その鴉は賽を砕く   作:HI-32: BU-TT/A

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ご友人達をお待たせして申し訳ない、若干不定期更新気味ですがお許しください。

これも普通にやってて「いやなんでベリウス戻ってんねん!」になったミッションその3 しかも強制だし
イカレた花火大会の始まりだぜ!


大型ミサイル発射支援 ALT MISSION

 

 

「待たせたね、ビジター。あんたに一つ仕事を頼みたい。惑星封鎖機構に尻尾振った、小賢しくも利口なコウモリ野郎どもをお仕置きしてやる準備が出来た。」

 

 随分とかかってしまったような気がするが、幾つかの仕事を先んじて片付け、ようやっとカーラの花火大会の準備が整ったとの報せを受けた。

 これについては得られるものも多かったし、後に一々ベリウスまで戻ってまた中央氷原に戻るという真似をしなくても概ね良くなったので、総合的に見れば時間的コストはプラスだろうか。

 全部丸く収める為にも、出来る限り急がないといけない。集積コーラルにたどり着いた時に、手遅れになるレベルで潮位が上がっていたらどうしようもない。

 

「後ろ盾を得て調子づいてるせいで、頻繁にちょっかいをかけてくる。お陰であんたを海を渡る為の手段になりそうな所まで連れて行けやしない。」

 

 一応、そもそもの目的はアーレア海を越えて中央氷原へ移動する事である……訳ではない。毎回毎週、駄犬にならなかった全ての"私達"が基本的にそうしてきたからそうしているが、ウォルターからは休めと言われているのだ。

 休めと言われているのに成り行きでエアに勧められて気がつけばカーゴランチャーで海越えというのも、何だか妙な話。……ひょっとしてエアって結構鬼畜か?

 

『……れ、レイヴン。何となく私を非難しているような気がするのですが、時間的猶予が無いのですよね……?け、結果的には良い方に転んでいる筈ですし、その……。』

 

 冗談冗談、別に責めてない。あとナチュラル思考盗聴やめよ?……いや止めるも何もないんだったね、うん。まあいいや。

 

「折角仲良くしようと案内を申し出たってのに、義理一つ通せないのは笑えないからね。本当は自前の戦力だけで解決したいが……封鎖機構が手を出してきそうだと、技術屋集団のRaDじゃ戦力的にも心もとない。」

 

 本来ならばとっくのとうにグリッド上層で蜘蛛と戯れ、アーレア海の筈だ。既に向こうで極地対応の為に幾つかの調整を終えた後、活動を開始していてもおかしくはない。

 もっと言えば、今頃とっくにお冠の封鎖機構が艦隊を引き連れて全面展開している頃合い、なのだ。……しかし今回、その封鎖機構が主に私と企業達に対して武力制裁を加えんとピリついており、どれだけ影響が出ているのか未知数。

 今回の件なんかはいい例であり、ヴェスパーがちゃんと中央氷原に進駐出来ているのか、先行調査が出来ているのか、といった疑問もある。別に相当しくじっている訳ではないだろう、というのは一種の信頼だろうか。

 

「もうちょっとだけ手伝っておくれよ、ビジター。うちらの流儀と花火ってもんを、奴らに見せつけてやろうじゃないか。」

 

 何方にせよ、どう転ぶにせよ、こうしてお声がかかっているという事はカーラからの戦力評価が勝ち取れているという証左にもなる。計画の前段階としては重畳だ。

 とあらば今回のアセンは防衛戦に向いた構成にする必要がある、のだが……。

 

「えあ、どーおもう。」

 

『……。私は貴女の周回全てを知っている訳ではないのですが、少なくとも今回の状況は"異常(イレギュラー)"があると判断します。』

 

「だよねー。」

 

 全員救うと決意した回に限って、今まで遭遇もした事無いような状況にかち合う。なんというか、自分の不運を呪いたくなるばかりだ。そして今回はそのイレギュラーの最たるもの、惑星封鎖機構が絡んできている。

 これで普段通りに事が進行したら、いよいよ何を信じ何を疑えばいいのか判別がつかない。事によっては()()が来るのも想定するべきだろう。ううむ、気が重くなってきたぞ。

 別に単独で相手するのはいい、以前ちゃんと戦えるどころか、多対一でも捌けると判明した。遮蔽のある場所でならば更に良いが、ミサイル防衛地点は少し微妙だ。微妙だが何とかなる範疇だろう。

 問題は、ミサイルを防衛しながら相手しなければならない事だ。もっと言うとミサイル集中狙いなんぞされた日には幾らなんでも止めようがない。

 

『一応ですが……ナインボールは飽く迄も、貴女を排除する事のみに注力しているようです。現在の交戦履歴や解析した敵機への命令から見るに、ミサイルへ集中砲火をする可能性は薄いと思われます。』

 

 ……。いや、エアの圧倒的ハッキング技術は既に知っていたのだが、たったの二回の交戦で既に逆ハックまで仕掛けていたの。怖。

 無論、この感じでは指示内容を閲覧した程度なのだろうが……この情報は大きい。向こうが態々此方だけを狙うならば、上手く立ち回ればいいだけだ。

 

「すごいね、えあ。ないすはっく、ちょうたすかる。」

 

『!……どういたしまして、レイヴン。私に手伝える事は、今はまだこの位ですから……お役に立てたなら幸いです。』

 

 コーラル動力を用いたACを用意すれば、戦場でも役に立ってくれるだろう。しかしそれはエアの存在が明るみに出てしまうという事でもある。時期尚早だから、今は出来ない。

 出来ないが、きっとその時には心強い味方になってくれるだろう。そう考えながらR.I.P./Rのアセンを組み替えてゆく。

 必要なものは、ミサイルにちょっかいを掛けてくるコヨーテス撃退用の兵装に、万が一を考慮した対ナインボール用の武器だ。なので、実質的な敵はナインボールのみとなる。

 忌憚なき意見を言うと、ここで攻めてくるMTなど物の数ではない。流石に四脚タイプを一度に何体も相手にするとしたら骨が折れるが、あれは此処に持ち込むには重量の都合で来ないのだ。

 久しぶりの"生かす戦い"ではない、好き放題出来る作戦になる。が……嫌な予感ばかりがする。こういう時の直感は信じるに限る。

 左手にLR-036 CURTIS(軽リニア)、右手にMA-J-200 RANSETSU-RF(ランセツ)、スタッガー時の追い打ちとして右肩にSONGBIRDS(二連装グレネード)、左肩には万一に備えてIB-C03W4: NGI 028(コーラルシールド)

 脚部は無論、私の戦法と技量が最も活きる逆関節。ジェネレーターには最近かなりイイ性能になったAG-T-005 HOKUSHIを選び、コア拡張に万一の備えでターミナルアーマー(食い縛り)

 予測可能な不測の事態に備え、作戦開始だ。

 

『惑星封鎖機構の襲撃が想定される防衛戦……サブミサイルの追加報酬は、あまり計算しない事にしましょう。貴女の安全が第一です、レイヴン。』

 

「ん。……でも、できるだけ、がんばる。」

 

 COAM、つまり資金事情としては報酬は一切必要ないが、この戦いはカーラからの信頼と戦力評価稼ぎの延長線上でもある。可能ならば、あれも守った方が良いに違いない。

 

 

 

【メインシステム 戦闘モード起動。】

 

「早いね、ビジター。本当なら先に始めてるつもりだったんだが……配置につきな、調子に乗ったコウモリ野郎共がもうすぐそこに来ているよ!」

 

『……。本来の作戦開始時刻よりも早く出立した筈なのですが、聞いた筈の"普段通り"よりも更に早まっているようですね。』

 

 見慣れたウォッチポイント・デルタの高台から勢いよくABで前進開始。EN容量を使い切らないように寸前で止め、広域レーダーの敵機シグナルを確認してそちらに寄っていく。

 既に左右に展開しているが、左の方がやや近いか。ENの回復を確認してから再びAB、大幅に距離を詰めてから有効射程でランセツと軽リニアで一体ずつ撃破していく。

 HOKUSHIはルビコン星内企業であるBAWSがエルカノと共同開発した、星外企業のそれと比べても見劣りしないジェネレーターのフラグシップモデルだ。重量もそこそこにEN容量に優れ、補充性能と出力も悪くない。

 欠点は一つ、ENを使い切った時の復元性能が決定的に悪いのだが、そこは技量一つでどうとでもなる。よって私はこれを度外視出来る。まさか今更、EN管理を失敗するようなお茶目で哀れな私はいない。()()()()

 ……玄人ぶって使おうとした時期があったが、その時はまあ使いこなせなくて弱ジェネレーターの烙印を押したものだ。いや、正直言うと今より性能も劣っていたから仕方ないのだが、そこは最近行われた企業一斉の上方修正の賜物だろう。素晴らしい。

 右側の防波堤まで迫ってきたMT部隊も軽く一蹴する、所詮は寄せ集めだ。

 

『敵勢力、第一波の殲滅を確認。』

 

「ボス、準備完了だ。ミサイル発射シーケンスに入る。」

 

 エアからの殲滅確認が上がり、抑揚のない落ち着いた声が聞こえてくる。彼……彼?便()()()彼とまた会えるのも楽しみにしていた。彼だって、救いたい人……ひ、人……?の一人……?一機だ。

 大筋から外れようとせず、歩んでいる時に必ず犠牲になってしまう。お喋りAIであるチャティはAIであるにも関わらずバックアップは取られていない。

 

「紹介がまだだったね、ビジター。チャティはうちのシステム担当だ、無口だが、仕事はできる奴さ。さて、あんたにはその調子でコウモリ野郎共を蹴散らして貰おうか。」

 

 ある意味で、カーラの子供のような存在。そんな彼がバックアップを取られていないのは―――単純に、カーラの美学だ。

 苦しい時こそ笑い、生きる。AIだろうと死にもう一度(コンティニュー)があってはいけない。生きるとは、つまりそういう事だから。

 ……だとしたら、私は余りにも"生きる"という事からは掛け離れてしまった。私の事を全て知れば、カーラはどう思うだろうか?

 怒るのか、呆れるのか、それとも憐れむか。悪い人ではないが、彼女は芯の通った心の強い人だ。だからこそ、今回の最大の障害足り得るのだから。

 もし、私の事を知られる事があったのなら……せめて、笑って欲しい。こんなに藻掻いて足掻いてその果てに、強欲にも無謀にも全てを選ぼうとする愚か者な私を。

 

「全く……長いものに巻かれようとはね、ドーザーがまともな判断しやがって。第二波が来る、近寄らせるんじゃないよ!」

 

 敵影反応が増え、左方向からMTを多数積載したヘリが飛来する。無論そんな事は()()()()()、先回りし待ち構えていた私は、溜めた軽リニアとランセツを叩き込み、二連装グレネードで一機も残らずMTごと撃墜する。

 輸送ヘリ迎撃のコツは、積載中のMTを降下させる前に落とす事だ。戦闘モードも未起動の状態で叩き落とせば、為す術もなく纏めて粉砕出来てお得。

 今は惑星封鎖機構が長いものだが、私がそう成らねばならない。上手く立ち回り、企業も解放戦線も、カーラ達も納得させ、来る大禍へ一致団結し備えるだけの動機を、私が与えねば。

 

「手際がいいねえ、ビジター!コウモリ野郎が不憫になるよ、付くべき相手を間違えたって徹底的に教えてやりな。」

 

『レイヴン、左手方向の後は正面から来ます。その後は再び左方向から、それぞれ迎撃しましょう。』

 

 既に情報共有済みの敵襲パターンを頼りに、てきぱきとやって来るMTを先回りし撃破。先読みとナビゲートが合わさり、軽くズルしている気分に……いや、まあ正直これがズルなのは認める。

 最も、万一にこれがズルだとしてもたかがMT程度にやられはしないのだが。

 

『次の増援は中央のブリッジ方向からです、建物の上で待機して迎撃するのがよろしいかと。』

 

 一瞬だけ同調を行い、密集した施設の壁面を蹴って蹴って素早く一番上へ。奥からやって来るヘリが団子になっている所に合わせ、二連装グレネードを的確に叩き込む。

 余ったものだけ軽リニアで狙撃し、ヘリ付きの増援はこれで完封。右側から来るMTにも先読みした位置にグレネードを叩き込み、爆風で纏めて粉砕。

 

「ぞろぞろと来たコウモリ野郎も一瞬でパアかい、容赦ないねえ。待つ時間も花火の内なんだが―――っと、更に来るよビジター!」

 

『新たな熱源反応……トイボックスによる第三波が前倒しで送り込まれたようです、気をつけて。』

 

 RaD謹製の火力型重MT、トイボックス。ダンゴムシのような見た目をしているが、積載ギリギリまで重武装に仕上げられたそれはBAWSの四脚MTにも劣らないだけの武装がある。

 前回はそれはもう、酷い改造をされていたが……今回のはちゃんとマトモなやつだった、良かった。良かったが、どうにもコヨーテスは迎撃ペースが早すぎて焦ったのだろうか。

 しかし焦ることはない。落ち着いて建物の上からロックし、装甲に包まれた円形から展開するのに合わせて―――グレネードを発射。

 ガン、ガン、と砲塔から爆薬の放たれる音。SONGBIRDSの囀りが虫を踏み潰し、嬲る。実にいい火力だ。

 

「連中はどうやら待つ楽しみってのも分からないらしい……数だけは多いよ、注意しな!」

 

『敵機反応をマッピングしました、レイヴン。右側からの方がより近いです、対処の参考にしてください。』

 

 続々と集うMTだが、幾ら束になろうと変わりはしない。少しタイミングが変わっただけで、敵勢力の内容には変動が無いならば、何も問題などない。

 ……しかし、惑星封鎖機構がだんまりを決め込んでいるのは気になる。強襲艦が攻めてくるのは相当後のほうとは言え、まだ何もリアクションが無いのは不気味だ。

 

「ミサイル発射シーケンス、50%完了。」

 

「チャティは順調なようだね。向こうも焦って敵を投入したせいで在庫が切れたのか、静かになっちまったが……妙だね、嫌な予感がする。気をつけな、ビジター。」

 

 既に2分と30秒が経過している。この状況で、何も起こらないという事は……。

 

「抵抗する不法戦力に告ぐ。武装解除の意思なき場合、その勢力は例外なく排除対象となる。繰り返す、例外はない。また、優先排除対象"レイヴン"に対しては排除を執行する。」

 

 グリッドとウォッチポイントの狭間、夜空の向こう側から空を切り裂くようなレーザー照射が海面に叩きつけられる。無情な警告と武力の象徴、惑星封鎖機構の強襲艦がその威容を示しながら接近してきた。

 以前の迎撃戦でナインボールが差し向けられている時点でお察しではあったが、どうにも私が此処にいる事がバレているらしい。やっぱり派手に騒ぎすぎ……いやよく考えれば騒ぎになったのは全部カーラのせいだ、こ、この人は本当に……。

 

「親玉自ら咎めに来るかい……予想していた事態だが厄介だね。しかもトイボックスのおかわりが来るよ、あんたのサイン待ちの行列がお出ましだ!」

 

 嫌なサイン会場だ、勘弁してほしい。と言っても誰も聞いてくれないので足早に対応開始する。いよいよ対処が追いつかないので、FCSを切って同調開始―――肉体が機体に馴染む。

 近場に降ってきたトイボックスを軽くレーザー照射に蹴り込んでやって焼き切ってもらう。友軍識別はしているかもしれないが、これだけ広範囲の攻撃にもなれば巻き込まないは結構無理があるのだ。

 そのまま中央ブリッジに降り立ったトイボックスへランセツとリニアライフルを溜め撃ちで同時発射。本来ならば不可能なのだが、その反動を強引に踏ん張って抑え込み、余すこと無く叩き込み撃墜。

 一番離れた位置にいるものは、先読み撃ちのSONGBIRDSがその二発の嘴を以てして食い散らかす。これでミサイル防衛に際して最大の敵となるトイボックス三体を撃破完了だ。

 素早く機体を切り返し、ブリッジ側面を蹴って大きく跳躍してからAB。強襲艦へ飛び移り、機銃掃射とミサイルを強引に突き破りながら艦橋に取り付き、蹴りを放ってから両手の銃を乱れ撃つ。

 堅牢な船体に対して、明確に弱点となっているここを叩けば撃墜はあっという間。そこかしこが爆風を発しながら沈んでゆく。

 

『惑星封鎖機構の強襲艦、並びにトイボックスの撃墜を確認。』

 

「やるじゃないか、ビジター!いい余興を―――いや待ちな。」

 

「システムに、コード78Eを再度送信―――ナインボール()の投入認可を……確認―――」

 

 ……。

 ものすごく聞きたくないものを聞いてしまった。

 

『レイヴン、多数の熱源反応……ナインボールが五機、接近しています!!

 

 聞きたくなかった、悪夢のような一言。周辺のMTを手早く処理し、危機感と共に全速力でウォッチポイント迎撃地点からブリッジの奥、施設側へと突っ込んでいく。

 ミサイルの近辺は不味い、遮蔽も全然なければ護衛対象がある。あんな所でナインボールを、五機も同時に?……夢なら覚めて欲しい。流石に手に余るというか、生きて帰れるか一気に怪しくなった。

 たかがミサイル発射でこんな事態になるとは、誰が思おうか。とにかく今は生き延びる事とどう戦うかを―――

 思考が忙しなく巡り続ける中で、悪夢のようなパルス弾とミサイルが夥しい数で殺到する。第六感を信じて壁面を強く蹴り飛ばし、全力回避した上で咄嗟にコーラルシールドを展開し……足の骨を砕かれるような壮絶な痛みを感じる。

 

【AP、残り50%。リペアキット、残数2。】

 

 ほんの一瞬の被弾だった筈なのに、しかもきっちりジャストタイミングで防いだというのに瞬く間にこれだ。痛い、というか痛い、痛くて痛くて仕方ない―――食い縛れ、耐えろ。こんなの、ファクトリー送り(全身バラバラ)にされた時より遥かにマシだ。

 

「ビジター、大丈夫かい!?……こりゃ不味いね、流石のあんたでも―――チャティ!()()()()は出せるかい!?」

 

「……1分かかる。ビジター、それまで何とか耐えてくれ。」

 

 何かを企んでいるらしい二人の言葉が聞こえるが、それどころではない。幾ら準軽量機のR.I.P./Rでもこんな速度で削られるのは冗談では済まされない。万が一を考えてシールドを持ってきて正解だった、展開していなければ今頃爆散していた所だ。

 絶え間なく飛び交うパルスライフルに、異常な量が飛来する二連ミサイル、そして一瞬でも隙があれば刈り取ろうとしてくる大型グレネード。何一つ油断ならない状況で、ブレード光波は執拗に距離を取っているから飛んでこないのは唯一の救いだろう。

 

『レイヴン、この状況は危険すぎます!ミッションを放棄して、生き残る事を優先してください!』

 

 果たして放棄して、こいつらが逃してくれるだろうか。そんな想像が付かない。というか振り切るのすら怪しいというのに、どうしたものか。

 次から次へと、一発一発が致命打になりかねない攻撃が驟雨の如く降り注ぐ。壁を蹴って得られる推力で大部分は振り切れるが、これだけの量だとそれでも足りない。だからこそ上半身を捻り、二連装グレネードを間近のあらぬ方向へ撃つ。

 ガン、ガン、と放たれた鳥の囀りは、爆風を伴い反動と爆風で機体を押しのけ、遥か遠くへ羽ばたかせる。以前中型のバズーカでやった反動による跳躍だが、二連装でやると狙い通りに強い推力を齎してくれた。

 勢いに乗り、被弾を抑えながら更にリニアライフルの溜め撃ちで後押しし、とにかく離れ、振り切る。

 少しでも敵機のフォーカスを切れるよう、嘗て襲撃した時に投下地点だった場所まで逃げ込む。こっちまで来ると施設の下部、水面とギリギリのラインがかなり入り組んでおり、気休めながらも追跡を防げるだろう。

 

「あと30秒保たせてくれ、ビジター。」

 

 少しばかり余裕が出来て、聞こえた通信からはまだ1分も経っていない事を告げられた。体感ではもっと経っているような気もしたが、厳しい要求をしてくれる。

 施設下部の合間、そこを縫ってパルスライフルが幾つも飛んでくる。支柱やら何やらにぶつかって防がれるものの、頭数のせいで普通にナインボール一機分ぐらいの量は余裕である。

 余りにも天井が低いこの場所では壁も蹴れないが、この距離感ならばQBとコーラルシールドで何とか凌げる、凌げるが―――じり、じり、と肉を削がれ焼くような痛みが身体を苛む。

 

【AP、残り50%。リペアキット、残数1。】

 

 苦し紛れに牽制でランセツと軽リニアを何度も撃っているが、全力で引き撃ちしているのもあって適正距離ではない。跳弾した弾丸が虚しく金属音を響かせるに留まり、赤色の死神たちが殺到する。

 グレネードは撃てない、緊急時の回避推力として使う。とあらばもう、カーラ達の企みに賭けるしかない。多分碌でもない事だろうが、此方を害するものではないと信じよう。

 ……だが、妙だ。視界に映っているナインボールが一機少ない―――

 

『レイヴン!()()()!』

 

 ―――瞬間、目の前に降ってきた死神はその手に携えた断罪の刃を振るい、伴う光波諸共私の肉体(AC)を両断した。

 

【AP、残り30%。リペアキット、残数なし。】

 

 意識が明滅する。いたい、いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!

 機体内部で血反吐を吐き、頭が割れる苦痛。腹がばっさりと切り開かれたようで、しかしどれも錯覚。緊急用のアーマーが展開され、爆散寸前のAPを保護する為に身を守ったのだと遅れて理解した。

 第六感を信じて採用した甲斐があった。急ぎ目の前の死神から逃れんと前に躍り出て、その機体を蹴って飛び、更にグレネードの推力を得て大きく突き放す。

 気が狂いそうだ、手と指が震えてマトモに照準が出来ない。呼吸も荒い、動きに精細を欠いている。幸いにも戦闘らしい戦闘中でなくて助かった、やってられない。

 

『逃げてくださいレイヴン!後方から追い打ちが来ます!』

 

 強烈な衝撃により大きく損耗した機体を走らせ、壁面を蹴って施設下部から上に出る。更に地面を蹴って再び施設の奥、迎撃地点側へ。

 果たして一体何秒経ったか数えも、覚えてすらいない。そんな余裕は一切ない。だから"多分"そろそろ一分だろうという根拠のない直感を信じて逃げる。

 すると、施設の奥の方から何か機影が近づいているようだ。気にしている余地は無い、今はただ逃げる。

 

「ボス、配置に付いた。いつでも()()()。」

 

「よく耐えたよビジター、これから迎撃地点まで戻ってきて―――その先に見えたモノは一旦味方だと信じてくれ。構わず全力で()()()()()()()()に回るんだ!」

 

 何が何だかよくわからないが、思考すらままならない今は最早どうだってよかった。ただ、この絶望的窮地を打破する何かがそこにあるのだという事だけを理解した。

 カーラの言葉を信じ、チャティを信じ、ひたすらABを吹かし、EN管理だけは絶対怠らない。呼吸を忘れても、機体操作だけは忘れない。仮にこれを怠ればEN供給が遅れ、そうなれば後ろから押し寄せる死神に蹂躙されてお終いだ。

 壁を蹴り施設の上に立ち、更に壁を蹴り―――見えたのは。

 

『あれは―――バルテウス!?ですが、友軍タグが付いています……レイヴン、今は指示通りあの機体の後ろへ!』

 

 嘗てあの機体と戦った場所で、今度は味方側として会う事になるとは。……なんて郷愁、浸る思考すら惜しい。痛みを噛み潰し、何度も何度も背に迫り来る怖気から逃れんが為に機体を走らせる。

 そうして機体の後ろに付いた時、もう500m圏内にあの恐ろしい赤が映り込む。

 

「あの処刑人共五機同時に、よく耐えたね……ビジターの分まで、RaD流のおもてなしを封鎖機構の連中に堪能して貰おうか!チャティ、"やってやりな"!!」

 

「了解した―――起動シーケンス全適応完了、マルチプルパルス、起動。」

 

 冷静な声が秘密兵器の起動を告げ、バルテウスのミサイルポッド―――のような見た目をした()()()()を展開。その後……

 

『凄まじい熱源反応……レイヴン、目を閉じてください、危険です!』

 

 爆音と、光。その二つが視界丸ごと埋め尽くすような衝撃を伴い、悪夢達(ナインボール)を余すこと無く粉砕した。

 何がカーラを突き動かすのか、何がカーラをそうさせるのか。クリーナー君に積まれていたような常軌を逸する威力の兵器、その同類であろうモノがバルテウスに積まれていたのだ。

 

 敵を木っ端微塵に消し飛ばした後、バルテウスも煙を立てて火を吹きだした。

 

「ボス、敵機殲滅完了だ。ミサイル発射シーケンスも完了した、いつでも行ける。……ただし、バルテウスの機体損耗が激しい、回路がショートしたようだ。この機体はもう保たない。」

 

「一回限りとは……いや、ビジターに恩を返せただけ上出来としようか。チャティもビジターもよくやってくれたね……さあ、派手に打ち上げるよ!星になりな、コウモリ野郎共!」

 

 苦労の甲斐あってか、それともナインボール達が私にしか興味がなかったせいと言うべきか。ミサイルはサブ含めて傷一つ付いていなかった。

 目下の脅威が取り払われ、ようやっと安心して同調を切り、脱力する。そのまま何をするでもなく、呆然と打ち上がっていくミサイルを眺める。

 

「ビジター、着弾予測地点を表示しよう。」

 

 漸くいつものように、いつも通りの光景へ。チャティが打ち上げ花火の直撃ポイントを示し、そこにミサイルが炸裂していく。

 

「……ちょっとずれたか?まあでも、大体計算通りかね。」

 

 何故だろうか、普段通りの筈のミサイルの炸薬量が随分と多い気がする。やはりカーラもご立腹なのだろうか。

 

『レイヴン、綺麗な花火ですね。』

 

 その言葉と共に、やっと―――本当にやっと、この戦いが終わったのだと実感した。

 酷い目に遭った。

 

 





621
 ナインボールを班規模で送り込んできた封鎖機構にも、マルチプルパルスをバルテウスに積んだカーラにも後からドン引きした。
 今回は完全に被害者。

エア
 あれを綺麗な花火って言うのは大分コ波感だと思う。
 滅茶苦茶死にかけたレイヴンに内心ものすっごく焦っていた。最強クラスの活躍しか見せてない彼女にも弱点やどうにもならない状況がある事に、直接的な手助けが出来ず歯がゆい思い。

カーラ
 名誉挽回のボス。武装がブラックボックス化していて禄に使えないなら、その矢鱈と高い出力を活かしてOW使えばいいじゃん!という発想に。
 結果としてバルテウス君は使い物にならなくなりました、南無。

チャティ
 ボスが楽しそうで何よりだ。

ナインボール
 量産機なのをいいことに五機という班規模で攻めてきた、イレギュラー排除の為なら形振り構わねえなこいつら。
 正直に言うなら所在が身バレしてる621にも問題がある。

マルチプルパルス
 バルス!! あいてはしぬ。

バルテウス
 影の被害者。武装ぶっこ抜かれたと思えば見た目だけ似てるヤバいブツをIN!どさくさに紛れてパルスアーマー展開機構までぶっこ抜かれた。
 えっ、俺の出番……これで終わりテウス???

AG-T-005 HOKUSHI
 アプデされて強くなってよかったね。
 使い切らないよう立ち回ればかなり優秀、迂闊にQB連発しないようにしよう!

IB-C03W4: NGI 028(コーラルシールド)
 全方位展開なのズルくない?あとパルスじゃないからパルス武器の影響も無いのズルくない?
 無かったら今回は間違いなく死んでいた。

ターミナルアーマー(食い縛り)
 3vs3のこいつ強すぎるんだけどマジで。
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