そろそろ原作から乖離し始めます。
「俺……レッドガンに入隊して、コールサインを貰うのが夢なんだ。」
如何にも優男風の彼は、隣に腰掛けてそう語り始めた。私にそっと飲み物を渡すという細やかな気遣いが、その人となりを感じさせる。
無名の一兵卒、ですらもない訓練生。グループ子飼いの部隊へのAC輸送任務を受けた彼は、元々レッドガンに憧れて大豊に入社したという。
撃破依頼を蹴ってまで助けて、親睦を深めた彼はいつしか私に気を許すようになった。その声色には、既に
「ふーん。……ゆめ、かないそ?」
「君に比べたら、全然だよ……センスはあると言われたが、まだまだレッドさんにすら及ばない。でも、最近は旧型ACでの輸送任務参加が許されたりもしたんだ。」
嬉しそうに語るその様子は、やはり人の良さが滲んでいた。真っ直ぐで、綺麗な心。きっとこの人は、コーラルを巡る争いに関わっちゃいけなかった人だ。
事実、私が彼の側に付く依頼を受けなければ、私が斬っていた。或いは、彼を襲ったヴェスパー部隊にやられていたか……今回はそのどちらも私が防いだが。
……ごめん。武装を揃えるお金が足りない時、君の事は何度も撃ったし、何ならアセンブルの試用ついでにボコボコにした事もある。本当にごめん。でも反省とかはしてない。
「ん。じゃ、がんば。おーえん、したげる、ね。」
そっと身体を傾けて、彼の方へと体重を委ね見上げる。私は人に寄りかかるのが好きだ。疲れないし、なんだか落ち着くから。
「……。お、応援は嬉しいんだけどな。君はもうちょっと……こう、距離感というものを考えないと危ないんだぞ?」
苦々しくも頬を赤く染め、ため息をつかれた。
「なんで?あなた、わたしに、あぶないこと……するの?」
「ぐっ……。し、しないさ……。しないけど……!」
改めて苦々しく顔を歪め、諦めたようにそっと身体を支えてくれる。
彼はただの訓練生で、まだまだ新兵でしかない。私には勿論、レッドガンの番号付きの足元に及びもしないけれど……。
ちょっとだけ、叶うことならば生きていてほしいなと思うぐらいには、いい人だったのを覚えている。
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「621、仕事だ。アーキバスグループから公示が出ている。」
時期を鑑みて、そろそろかなとは思っていた。"みんなに生きていてほしい"という願いの内、最初のものを叶える時が来た。
それと同時に、焼け石に水かもしれないが、最終的な目的のために是非生き残っていてほしい人でもある。アーキバス一強にならない為に、頑張ってほしい。がんばれ、きみならできる。
……同時に、ちゃんとこの方法で"生かせる"のかを今回も確かめないといけない。何度かの繰り返しで、過去の私は試行はしていたようだが……上手く行くまで安心は出来ない。
私は、私だ。だが、私じゃない。今までの私と、今の私は違う。この記憶の重なりが何処まで私であるかを保証するかも、そもそも何故こんな事になっているかも理解はしていない。
だが、確かなことは一つだけある。この手で選べるものを好きに選んで、理不尽でも生かす。そうしたいと選ぶのは、今の私。渡されたバトンを繋ごうとするのは、私だ。
「相手は試供サンプルとは言え、ACには変わりない。お前には要らん世話かもしれないが……気を引き締めて行け、621。」
【メインシステム 戦闘モード起動。】
「ミッション開始だ。目標を捕捉した。621、仕掛ける好機だ。」
開始と共に、勢いよくブースターを吹かせ急加速。アサルトブーストを駆使して
目標に辿り着くまでの間に、折りたたまれた両肩の砲塔が展開されてゆく。その武装は本来ならば
そして、幾度となく効率的に彼を叩きのめす為にぶつけた記憶のあるこれこそが、今回の……いや、今後含めて
俗称で、
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「燃料補給を終えたら、次の地点へ……早くレッドガンの先輩達に会いたいなぁ。」
青年は、憧れていた。木星戦争の英雄に、そしてその英雄が率いる地獄の部隊に。彼らの壮烈な名声と、その裏腹に英雄が部隊を大切にする優れた指揮官に惹かれていた。
幼少より訓練を重ね、自分と近い経歴を経てレッドガンの部隊に登用されたレッドの後進のような彼は、いつか彼らに会える日と、コールサインを貰える日を待ち焦がれていた。
大豊に所属していたのは、あくまで自分の才覚が開発者として向いていたから。なればこそ、憧れの人達を支えられるよう技師としてでも携わりたいと考えたからである。
本人はそれでもいいと考えていたが、ある日偶然にもACに乗る機会があった時、秘められた才覚を見出され、今に至る。彼にとっては、千載一遇のチャンスだったのだ。
遅咲きの才覚だが、今日ようやっとその夢に足がかかる。そう信じてやまない彼は輸送ヘリの補給が終わり、このテスターACを届けられる瞬間を楽しみにしていた。
だがその夢は、突如として帳が降りる事となる。
「うわっ!てっ、敵襲!?解放戦せ……うわああっ!?」
猛スピードでこちらに突貫する、恐ろしい暗色の機体。両肩に巨大な砲塔を備えたそれに見覚えはなく、独立傭兵のものかと判断するも、何もかもが手遅れ。
ブーストの勢いを乗せた二丁の
僅かに踏みとどまるかと思えば、そんな暇も与えずに
二発。一発は
「畜生、一体何が……!?こんな所で、死……ぎゃあっ!」
機能停止に追いやられ、カメラがフェードアウト。周辺状況の確認さえもままならなくなった機体から、
息もつかせぬ展開に頭は混乱し、乱暴な衝撃に舌を噛んで悶絶。その後何度か地面を転がった感覚がして、やや遠くから爆発音がした。
「だ、脱出機構が働いた……?な、何でだ?今、俺は何を……。」
混乱と困惑に包まれながら、どうにかハッチを開けて外に出た後、彼の目に映った光景は―――
「……え、ACが……破壊、されている……。」
理不尽にも粉々に吹き飛んだACの残骸と、今しがた自分が閉じ込められていた搭乗部だけだった。
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「……よかった。」
帰還して、輸送ヘリの中で一呼吸。今までの私達が検証し、実証をした"生かす為の戦い"が成功した事に、ようやっと胸を撫で下ろした。
やる事は単純だが、思ってみれば簡単な事だ。相手を追い込んで、ただワーム砲をぶつけて、あと一発で倒せる状況下でそれを
端的に言えば、スネイルにやられたアレだ。鹵獲用にも使えるのだから、最後の一発をこれで決め、黙らせたACからコックピットブロックだけを引っこ抜き、パイロットのみを生かして帰す。
機体にはそもそも、脱出用のレバーなんてものが備わっているのだから、出来ない原理ではない。ただ、至極難しいだけの事。
原理上、相手が脱出せず死ぬような時に用いる必要があって、トドメをこの方法以外で決めてはならなくて、コアに直撃させるとまずACを爆散させて殺してしまうので、それ以外の部位……出来れば足元に炸裂させないといけない。
特に、最後がキモだ。絶対に直撃させてはならないので、
その戦略上、スタッガー中にやらねば成功の見込みは皆無。尚且つ、少しでももたつけばスタッガーから立ち直られてしまう危険もあるし、相手の耐久を見誤れば
針の穴を通すような、冗談みたいな手段。だが、過去の私達はこれしかないと結論づけたし、何度か試行して、失敗はしたが成功もしてきたらしい。
……記憶に思考を巡らせると、この最初の一手さえしくじった回が何度もある。その後の私が何をしたのかは……思い出さない事にする。
繰り返し経験を積み、腕前の備わった自分の境遇に深々と感謝する。
この後徒歩で帰る羽目になるであろう彼は、頑張って歩いてほしい。そこまでフォローは出来ない。
「621、先程の仕事……何故パイロットを生かした?」
……至極当然の疑問が投げかけられる。ただ、この内容にはちゃんと対応を用意している。
「うぉるたー。このあと、みし、がん?に、わたし、あずけるよね。だから、こびうれるかな、って。」
この後行う
「……。通信履歴を見ていたのか、621。ハンガー内の自由行動を許可したのは俺だが、あまり勝手に覗き見るな。」
ACハンガー兼、私とウォルターの帰還先兼、拠点でもあるそこの自由な行動を私は許可されていた。この人は、本当に甘い。私に優しくて、尊重してくれて……だから、どうしようもなくても助けたくなった。
本当は通信履歴なんて見ていないけど、そう勘違いしてくれる分には説明の手間が省ける。
「ごめん、なさい。……でも、わたし、もっとうぉるたーのこと、そとのこと、しりたい。もっと、おしえて。」
「……。そうか、621。なら、次の依頼が来るまでの間、少し付き合ってやろう。」
「えへへ、やった。」
まるでウォルターの良心に付け入っているみたいだけど……それでも、これは必要な事だ。
絶対に、今度こそは絶対に、みんな助ける為に。
……あと、棚ぼたで一緒にいてくれるというおまけまで付いてきた。うれしい。
だって死神部隊のネーミングセンス超かっこいいじゃん!?
機体カラーリングはTENDER FOOTに近く、より淀んだ暗色。
例のアレ。暴力。
今作のキーマンならぬキーウェポン。
↑えっ?
脱出レバー
レッドガン部隊殲滅の時に言及があったり、各ミッションで何度か撃墜されても生存している奴がいるので、ACやMTにはコアからコックピットだけを切り離して脱出させる機構があるものと解釈。この621はそこをひたすらに突く事になります。
大豊 パイロット訓練生
原作から乖離して生存。この後愉快じゃない遠足をして帰る羽目になった。
いつかの周回で621に護衛してもらい、絆した。多分このひとフロム世界で生きるのに向いてない性格だと思うんだけど。
輸送ヘリ破壊
何事もなくだいたい無傷で殲滅、二話三話の繰り返しになってクドくなりそうなのでカット。