やっとメインヒーローヒロイン登場ですよ!賑やかになりますねレイヴン!!
山場なのもあって普段より長くなっちゃった。
「しばらくぶりだね、ウォルター。元気……そうじゃないね、どうしたんだい?新しい強化人間を連れているようだが……617達はどうした?」
特定の回線を開き、指定された相手と通信する。気の強そうで貫禄のある女性の声、その相手は"
グリッド086を縄張りとする、コーラル中毒集団"
同時に、それを隠れ蓑とした観測者達の組織、同じくして俺も所属する
技研都市の頃からの付き合いで、今や最も古い友だ。相変わらず、その声色から伝わるが若作りしているようで……いや、これは言わないでおこうか。
態々こちらを心配しているのは、どうにも俺との付き合いが長いせいで、あっさりと看破されてしまうからだろう。そんなに元気そうでは……ないな、ああ。昨日の今日だ。
「……仕事をしたさ。お陰でルビコンまで漕ぎ着けた。」
しかしながら、昨日の621の活躍もあってか少しばかり気は晴れていた。厳密に言うならば、あのカタフラクトは仇でも何でもないのだが……溜飲は下がるというもの。
ハウンズ達の犠牲が無ければ、俺も621も此処にはいない。その621が鬼神もかくやの戦いを見せてくれたのだ、せめてもの弔いにはなるだろう。
「……そうかい。新入りの様子は?」
「良すぎるぐらいだ。実力は申し分ない……だが、第四世代の中でも特別不安定なようでな、少し
621は実力面で申し分ない活躍を見せ続けてくれている、そちらで心配する必要はないだろう。代わりにと言っては何だが、関わった相手……あれにとって"知り合い"と認識される相手を、何が何でも生かそうとする位か。
悪いことかどうかは、分からない。いや……本来ならば欠点だろう、何時でも敵と味方が反転する独立傭兵という立場は、時に非情な判断を迫られる事が多い。その時に……判断を迫る相手が621の知り合いでないよう、祈るばかりだ。
無論、そうならないように裏で手を引くのが俺の、ハンドラーとしての仕事だろう。せめてそれ位の我儘と自由は、与えてやりたいし、やるべきだ。
621の事ばかりを考えつつも、気がかりとなっている事を託しておかねばなるまい。
「調べ物だね、聞こうか。」
「ケイトという名の独立傭兵を、洗ってほしい。」
それは―――余りにも怪しすぎる、あの仕事を斡旋してきた謎の独立傭兵だ。
────────────
「これは……ある友人からの私的な依頼だ。「ウォッチポイント」と呼ばれる施設がある。地中に眠るコーラルの支脈を監視し、かつてはその流量制御も行っていた施設だ。お前には、そこを襲撃してもらう。」
待ちわびた時だ。毎回、いつだってここに戻ってくるまで寂しさを覚える。私にとって、初めて出来た友達である
本来ならば、これは想定外の出会いだ。偶然に偶然を重ねた、針の穴を通すような可能性。それすらも、私にとってはもう
「目標は……最奥にあるセンシングバルブの破壊。当該施設は惑星封鎖機構のSGが警備に当たっている。企業たちも表立っての手出しは避けるだろう。つまりこの仕事は……俺達だけで成し遂げねばならない。」
構わない、慣れている。最初はレーザー砲台の破壊すらも覚束なかったし、何ならあれにやられてすらもいたが……そんな私はもう
強いて言うならば、コーラルの奔流に飲み込まれるのが……ちょっと、苦しいぐらいだ。あれは、何時までも慣れない……とても、とても苦しい。
エアと再会出来るから。その理由一点だけで毎回我慢して、食いしばって、堪えて……それぐらい、苦しい。意識が飛ぶのは、とても。
だがその苦しみだって、これで終わりにしよう。仮に終わらなくても、構わない。私は絶対に
「単機での夜間潜入となる。お前ならば問題はないだろうが……油断はせずに行け。」
アセンは済ませた。両手に重ショットガン、つまり親の顔ほど見た二丁……いや、私は親の顔なんてウォルターを除けば見たこともないのだが。そして肩に
「621、準備はいいか。」
「うぃ……おー、けー。」
どちらも、本当に本当に、散々……嫌気が差す程に
分からないのだ。どうして襲ってくるのか、どうして
人となりを知ろうとしても、取り付く島もない。あらゆる場合で、あらゆる状況で、どう足掻いても此処で敵対し……死に至る。
だから……今回もそうなってしまうのだろうか。彼が何を思い、どうしたいのか、私は、識り得ない。
叶うならば、本当ならばそれを知る事も望んだが―――返礼は、敵意と死と、残酷な結末以外には無かった。
「独立傭兵が単機で仕掛けてくるとは、封鎖機構も想定していない。行ってこい、仕事の時間だ。」
【メインシステム 戦闘モード起動。】
「証拠は残すな、目撃者は全て消していけ。」
呼吸を整え、指先から足先までもがACと同調し、一体化するのを感じ取る。肉体は鉄のように冷え切り、指先は銃に、そして肩の武装へと馴染む。
己が
落ち着いていけ、焦る必要はない。待ち遠しくて逸るのは悪手だ。
「コード15、侵入者を捕捉。」
「敵は……AC単機だと?どこの所属だ。」
出撃と共に機体を施設の下部、水面の陰に潜り込ませてから奥のレーザー砲台を破壊。確証を以て言うが、SG相手だとこいつが一番厄介だ。
抜群の射程を誇り、威力も高い。回避は寸前で左右へQBを吹かさねばそうそう成立しない。無論、私はそれが出来るのだが、やらないに越したことはない。
大型の砲台が爆散すると共に、敵に此方の存在を気取られる。でも、心配する必要はない。
「詮索は後にしろ、迎撃を開始する。」
「コード78、応援を要請。」
「これは……!?本部と繋がりません!」
何故ならば、
増援も来ない、ウォルターが手を回してくれているから。通信網が遮断されている間にもう1基のレーザー砲台を粉砕し、後は手近なSGから一体、また一体と粉砕する。
「応援は来ない。621、殲滅……は済ませたな。確認した、次のエリアへ進め。」
先に殲滅を終えているせいで台詞が変わるが、最早よくある事だ。この辺りは現在の自分の手際が良いかどうかを確認出来るし、落ち着いているかどうかの指標にもなる。
次の場所は真正面から行くとだだっ広い地形で、逃げ場がない。四方八方から狙い撃ちにされてしまうが……そんな愚行を犯すつもりはない。
少し手間はかかるが、左奥から建物を乗り越えて奥まで迂回。そしてその先には―――一番厄介なレーザー砲台に、
「なんだこのACは……!?歩哨部隊はどうした!」
「コード18、総員戦闘配備!」
敵襲の情報もなく、いきなり後方から現れて
しかし、それでも遅い。機動力に長けた逆関節機体のQBで前へ、射撃。前へ、射撃。近場から素早く、一撃で粉砕。
「四方からの狙い撃ちを避けているな、そのまま機動力を活かし各個撃破しろ。」
「コード31C、被害甚大!」
そしてこれで、
無被弾、とは行かなかったが及第点としよう。どれだけ私が周回を重ね、実力を得て、知識と技術で大幅に有利を取っているとしても……完璧はそうそう無いのだ。
寧ろ、私ほど完璧に程遠い存在はいないだろう、死ぬ事でしか前に進めなかった哀れな奴だ。
「マーカー情報を更新する、指定する方向へ向かえ。」
それでも、死んで尚も前へ進もうとする。進むしか無いから、進むしか有り得ないから。
今はもう、恐れるな。
「見えるか。あれがウォッチポイントの制御センターだ。目標はその内部にある、侵入しろ。」
幾度となく訪れ、そして幾度となく死に、幾度となく破壊した。その場所を見てどうしても気持ちが逸りそうになる。私がそうしなかった時は、せいぜい
コーラルリリースの結末は、確かにエアにとっては理想的な共存の形の一つなのだろう。だが、そこに至ってしまえばウォルターは生きていないし、大切な人が沢山死ぬ。
エアは人と歩む道を模索していた。ならば、もっと別の道を提示出来るならば……もっと、もっとみんなが笑って過ごせる共存があるならば?
理解してもらう必要がある、示してあげる必要がある。あの場所で待っている、彼女を迎えに行こう。
「ウォッチポイントを襲撃するとは……相変わらずだな、ハンドラー・ウォルター。
予想通りの相手が、施設の屋上から見下ろしてくる。予定調和だ、ここまでは。
真紅の機体、
「貴様は……待て621、背後からも狙われている!」
これも予定調和だ。予見していた狙撃に機体を
今、何と言った?
分からない、私は……あなただけは、識り得なかった。だから、あなたが何を見ているのか、何を感じているのか、今……
こんな事は初めてだ、今まで見た覚えも聞いた覚えすらもない。何故……何故"今"になって?
「ハンドラー・ウォルター、お前には後で消えてもらう。まずは猟犬からだ。」
だが、狼狽えている暇はない。どんな時でもそうだった、彼は私を殺す気でしか動かない。
向こうが此方を始末しようとする前に、まずは
数の理は取らせない、一対一なら私は負けない。
「「C1-249 独立傭兵スッラ」、第一世代強化人間の生き残りだ。」
以前、AMから提示された計画のピースに成り得る存在、特定の強化人間のリストには彼の強化人間番号……"C1-249"が刻まれていた。
一割にも満たない施術の成功率、私よりも遥かに劣悪な条件下で生まれた存在。そんな彼もまた、恐らくはCパルス変異波形と交信できる存在だったのだろう。
今はそれだけではないようにも思える。AMは何となくだが周回している事を理解しているようだった、この現象でさえ不可解かつ説明がつかないのに、彼も
「……、…………。」
「暗号通信……周りの機体もスッラの制御か。……やれ、621。あいつはお前が生かす事を望んでも、間違いなくお前を殺しに来る。」
私の性質をもう概ね理解してくれているウォルターでさえ、彼が話の通じる相手ではないと警告してくる。
知っている。対話を試みた
今は目の前の敵に集中する。隠蔽に特化したステルス機は目視での確認が困難で、間近まで接近する、或いはレーダーを起動して補足しなければ捉えるのは難しい。
上手く利用すれば、攻撃の方向しか分からないまま一方的に攻撃する事ができる。情報リードというのは圧倒的だ、
1機補足、
始まるや否や、開幕で後方へABした事もあってエンタングルの横槍は間に合っていない。まずは向こうが此方に接近するまでの間で後方のもう1機を片付ける。
「私が殺ったのは……618だったか?あれも悪くはなかったが……今度の猟犬は異質だな。」
「……スッラ、何故この仕事を知っている。」
私がどう動くか、何を成すかによって人の台詞が変わる事はよくある話だ。当たり前だが、人は生きているのだから。
特にヴェスパー、レッドガン、解放戦線の人達は何処に所属しているか、どう接してきたかで大きく変化を見せる。
だが、企業に所属しておらず、独自の行動理由を持つ独立傭兵は話が違う。特に、戦う時期と理由全てが固まっており、彼自身も他と関わりが薄いからこそスッラの変化はほぼ無かった。
「あまり手を煩わせるな……ハンドラー・ウォルター。余計だ、
後方に誘き寄せるのを待ってから、再び施設側へと一気にABで突撃する。不明機体、もといAMの手先のゴーストはそちらにも2機潜伏して此方を狙っている。
すれ違いざまに
振り切る為にたまらず何度も横へブーストを切り、ENが限界まで追いやられる。息切れしては供給が却って遅くなり、足回りが悪化する。やむを得ずABを停止する他なく、思ったよりも突き放せていない。
だが時間は稼げた。この僅かな間でゴーストへ接近し、逃げの体勢に入られる前に思いきり―――
特徴として、遠距離での闇討ちを得意とするこの敵機は、一度接近すると逃げの姿勢に入るまで大きなインターバルがある。逃がす事なく大技を叩き込むチャンスが明確にあるのだ。
無論、それに
あと1機を補足し次第、とっておきのレーザードローンを溜めて射出。急接近し―――合間から追いついたエンタングルの
スタッガーに陥ったゴーストを、結合して包囲したドローンが蜂の巣にする。これだ、この武器はこれがいい。本気になったフロイトもよくやる手法だが、ACとは独立して駆動するこのドローンは言うなれば第三の手でもある。
本体の行動可能・不可能に囚われずに攻撃を行うそれは、相手のスタッガーを先読みして一気に攻め落とす、例えるならば即死コンボに高い適正を持つ。
高いセンスと実力を持つ本気のフロイトと、
「不明機体の反応は消えたか。621、あとはスッラを撃破しろ。」
一対一になれば、もう
バランスは中々悪くないし、こう見えて基本に忠実な内容だ。しかしパルスガンははっきりと言うが浮いている、対パルス防壁性能以外があまり高くなく、AC相手だとちょっと避けにくいし決定打にはなりにくい。
堅実な作りだからこそ、実力で勝るならば順当に戦って負ける理由がない。私の強さはズルした強さだが、だから何だと言うのだ。
「この感じは第四世代か、上手く育てれば優れた猟犬になる。だがお前……危険過ぎるな。その噎せ返るような臭いで分かるぞ、何が何でもここで消えてもらうのが上策だ。」
……間違いない。ここまで露骨な態度を見せられれば、嫌でも気づく。スッラは
でなければ、そんな言葉選びはするまい。戦闘は見立て通りにこちらが一方的な優勢だ、このまま一気に片を付ける。
相手の
既にQBを使ってジェネレーターが息切れしているエンタングルが接近を拒むようにパルスガンとプラズマミサイルを放つが、ABで衝撃に耐性を持った此方を押し止める程の力はない。このまま推力に任せて
至近距離まで密着したこの状況、今正に一斉射を開始せんとするドローン、そして溜めたこのパイル―――
「限界か……潮時だな。ハンドラー・ウォルター……忠告してやる、喉を噛み千切られたくなければ、その猟犬はやめておけ。」
―――その言葉と共に一瞬の溜め動作を見せて、
微塵も想像していない相手から、
まずい、これは―――し、死ぬ?まさかこんな所で、死ぬ!?折角上手く行っていた筈なのにここで―――
「……敵ACの離脱を確認した。」
ふぇ?……。
ウォルターから告げられたその一言で、動転していた内面が落ち着きを取り戻してゆく。
何故、撤退を?というか、追い打ちは?今やられたら正直死んでしまうと思ったのに、一体どうして?
「621、奴等の事は気にするな。だが……よくやった。仕事に戻るぞ、センター内部に侵入し、目標を破壊しろ。」
……得てして、初めてのスッラ生存という現実に直面してしまった私は困惑に包まれながらも、素早く平静を取り戻した。
こういう時、私は便利な作りになっている。私の内に渦巻く感情の大部分は
彼女達の内、一部は
想定外の感情流出は稀にあるが、私自身は未だ再手術もしていない、感情も希薄寄り、まだまだ色々リハビリ最中の旧世代型でしかない。そんな自分の性質に今だけは感謝する。
だが、果たして彼は……スッラは今ここで生き残って、後でどうするつもりなのだろう。一体、何をするというのだろうか。
スッラを撃退しても、目的は遂げられていない。恐らくは
急ぎ足になりたい気分を抑えながら、施設の奥へと降下してゆく。
「それだ。中央にあるデバイスを壊せ。」
待ち望んだ時までもう少し。左手のパイルバンカーを思い切り叩きつけ、粉砕してやる。
「621、よくやった。仕事は終わりだ、帰投しろ。」
終わってないんですよ、ウォルター。無論そんな事彼は知る由もないだろうから責める謂われは無いのだが。
「……これは!?まずい、退避しろ、621!!」
予定調和、予想通り。何時ものようにコーラルの逆流が発生して、その押し寄せる波濤に飲み込まれてゆく。
……嫌だなあ、いつだって。私は、私だからこそ、この後待ち受ける
────────────
周回。一言に言うならばそうなるそれは、死に戻りとも類似する。実際、大部分は死に戻りだ。その人生を全うした覚えは一つたりとも無いし、まともな結末でさえ途中で
私を形作る重要な要素。記憶をズルして、技術を積み重ねて、知識を蓄える。全て他の人達が出来ないようなとんでもない方法であり、アドバンテージだ。
それが、唯一
コーラルの奔流に呑まれ、意識が散逸しそうなこの瞬間は私達の結合が最も曖昧になり緩む。つまり、今の私の自我と、私達が積み重ねた記憶全て―――その大部分を占める苦痛が押し寄せる。
痛い、熱い、苦しい、寒い、凍える、殺される、死にたくない、殺したくない、何故、何で、助けて、嫌だ、私だけ何故、こんなに繰り返す。積み重なった自我全てが、一斉に混濁した意識で混ざり合う。
私にとって覚えのない、私の事。その狭間を行き来するのだ。初めの頃はただコーラルを浴びて酷い目に遭うだけだったのが、今やこんなケチが付いてしまった。
耐え難い苦痛を、尚も耐えて進もうとするのは……私に他の選択は無いから。そして、今度こそは―――
『あなたは……?』
その声で、この無限地獄から
『第四世代、旧型の強化人間。あなたには、私の「交信」が届いているのですね。……私はルビコニアンの、エア。』
知っていた。待っていた。あなたに会いたい、だからこの苦しみさえ耐えて此処に来たんだから。
『目覚めてください。あなたの自己意識が……コーラルの流れに散逸する、その前に。』
ゆっくりと―――意識が、戻ってゆく―――
────────────
【強化人間 C4-621 生体反応を確認。オートパイロットを解除、ハンドラーへの通信を接―――】
そんな事になってしまっていたのなら、恐らく初週の私は耐えられなかっただろう。いや、正直に言えば耐えられなかった私は山程いたのだが。
『レイヴン。敵性機体の接近を確認しました。』
嬉しい、その声をいち早く聞きたかった。あなたが居ないともう落ち着かない、私の初めての友達……エア。
希薄な感情でさえ、心臓が僅かに高鳴る。抑揚のない潰れた声さえ、上ずってしまいそうになる。あなたもまた、ウォルターと同じぐらい特別な存在だから。
『あなたの脳波と同期し、「交信」で―――?』
しかしここで、困惑の色を示しながら次の句が差し止められた。
『レイヴン。質問を……よろしいですか。』
「……?え、と。」
いきなり質問が飛んできた。一体何を?……いや、そうじゃなくって、違う違う、それどころじゃあないんだ。
『あなたの脳波は現在、私に対して……「
敵性機体が接近している事を思い出した所で、どうやら
しまった、
が、そんな事は今考えるべきではない、それどころじゃあないから、待って待って。
「それ、あと、で。いま、てき……くる!」
『―――っ、はい!後で沢山、お話してもらいますよ!』
そう告げられて、私もまた楽しみにする。
違う、あいつじゃない!
視界の果てから、紅と黒の二色で形成された
一体、どうして?何故こんなに、いつもと違う事が連続している?
『メインシステム、戦闘モード再起動。敵機について調べました。』
エアが異常事態によってシャットダウンされた戦闘モードを強制的に再起動し、戦闘態勢を整える。
普段全く起こらない、新しい敵。目の前のそれは赤と黒、ベイラム製ACに近いような堅い作りをした中量級と思わしきAC機体を相対した。
何も知らない、何も分からない。この機体は一体何?少なくとも、惑星封鎖機構のものだというのは確かなのだろうけれど……と思考を巡らせつつも、打って出たのは相手から。瞬間、全身に悪寒を感じた。
いきなり
ACのアラート機能によってそれを察知し、何とか横へのQBで回避する。どうやら先程の直感はこれに対してらしい。
『惑星封鎖機構の
なに、それ。初耳。というか、今のは一体何?本来ならば、あれだけ大型のグレネードやキャノンを二脚のACが足を止めずに撃つというのは不可能だ。可能なのは、四脚ACとタンクACのみ。
理解の範疇を越えた動きに戸惑う暇もなく、今まで見た覚えもないような大型のパルス弾が、
ガリガリと
たった数発受けただけで、大きく耐久を奪われ、しかも甚大なACS負荷がかかっているのを感じる。見た覚えも聞いたこともないような武装ばかりが突き付けられている。
こんな機体を惑星封鎖機構が隠し持っていたと?じゃあ、何で今まで使って来な……あ、しまった。
『通常の市販品では全く出回っていない、特殊な性能の武装で身を固めています。特に、類似する市販品を大きく凌駕する出力を持ち、連射性能に優れた
もう体感済みですそれ。……成る程つまり全身が市販品ではない完全の
冗談きつい。何なら今説明されていなかった右肩のミサイルが放たれ、これも市販品とは乖離した性能をしているらしい。猛烈な速度と誘導性を伴ってこちらに追尾してきている。
何処ぞの頭ミサイルが出している
相手の手の内を伺うため、というのは建前で回避するのがやっとだ。今も執拗にパルスライフルの弾丸が飛んできているが、回避しきれず何度か被弾を許してしまっている。辛うじてスタッガーは免れているものの―――
【リペアキット、残数2。】
切らされた。こんな力戦、壁の撤退支援以来だ。あっちは被弾も已む無しな事情はあったが、こっちは純粋に……実力勝負。その実力で、猛烈に逼迫している。
『また、エネルギー処理が特殊なジェネレーターとブースターを使用しているようで、実質無制限の各種ブースト行動を行ってきます。』
挙句の果てに実質EN無制限?な、なにそれ……ずるい……。ほ、本当に冗談か何かじゃないの?
『動揺しているようですが、冗談ではありません。隙のない相手ですが、
雀の涙ほどの弱点説明ありがとう、それは何の慰めにもなってません。
と言いたいが、実際に正しい弱点のようだ。遠距離から相手の様子を伺って手出し出来ないのも困るため、様子見程度にレーザードローンを射出してみた所、確かに躱しきれていない。
全弾命中とは言わない。言わないからこそ、とても困った。遠距離からちくちくとドローン引き撃ちをしてもいいのだが、普通に削り負ける。あの猛スピードで飛んでくるパルスライフルとミサイルを、普通に躱しきれないのだ。
隙あらば足を止めずに撃ってくるグレネードという特大のズルによって、一瞬で
……完全にアセンが仇になった。重ショットガン二丁は文句なしに強いが、積極的に接近戦を挑まなければ確実に腐る。そして此方は相手の手の内を知らない。当然だ、今まで見たことも聞いたことすらも無いのだから。
手の内を知らない相手に迂闊に突っ込むのは危険だ。相手はまだ、
左肩にマウントしっぱなしのパイルバンカーなんて、こんな相手にどう叩き込めと言うのか。レーザードローンだけでスタッガーなど取れやしないし、スタッガー以外で叩き込める筈もない。
つまりこのままでは、私の武装は殆どが死に武装だ。遠距離戦をドローン1基で押し込める相手では全くない。
『レイヴン、遠距離での削り合いは不可能です。あなたの武装構成では、完全に削り負けます。隙を伺って近接戦に持ち込み、応戦を。』
「わか、って……る……!」
焦るな。落ち着け、まだ往なせている。致命傷ではない、死傷にはまだ至らない。厳しいけれど、勝てない相手じゃない。私はちゃんと、
まずは隙を伺う。
二連ミサイルが此方を追い回し、同時にまたパルスライフルが追従する。
【AP、残り50%。リペアキット、残数1。】
危険域に突入した耐久に、リペアキットで回復を入れる。
ドローンを飛ばし、じわじわと相手のAPが削れるのを確認する。まだだ、まだ足りない。もう少し我慢しなければならない。
ちりちりと、心の底で暗い感情に火が付く。死にたくないと叫ぶ心、痛いのは嫌だと叫ぶ心、そんな全てよりも大きい声が轟いてくる。
―――倒せ、勝て、価値を示せ!
勿論だ。私は強化人間C4-621、ウォルターのたった一人遺された猟犬、獲物へ食い付いて離さず噛み千切る爪と牙。―――出来る、私はやれる、やれば出来る子。
私を見初めてくれたウォルターに、私に託してくれたハウンズに、恥をかかせはしない。彼ら彼女らが誇れる私であるために……
「こんな、とこで……死ね、ない……!」
【リペアキット、残数なし。】
"今"だ。敵機の耐久が6割まで削れ、相手の攻撃の後の合間、そこを縫うように
今まで付かず離れずの遠距離戦をしていた所から、一気に距離感を揺り動かす急接近。耐久はある、負荷限界もまだ平気、如何に威力が高いパルスライフルの射撃と言えど、
此処しか無い、もう他にない。概算はしていた、AB中の耐性があればあの攻撃でスタッガーは起こさないだろうと。実際それは正しく、尚も距離を詰める。
ミサイルが此方に飛来する。だが、如何に本来のスピードを凌駕する専用品だろうとABに追いつける訳ではない。振り切って、突き放す。
最後の防波堤と言わんばかりにグレネードを突き付けて放たれたが、来るのが分かっているならば横にずれるだけだ。そんなみすみす突っ込む程に馬鹿でも下手でもない。
―――来た、この距離ならばショットガンの距……
『―――!?レイヴン、危険です!距離を!!』
―――そうだ。
だが、この距離ではまだ有効射程じゃない。だとしたら……そう考えた瞬間には遅く。ギリギリでこちらの
予想もしない、
突き付けられる、
「ッさせ、るものかぁぁぁあ!!」
瞬間の判断、迷いなく
―――こんな所で死ねないという本能が、最速の判断を導く。巻き込まれた相手は
『今です、レイヴン!!』
炸薬が赤黒い敵機に突き刺さり爆発、そこから思い切り右足を引いてから
その一撃を以てして―――悪夢のような相手が、火花を散らして爆散した。
「……は、ぁ―――ッ、あ、かふ……ッ、た、おせ……た……?」
息が、荒い。しぬかと、思った。不安定な激情で火がついた感情のあまり、滅多に乱れない呼吸と心臓がこれでもかと酸素を求めている。
仮に、こいつがバルテウスの代わりに最初から来ていたのならば。そんな想像を一瞬して、やめた。余りにも恐ろしいから。
『敵機システムダウン、破壊を確認。完全停止です。』
「……よ、かった。かて、たよぉ……へ、えへへ……。」
エアから告げられた言葉で、ようやっと勝利の実感が押し寄せ、力が抜けていく。APの残量を見てみれば、実に4割程度だった。……ほ、本当に死ぬかと思った。
二度とこんなのと戦いたくないので、量産機と聞こえたことは今からでも無かったことにしたい。全力で。
『……レイヴン、あなたには休息が必要です。それから……私と、あなたについての関係を、教えてもらってもよろしいですか?』
「ん……いぃ、よぉ。……で、も……ちょっと、きゅーけ、ぇ……してから……。」
くたくたになっているので、説明義務を一度投げ出して、少し休む事にした。ウォルターとの通信が復旧する前に済ませないと、
────────────
『……つまりあなた、えっと……貴女は既に私と何度も出会っていて、しかも……今回は完全な人とコーラルの共存の道を探ってくれるのですか?』
「ん、そぉだよ。えあ、ともだちだから。」
小休止を終えてから、私はエアに対してあれこれと説明を続けていた。私について何処から何処までを話すべきかと思ったが、とりあえず周回している事を話すのは大前提。
ウォルター達、OVERSEERについても話した。そしてこれを踏まえた上で、対話の手段と和解の道も一緒に探している事も告げた。これは全員を生かすための協力者としてエアを誘致する必要があるからだ。
私個人では、はっきり言ってこの計画は成立しない。ハッキング能力、通信技術、そういったものが欠如している。直球に言えば電子戦がてんでダメなのだ。
そりゃそうだろう、私はただACに乗って戦う為の強化人間なんだから、そんなものが上手くてどうするのか。……というのを考慮しても、エアのそっち方面の技術力は驚異的だ。何せ、その気になれば惑星封鎖機構の衛星砲すらジャックしてしまうのだから。
これから沢山忙しくなる。あっちこっちに通信の代理を以来する羽目になるし、暗躍もしてもらう。その為には彼女ぐらいの技術者がいなければ前提が成り立たない。……なんてガバガバの作戦!とは言わないで欲しい、AMと一緒みたいで傷つくから。
『と、友達……友達、ですか。わ、私が……?……ありがとうございます、レイヴン。なんだか……ふわふわして、気分がいいです。』
「んへぇ……よかった。それで、ね。あとは―――」
コーラルリリースについても、軽く触れた。ただしこれは警告に近い形で、だ。彼女は人類の事を
そんな事になったら、みんなで馬鹿騒ぎなんて以ての外だ。というか、何なら私まで
『貴女の望む、生きていて欲しい人達を全員生かすために戦う……その選択を、私も見てみたいです。任せてください、私が貴女をサポートします、レイヴン。』
「えへへ……ありがとぉ、えぁ。」
『……ところで、私が電子機器に対する卓越したハック能力があるなら、何らかの端末かコーラル駆動ACをウォルターに用意してもらって、実際に一緒にサポートした方が』
「それは、だめ。ばらすの、はやすぎると……かーら、きづかれる。」
『……。そ、そう……ですか。残念……です、レイヴン……。』
ものすごい残念がられた。そうなのだ、これだけブッ飛んだ電子機器へのハック能力があるならば、何らかの端末に入ってきて操作してもらえば比較的自由な自己主張や交流も可能になる。
だが、そうなると問題が一つある。OVERSEERの重要な観測者の一人、シンダー・カーラ。私が間違いなく生かしたい人の一人で、ウォルターの友人。もっと言うと、チャティの作り手。
ウォルターは、何度かの施行に於いてエアの存在を伝えた場合、コーラルを焼き払う事を諦めて共存の道を探ろうともしてくれた。恐らくものすごい悩んだ末に、だが。
カーラは違う。彼女は、コーラルを明確に宇宙汚染の火種になると判断しており、
ウォルターは情に流され、その上で選んでくれる。だがカーラは、情に流されず強固な信念の元に選ぶのだ。彼女は、敵にも味方にもならない選べない奴ではないから。
曰く、資源だと思っていた存在に人類に近い知性がある……つまり人権を認めないといけない程度の存在だった、なんて判明したら、尚更に世界は荒れてしまうと言っていた。その事は理解出来る。
この上で、問題は山積みだ。仮にRaD改めOVERSEERがコーラルに人権を叫び保護と共存の道を模索したとしよう。だが、それが何になる?
問題しかないのだ。RaDは技術者集団であって戦争屋でもないし、戦闘集団でもない。仮にそうして私達の味方についたとして、未だ資源としてしかコーラルを見ない企業連を、管理すべきとする惑星封鎖機構を退けられる力も持久力もない。
だからカーラにはバレてはならない、
決してウォルターの口が軽いとかそういうのではなくって、うっかり此方にエア用の端末やら機体を寄越してもらう時に、勘付いたカーラにバレる危険があるのだ。そうなるとやっぱり全部パアだ。
何せカーラはあの暗躍能力全振りのAM相手に、たかだか一回のゴースト接触を切っ掛けとしてハッキングを仕返したり、グリッド086での接触からちょちょいのちょいで接触するために連絡先を抑えたりする技術力がある。敵に回すとこうも恐ろしい相手なのだと改めて認識する。
つまり―――私達に必要なのは、現状は敵である
……
621
メインヒロインヒーロー合流!かと思えば今までの周回で見た覚えもないような出来事が連続しており困惑。しながらもハッピーエンドへのプランを練り続けている。頑張れ621、負けるな621。
今回の苦戦は主にAMに目をつけて貰う為、と盛大な八つ当たりが原因なので要するにこのちびすけのガバである。自業自得。
プランはAMよりよっぽどガバガバの見切り発車なのだが、そもそも前述立案に長けてないちびっこがこんな事をしている時点で大目に見てあげてほしい。
かつての自戒のためにそういう名前にしたの君でしょーが!
とっつき
デッドウェイト化しかけていたけど決める時は決めてくれるイケメン、今作はお前で〆ると滅茶苦茶絵になるからすき。
コーラル奔流
えげつない回数の周回を重ねた事で、意識の違法集団生活をやらかしている621はとんでもない懲罰を受ける羽目になってしまっている。かわいそ。
エア
自分のことをメインヒロインだと思いこんでいるメインヒーロー系Cパルス変異波形。最終ルートのあれはどう見てもヒーローじゃん!
脳波同調って事は621の思考による感情の波は筒抜けな訳で、実は半分ぐらい彼女の思考が読めていると言ってもいい。でも記憶を覗いたりとかはできない。
いきなり自分以外との交信以外の交流方法を提示されてウッキウキだったが、事情を理解してものすごいしょぼくれながらも我慢した。これから馬車馬のごとく働く羽目に。
ごす
スッラに煽られるだのコーラル奔流に呑まれるだのでこの1ミッションで胃痛がとんでもないことになった我らがごす。頑張れ、負けるな。いややっぱちょっと負けて曇っててほしい。
スッラ
まさかの戦線離脱して生存。一番生きなさそうな彼も周回を知覚しているようで、独自の思惑が……?
どんなルートであろうとも621を酷い目に遭わせてきたンハンドラー・ウォルタァー(ねっとり)曇らせのプロ。
AM
あれ、スッラ生きてるじゃん?これによりAMのプランは再設計、いよいよもって原作との乖離が激化し危険な領域へと突入する。ガバチャー同士一緒に頑張ろうな……
ヴェスパーとレッドガンと解放戦線
実はものすごく実利を伴った生存ルートだったという話。少なくともあれらの戦力を味方につけられないと、コーラルと共存の道を模索したところで「なにいってんだおめー」とフクロにされてお終いなのである。
惑星封鎖機構
ぶちギレ封鎖機構。先遣隊がコード78Eなんてものを送信してしまったので、原作ではアイスワーム戦の裏で起こっていた同時襲撃でやられてた程度の戦力が劇的に強化される事に。
要するにこのルートは封鎖機構超絶強化によるハードモードです!これで621がチートな分は相殺じゃい
⑨
AIが管理してる組織といったらやっぱこいつだよなぁ!?こんなもん量産すんじゃねえ馬鹿!!
武装は初代のものを完全に近代改修しているので超ヤバい。というか強化人間の各種設定がこいつ限定で現代に蘇ったせいでQBとABやり放題二脚なのにグレで足止まらないブレード光波も飛ばすのチート仕様。
弱点は初代にQBが無いからこその控えめなQB性能、という事になっている(出来ない訳ではない)。あとリペアキットと諸々のコア拡張機能もない、なくてよかったね。
バルテウス
あれ、俺の出番は一体どこ行ったテウス?
カーラ
ごすが「少し
芯の強い人なので、何の実績も後ろ盾もない状況下でバレても普通に敵に回る人だと筆者は思っています。そんな人が「選ばない奴は敵にも味方にもなれない」とか言わなくない?は口実で偉大な先駆者様方と内容カブりすぎんのもよくないという差別化点
※これは一フロム脳プレイヤーの意見に過ぎません、どんなカーラがいても素敵だと思います。なので是非私とももう一度ダンスを踊りま
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ルビ多くね?と言われ「た、たしかに……!」となったので、型番フルネームの部分とかを主にダイエットするようにしてみました。どうでしょうか、ご友人達。読みやすくなりましたか?
もし小説の書き方やこうしたらどうだろう、みたいなご意見があれば場合により承ります、一緒に素敵なダンスを踊れるように頑張りますね。
多くの評価、感想、お気に入り……とても励みになっております。
何分このような形での作品公開は初めての事で、至らない部分も多くありますが、これからもご愛読頂けるのであれば期待に沿えるよう努力させて頂きます。