進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。


実地試験と人民会議

 

 

 

 

 

私の名はイルゼ・ラングナー。今私は記念すべき瞬間に立ち会っている!私の横には我らが敬愛してやまない同志コーバがいる。そして、舞台はウォールローゼの頂上。最新式の野戦砲の初の稼働試験の、見届け人として、くじで決められた各陣営からの参観者に紛れて、私はここにいる。

 

なんと光栄なことだろう!私の手記が将来誰の手に渡っても好いように、私は私の名前を刻んでおくこととする。繰り返すようだが私はイルゼ・ラングナー。敬愛するコーバの密かな支持者であり、忠実なるシンパの一人だ。

 

風速は微風といったところ、天候には恵まれて快晴。あとは旧調査兵団から選抜された現親衛隊第一師団の機動猟兵部隊が巨人を誘引する任務を満たすのみとなっている。

 

サンプルの到着を待たずして、砲手が決められた。

 

第一射目の砲撃手に選ばれたのはハンジ・ゾエ巨人研究所所長。第二射がエルヴィン・スミス科学技術アカデミー学長に決まった。そして第三射目の砲手こそ、我らがコーバその人である。

 

第一にコーバの名が無いのは、コーバが栄誉を実際に開発した両人、ゾエ所長とスミス学長に譲渡したからである。

 

あぁ、だがなんともどかしい時間だろう。すぐ目の前に憧れのコーバが、その人がいるというのに、第一師団付き広報員という立場でしかない自分には、コーバへと声をかける機会が与えられることはないのだ。あぁ、だが、これでは生殺しではないか!

 

「そこの君、ちょっとこっちへ来たまえ!」

 

「エ!?私ですか!?」

 

「そう、君だ。さっきから少しうつむきがちだったからね、心配になって声を掛けさせてもらったが…要らぬ世話だったかな?」

 

「滅相もありません!!同志書記長閣下!!」

 

「ははは、そこはコーバって呼んでよ」

 

「で、では、同志コーバ」

 

「よろしい…実はね、私、高い所が苦手でさ」

 

「えぇ!?そうなんですか!」

 

「しぃ~!聞こえるでしょうが!ま、まぁ実はそうなんだよ」

 

「ふふふ、そうなんですね」

 

「どうかな?」

 

「?どうかな、といいますと…」

 

「気持ちは解れたかな?」

 

「…お恥ずかしい所をお見せしました…ありがとうございます!同志コーバ!」

 

私の名はイルゼ・ラングナー。

 

密かなる同志コーバの支持者にして、同志コーバのファンクラブ主催者にして、会員番号第一号である。

 

 

 

 

 

 

天気は快晴。風は微風。真上から打ち下ろすこれまでの形式とは打って変わり、放物線を描いて弾着を確認するための観測員と砲手の連携が重要視される稼働実験では、その砲身の素材から仕組みまでを十分に理解しているハンジとエルヴィンの二人がそれぞれ、交代で砲手と観測手を務めた。

 

ウォールローゼの外は最早巨人の領域であり、今回選抜された親衛隊第一師団を構成する者の多くは、旧調査兵団での過酷な壁外任務に熟達した玄人揃いであった。

 

だが、たとえ玄人揃いであっても死と隣り合わせであることには違いない。貴重な戦力の摩耗を防ぐべく、戦略地図上に引かれた規定ライン…砲撃観測手が見渡せる限界まで巨人を誘引した後、彼らは即座に戦線を離脱。壁内に向けて一路転進が義務付けられた。

 

そして、遂に第一師団最初の誘引班から、巨人接近の発煙弾が上空に発砲された。

 

 

 

 

 

 

 

巨人の接近の報告を受けて、珍しく腕まくりした格好のエルヴィンと、マッドな科学者が好みそうな白衣で武装したハンジが顔を見合わせた。

 

そして、すぐさま今日の為に練習を重ねた手順を追いながら、二人は砲発射の瞬間の為にタスクを熟して行った。

 

「砲身よーい、砲弾よーい、シリンダーよーい」

 

「砲身よーし、砲弾よーし、シリンダーよーし」

 

「シリンダー開栓!!射角十度、十五度、二十度、二十五度!!順次撃ち方よーい!」

 

「規定ラインに到達確認!!シリンダー充填止め!圧縮開始!」

 

「規定ラインに巨人目視確認!今だ!撃てーーー!」

 

バキンッ!!と鎖を力任せに引きちぎったような甲高い音と、一瞬全てを覆い隠すような白煙が壁上を包んだ。そして轟音と白煙の先で、果たして第一弾は巨人の足を吹き飛ばすにとどまったが、確かに予想通りの放物線を描いて対象へ弾着してみせたのだ。

 

この瞬間、新兵器…仮称タイタン砲は巨人に対する有効な破壊力を有することが証明されたのだった。

 

「気を抜くのはまだ早いよ!巨人ちゃんたちはなんてったって回復力が売りだ!さぁ、次、次ー!」

 

ハンジの言うとおりだった。参観者まで手伝おうかと迷いを見せる中、エルヴィンは父と共にこの三年間研究し、育てた技術が確かに人類の矛と成り得ることに感動を覚えながらも、まだ息の根を止めていない事実を受けて、頭より先に体を動かした。

 

「次弾急げ!巨人が起き上がる前に、うなじへ一発撃ち込んでやるんだ!」

 

「次弾装填よーいよし!シリンダー開栓!!…止め!次、圧縮開始!!」

 

「圧縮止め、狙えーーーーーーー」

 

「「撃てッーーーーーーーー!!」」

 

ハンジとエルヴィンの声が重なるように響き、再び轟音と白煙と共に、先端に特殊鋼を使用した砲弾が撃ちだされた。そして、今度こそ、うつぶせに倒れた巨人の、むき出しのうなじ部分へと吸い込まれるように滑空。そして、弾着!

 

ドゴンッ!と槌を振り下ろしたように砲弾は巨人の首を刎ね飛ばして、尚勢い余って大地を抉ってみせた。

 

明らかなオーバースペックだった。だが、聞こえるのは歓声のみ!

 

各所に改善点は見受けられたが、それでも大成功と呼んで差し支えなかった。

 

巨人の回復は見られず、完全な沈黙を確認したのだ。

 

「俺の出番は無さそうだな」

 

コーバは第三射の必要が無いことに少しも落胆を見せなかった。寧ろ、第二射で完全に巨人を仕留めたエルヴィンとハンジを心の底から祝福し、研究予算の増額に関する協議を持ちかけた。行く行くは対人砲にも転用されることが眼に見えている、野戦砲等の開発には、資源を惜しみなく投入することで、指導部は完全に一致していた。

 

 

 

 

 

 

 

「何はともあれ実験は成功だな…そして、君たちも一人として欠けることなく帰還してくれたことを、私は何よりも嬉しく思うよ」

 

試験終了後、コーバは撤収する各面々に労いの言葉をかけ続けた。

 

…リヴァイ・アッカーマンを中心として、イザベル・マグノリア、ファーラン・チャーチら地下街出身の親衛隊第一師団の面々には勿論、以前まで面識すらなかった、旧調査兵団から現親衛隊第一師団へと志願した面々にも、具体的にはミケ・ザカリアスやナナバ、ゲルガー達にまで、隅々にまで、直接会って、その手を取って労って回った。

 

結局、コーバが壁上を後にしたのは誰よりも遅くなった。だが、コーバはそのことに不満などないようであったし、なにより当然であるといった調子であった。

 

ほんの些細な一件だったが、今回のタイタン砲試験が親衛隊とコーバを巡る人間関係において単なる実験という以上に、大きな意味を持ったことは言うまでもないだろう。

 

コーバの求心力は留まるところを知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

タイタン砲の試験はその後も幾度となく繰り返された。時に森の中に潜む巨人を狙撃し、時に遮蔽物のない荒原で駆ける馬に牽引させた状態での射撃試験など、その内容は多岐に渡り、試験の毎に協力する親衛隊第一師団の練度も共に上昇していったことは僥倖だった。

 

そして、遂に目標としていたスペックを十全に満たすレベルに到達したのだ。技術的にも、その機械を操る人間の練度的にも、である。

 

この実績を鑑みて、旧王城、現ミットラス共産党党本部の地下壕会議室にて、コーバ及びミットラス中央ソヴィエトは緊急会議を開くことになった。

 

議題は『失地回復に向けた巨人の駆逐』である。

 

主な参加者はコーバことヨシフ・ヴェトー書記長、エルヴィン・スミス次席書記官、ハンジ・ゾエ次席書記官、ケニー・アッカーマン親衛隊最高指導者、リヴァイ・アッカーマン親衛隊第一師団長、ダリス・ザックレー赤軍大将、ドット・ピクシス赤軍中将、ナイル・ドーク公安警察総監、キース・シャーディス赤軍予備役中将、ディモ・リーブス商会長、ニック司祭、ロイ新聞社社長…他、人民会議に参加する権利を有する壁内人類の中でも選りすぐられた面々である。

 

そして、この二人もまた会議への出席を強く求められていた。

 

フリーダ・レイスとグリシャ・イェーガーの二人である。

 

会議の口火を切ったのは、我らが同志コーバだった。

 

「まずは諸君、好く集まってくれた。第一に感謝を述べる。そして早速本題と行こう…対巨人砲…タイタン砲の実地試験は概ね良好であることは周知のことであると仮定した時、我々が可及的かつ速やかに選択すべき道は何だと考える?まずは順に意見を出してもらおう。エルヴィン、君はどう考える?」

 

話を振られたエルヴィンは一度咳払いすると、朗々と語り始めた。

 

「いうまでもなく、巨人の漸減でしょう。既に、この場にも招かれている同志グリシャの語ってくれた事実に基づけば、巨人は無限に湧くわけではない、ということが判明しております」

 

エルヴィンの言葉を継ぎ、今度はハンジが口を開いた。

 

「私もエルヴィンに同意かな?折角壁上からでも、野戦でも使える対巨人砲が完成したんだから、資源とは折り合いを付けながらだけど、じゃんじゃん撃って、じゃんじゃん技術革新を進めた方が今後の為なんじゃないかな?だって、本当の敵は巨人の、もっと後ろにいるんでしょ?」

 

ハンジの言葉に多くが頷き、同意を示す中、ニック司祭とディモ・リーブス商会長が異を唱えた。

 

まず口を開いたのはディモ・リーブスだった。

 

「次席書記官殿、アンタに商売の御高説を垂れるつもりは全くないんだが、あの砲弾が一発幾らするのか考えたことはあるのか?」

 

「うぅーん聞いたこともないや」

 

「あの砲弾一発で、平均的な庶民の一年分の食費に匹敵する…俺は恐ろしいよ、こんなものが今後もポンポン生み出されていくって訳だろう?」

 

ディモ・リーブスの言葉に勇気づけられて、今度はニック司祭も口を開いた。

 

「そもそも…何故巨人の力を使えるようになった今、わざわざ我々の領土を侵す彼らと同じ、科学で立ち向かおうとするのですか!地ならしです!地ならしをちらつかせればよいではありませんか!それで収まるものを、あなた方は要らぬ出血を伴う、人間同士の戦争のことで頭が一杯なように見受けられる!!」

 

ディモ・リーブスとニックの言葉はどれも間違いではなかった。間違いではなかったがために、大いに気まずい沈黙が会議の場を満たした。

 

会議をいったん中断するべきか、そんな風に誰もが思った時である。コーバが、やはりこの男が立ち上がり言った。

 

「前提として、私は何も戦争を望んでいるわけではないのだよ。ただ、戦争が起きた時に一方的に殺戮されるような事態を招くことに比べたら、双方痛み分けになる程度の方が余程素晴らしいと考えているだけなのだよ。ニック司祭、そしてリーブス会長、貴方方にご家族はいらっしゃるかな?」

 

「もしも居るならば、戦争が始まった時、君たちはこう言わなければならない。我々は銃の撃ち方も、大砲の撃ち方も忘れてしまっていて、殺されるがままになるだろうが、決して私を恨んでくれるなよ、とね。」

 

「もしも、それが嫌なら、そんな運命が、そんな結末が嫌ならば、今はぐっと堪えて、技術を醸成し、例え殴り合いになったとしても勝てるだけの資源と技術を掌握しておかなければならないのだ。今、我々は既に戦火にあり、ただ喉元に迫るときが遠い日のことのように思えるだけなのだよ」

 

「了解してくれるかね?どうだね?」

 

 

ここまで言われてしまえば、最早ディモ・リーブスとニックに、コーバに対して言い返す気力はなかった。覆す胆力などなかった。

 

ディモ・リーブスもニックも理解している。ただ、納得がいかなかっただけなのだ。

 

しかし、ある意味では彼らが声をあげてくれたおかげで、壁内人類の最高会議の場は憂いなく完全に一つの名のもとに固まったと言えよう。

 

コーバの名のもとに。ヨシフ・ヴェトーの名のもとに。

 

 

 

 

 

 




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