して、マーレ政府はただでさえ有利な貿易が更に有利になると聞いて小躍りしたいくらいだった。だが、疑問を持つ者もいない訳ではなかった。
その筆頭であるヴィリー・タイバーにより、現地の科学力を最も知るであろう者たちが召喚された。
具体的には、パラディ島で開発が進む港湾部で技師として協力してきた者や、監視担当の兵士、そして最初に現地と接触したピーク・フィンガーとジーク・イェーガーだ。
全員が全員、一人一人ヴィリー他急遽設置された審査委員会からの聴取を受けることになった。
この審査委員会の面々はその多くがパラディ島を危険視し、その実態を疑問視する政府や学会の有識者たちだった。
そこにヴィリーを加えた、重厚かつ硬質な、言い方を替えれば尋問に等しい聴取が行われた。
ジークの番がやって来た時、質問はヴィリーが直々に行った。
ヴィリーは言った。
「ジーク・イェーガー…これからする質問に、正直に答えてくれたまえ。如何なる虚偽も秘匿も許されない。マーレの未来を左右する重要な議題なのだ、理解してくれるね?」
「勿論です。タイバー公」
「よろしい…では、君に問おう。現時点で、我が国とパラディ島のエルディア人が戦争状態に入った場合、勝利するのはどちらだと思う?」
「それは当然マーレでしょう」
「どうしてそのように考えたのかな?」
「壁内は人口の点で圧倒的にマーレに劣っています。何より、彼らの兵器はどれも時代遅れだ」
「なるほど…だが、君たちはその時代遅れの兵器に敗北したことになるのかね?」
ヴィリーの視線がジークを責めるようなものに変わった。
「いいえ、我々を打倒したのは彼らの特殊な発明品です」
「それは、どんな?」
ヴィリーからの問いに、ジークは口をつぐんだ。
「ジーク・イェーガー、さぁ、答えたまえ。それとも…言えない理由があるのかね?」
「…いいえ、ただ、なんと説明すればよいのか…」
「ふむ…では聞き方を変えよう。具体的には、どんな脅威を?」
「あれは特殊な、ワイヤーによって三次元的な戦い方を可能とする装置でした」
「ふむ…他には?」
「彼らは、かなり高品質な、剣を使って戦います。それも、対巨人に特化していて、我々の肉を易々と削ぎ落してしまうのです」
「なるほど…実に興味深い…それで、あとは?彼らの乗り物や、もっと高性能な兵器は無かったのかな?」
「彼らの乗り物は馬でした。通常の馬よりも遥かに丈夫で高速な馬でしたが…それ以外は、残念ながら、すぐに捕虜として捕まってしまったもので…」
「…なるほど。よろしい。つまり君たち戦士隊は、剣と馬で武装した原始的な兵装の敵に対して、惨敗を喫したということだね?」
「細かい部分を省けば、そう言うことになります…」
「…いいだろう。君の言葉を信じよう。さて、疑って悪かったね。…ピーク・フィンガーの証言と一致している。他の、証人達ともね。」
「そうですか」
「あぁ、そうさ…だが最後に、ここまで話したこと全てが真実だと誓えるかね?」
「はい。誓えます。この命に懸けて」
「……よろしい。退出してくれ」
ジークが去った後で、ヴィリーと審査委員たちは頭を抱えた。
「タイバー公…どうやら彼らの意見は概ね一致するようです」
「えぇ、これはどうやら、本当にパラディ島には我々が恐れるような高度な技術が無いようにも…」
「分かっている!彼らの証言しか頼みに出来ない以上…彼らの言葉が事実だ!…だが、どうにも引っかかる…どうやってあのジークを、脅威の子を倒したというんだ?戦艦も対巨人砲も無しに!」
「それは、アレでしょう…剣と馬と不思議な装置で…」
「…その不思議な装置が、果たして何なのか…それすらも我々には想像だに…そうだ!この際、技術提供の交換条件として壁内への親善大使を送り込もう!あと、その不思議な装置とやらも、一つで好いからサンプルを持ち帰るように…これで少しは、パラディ島のエルディア人への理解が深まるはずだ…」
「タイバー公…そもそも、彼らは既に超大型も鎧も手中に収めているのですぞ?もしかしたら、戦士隊が丸々寝返っているのでは?」
「馬鹿な!そんなことがあり得るわけがない!君たちだって、エルディア人がマーレでどんな扱いを受けているのか理解しているはずだ。マーレで生まれ育った者に限って、裏切り者であるパラディ島の悪魔に味方することは考えられない。まして、パラディ島の差し出してきた貿易案を見てみたまえ、どうみたってエルディア人の神経を逆なでするような内容じゃないか。こんなものを喜んで呑み込む連中に対して、どうして協力できるのだ?」
「確かに、タイバー公の言う通りですな…しかし、妙に引っ掛かりますな…」
「どれもこれも、貿易が始まってからが本番だ。貿易が始まれば、泣くのは向こうの方だからね」
ヴィリーは乱れた息を整えて、審査委員を引き連れ、部屋を後にした。
ヴィリー達から離れて、審査会が開かれた政府の建物から遠く、エルディア人の収容区に向かう道中でピークとジークが並んで歩いていた。
「ピークちゃん…それで、結局どうしたの?」
「そういうジーク戦士長は、どうしたんですか?」
顔を見合わせた二人は、揃って少しワルい顔をした。
「うーん…嘘吐いちゃったよ」
「私は嘘吐いてませんよ。言わなかっただけです。たまたま、そう、偶然あの瞬間だけ忘れてたんですよ。うっかり」
「あー…そういう言い訳も出来るのか…君、世渡り上手そうだもんね」
「あのヒト程じゃないですよ…」
ピークがほんのり微笑んだ。照れ笑いか、思い出し笑いか。目敏いジークはニヤニヤと笑った。
「あのヒトって?あのヒトかい?」
「まぁ、はい。知ってましたか?あのヒト、昔はポン引きだったそうです」
「そりゃまた…随分成り上がったね」
「ですよね~…ははは」
「惚れたな、さては?」
ジークの言葉にピークの足が止まりかけた。再び歩きだすと、今度はピークがニヤニヤと笑って言った。
「いやいや、ジーク戦士長こそ、さては絆されましたね?」
「なはは…まーまー、そう言うことにしとくよ」
話しはそこで終わってしまった。お互いに、脳裏には違う人間の姿が映っているのだろう。収容区に入るまで、二人は何も話さなかった。
収容区の検問を抜けてから、今度はピークからジークに話しかけた。
「…あのヒトと、会ったんですよね?解放される直前に」
「うん。そうだけど?」
「どんなこと、話したんですか?」
立ち止まってピークがジークを見上げた。
ジークは遠くを見つめて、何と言うか迷っていたようだったが、口をへの字に曲げたり、難しい顔をしてから、軽く息を吐いて、微笑まし気に言った。
「未来のこと」
「未来のこと?」
ジークにしては珍しい、自然な笑みだった。
ピークは、ジークもそんな顔が出来ることに驚いた。
「そ。未来のこと…あのヒト、すげーよ。おっかねーし。でも、エルディア人にとっちゃあ、希望の星だわな」
「へ、へー…」
言ってることが、何となく彼が先に自分に話したことだと思うと、ピークは悲しい様な嬉しい様な気持ちになった。
「なんだその反応は…興味なさげじゃん。聞いたのそっちなのに…」
「いや、まぁ、なんか冗談じゃなかったんだと思って…」
ピークの脳裏には、なんとも軽い調子で愚痴を零す男の姿があった。あの男は、ここから遠いパラディ島で、今も戦っているのだろう。
「冗談の方が好いこともあるけどな…こっから大変なことになるぞ。俺も、君も」
「バレなきゃなんとかなりますよ」
ジークとピークは、クスクス笑った。
こんなにリスクを冒したのは初めてかもしれなかったが、何かを変える大きな布石になるという自負が胸の中で燻ぶっていた。
ピークの飄々とした言葉を受けて、ジークは眩しいものを見るようにピークを見ると、恩師トム・クサヴァーの眼鏡を徐に外した。
眼鏡の蔓を撫でて、かけ直すと、視界が広がったような心地になった。
「…そうだな。なんか、久しぶりにキャッチボールしたい気分だよ」
ジークが呟くと、ピークが怪訝な顔をした。
「楽しいんですか?キャッチボールって」
言われてみれば、楽しいかと問われると困る物かもしれない。
だが、ジークにしてみても、単なる娯楽として熱中していたわけではないと、今、改めて思う。
「俺は、こう、パパみを感じるから好きだなぁ」
「パパみってなんですか?」
「さぁ?」
適当なジークが顔を出した。
首を傾げたままのピークを置いて、足取り軽くジークは斜陽に照らされた収容区の大通りを歩いて行った。
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