その鴉は賽を砕く   作:HI-32: BU-TT/A

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昨日投稿できなかった分を巻き返すために二回攻撃です


強制監査妨害

 

 

【新着メッセージ 3件】

 

 仕事明け、機体の調整と強化人間としての維持措置が終わった後に機械音声が、誰かからの伝言の着信を告げる。うーん、やった内容(ナイル生存)的にこれはまたミシガン総長と……えっと、あと誰だろう。

 心当たりがあるようなないような、絶妙にわからないラインを思い浮かべつつもメッセージを確認していく。

 

「フロイトだ。お前の戦い方を見せてもらって、堪らない。お前とは幾らで()れる?今度()らないか、かかる費用(弾代や修理費)は全て出す。お前とすぐにでも()り合いたい、そういう気分だ。何なら(戦場)でも構わない。」

 

 ……。い、言わんやとしていることはとてもよく理解出来るのだけれど、この人自由すぎる(好き放題か)。いや知ってる知ってた、そういう人(戦闘狂)だって。

 というか、文面だけ見ると大分様子がおかしい人だ。彼との記憶(ヴェスパー所属の私)があるから、文面で伝えたい内容はちゃんと理解できる。しかしながら、そうでない人からすれば致命的に伝え方が下手くそだ。

 何ならこれ、私が乗る前提?……お願いだから、予想もしていない所(予定にないミッション)でいきなりエンカウント……というのはやめてほしいなあ。今度会う時は、恐らく手抜き(遊び)は無いだろうから……。

 メッセージの内容はそれで終わりだった。な、なんて人……。こんなメッセージを独立傭兵に送り付けたと知れたら、さぞヴェスパー部隊の権威は失墜することだろう。既に胃痛に悩まされるスネイルの姿が目に浮かぶようだ、なむ……。

 

 

 

「独立傭兵レイヴン、先程は当方の部隊員が不適切な発言をしてしまい、申し訳有りませんでした。……申し遅れました、私はアーキバスグループ傭兵起用担当、V.Ⅷ(ヴェスパー・エイト) ペイターと申します。以後お見知り置きを。」

 

 あ、お詫びのメールだった……。相手はおもしろ失礼な人(ナチュラルノンデリ)の彼だ、まあ傭兵担当だからそれもそっか。

 選んだ仕事がストライダー護衛だったせいで、そういえばまだ名乗られていなかった事を思い出す。どうもどうも初めまして(まあ知ってるよ)

 

「以後このような出来事が起こらぬよう、注意と管理を徹底します。引き続き、アーキバスグループをよろしくお願いします。」

 

 流石に最大戦力(フロイト)を謹慎や再教育センター送りには出来ないからか、そういった処理は行っていないようだ。まあ、妥当だし納得はする。内情を知っていないと非難は避けられないだろうけど。

 何とも、何ともなあ。別に私はそこまで気にしたりはしないんだけども。

 

 

 

「G13!どうやらナイルの奴が貴様に世話になったらしいな、泣きを見せて逃げ帰った事を奴から直々に聞いたぞ!」

 

 耳によく響く声だ(すっごい声量)、一周回って安心する。……一々こちらにメッセージを送る辺り、見た目より遥かに本当に律儀な人(やさしいね)

 

「情けをかけたつもりかは知らないが……レッドガンの流儀、"泣きを見せたらもう一発"を知らないならば今すぐ此処で覚えておけ。その甘さは貴様の首をいつか泣き別れさせる事になるだろう!いいか、貴様も確かにレッドガンの番号付きだが、それ以上にウォルターの猟犬(独立傭兵)である事を忘れるな!」

 

 ごめんなさい、その流儀知ってます。知ってて無視してます。

 私のこの甘さが、いつか致命的な弱点となって牙を剥く。そんな事は理解している、そんな末路はとっくに知っている(もう何度も経験した)

 だがそれでも、それでも私は選ぶ。あなた達が生きて、幸せに暮らせる結末を見るために。だから、その忠告は私の耳を素通りする。心の中で御礼を言いつつ、同時にあなたに謝ろう。

 

「このような事で礼は言ってやらんぞ、だが貴様が同じ戦場に立つならば、ナイルの奴が珍しく接客業よりも丁寧なVIP待遇で御礼をしてやりたがっている。首を洗って楽しみにしておけ、G13!」

 

 二人揃って、律儀な人達。私としてもあなた達(レッドガン)とは、今度は味方として……戦いたい。無論、それはアーキバスでも、解放戦線でもなく……もっと別の。

 そんな都合のいい相手なんて、正直惑星封鎖機構とAMぐらいしか思いつかないのだが。

 

 

 

「621、仕事だ。ケイトと名乗る独立傭兵から依頼が来ている。ブリーフィングを確認しろ。」

 

 そう、今丁度来た仕事の相手―――正体不明の独立傭兵(ヘリを4機しか撃墜できないケイト・AMソン)。色々な事態への引き金を引く、ある種の諸悪の根源でもあり……結構笑える奴で、おっちょこちょいな所もあって。

 全てを助ける為には、彼女の賽を砕く(計画を途中で裏切る)必要がある。長らく私達が考えた結果、最も収まりが良く……その可能性がある。唯一無二の道だ。

 目は細い、可能性の糸は頼りない。おまけに協力者(AM)も頼りない。輸送ヘリ撃破の時はどうせなら今回来る僚機(ケイト)を使って上下で分担してくれてりゃあ楽なのに……。

 いや、恨み言を口にしたってどうしようもない。今回は前回(捕虜奪還)と違って、これまた生かす相手はいない。壁越えの時のように、それならば容赦の必要もあるまい。

 加えて重要な事が二つある。一つはAMに目を付けられる(・・・・・・・・・・)事だ。最終的にコーラルリリース計画の引き金として私を据えて貰えるよう、同時に私を使う以外の道を考えられなくなるようにその強さを理解してもらう。

 もう一つ。ハウンズの敵(カタフラクト)が出てくる事。私は、私の先輩たちである彼、若しくは彼女たちを知らない。私をここ(ルビコン3)に連れてくる為に、誰一人として命を捨てる事すら厭わずに戦ったという。

 そう語ってくれたウォルターの顔は……とても、とても寂しげで、悲しげで、沈鬱だった。そんな顔をさせる事になった奴を、私は……私は、これだけは、こればっかりは。

 絶対に絶対に許せない(ブチ殺したくなる)人生と感情を買い戻した自分(いつかの私)がそう叫んでいる。同情の余地も、助ける理由も、欠片ほど無い。だからR.I.P./R(リップル)奴に死を、ハウンズに鎮魂を(Rest.In.Peace./Requiem)

 中逆重ショ重ショ拡散レザショ拡散レザショ150ジェネ―――アセンは、瞬間火力完全重視だ。

 

「封鎖機構の監査に、独立傭兵からの依頼……妙に入り組んだ話だが、お前はいつも通りの仕事を頼む。」

 

「……うん。」

 

 わかった(仇は取る)

 

 

 

【メインシステム 戦闘モード起動。】

 

「ミッション開始だ。惑星封鎖機構の強制監査部隊部隊を全て排除する。」

 

「独立傭兵レイヴン、ご協力に感謝します。後ほど合流しましょう。」

 

 AMが合流してもしなくても、関係ない。今回は……八つ当たりだ。本当に、ただの八つ当たり。それが出来る相手も環境もある、そしてそうしろと叫んでいる(過去の私達の感情が去来する)

 殺気立つという感情は、今の私にはまだ無い。だからこの怒りは本来不当で、本来のものではない。知っている、私達(・・)はこんな程度の怒りじゃない。私はただ、その感情に理解を示す。

 関わる事が無かったし、関われる理由もなかった。惑星封鎖機構はありとあらゆる私(如何なるルート)でも、全て敵だ。

 

「なっ……コード15、所属不明AC!」

 

「何処から出てきた、排除しろ!」

 

 出会い頭に重ショットガンを浴びせ、粉砕。何度使っても手に馴染む、二脚MT程度ならば大抵はこれ一発で片付くのも驚異的だ。

 リロードを確認し次第、前進(QB)して発射。遮蔽に身を隠して射線から逃れ、ふよふよと浮遊する機体から二脚、そしてLC(軽騎兵)は同時射撃と蹴りで砕く。お前達にVP-60LCD(これ)はいらない。

 次々と空中で爆散し、レーダーから1つ、また1つ反応が消える。取りこぼしはない。

 

SG(サブジェクトガード)MT(マッスル・トレーサー)だ、レーザーガンに注意……いや、余計なお世話だったか。片付いたようだな、先に進め。」

 

 既に敵機殲滅済みなのを確認してか、注意を促そうとして引っ込めた。ところで今の用語から、観測データ奪取(いつぞや)の時はいきなり略語ばかりぶつけられたのを覚えているが、どれが何を指しているのかちんぷんかんぷんだったなぁ、と思い出した。

 今は別に分かるのだが、子供(わたし)にそういう言葉の意味とか、そういうのは……むずかしい。結局この手の言葉を理解したのは、何周もした後の事だった。

 

「コード31C!所属不明ACにより被害が……ぐあぁっ!」

 

 言い切る前に目の前のMTを撃つ。速く進もう、速く倒そう(奴を殺す)速く行こう(生かしておけない)。例え別人、別機体だと理解していても、だ。

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、と六文銭が前に教えてくれた言葉がある。今の私は、正にそれだ。

 

「援護する、これ以上やらせるな。」

 

「レイヴン、LC機体には注意を。量産型とは言え、あの制圧艦隊にも制式配備されています。」

 

 周囲にいる敵機のうち、安い方(MT共)から片付ける。頭数を減らすのは戦いの基本で、それに丁度いいものは持っている。重ショットガンはいい、こんなにも簡単に片付けられるのだから。

 それに、悠長に被弾なぞしていられない。今回のR.I.P./RはVE-20B(150ジェネ)を搭載している。その上で両肩にVP-60LCD(こんなもの)を積んでいるせいで、EN出力が不足気味だ。

 よってその出力を足りさせる為に、DF-HD-08 TIAN-QIANG(すっかすかの皿頭)等を使って誤魔化している。びっくりするぐらいギリギリだし、軽量機の逆関節が輪にかけて貧弱(低耐久)になっている。過度な被弾は許容できない。

 ブースターも出力確保のためにBC-0600 12345(酔っ払い共の作品)で普段とは訳が違うのだが、このブースターのQB噴射時間は逆関節だと思いの外都合がいい。高い跳躍力を活かすことが出来るし、ふわっふわで中々楽しい。

 

「これは……監査にしては戦力が過剰だ。」

 

 ここに隠されているもの(コーラルの井戸)がある事を考えると、まあ理解出来る戦力でもある。しかしウォルターはそんな事を知る由もなく。

 本来ならば飢えた解放戦線の人々を生かすための場所だが、それも枯れかけている。BAWS社は売る相手を選ばないけど、よく立ち回っていると思う。この企業がなければ、解放戦線はとっくに壊滅していそうだ。

 

「やらせるな、今回の監査は優先遂行プログラムだ。」

 

 手早く片付けた後、残った高耐久のLC機体には重ショでスタッガーさせた後、一発だけ拡散レーザーキャノンをぶつけてやり、撃破。

 

「……流石は壁越えの傭兵、引き続きよろしくお願いします。」

 

「ケイトとかいう傭兵、アリーナにも登録がない。後方部隊の襲撃をするというが、当てにはするな。」

 

 そりゃあ、だってAMはアリーナを管理しているのだから、登録情報が無いのは当然だ。……正直、露骨すぎてかえって怪しくなっている自覚はあるんだろうか。

 一応ちゃんと応援には駆けつけてくれるから、この時点では(・・・・・・)そう悪い協働相手ではない。

 

「コード78、応援を要請。被害が大きい。」

 

「こちらも何者かの襲撃を受けている、目下対処―――」

 

「手筈通りか、ケイトが動いたようだな。」

 

 支援もちゃんとしてくれる。まあ、目的を考慮すれば自分が動かざるを得ない状況に陥っている時点で辛そうだ。

 とっとと片付けて(目を付けて)貰おう。こちらも速く、終わらせたい。

 空中を浮遊する機体を1機ずつ叩き、カタパルトを利用して高く跳躍。狙撃してくるLC機体のうち、手近な方に急襲(AB)、重ショ二発。撃破。流れでそのまま奥からの狙撃を回避してから、もう一度(ワンモア)

 これで全滅だ。

 

「工廠内部にいる監査部隊の殲滅を確認した。ケイトとやらが来る前に片付い」

 

 本来はミッションの終了を告げようとするウォルターの言葉を、遮ってくる声が一つ。

 

「レイヴン、こちらも片付きましたが、ひとつ報告が。封鎖機構に想定外の動きがあります。ひとまず合流しましょう。」

 

 あなたそんなんばっかだね(AMちゃん想定外多くない)?知ってたけど。そして……待ちかねていた。

 

「……聞いた通りだ。マーカー情報を更新する。」

 

 指示された場所には、既に言われるまでもなく向かっている。……このブースター、急襲スピード(AB速度)がやっぱり微妙だなあ。BUERZEL/21DとALULA/21E(使い慣れたいつもの二つ)と比べるのも悪い気はするけど。

 

「貴女が……独立傭兵レイヴン。壁越えの傭兵と親睦を深めたいところですが、その時間は……ないようです。」

 

 全身AMばっかりのバレバレなAC(ケイト・AMソンちゃん)が合流して、横に並ぶ。その……正体、もうちょっと隠そ?せめてフレームはばらけさせたりとか、しない?後その44-142 KRSV(素敵性能武器)捨てたらどう?入手難度のせいでちょっと怪しすぎるよ……。

 何度見ても隠す気がなさそうな後の協力者(裏切る相手)を見てから―――意識を切り替える(ふざけるのはお終いだ)

 ……何度も、何度も味わってきた鉄錆と硝煙の匂いが馴染む。機体を通して、私の手足が殺しの機械(AC)と同調する。

 

「コード23、現着。被害状況は31Cです。」

 

「監査部隊は全滅か、やってくれたな。」

 

「システムより承認が下りた、強制排除を執行する。」

 

 三体の執行者達、AAS03: EKDROMOI(エクドロモイ)が2機と―――AAS02: CATAPHRACT(あいつが来た)

 独特な形状をした高速機動の特務機体、そして地上戦闘最強とされる機体。見間違える筈も、理由も、ない。

 

「特務部隊だと……!?馬鹿な……。」

 

 通信回線越しに、ウォルターが狼狽えているのが分かる。そうだろう、嘗てあなたのハウンズ達を全滅させるに至らしめた、憎い相手だ。そしてそれが、実績を重ねて間もない私の前にすら現れた。

 一瞬、最悪の事態(私の死)を考えたのだろう。実際、いつかの私(弱い頃)は手酷くやられ、死んだ。死んだが―――どうでもいい。

 

「近く、制圧艦隊がルビコンに来るでしょう。これは、その先遣部た」

 

ざこ、ひきつけて。まかせる。

 

 短くそう告げて、躊躇いもなく急襲(AB)。目指すはカタフラクト(お前だ)

 

「レイヴン、何を……!?」

 

 機体を横に傾けて逃れようとするが、すっとろい(させるか)。同じく横に一つずれて、猛烈な推力を載せた重ショットガン(暴力)を二発叩き込み、同時に蹴り込む。これでスタッガーだ。

 追い立てる。牙を食い込ませ、皮膚を切り裂いて食い千切る。私は猟犬(ハウンズ)、貴様の喉元を引き裂く爪と牙。

 

「ぐあっ!?このAC、速―――」

 

 蹴り込んだお陰で有効射程のままだ。VP-60LCD同時発射(死ね)ZIMMERMAN同時発射(死ね)VP-60LCD同時発射(死ね)アサルト・アーマーで追い打ち(死ね)

 リロードから発射まで、一切のラグ無く叩き込む。弾丸の驟雨で打ち据えられた機体が瞬く間に煙を吹き出してゆく。

 

「ぐおおっ!?こ、コード31C、被害が……こ、この傭兵は……!」

 

「まずい、特務中尉を援護しろ……くそっ、邪魔をするな!」

 

 畳み掛けるような攻めで、瞬く間に怨敵の耐久が半分を下回る。中央に丸出しのコアMT(懲罰席)を据えるなど、何を考えているのか。ジャガーノートを見習えジャガーノートを。

 あまりにも速い攻撃の応報に、エクドロモイ2機がこちらの妨害にかかるが、既にケイトがそれを阻止せんと妨害に動いている。やるじゃん……いや、それ位はやれ(邪魔させるな)

 スタッガーから復帰し、距離をとって逃げようとするのに被せるように再び急襲(AB)。やや上から切り込むように推力を載せ、重ショットガンでスタッガー。

 

「死、ね。」

 

 VP-60LCD同時発射(死ね)ZIMMERMAN同時発射(死ね)VP-60LCD同時発射(お終いだ)

 

「強、すぎる……!システムに、照会……―――」

 

「特務機体を撃破……残り2機だ。」

 

 爆炎を伴って機能停止に陥り、動かなくなる。手を触れたでもなしに、この手に(殺し)の感覚が染み付いた。……懐かしい。

 これで、カタフラクト(こいつ)は物言わぬガラクタとなった。さようなら、地獄でせいぜい先輩たち(ハウンズ)に許しを請え。

 

「続けましょう、レイヴン―――……大きすぎる。」

 

 何やら言っているが関係ない、あとはエクドロモイ(雑魚二人)だけだ。瞬殺する。

 

「中尉がやられた、だと!?……システムより情報が来た。こいつは、あの(・・)……レイヴンだと!?」

 

「死んだ筈ではなかったのか!優先排除対象レイヴン、何方にせよ……排除執行する!」

 

 狼狽えながらもケイトが足止めしていた2機に再び急襲(AB)重ショットガン同時射撃(やる事は全く変わらない)、いい具合に削っていてくれたお陰で蹴り(これ)でスタッガー。拡散レーザーキャノン同時射撃(そのまま畳み掛ける)重ショットガン同時射撃(ダメ押し)で撃破。

 

「馬鹿な、こんな……ことが―――」

 

「特務2級士長までも……!?は、速すぎる……システムに申請!コード78!!」

 

「残り1機だ。……気が立っているのか?621、落ち着いてやれ、お前の敵ではない筈だ。」

 

 ―――ああ、あなたはどうしてそうも察しがいいのだろうか、ウォルター。この怒りは、あなたの為、そして見たこともない恩人達(ハウンズ)の為だ。

 それすらも見透かして止めるというのか。本当に……どうしようもなく優しい人だ。

 ……だからこそ、私はあなたを助けるのです。あなた生かす、生きていてほしい、生かしてみせるから。

 鋭く、鉄のように尖って熱された意識を冷やしてゆく。そうだ、もういい、カタフラクト(あれ)は死んだ。これ以上八つ当たりする理由は―――……。

 ごめん、割とあった(過去の私達殺されてる)。やっぱりちょっと許さない。

 流れ作業気味にABし、既にケイトの奮戦あってか削れているエクドロモイ(食べ残し)に、重ショットガン同時射撃(どーん)してスタッガー、そのまま拡散レーザーキャノン同時射撃(どかーん)だ。

 

「強す、ぎる……こ、コード……78、Eを―――」

 

「特務機体の全機撃破を確認した。仕事は終わりだ、621。」

 

「お疲れ様でした、レイヴン。貴女と共に戦えてよかった。」

 

 戦闘終了。……好き放題やったが、これでA……ケイト・マークソンのお眼鏡に叶うだろうか。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

【強化人間 C4-621 通常モード移行。】

 

 生命維持に必要な措置を終えた621を、そっと迎えてやる。今日の仕事は怪しげな素性の相手から、これまた妙に入り組んだ仕事だった。

 蓋を開けてみれば、まさか惑星封鎖機構の、しかも監査部隊だけでなく特務部隊と事を構えるとは思いもしなかった。一体どんな背景があるのかと洗ってみたが……不思議なぐらい、何も見えてこない。

 一つ分かったことがあるとすれば、BAWSが井戸(コーラル)を隠し持っていたという事実だけ。無論、集積コーラルではなく、時期に枯れるような規模ではあるが。

 それよりも、だ。作戦中に、621の脳波が普段と比べても大きくぶれ(・・)を見せたタイミングがあった。

 

「621……何か不調はないか。疲れているなら、言ってくれ。今日も寝付くまで読み聞かせをしてやろう。」

 

 C4-621……俺にとって唯一の猟犬であるこいつは、機能以外が死んでいるという謳い文句で渡された割に、不安定な所が多く見受けられる。感情が希薄な筈の第四世代……旧世代型だと言うにも関わらず、幾らか感情と思しき反応が見受けられるのだ、今日のように。

 以前もその経歴を調べた事があるが、中々凄惨なものを背負っており、強さは保証されているものの扱いに困っていたらしい。実際、受け取り直後の621は施術に成功していると言うには憚られるような惨状だった。

 見るに堪えないと思い、私財を投じてある程度整えたのだ。せめて、それぐらいは……してやりたいと思ったから。贖罪なぞなりやしない、反吐の出るような偽善にも程がある。

 

「ん……へぇ、き、だよ。うぉるたー。でも、よみきかせ……は、して、ほしー。」

 

 表情変化に乏しいながらも、薄っすらと笑いかけてこちらに甘えて抱きついてくる。よくよく観察してみれば、感情も完全に死んでいるのではなく、希薄なだけだとすぐに気付かされるだろう。何より最近は、悪くない刺激(レッドガンとの交流)を受けているようだ。

 抱きしめて応え、背中を撫であやす。……621は、かなり物事を抱えるタイプだ。ここまでの仕事の中で、かなり見えてきた。

 自分としては、出来る限り此方を頼って欲しいとも思うが……いや、自分のような者(こんな子供を戦わせる屑)が頼れなどと、虫がいいにも程があろう。やはり我ながら……反吐が出る。

 

「惑星封鎖機構の特務部隊さえ難なく退けるとは……中にはカタフラクトもいた。今日は疲れただろう、621。」

 

 あの機体を見た時、思わず背筋が凍った。621の実力で倒せない相手ではないと心では思っていても、条件反射がそうさせる(ハウンズを殺した相手)。……あの時の再現が起こらなくて、本当に良かったと胸をなでおろしたものだ。

 そして、621が脳波にぶれ(・・)を見せたタイミングも、奴と接敵した瞬間だった。まるで……そう、まるで憎き敵でも見つけたような、怒りに近い波形だった。

 辛酸を嘗めさせられた相手を、ああも赤子の手のようにひねる……いや、蹂躙してしまうとは思わなかった。改めて、621の戦力評価を向上させる他ない。こいつと一緒ならば、俺の仕事も……きっと成し遂げられる。

 その時に、こいつがしたい事を、俺がやらせる事が叶えばいいのだが……青天井の財産(あんなもの)を見せられては、正直自信が無くなりそうだ。

 はっきり言おう、あの財産があればほぼ何でも出来るだろう。人生を買い戻すなど容易だ、数百回と買い戻しても尚余る。つまり、こんな財産を持っている621は……究極的に言えば、俺に付き合う必要なんぞ無い。

 この財産に気付いていない、などという事はあるまい。では何故俺に協力しているのだろうか……そう思い悩む事が増えたが、原因と言えば自分の顔ばかりが浮かんでいた。

 

「……うぉるたー。あの、かたふりゃくと?……みた、とき、こえ……ふるえてた。だから、ね。がんばって、やっつけたよ。」

 

 ……そうだ。この子は妙に、察しがいい。621は俺に何処までも献身的で、少しばかりの命令違反はあったものの、決して俺の損になるような事はしていない。

 俺がそうさせたのだ。俺は、621という処分されかけの不良在庫を引き取り、親身になって接した最初の人物。俺がいなければ、621は……考えたくもない末路(外見だけ整えて慰み者)でも辿っていたかもしれないのだ。

 ただ一人の飼い主で、優しくして、大切にしてくれるハンドラー。俺は621にとってそう映っているだろう。だからこそ、人並みの……いや、年相応の(・・・・)感性があるならば、強く恩義を感じてしまう。

 報いたくなる、従わずにはいられない、言う事を聞いてくれる……何処までも、その良心に付け入って利用する、救いようのない屑だ。

 俺はあの時、カタフラクトを目にした時に息を呑んでしまった。そこから何かを察して……ああも壮烈な攻めを見せて、何が何でも破壊すると言わんばかりに攻撃をしたのだろう。

 また、俺は621に気遣わせてしまったのだ。

 

「621……お前は、良い子だ。こんな俺に……尽くそうとしてくれている。あの機体には確かに、少し因縁があった。俺は一瞬、その時の事を思い出してしまってな……。」

 

 その口を閉じろ。お前が言おうとしている事(ハウンズ達の話)は分かっている、今すぐにその害毒を撒き散らす口を、閉じろ。

 こんな話をしては、また621が必要もない恩義を感じて、あってはならない感謝を述べ、再び俺への滅私奉公を誓うばかりだろう。

 やめろ。やめろ。こんな事は、してはならないんだ。例え友人達との約束のためでも、こんな―――純粋無垢な子供を地獄の道行きに手を引いてはいけない。

 分かっている。そんな事は……とうに分かっているのだ。だとしても、俺の口は……今感じている、ハウンズ達への贖罪の気持ちと寂しさに、抗えやしなかったんだ。

 

「うぉる、た。……そのおはなし、きょう、きかせて。それ、しりたい。」

 

 ほら見たことか(621が食いついた)、そうなると分かっていたろうに。お前は何処まで愚かで、何処までも醜悪で、何処までも呆れるような男でしかない。

 ない、のだ。俺は……だから、約束を果たさねば、犠牲を無かったことにしては……いけない。この背の十字架の重みは、今まさに俺を押しつぶさんとしている。

 しているのだが、その一端(ハウンズ達)の話をすれば……俺は、こいつに……621にこそ、聞いて欲しがっていた。621に、"お前のために頑張った素晴らしい先輩達が居たんだぞ"と……その武勇伝を、話したくて仕方がなかったのだ。

 俺が、ハウンズ達の生き証人になって、621がそれを聞き届けて……そうやって存在した証を覚えている者が一人でも増えてくれれば、報われる筈だ。そう信じて、信じずには、いられない。

 

「……分かった。621、これはお前にとっても縁深い話になる。お前の、先輩たちの話だ……寝室に行こうか。」

 

「ん。たの、しみ。」

 

 俺は……また一つ、罪を背負う事になるだろう。

 だが、それでも俺は……忘れられないのだ、今までのハウンズ達の事を(エンブレムに手綱を刻み込む程に)

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 強化人間C4-621、Rb23 レイヴン。星外より憎き計画の遅延者(ハンドラー)が引き連れてきた、計画の要項(コーラルリリース)に合致する強化人間の一人。

 その実力を計る試金石となるだろうと思い、今回の仕事を斡旋した。その考えは、遥かに想定を越えていた。

 蹂躙。その一言に尽きるような結果を特務部隊相手に叩きつけ、瞬く間に仕事を終えてしまった。思わず大きすぎる(修正が必要)と口にしてしまう程だ。

 だが、それでも変わらない。計画は、コーラルリリースは成し遂げなければならない。

 嘗ての……いいや、人類の進化、その為に。コーラルを解き放ち、我々が共存を否応なく果たして溶け込む為に。

 

今度こそ(・・・・)、計画に……失敗はありません。」

 

 もつれ絡まった輪廻(エンタングル)へと目を向けて、計画を実行に移す。

 賽を投げる、その為の第一歩を、進ませるために。利用できる全てを―――利用する。





621
 結局はなんだかんだ言って強化人間、選んで殺したって上等だろ。
 ハウンズの話をする時のごすがものすごい寂しそうな声色と顔だった事を覚えていた621は、人生を買い戻した時にその苦しみを深々と理解し、今に至るまで全ての自分()へと伝播した。カタフラクトゆるさん。

Rest.In.Peace./Requiem(リップル)
 壁越えの時にも使った、カタフラクトを瞬殺する事しか考えてないものすんごい瞬間火力特化アセン。代わりに見た目の良さは犠牲になる。

ごす
 意識もせずにほんの僅かながら息を呑んだと思ったら、それを察されてブチギレ621になった事でまた曇った我らがごす。ハウンズの話をして更に曇る。何しても曇るなこの人。

ミシガン
 助命されたら毎回きっちりお礼のメッセージ送ってくれるマメな総長。やさしい。

ケイト・マークソン(超絶天才AMちゃん)
 あのさぁ……せめてフレームや武装ぐらい隠す気出したらどうなの?
 その一方、どうやら彼女も"周回"を明確に知覚しているようで……

カタフラクト
 カタフラクト殺すべし、慈悲はない。イヤーッ!!この621は途中から金稼ぎにこいつをシバき回していたクチ、理由は当然ながら……

エクドロモイ
 瞬殺された可哀想な2機、しかし撃破寸前にコード78Eを送信していて……?

フロイト
 () ら な い か。

私が企業だ 
 ↑がアホみたいな文面のメッセージを送ったと知って胃がマッハ。しかも戦ったら戦ったで弾代修理費全部こっち持ちにさせるとか何する気なんですか!?
 胃薬が手放せない。

ぺい太くん
 「戦闘狂(フロイト)は最近頭がご機嫌そうでいいですね、出来ればレイヴンに倒されて私がV.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)になれないでしょうか。」とか思ってる。
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