少しでも補填するために可能な限りはほぼ日刊、にしたいなあ……。
ここからどんどん原作から乖離していく!
コア理論とコア構想。この二つは文字面だけは似通っているが、指している内容は全く違う。
構想の方は、AC……即ちアーマード・コアと呼ばれる、俺達が乗り回し戦場を駆っている鉄の体躯に大きく関わる構想と仕様。
本来、ACとはMTの発展形であり、共通化されたパーツを取り替えていって、あらゆる状況に対応出来るようにした汎用兵器……その発展形だ。
金はかかる、その上パイロットの腕前次第で鉄屑にも英雄にでもなる。だがこの兵器は紛れもなく"無人機の時代を終わらせた"とまで言わしめている。
この話の理由は単純で明快だ。ACというものは、高度に規格化され、
ACは人間の骨格に近い形、つまり人体を模した構造になっている。脚部については一部別だが、極力その存在は人間が動かすに際して差異が少ないようになっているのだ。
適正さえ十分にあれば、道理も知らない子供にさえ十全に動かせる。とどのつまり、金と頭数さえあれば
無人兵器の費用が膨れ上がる原因は多い。武装を多く強くすれば、それを使いこなす為のAIを組み上げねばならない。AIを搭載すれば、そこが機能不全とならないように保護する装甲を厚くせねばならない。
強化するのに山程の課題があるが、ACは違う。駆動させるための人間は適正があれば十分で、動かすのも適正があれば難しいが簡単だ。矛盾しているようだが、この表現は正しい。
COMが戦闘補助を行う戦闘モードでは、人形兵器である利点の多くを切り捨てて
例えばそう……FCS制御の行き届かない背後なんかには、視点を向けなければ攻撃が出来ない作りになっている。理論上は可能なのだが、腕のみを後ろに向けて射撃……などという真似は出来ないと言っていい。
こんな具合に、"出来るけど出来ない事"が多い。やれなくはないが、様々な理由から意図的にオミットされている。やれても構わないが、効果的に扱える確証のない様々な機能達だ。
俺はこれを"不自由な自由"であると考え、それ故に……必要以上に複雑化しない事によって、ACを操縦する敷居が今以上に高まる事を防いでいるのだろう。
「……だが、あいつは違う。」
これらの制約から逃れ、切り捨てて自由に戦うにはまず
無論、これによってACの操作は複雑化し煩雑化する。当然だ、今までCOMやFCSといった電子制御システムに丸投げしていた部分を自分でやらなければならないのだから。
だというのに、だ。あの猟犬は……ハンドラーの猟犬、レイヴン……或いは621は、やってのけた。俺よりも遥かに若々しく小さな少女が。
正直に言おう、滾る。ぐつぐつと、己の腹から煮えたぎるモノを感じる。羨望、渇望、そして欲望。あの猟犬が見ている地平を、俺も見られる筈だと。人間に不可能はない、俺にだって。
確信がある、あれは間違いなく
だからこそ、心が躍っている。あの底冷えがするような、果てしない研鑽を俺もこなせば
こんなに楽しいことが、他にあるだろうか?俺に勝てる相手も敵う相手もいない、寂しい孤独な頂上だと思ったら、感動する程の絶望的な断崖にぶつかった。
断崖だが、それは手をかけて登れる断崖だ。かける手すらもない滑らかな壁なぞではない、手をかければ直ちに崩れて消える砂上の楼閣でもない。
「お前が至るまでに、どれだけの研鑽がある?……ふ、ふふふ……楽しいな。やはり、あいつと戦って正解だった……。」
可能性に満ちているというのは、素晴らしい。ここまで来てまたあんなにも可能性を見せつけられるのは、思っても見なかった。
きっと、あれはまだまだ牙を隠しているだろう。俺との戦い、いや―――もっと言えば、俺以外の衆目に
理論上は可能な動きで、一体どれだけ差が付けられる?例えばそう、武装を握り跳躍や蹴りにしか使われていない手足をもっと使うようになれば、どう戦えるだろうか?
弾切れで徒手になるのは最悪の事態と捉えられがちだが、案外そうでもない。ブースターの推力と堅牢な腕を用いて繰り出されるパンチには、高い衝撃力と相手を釘付けにするだけの威力が込められているのは、俺のような腕前を持つ者には周知の事実だ。
ABによる爆発的推力を載せた蹴りが、軽いMT程度は容易く粉砕してのけるのは更に有名だ。しかし、そんな限定的な蹴りにしか用いないというのは勿体ないのではないか?
例えばそう、
楽しい。ああ、楽しいなロックスミス。俺とお前はまだまだ高く舞える、俺はあの猟犬にもっと追いつける。後半の戦いでは、何とか食らいつけた。
だが、あいつの見ている方向はまるで違った。あの牙は俺に向けられてなどいない、あの牙は俺の首元なぞに突き立てられていない。そう、
だからこそ、ゾクゾクした。あいつの牙に噛まれたい、あいつの牙で噛み千切られたい。食われてしまいたい。あの猟犬が本気で俺の喉元を食い破る時には、一体どんな動きをしてくれるんだ?
俺を見てほしい、俺だけに食らいついてほしい。あの猟犬を夢中にさせるものは何だ?あいつをその気にさせるには、どうすればいい?やはり、俺がもっと強くなればいいのか。
「次は……もっと面白くしてみせよう。ああ、邪魔だな……全く、安い連中が鬱陶しい……。」
コア構想に次いで、コア理論。今のAC戦を席巻する主流な考えの一つだ。近接戦至上主義とも言える思想であるこれは、今に至るまでのACの戦闘の在り方を大きく位置づけた。
実に当然の話だが、遠距離では着弾までの差がある。軽快な動きを可能とするACでその偏差による影響は大きく、せいぜい200mも離れてしまえば余程の速度が無い限りは大抵の射撃はQBによる急加速で回避可能だ。
無論、そうならないように弾速を高速化したリニアライフルなんかは回避困難だし、間断なくQBを吹かせば容易くENが底を突くのでライフルのばら撒きなんかはそう安々とQBをするべきではない。
だが、交戦距離が近づけば近づく程に、如何な高速戦闘を可能とするACでも回避は困難となる。当たり前の話だ。そうすれば、弾の無駄も減るし、良くも悪くも互いに戦闘はやりやすくなる。
結果として、ACの交戦距離は瞬く間に近距離主軸となり、遠くとも300mそこらで引き撃ちするような戦いが限度となった。
さて、ここで重要な話だが、FCSの制御下で戦闘をするACに於いては、各部パーツの合計耐久であるAP
何故ならば、機体の耐久とは
ACの中枢にして中心となるコア。コックピットも自然とここに格納され、心臓部とも言えるこのパーツを保護するのが総合耐久、APだ。ここが吹き飛べば連鎖的に操縦者も死ぬ、当然だな。緊急時の脱出レバーは迅速に引かねば生きて還れない鉄の棺桶でもある。
現在FCSはこの
これについては幾らかの弊害もあり、ちょっとした
しかしながら、もっと前の時代―――一体いつの話かは知らないが……もっと以前のACにとっては、部位の耐久度も重要視されていたという。
前時代のFCSはロック機能が今程には優れておらず、頻繁にコア以外にも攻撃が命中する。無論、現代でも脚部や腕部に攻撃が当たらない訳ではないが、かといって致命傷になる程集中はしない。
……その軛より逃れたとして、そして問題視されなかった各部位の耐久度が今一度重要となるような
これは仮説だ。あの猟犬がFCSを使わないマニュアルエイムでの攻撃を使っているとしたら、間違いなくこの仮説は正しいといつか証明されるだろう。
無論俺も、これを使いこなせるようになれば―――
色々考えはするが、これらの理論に全く当て嵌まらないのもいる。封鎖機構の連中が使うLCやHC、無人機……定まった規格でしか機体を使えないつまらない連中だ。
あいつらはコア構想とは全く別の理論で機体が組まれている。いるからこそ、遠距離機体も未だに使われていると聞くし、コアが中心に組まれてもいない。
何処まで行っても毒にも薬にもならない、本当につまらん連中だ。臨機応変さを損なったACなど如何に高性能でもつまらないだろうが。
そんなつまらない連中ばかりを相手取る最近は、本当に心底鬱陶しかった。どうにも、奴等は何かしらの原因で殺気立っているらしい。
無論、連中としては封鎖しなければならない惑星に勝手に進駐している企業も、原住民達も鬱陶しいのだろう。俺と同じ不快感を覚えているようで少しばかりは胸がすく思いだが、やはりどうでもいい相手だ。
せめて、俺がこれから体得する技術の叩き台位にはなってくれればいいが。
「フロイト……何時までシミュレーターに籠もっているのですか!私を態々付き合わせておいて、全くこの男は……。」
「……何だスネイル、まだいたのか。」
シミュレーターの外から、ご立腹のスネイルが俺を引き摺り出した。全く、小言の多い男だ。
「まだいたも何も……試合待機中の状態で籠もりっぱなしだったのは貴方でしょうが。次をやるのかやらないのか判断が付かないから見てみれば、考え事とは。あまり待たせるなら仕事に戻らせて貰いますよ。」
そういえばそうだった。正直、俺とまともに張り合える相手というのがスネイルか新進気鋭のラスティ位しか居らず、気安く付き合ってくれるのもスネイル程度のものだからこいつを引っ張ってくるしかないのだ。
ラスティに関して言えば、俺の事を個人的に嫌っている上に、どうにも
別に、ヴェスパーが雑魚とは言わない。寧ろ上澄みの方だろう。だが、はっきりと言うが……
そうなってしまえば、俺を差し置いて次点に置けるスネイルを練習相手にするしか考えられなかった。そのスネイルでも、やはり足りない。
足りないが、足りないなりに得られるものはあった。試せば試す程に、FCS無しの戦闘は難しかった。だが、
「ああ、今日はもう戻れ。」
「……!!え、ええ。そうさせて貰います。……フロイト、貴方は第一隊長なのですから、己の本分を忘れないでください。私は応急処置中で使い物にならない第七隊長の代役で、業務が山積みなんですよ。」
本分、つまり他勢力の排除や要衝となる拠点の奪取。だが今は、そんなどうでもいい事よりも強くなる事の方が、よっぽど重要。
今の一言でスネイルの眼鏡がズレたが、見慣れた光景だ。
「苦労をかけるな、スネイル。」
「苦労させている自覚があるなら、もう少し自分でも色々やって欲しいのですがね……!!」
首席というのはいい。強いからこそ横暴が罷り通るし、強くなる事に専念出来る。スネイルに皺寄せが行くが、こいつは働いている方が似合っている。
所謂腐れ縁だ。文句も不満も言うが、それでも俺の自由を妨げようとはしないのだから、好きにやって応えればいい。
────────────
目の前の鹵獲機体を見ながら、考える。惑星封鎖機構という、世界全体の平和というお利口なお題目を掲げて、有無を言わさない排除ばかりを繰り返す笑えない連中の特大兵器を。
AAP07: BALTEUSと呼ばれる無人機、こいつを解析して技術的に取り込む事が出来たのならば、RaD……いや、オーバーシアーは特記するべき駒を手に入れる事が出来るだろう。
先の機密情報漏洩阻止から派生した、グリッド086での迎撃戦。ウォルターの飼い犬であるビジターとの出会いは山程の問題と躍進を呼び込んでくれた。
大概自分のせいというのは反省しているが、それ以上に不可解な事も多い。それについて、ずっと考えていた。
「ボス、根を詰めなければならないのは分かるが、無理が祟っているように見える。温かいフィーカを用意した、これでも飲んで小休止するべきだ。」
キュラキュラとキャタピラ音を響かせ、当人のACを模した子供のような背丈の可愛らしいボディでマグを運んでくれるのは、"
気の利いたタイミングで、気の利いた小言を言いつつも私を補佐してくれる。実際問題、かなり参っていた所なので助かった。
「ありがとう、チャティ。でも、おちおち休んでもられないのさ。封鎖機構の後ろ盾がより確かなものになる前に、奴らの立場を分からせる必要がある……。」
今回の話は、複雑だ。先ず以て、ビジターに付き纏っていた無人機が実に不味い。あの封鎖機構の隠し玉、都市伝説とまで言われていた筈の
ハウンズが全滅したと聞いて、心中穏やかではないだろうウォルターに追い打ちをかけるような情報。はっきり言って災難と言う他ないが、それを当然のように撃退してのけるビジターも大概だ。
実力は申し分ないと聞いてはいたが、想像以上どころか想像を絶する。あまり想像したくもない事態なのだが、仮にあれが裏切ったりしたとすると、単独でオーバーシアーを壊滅に追い込みかねない特記戦力だ。
本来はウォルター子飼いの猟犬にある筈もない、考慮する必要さえ無い事態の筈だが、困ったことに
HAL826、ウォルターの愛機であり忌まわしき技研の遺産。そして最後の安全弁として設計された
妙なことになった。ひょっとして貸し与えたのかと聞いてみれば、それもまた違うとの事で、話が拗れる一方でしかない。挙句の果てに話を掘ってみれば、意味不明な、天文学的な領域のCOAMを所持していたとか。
何もかもがおかしい。それだけのCOAMがあるなら再手術をして普通の人生を買い戻すなど容易い。つまり、ウォルターに飼い殺しにされる必要など欠片もない。だろうに、首輪を掛けられっぱなしで命令に従っているのだという。
……かと思えば、時折命令無視して独断で行動したりもするが、それがウォルターを害する結果に及ぶような事もない。違反するのだから飼い犬に手を噛まれたかと言えば全然そんな事もないと聞いて、そりゃあもう乾いた笑いが出たものだ。
せめてそこはスッパリと裏切るぐらいの選択をしてくれた方が、まだ判断が付けやすくて助かったのに。縁起でもないが、心底そう思う。
ウォルターに従う合理的理由が見当たらず、命令違反はするが主人に害は成さず、私達の真の目的に大きく抵触するような重要なモノに触れている。これらの前提がある上で、ビジターそのものの存在が最大のノイズだった。
何を隠そう、当の本人が齢20にすら満たない本物の少女だ。治安に定評のあるJAPANという国でさえ、婚礼が非合法なレベルの。そんな少女が前述の様々な要因を持ち合わせていると想像すると、冗談でも笑えないし、笑えなさすぎていっそ逆に笑えてくる。
誰かに何かを吹き込まれているか?と考えたがその線もあまりに薄い。あのウォルターの管理下なのだから当然だが、余計な事をしでかすような害虫はいない。
ならば、それならば一体どうしてこんな話になってくるのか。一つとして説明の付かない現状に、頭痛さえ覚えるようだ。しかもグリッドで披露した戦いぶりを見るに、FCSすら使っていない疑惑がある。
ACという機体は、不自由な自由の下に汎用兵器としての運用性を確保している。それ故にCOM制御下でオミットされる機能が数多く存在し、腕部と脚部を通常以上に活用する立体機動なんかはその一つだ。
しかしビジターは、それをやってのけた。壁蹴りによる立体的な戦闘に、反動すら活用する戦闘。FCSに頼らない攻撃の先置き……それら全てを使いこなして封鎖機構の処刑人と、大型の無人機、そして所属不明の機体すらも同時に圧倒した。
現実離れしたふざけた話だ。……考えれば考える程に行き詰まるこの話題から、一旦思考を逃がすためにフィーカへと手を伸ばす。差し出されてから幾らか経ってしまったため、程よい温度まで下がり、酸味と苦味が頭を叩いてくれる。
「目も離せない今、次の一手を急ぐ必要は理解している。だが、あんたが潰れてはRaDは立ち行かない。」
「わかってるさ、チャティ……そうさね、清濁併せ呑む……毒を食らわば皿までと行くべきか。選ばずにナヨナヨしてるのは、私らしくないね。」
何方にせよ、即決即断で行くべきだ。白黒はっきりしない灰色ならば、色が分からなくなるまで塗りたくってやりゃあいい。一先ずはそうするとしよう。
では、次の問題だ。惑星封鎖機構がコウモリ野郎どものバックに付いた事と、目の前に転がってる機体について。
正直、かなりマズい事になった。惑星封鎖機構とはいずれ事を構えるか、企業とぶつかって貰う必要があるのだが、今のRaDでは勝算が限りなく薄い。それが本気を出している封鎖機構ともなれば尚更だ。
短期的な決定打はウォルターのHALが持ち合わせているものの、あれは最後の切り札。あれを切ってしまえば企業からも目を付けられかねないので、奥の手としたい。よって使用は差し控える。
コヨーテスの連中が万一にも上客、相応しい協働者として見据えられてしまえば手遅れになる。やぶ蛇を突いて大蛇が出るなんて笑える話ではない。とあらば、今は品定めしている最中であろう所を叩き、カタをつけねばならない。
無論、あの野郎どもを分からせるための花火大会には間違いなく連中から待ったが入るだろう。最悪の事態を想定し、少なくともこの目の前のとんでも兵器を取り込んでしまいたい。
だが、どうしたことか。実質オーバーシアーの技術者であるRaDを以てしても、このバルテウスなる特型無人機は大部分が難解極まるロックが施されていた。しかも、一部には忌々しい事に技研の技術と思わしき点すら見受けられる。
辛うじてバラせた部分としては、動力制御系統とそれに紐付けられた、規格外のパルスアーマー。ACの拡張機能で発動するような、時間経過であっさり解除される生易しいものではない出力だ。
こうなってしまうと、機体のフレームとその直結されたアーマーだけをぶっこ抜く程度しか利用する方法が無さそうで実に惜しい。いや、正直に言ってそれだけでも十分なのだが。
「バルテウス……。封鎖機構が抱える上物の機体が丸ごと手に入ったっていうのに、このザマとはね……せめてこいつを使い物に出来るようにしておかないと、コウモリ野郎どもを叩き潰す時に困りそうな気がするが……。」
珍しく、話が分かる
そんな過剰戦力を跳ね除けたビジターも大概笑える奴だ。いや笑えないね……最悪その矛先が此方に向かうと思うと冗談きつい。しかし、現状は向こうも此方を利用しないと困るのだから、協力はしてくれるだろう。
だろうが、果たして今度はそれだけの戦力で留まるだろうか。
留まらないだろうな、という予感は大いにある。だからこそ、今のうちにせめて整備を―――
「……閃いた。」
「閃くのはいいが、一段落したらちゃんと寝てくれ。あんたの身体をこのボディで運ぶのは大変だ。」
「分かった、分かったよチャティ、前向きに検討する。」
色々考えてボツにしたおもちゃ箱の中から、こいつならば少し面白いモノを積めそうだ。そう閃いた私はすぐさま図面を引っ張り出して作業に取り掛かった。
どんと来い封鎖機構。あんたらにも愉快な花火ってもんを見せてやろうじゃないか。
────────────
「ぐっ……また負けたか、やるようになったなイグアス。」
シミュレーション機から出たヴォルタが、此方に声をかけてくる。現在は連戦を繰り返し、キャノンヘッド相手に勝ち越すようになっていた。
だが、足りない。こんなものではまるで足りない、足元にも及ばない。10戦やって10勝、100戦やって100勝出来るようにならなければ届きすらもしない。
遠い、遠い、あまりにも遠い。だが、追わずにはいられない。同じ世代、同じ旧型。だからたどり着けない理由も追い越せない理由も何一つ無い筈だ。
一生と心臓を引き渡して尚、足りるのか?あの絶望的に高い強さに、この手すら届くというのか?
「足りねえよ……こんなもんじゃ何も足りてねえ、お前にケチ付けられてる程度でも、ミシガンの野郎に一発かませる程度でも……!」
最早、レッドガンに居座る目的全部がどうでもよくなった。価値も意味もないプライドを後生大事に抱えてここまで来た、今更になって捨て去る事は出来ない。
そのプライドの矛先が、ミシガンのクソ親父から野良犬に挿げ替えられただけ。
あいつは、化け物みたいな封鎖機構の赤い処刑人をまるでオモチャのように砕いて見せた。俺がやっとの事で半分削った無人機を、ガラクタみてえに弄んでいた。
猿の如く飛んで跳ねて、機体がまるで本当に自分の身体の延長線のように振る舞って見せた、
アラート一つ鳴らない攻撃の先置きに、COM制御に影響されてないかのような立体機動。ACという機体について血眼になって調べて知ったが、あれは普通はオミットされた機能だそうだ。
使いこなせる保証が無く、暴発して持て余すようならば切り捨てる。そうやってOFFにされている機能がACには多数あるという。つまり、あの野良犬は
封鎖機構の連中は理不尽に見えたが、そんなものよりも遥かに理不尽だと思った。二脚以下の機体でちょっとグレネードの発射で足が止まらない
隔絶した差だ。しかし、俺には上手く使いこなす為のコツが掴めずにいた。第一、FCSを切って戦うというのがイカれている。幾つかテストを繰り返して知ったが、FCSなしのマニュアルエイムならばアラートは鳴らない。
だがアラートが鳴らないからといってどうなる。ACによる高速戦闘はFCSの自動補正による偏差攻撃無しにはマトモに攻撃を当てられたものではない、そんな事が出来るのは未来予知でも出来る奴か化け物だけだ。
そう、奴は化け物だった。
「……あんま熱くなりすぎんじゃねえぞ。お前は強くなってる、間違い無え。あの野郎に一発食らわしたいってんなら、今度戦場で一緒にかち合うのをせいぜい祈ろうや。」
隣にどかりと座り込み、煙草に火を付けた。此方にも一本差し出してくるので、受け取って火を付ける。
嫌味ったらしい煙の味と爽快感のある味が混じり合って、抜ける。思考に不純物が混ざって一瞬だけ気が紛れたが、すぐにどうでもよくなった。煙草を吸っても最早何の慰めにもなりやしない。
唯一の悪友、無二の戦友。こうして隣に生きていると思えば少しは落ち着くものだが、落ち着きの後に苛立ちが押し寄せて、無力感に潰されそうになる。
「壁」の攻略で、間違いなくこいつは死にかけた。その窮地を救ったのもまた、野良犬だった。
「本当にこのままで……勝てると思うか?なあ、ヴォルタ……お前は野良犬が今どう戦っているのか見た事あるかよ。」
「無えよ。代わりに壁ん時は未来でも見えてるみてえなFCSロック無しの先読みミサイル撃ちをしてやがったぜ、イカれてやがる。」
ガリアのダムでやり合った時は、はっきり言って圧殺された。今更になって不意打ちのせいだどうだと言い訳を連ねる意味が無い、あれは絶対にナメられていたんだ。
圧倒的技量を垣間見た今ならば、あれが
あいつが本気になったら、そもそも攻撃を掠らせる程度が限界だろう。正面から付き合うのは所詮俺達がゴリ押しでどうにかなるし、効率的だから。
実際、手も足も出ない。ドーザー共の喧嘩でほんの一瞬かち合った時には、為す術もなく蹂躙されていた。横槍が無ければ間違いなく惨敗で醜態晒したのが見えている。
「……なあヴォルタ、FCS切って上手く戦うにはどう制御すりゃあいいと思う?」
「そういう話に一番向かねえゴリゴリタンク使いの俺に聞くことかよ、それ。」
……言われてみりゃあそうだ。俺が想像するような、野良犬のように壁を蹴って反動を活かして、みてえな戦い方とは最も縁遠い最重量タンクにはあの戦いは真似なんぞ出来ないだろう。
そもそもヴォルタがタンクを使っているのは、逆関節も二脚も、果てには四脚すらも合わない細やかさとはかけ離れた気質と豪快な性格に起因する。野良犬の戦い方と比べりゃ火と水どころでは済まない。
完全な感覚派、思考より先に手が出るタイプ。最近はそこを改める為に五の野郎に師事を仰いでるそうだが……いや俺も正直ヴォルタと似たりよったりだ。最近は野良犬に勝つ為に、無い頭を捏ね繰り回して手段を本気で選ぶようになっただけでしかない。
「だよなア……手が追いつかねえんだよ、余程近距離でもねえと弾が当たりやしねえしよ……。」
「一つ思うんだが。どうしてそこで
「お前説明絶望的に下手だ……な―――?」
そうか。
気付いたぞ。いや、何故今まで気付かなかった?そうだ、俺達は強化人間だろうが。
FCSを始めとしたCOM制御のせいで、物理的なデバイス操作ばかりを主に使っていたせいで、なまじ
コーラル施術によって強化された知覚は、これまた
無論、こういう機能が普段から使えないようにされているのには理由がある。一度面白半分で使ってみた事があるが、近頃感じる耳鳴りの非ではないレベルで頭が痛んだ。
あれを本気で使おうとした事は無かったが、仮に使うことが出来るならば……もしか、するのか。
野良犬はひょっとして、あんなものを使っていたのか?だとしたら変態にも程があるだろうが。イカレてやがる。
イカレているが……昔の漫画にはこういう台詞もあった。
「"狂気の沙汰ほど面白い"っつう事か……上等だよ、クソッタレが……!」
「お、おう……何かヒントになったなら良いがよ。あんま無茶すんじゃねえぞ、潰れられたら俺だって困るんだからな、イグアス。」
「分かってらあ。へっ……今度こそテメエに追いついてやる、野良犬ゥ……!」
────────────
初めは、完全に品定めのつもりでいた。
レイヴン、伝説の傭兵の名を冠する者、
だが、我々ルビコニアンにとっては重要な要素があと一つ。
感謝半分、憎悪半分。はっきり言うが、ルビコンは常に脅かされ、掠め取られてきた、不条理な歴史を持つ。アイビスの火が星を包んだ後、細々と暮らしてきた我々の希望は限りなく潰えつつもあった。
昔ほどコーラルは採れず、ミールワームも満足に育てられない。井戸はいつか枯れ、繋ぎになるような井戸も見つからず……詰んでいると言っても過言ではないだろう。
だからこそ、あのリークは希望でもあり絶望でもある。開けてはならないパンドラの箱を開かれた気分になったものだ。
子供が飢えず、年老いた者も満足に過ごせるような安寧を掴めるかもしれない。そして、再び企業達がこぞって利益を求めて掠め取らんと迫り来て、封鎖機構が有無を言わさず全てを排斥しようとする。
敗色濃厚の戦、そうだとしても戦わねばならない。限りなく薄い希望を勝ち取って、明日も続く平和と豊かな暮らしを取り戻す千載一遇のチャンスを。
「……戦友。君と並び立つには、私はどうすればいい。」
敵にして味方。怨敵にして……今や戦友であり、本来守るべきであろう立場の、年端も行かぬ少女だった。
目を疑った。現実であってほしくはなかった。そして、最悪に近い想像だけが的中していく様には笑い一つ出てこない。
独立傭兵が十人十色なのは理解しているが、コーラルの存在をリークするなど火中に栗を投じるに等しい行為だ。仕事は増えるだろうし、止むに止まれぬ理由もあったのかもしれない。
せめて、彼女がハンドラーに頼らぬ独立傭兵ならば。文字通りの独立傭兵で、何ら不自由もない立場の者であって、あのような壮絶な強さを……背景を持ち得てさえいなければ。
どのような思想を以て、リークをしたのか。どのような背景を以て、戦っているのか。それを知りたかったが、あまりにも多くの事を知りすぎてしまった。
彼女は……
他者を圧倒し寄せ付けないような、隔絶した圧倒的なまでの強さ。
あの強さは、誰かを害する為のものではない、
己の骸を無数に踏みつけてでもいるかのような、そんな戦いだ。常人では想像も付かないような経験が滲み、染み出している。
「私は、誰にこの感情を向ければいいというのだ……。」
彼女のハンドラーが外道であれば、ハンドラーを恨めば良いだけだった。その強さの所以が、下劣極まる強要に依るものであり、有無を言わさず手に入れさせられたのならば。
だが、違う。彼女のハンドラーは善良極まっており、寧ろ彼女の事を最大限慮ってすらもいる。そしてまた、彼も彼女について懊悩する……ある意味では、私にとっての同胞とも言うべき人だった。
恨むべき相手が、いない。憎むべき相手が、存在しない。存在するとするならば、彼女に戦いを強要するに至った境遇と、戦いを生む我々しかあるまい。
彼女のような少女が……子供が戦わねばならない世界というのは、歪んでいる。未来を創るべき子供が未来を奪われるなど、何もかも間違っている。
そんな間違いの権化が、何よりも間違っている我々よりも遥かに強いのだから、己の戦う意味さえ馬鹿げたものに思えてくる。
フロイトに言わせてみれば、強さに貴賤はないのだろうが……危うすぎる。理由なき強さは全てを焼き尽くす暴力になりかねないが、こんな理由で戦うのは―――
悔やむべきは、彼女を戦場から引き離す事すら叶わない己の無力さと、その上で利用せねば掴み取れない、ルビコンの明日。結局、これはトロッコ問題に等しい話だ。
或いは、彼女こそがルビコンの火種となってしまえば……。
「縁起でも……ないな。考えないでおこう……。」
そうなれば、いよいよお終いだ。彼女に勝てる相手など居はしないだろうな。私でさえ勝てるか怪しい相手のフロイトでさえ、1割の勝利が限界だったのだから。
一番恐ろしい事実は、
……何故、私を好いているのだろうか。たった一度の協働で、どうして此処までの好意を抱かれているのだろうか。
私は彼女に酷いことをしてしまった。彼女が大切に思っているハンドラーへ、場違いな敵意を懐き剥き出しにした。その一件で彼女を泣かせてしまった。
あの時の出来事が、今も胸に突き刺さっている。ハンドラーの言葉も、罪悪感を強く沸き立たせた。彼と彼女は互いに思い合う大切な主従だというのに、私はただ愚かだった。
強く、ならねばならない。ルビコンの焼けた空に明日を掴む為にも、彼女の好意を受けるに相応しい自分である為にも……私は弱くてはならない。
「私は、君と同じ所まで飛んでみせる……いや、越えなければならない……。」
今日もまた、記録されたフロイトと彼女の模擬戦闘のバトルログを再生する。彼と彼女の戦いから、得られる全てを己のものとする為に。
621
スパムメール男に応えた結果、裏でものすんごい矢印を向けられている事に一切気付いていない。どうしようね。
しかもどんどん向けられる矢印の数と大きさがインフレしていく。大変だね。
でもお願いだから惑星封鎖機構からの殺意の矢印だけは帰ってほしいなあ。
フロイト
フロイトが模擬戦をしたせいで強くなります。なんてことを……。
凡才という自覚故に努力を怠らず、それ故に他の追随を許さない秀才。
戦いが絡むと勘も抜群にいいのでラスティがスパイだとバレているが、別にどうでもいい上に何か本気出して無くておもんないから黙っている。
スネイル
スウィンバーンが使い物にならなくなったので、現在簡易的な記憶処理で応急処置の最中。
惑星封鎖機構がピリピリしてるので手駒が減るとものすごい困る事に気付いたため、再教育センター送りは取りやめになった、よかったね。
スウィンバーン
青◯のタケってるビビシばりの震え方をしている。恐怖心 俺の心に 恐怖心。
現在は記憶消去処理中なのだが、何回やっても恐怖心が消えなくて大変。
コア理論&コア構想
色々あって本作ではこういう形の解釈になった。あのオートロックがあったらそりゃ部位ごとのAPとか気にしなくても良さそうだよね……っていう。
しかし今回、各々の強さへの渇望からそうも言ってられない事態に……?
兵器としてのAC
機能が矢鱈と多かったら、プレイヤーとしては大変だよねみたいな話。コントローラーで割り当てきれない操作とかあってどうすんねん!
そんな理由で過去作の操作やら色々な機能がオミットされている、という設定になった。
バルテウス
アーキバルテウスになった時、ミサイルや火炎ブレード類が一切なかった理由が「封鎖機構の武装がブラックボックス化しているから」という事にしてちょっとやそっとじゃ解析不能に。
これに則して仮にナインボーの武器をパチっても意味がない。残念だったな!
ところで俺、これから一体何されるテウス……?
チャティ
RaDのチャティ・スティックだ。俺にはペ◯パーくんみたいなお手伝い用のサーカスボディがある。
要件はそれだけだ、じゃあな。
フィーカ
チャティの淹れるRaDのフィーカは苦い。決して泥水のようなフィーカではない。
HAL826
あのフレーム、普通にウォルター以外が持ってたらホラーだよね……。
イグアス
主人公になりきれない男、覚醒の兆し。
そろそろ野良犬に対しての特大矢印のサイズ感が大変になってきたが、未だに中身がロリっ子な事は知らない模様。ミシガンもかくやの厳つい野郎辺りだと勘違いされている。
ヴォルタ
完全な感覚派。センスは悪くないが、雑だしセンスだけで戦う男。それが強いから問題なのだが、ミシガンにはやっぱり勝てない。
ACからCOMの制御で普通はオミットされている封印指定機能、という設定になっている。
なっているのだが……光が逆流しないといいですね。
ルビコンの明日を掴むより、目の前の女子供の理不尽な強さと境遇に打ち震える男。
それでも選ぶのはルビコンの明日ではあるが、このままではいけないと思っており……?
完全にノイズ。カッコ良くて使いたいってだけの動機で積んでたせいでひたすら戦友の頭を困惑させている。