進撃の赤い巨人   作:ヤン・デ・レェ

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面白かったら『ypaaaaaaaaaaaa!!!!!』又は『Sieg Heil!!!』を( `・∀・´)ノヨロシクお願いします。


門出

俺は今日、初めて壁の外に出た。

 

考えてみれば、ユミルに食われて、転生してから早くも二十年近くの月日が経っていた。

 

なぁ、ユミル。君は俺を幸せにしてくれると言ったが、俺は今でも十分に幸せなんだぜ。後は君さえここにいてくれれば、言うこと無しなんだけどなぁ…。

 

俺の個人的な話はさておき、今日、人類は新たな一歩を踏み出した。

 

コッチの人間に限りがあるように、向こうの巨人にも数に限りがあることが分かったんだ。

 

先ずは掃除から始めよう。そのあとで、じっくりと『鼠』を炙りだしてしまえばいい。

 

今は何より、25万の人民が暮らせる土地と、食料が必要なのだ。

 

シガンシナ区を含む、人類の生存圏を巨人どもから奪い返さねばならない。

 

その為の第一歩が、今日から始まる巨人駆逐を目的とした遠征の成功に掛かっている。

 

人員は俺を含めた親衛隊第一師団の百名弱に加えて、旧駐屯・憲兵団から選りすぐった機動猟兵部隊の約百名、そして本格的な量産を控えたタイタン砲こと対巨人野戦砲運用部隊約百名、総計して約三百名からなる対巨人作戦に特化した仮設旅団である。

 

栄えある部隊全体への命名権は、俺に委ねられた。

 

ならば、飛び切り格好好いのにしなくちゃいけないよな。

 

だから俺は、幹部連中を集めてこう叫んだ。

 

「本日より、我ら特設旅団『ヴィーキング』は!一か月間の巨人駆逐作戦に従事する!!各員、命を大事に!かつ大胆に行動せよ!」

 

「この作戦は我らが直面する、大戦の序戦ですらないのだから!!」

 

 

 

 

 

 

848年、秋ごろ。特設旅団『ヴィーキング』は作戦名『地ならし』を発令した。

 

部隊は三分割され、三個師団とされた。一個師団に対して要員は百名、騎馬百二十、野戦砲は五門である。

 

タイタン砲のスペックは一分間辺り最高五発の連続砲撃が可能であるが、砲身寿命との兼ね合いで一門辺り一分間に三発が目安とされた。

 

部隊展開は基本的に旧調査兵団で導入が計画されていた長距離索敵陣形を踏襲しつつ、その軸に野戦砲運用を織り込んだものとなった。

 

遠征作戦の最終的な立案者はエルヴィン・スミスとハンジ・ゾエが務め、実行部隊の指揮も同様に両人が務めることとなった。

 

ただ、前述したとおり特設旅団は三部隊混成かつ、これを三分割するものであり、第三の指揮官が要求された。

 

このポストに、我らが書記長閣下こと、ヨシフ・ヴェトーが名乗りを上げた。

 

当初こそ懐疑の眼で見られたが、指揮官としての才覚以上に、巨人の習性や行動に対する造詣が深い点に支持が集まり、第三の指揮官として就任することが人民会議において決まった。

 

遠征費用は莫大である。しかし、この作戦には大きな意味があった。

 

まず第一に、大いに巨人の絶対数を漸減することが要求された。

 

次いで、第二に新たな…即ち対人も踏まえた柔軟な戦術・戦略の発展も見込まれた。

 

そして第三に、国内で活動しているであろう敵性分子の炙り出しが期待された。

 

様々な思惑が渦巻く中で、特設旅団『ヴィーキング』による遠征が幕を上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特設旅団『ヴィーキング』出立の報告が壁内全土に広まる頃合い。

 

今回の作戦に従軍が認められなかったミカサ・アッカーマンは、不服申し立ての代わりに、自身の古巣である親衛隊幼年部へと足を運んでいた。

 

なんでも活きのいい新入りが三人も、時期を同じくして入ったのだという噂は、彼女の耳にも届いていた。

 

現在のミカサの役職はコーバの最側近である点を除けば、平の親衛隊員だった。

 

そのため、時には厄介な輩に絡まれもする。

 

「おいお前、さては幼年部の新入りだな?」

 

「俺はライナー・ブラウン。こっちのひょろ長いのがベルトルト・フーバーで、こっちの無愛想なのがアニ・レオンハートって言うんだ。新入り同士仲良くしようぜ!」

 

古巣の練兵場について早々、岩のような角ばった青年に声を掛けられたかと思えば、新兵だらけの入営式の場に無理矢理招かれてしまったミカサ。彼女の口数の少なさも災いして、やんぬるかな、ミカサは新兵共々、現総長であるヒストリアからの閲兵を受ける羽目になった。

 

「いいか?一生に二度とあるか分からない貴重な経験が出来るから、よーく見とけよ!」

 

とは興奮した面持ちのライナー青年の談であった。

 

間もなく閲兵式が始まり、今年から訓練生として入営する新兵たちがぞろぞろぞろ…。

 

ミカサはその中ほどで、流されるままに直立不動でヒストリアからの救援を素直に待つことにした。

 

余りにも暇なので、ライナーの言うとおりに耳を澄ませていると、ヒストリアからの訓示が始まった。

 

「諸君!諸君がここに立っていることは極めて光栄なことです!まずはそのことを大いに喜んでください!」

 

「そして次に、諸君はまだ自分が何の為にそこに立っているのか知らないということを理解してください。ただし、知らない不幸を嘆かないでください!」

 

「私はこの親衛隊幼年部に入営する新たな仲間を歓迎するとともに、同時に、真に同志コーバと、私たちと志を同じくする覚悟のないものを徹底的に篩にかける、ということを理解してください!」

 

「訓練は明日から始まります!諸君に求めるものは大きく分けて三つ。鋼の忠誠心、弛まぬ努力、そして忍耐です。では、ごきげんよう」

 

ヒストリアは壇上から去って行った。

 

ヒストリアの演説を聞き、まぁ、これくらいは当然だろうと考えていると、隣の角ばった男…ライナー・ブラウンが涙を流して感動していた。

 

「声まで美しいなんて…あぁ、正に神が作りたもうた女神に違いない…ぐすっ…うぅうぅ…」

 

「ライナー、大丈夫?そんなに泣いてると、早速教官から眼をつけられちゃうよ!?」

 

「キモいよ、お前……」

 

「キモいとはなんだ!アニ!」

 

「ま、まあまあ落ち着いてよ、アニも悪気があって言ったわけじゃないんだし…」

 

「お前も十分キモいよ」

 

「……」

 

「アニぃ!ベルトルトの純情を弄ぶな!」

 

「キモッ……!」

 

金髪の少女が一足先に官舎に戻っていくのを男二人が追いかけていく様を、ミカサは何を思うでもなく、淡々と観察していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アニの毒舌が炸裂していたのと同時刻、エレン・イェーガーとアルミン・アルレルトも、親衛隊幼年部への入営を果たしていた。とはいえ、アルミンはどちらかというと、科学技術アカデミーに参加するべく、その下地になる知識や経験を吸収したいという思惑もあり、また、エレンに至っては幼馴染のミカサやアルミンから離れるのが寂しいからという、幾分子供じみた理由から入営を決意していた。

 

この決意に、越した先の新居から最も近い練兵場が親衛隊幼年部だったからという点も忘れてはいけない。

 

ともかく、思惑は当人たちによりけりだったが、新たな門出を多くの者が飾った一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

親衛隊幼年部848年度入営者

 

親衛隊幼年部第四期生名簿 一部抜粋

 

ライナー・ブラウン

 

ベルトルト・フーバー

 

アニ・レオンハート

 

エレン・イェーガー

 

アルミン・アルレルト

 

ジャン・キルシュタイン

 

マルコ・ボット

 

コニー・スプリンガー

 

サシャ・ブラウス

 

…………

 

ユミル

 

………

 

……

 

 

ヒストリア・レイス 幼年部総長 親衛隊中級指導者

 

ミカサ・アッカーマン 親衛隊上級指導者 親衛隊第二師団師団長内定済み

 

 

 

尚、全訓練課程が修了されるのは850年であることをここで補足する。

 

 

 

 

 

 

 

 

特設旅団『ヴィーキング』の発足から遡ること二年。

 

以下は、壁が破壊された翌年の地下壕会議室での会話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、地下壕に集まっていたのはヒストリア・レイス幼年部総長、ミカサ・アッカーマン親衛隊上級指導者、ハンジ・ゾエ巨人研究所所長、エルヴィン・スミス科学技術アカデミー学長、ケニー・アッカーマン親衛隊最高指導者、リヴァイ・アッカーマン親衛隊上級指導者、そして我らが同志コーバである。

 

彼らの議題は『壁内に潜む脅威』への対策を如何に講じるかというものだった。

 

第一声は国内の治安を裏に表に監督する立場にある、ケニーによるものとなった。

 

「なぁ、コーバ、俺はどうにも疑問なんだが、この親衛隊幼年部のカリキュラムに対人訓練が入ってるのはなんでなんだ?」

 

ケニーの疑問にエルヴィンも頷き、ハンジが補足するように言った。

 

「そうそう、私も思ってたんだよね、何もわざわざ人間と戦う気満々ですって、そう言う感じ出さない方がよくないかい?」

 

「確かに、ハンジたちの言うことも理解できる…スパイに、わざわざ俺たちが巨人の謎を理解している現状を知らせることは賢明だとは思えないが」

 

リヴァイまでハンジとの意見が合っていた。

 

だが、これに対して答えたのはコーバではなく、実際に幼年部で総長を務める立場となったヒストリアからであった。

 

「確かにそのリスクは考えられます。しかし、現に私たちが直面している脅威と、その真相に関して理解しているのは壁内でも一部に留まっています」

 

ヒストリアはそこで一度言葉を切ると、淡々と言葉を続けた。

 

「幼年部では訓練兵団から踏襲したという名目で対人格闘技をカリキュラムに組んでおり、今後とも、表向きは訓練兵団の名残として入営者には理解して貰うつもりです」

 

「この場合、疑問を持つ者と納得する者に分かれるでしょう。そして、中でも対巨人戦闘にそぐわないという点で怠ける生徒も出て来るでしょう」

 

「対して納得する者は熱心に参加するでしょう…そして、我々の敵は高度に発達した軍事国家のスパイであり、マーレの戦士なる対人対巨人戦闘能力が共に秀でた者である可能性が高い」

 

「このことは取りも直さず、対人格闘技にも優れている者である可能性が高いことを示すでしょう」

 

「つまり、敢えて何も知らせずに対巨人戦では役に立たない対人格闘技を熟させて、その熟練度に違和感の生じる者がスパイであり…おびき出すまでもなく、自ら尻尾を出すだろうと、そう言うことかな?」

 

ヒストリアの言葉を引き継ぐように、それまで瞑目して耳を傾けていたエルヴィンが総括した。

 

「はい。その通りです。同志エルヴィン」

 

ヒストリアは強く頷いた。

 

「ならば、私たちが成すべきことは忍耐強く待つだけだ。いいじゃないか、せかせかと探し回るよりもずっと好い」

 

最後を締めくくったのはやはり同志コーバだった。

 

「さあ、決を採るとしよう。同志ヒストリアを支持する者は挙手を」

 

「我々は彼らと同じ土俵で虎視眈々と獲物を狙うつもりはない。より賢く、より狡猾に、罠にかかる時を待つ冷徹な狩人なのだよ」

 

 

 

 

 

 

 

ヒストリアの案はその場で全会一致で承認された。

 

ミットラス共産党政府が講じる『壁内に潜む脅威』への対策は、こうして『待ち』の期間に入ったのである。

 

待ち始めてから二年が経過し、特設旅団『ヴィーキング』による壁外遠征が始まると同時に、『鼠』が一所へと集まったことは皮肉とも偶然とも呼ぶべき事態だった。

 

果たして、『鼠』の行動に全ては委ねられた。尻尾を出すのか、彼らの計画遂行の為に全てを隠し通すのか。

 

或いは、第三の道を見出す者が現れるのか…。

 

全ては『鼠』達に委ねられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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