進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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田中進三様 nana_sleep様 誤字報告ありがとうございます

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面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。


開拓村

 

 

 

 

 

「人民諸君に告ぐ!!我々は是より先の五年間を忍耐と克己の為に費やすことになる!我々の敵は壁外にあり!敵はありとあらゆる卑劣な手段を以て、私たちを絶滅せんと試みるであろう!其処に容赦はない!寛恕は期待できない!」

 

「だが諸君!忘れるな!我々人民の成し遂げたことを!王政を打破し!自由を掴み、人民による人民の為の国家を成立させた!!これは世界で唯一無二の業績であり、我々人民が成し遂げた最初の実績である!!」

 

「諸君!敵に向けてVeto()を突き付けるのだ!我々は断固として、この冬を耐え凌ぎ、国土を完全なモノとするべく辣腕を振るうことを約束しよう!!」

 

「諸君!諸君は人民であると同時に、常に革命の機運鮮かなる戦士なのだ!!」

 

「その手に鍬をとれ!その手に銃をとれ!その手に剣をとれ!その手に勇気と自由をとれ!」

 

「我らが守るべき世界とは壁内!!我らが抗い打ち倒すべき世界とは壁外!!我らの世界の安寧は君たちの双肩にかかっている!私は常に諸君の先頭にあり!松明を掲げて諸君を導かん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒストリアが幼年部の総長に着任して間もなく、俺は壁内全土に向けて大演説を一本ぶっ放した。無論、全土に響かせる手段はないので、代わりに前々から眼をつけていた記者を通じて号外という形で俺の意志をばら撒いたつもりだ。

 

幼年部卒業生が豊富にいるせいで、俺個人近辺の安全は保たれそうだし…問題はやはり食糧問題と住居の不足、それに伴う治安の悪化だな…。ウーム、何かいい手立てはないものか…。いや待てよ、そう言えば壁内での犯罪者ってどういう扱いしてたっけ…まぁ、ここんところは俺流で行かせてもらうとするか。

 

「おーいミカサ!温かくて甘いミルクを!それとエルヴィンも!リヴァイは言わなくても来るだろうからほっといて好い!会議だ会議!好いことを思いついたぞ!」

 

「ただいまに…あと、ミルクは既にご用意してあります。お飲みになってお待ちください」

 

「ありがとう、同志ミカサ」

 

「いえ、この程度同志コーバの為なら当然です」

 

俺がミルクを啜って待っていると、そう時間もかからずにエルヴィンと、リヴァイ、あとついでにハンジもついてきた。

 

「同志書記長閣下…何か妙案を思いついたと伺ったが?」

 

「エルヴィン硬い硬い!ね、同志コーバ!今度は何を思いついたっていうんだい?お姉さんにも早く教えて欲しいなぁ!」

 

「おい、静かにしろ。コーバが話す。なら、俺たちは黙って聴くのが道理だろ?」

 

「私は同志リヴァイに同意です」

 

中々に騒がしい面々が集まったな…まぁ、いいことだ。彼らとの付き合いも長くなってきたし…それに、そろそろ外に目を向けるためにも彼らの力が必要になってくるからな。

 

「これから話すのは、五年後の話だ。だがいいか?よおっく聞いておきたまえよ?」

 

「同志コーバ、少し待ってくれ五年後の話というと、穀倉地帯が成長したと仮定しての話になるのか?」

 

エルヴィンが口を挟んできたが、確かにその懸念は理解できる。土地はあるが、上手く開墾できるとも限らないからな。

 

だが、だからこそ。この話は重要だ。

 

「あぁ、上手く行く。いいや、上手く行かせてみせるのさ」

 

「しかし、どうやって…」

 

エルヴィンの眼が鋭く理性と論理の火で燃えていた。リヴァイは腕を組み壁に身を預けて聴いている。ハンジは今にも抱き着いて来そうな程うずうずしてる。ミカサは静かに、俺の為にお代わりのミルクを用意しにキッチンへと向かった。

 

「俺が考えているのは段階…ランク制度の導入だ」

 

「ランク…労働者に上下を付けるのか?」

 

「まぁ、言ってしまえばそうだ」

 

「だが、それだと反発が起きないか?」

 

「だからここで妙案を挟む必要がある。今、俺たちが飼っている旧体制で甘い汁を啜っていた連中に、労働の楽しさってやつを一番下で学んでもらうって魂胆さ」

 

「スケープゴート…騙すようで少し気が引けるが…」

 

俺の案は、不動の最底辺を昔の支配者層に演じて貰いながら、浮動するランクの中で上を目指して切磋琢磨してもらおう、というものだ。

 

エルヴィンは気が咎めるようで、小さくだが眉をひそめた。

 

しかし、エルヴィン以外は賛成らしく、ハンジなんて大喜び…というと語弊が生まれるが、歓迎するように腕を広げて…あぁぁ、案の定抱き着いてきた。

 

「あっはっはっは!!流石はコーバだ!やっぱり君についてきて好かった!私と君は絶対に波長が合うんだって。やっぱりね、思った通りだ」

 

エルヴィンはハンジの大仰な仕草に眦を下げた。

 

「はぁ、やはり直感的な部分でも、非論理的な部分でも、私はコーバには敵わないみたいだね…いや、正直なところ私も、感情的にも異議はないんだ…しかし、そうか、なるほど…」

 

エルヴィンも納得したところで、リヴァイが壁を叩いて注意を集めた。何か言いたいことがあるようだ。

 

「難民共はどうするんだ?扱い方に気を付けないと火傷する羽目になるぞ?」

 

「うむ、リヴァイの言う通りだ。だから、分散させる」

 

「分散させる?」

 

「あぁ、全ての開墾地を細分化し、最大単位を管区として最小単位を一開拓村で管理する。この際、難民達は家族単位で同じ開拓村に配置されるが、家族以外は完全に赤の他人だ。ご近所付き合いは初めからにしてもらう。その間だけであっても、結託や反乱を抑制することが可能だ…という寸法だ」

 

俺の言葉に、エルヴィンは素直になるほどといった表情を浮かべ、ハンジは謎に色っぽい視線を俺に向けてきた。リヴァイも、「俺はアンタに従うだけだ。アンタが望むままに進めてくれ」と言った切り瞑目してしまった。

 

しーんと静まった室内。こぽこぽと俺の砂糖たっぷり入りのホットミルクが煮立つ音だけが響いていた。

 

あれなんか俺やっちゃいましたか?…などと考えていると、ミカサが保温性の高い、木製ワイングラスに注いだホットミルクを持ってきてくれた。

 

「はいどうぞ、コーバ。熱いから気を付けてね」

 

俺はなんだかいたたまれなくなって、ミルクを啜って、それから何を観るでもなく、旧王城の王の執務室を改装した、私室の大窓から外を見遣るのだった。あれ?そう言えば何の話をしようとしてたんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

コーバが命令書にサインしたことで、それまで拘束され、文字通り飼い殺しにされていた旧体制支持者たちは、護送の後、荒れ野を耕す農夫にクラスチェンジを強いられた。が、回りまわって健康的な生活により、彼らは彼らの多くが患っていた痛風を完治し、また足腰が鍛えられたことで日常生活が楽しいとまで語り始めた。

 

結果的に、コーバの冷徹な采配は旧体制派支持者たちにも支持されることとなり、民衆に気付かれぬまま、ランク制度は滞りなく導入された。

 

一家を最小単位に、一つの村から複数の開拓村へと無作為に配置され、その場での労働姿勢、また思想の善し悪しにより、ランク制度は衣食住に渡って、開拓者たちを時に擁護し、時に縛った。

 

ここにもまた、開拓村に配置された一人の少年がいた。

 

名をライナー・ブラウン。今年で15歳になる、角ばった男である。

 

彼には志を同じくするベルトルト・フーバーとアニ・レオンハートという同郷組がいたのだが…戸籍紛失と保護者がシガンシナ区で巨人の餌食になったという悲劇により、全員がバラバラの管区に配置されていた。

 

時に、ライナーはなんとも心細い状況にあったが、新たに導入されたランク制度の趣旨に沿う形で忠実に労働に勤しんだ結果、三週連続で最高ランクの誠実勤勉な労働者として認められて、他よりも多くの食料の配給と、完全休日二日、それから他管区へ公費持ちで手紙や物を送ることができる特権を与えられていた。

 

ライナーはこの特権を大いに活かしつつ、時折、彼の同郷であるベルトルトやアニに向けて手紙や物を送った。

 

ライナー青年には何の落ち度も何の問題もなかった。理想的な労働者として多くを語らず、かといって陽気さを忘れずに土地を開墾し、難民としては格別の待遇での暮らしを謳歌していた。

 

だが、そんなライナー青年の悠々なる生活に終止符を打つ事件が、壁が破られてから丁度三年が過ぎる頃に起きたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日も俺は何時もと同じように、早朝に起き、戦士としての肉体を維持するための自主鍛錬を重ねてから、誠実かつ勤勉な労働者として土地の開墾と作付けに励んでいた。

 

情報源として支障ない数人の同僚と共に、昼前までは何の異常もなく、俺は何時もの穏やかな日々を暮らしていた。

 

ぬるま湯のような日常に異変が訪れたのは、昼休憩を終えて、さぁ鍬をとれ、といった時である。

 

「見ろよ!ありゃシーナ内地で訓練を積んでる親衛隊の連中だぜ!こんなところまでわざわざ何しに来たんだ?」

 

「遠征だろうよ、対巨人戦闘訓練の一環だって、幼年部入りした子の親が言ってたってよ」

 

同僚が指さした方に目を向けた瞬間だった。

 

「ぐわああああああああああ!?」

 

「どどどど、どうした!?おい!ブラウン!何があったんだ!?」

 

「あ、あ、あれは、天使か?」

 

「いきなり何を言いやがる!つってもなぁ…なるほど、確かに天使みてぇだな」

 

俺の眼に飛び込んできたのは丸々太った蝿でも、醜い悪魔の子でもない。美しい…それは美しい何かだった。

 

あれが悪魔?冗談でも俺は怒るぞ?

 

あれは正しく天使だ。俺はその天使に会うために生まれて来たに違いなかった。戦士として、この腐った世界から、悪魔どもから救い出す騎士になるために、今日まで頑張ってきたんだ!!

 

「なぁ、あの御方は、一体誰なんだ?教えてくれ!頼む!」

 

「頼まれなくとも教えてやるよ、これくらい…あれはな、親衛隊幼年部の総長を務められている。ヒストリア・レイス様さ…なんでも、王家の血筋らしい」

 

「王家…?潰されたはずじゃ…?」

 

「あぁ、潰されたさ。でもあの総長様だけは、例外的に、中央の要職に就いているらしい…ってのも人伝なんだが、頗る優秀な方らしいぞ」

 

「ど、どうすればあの天使に会えるんだ?」

 

「会うってお前、幼年部に入ればいいだろう。それだけで一目見るくらいは叶うはずだが…」

 

「親衛隊幼年部か…ありがとう、恩に着るよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後、ライナー・ブラウンは親衛隊幼年部への入営を熱く志願した。

 

彼の願書は、まるで手本通りに書いたような熱烈な忠誠心が滲む文言で溢れており、開拓村での勤務姿勢も特別に素晴らしかったことを加味されて、一切の憂いなく、幼年部への編入を許された。

 

そして、ライナーの幼年部入営から間を置くことなく、さらに二名の開拓村出身者が好成績で親衛隊幼年部への編入を果たした。

 

その二名の名はそれぞれ、ベルトルト・フーバーとアニ・レオンハートである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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