爆炎が、身体を包む。半端に再生されつつある感覚が、身を苛み苦痛を自覚させる。
熱い、痛い、苦しい、息ができない、頭が割れる。手足が潰れて、熱が逃がせなくて、胴体にぽっかりと、穴が……
あ、な、が。あいてるのは、わたし、じゃなくて……
まるで、自分が潰されたかのような、そんな錯覚が。鮮明な痛苦の記憶ばかりが焼き付いて、こびり付いて―――
「……借り物の翼では、羽ばたけないでしょう。「レイヴン」、私達の退場は、まだ先のようね。」
深々と、私の胴体をきり穿った
「ご友人……踊り疲れたのですね。花はどこだ……手向けなければ。」
いたい
「また一匹……お前のせいで死んだぞ?ハンドラー・ウォルター。」
くるしい
「もうおしまいかい?あいつの目利きも鈍ったかね……残念だよ。」
なんで
「……ようやく死んだか害獣。」
なんでわたしは
「……終わりか。面白いのはこれからだろ?動けよ。」
こんなの
「……お別れだ、戦友。」
やだ
「俺もそのうちに消える。てめえは先に地獄に行ってろ……」
もう、しにたく ない
いやだいやだいやだくるしいたすけていたいあついいたいわれるあたまがいたいどうしてわたしはこんななんでなんどもわたしだけこんな「621!!」
「うぉ、るたぁ……?ひ、えぐっ、ぐすっ……うぉる、たぁ……!」
頭を叩き潰し塗り潰すような苦痛から、取り乱した声と皺の刻まれた手が引き摺り出してくる。
悪夢のような記憶の泥濘を、たしかに振り払ってくれる。優しく、壊れものを取り扱うように抱きしめて、あやしてくれる。
「621……しっかりしろ、ここにお前を傷つけるものは何処にもいない……。落ち着け、俺は……ここにいる。」
ああ。本当に、あなたは……。
ゆっくりと、落ち着く。乱れきった呼吸が整って、ぐちゃぐちゃになった
数多、無数、幾度となく繰り返された、
【強化人間 C4-621、脳波安定。通常モードに移行。】
COMの声が、私自身の安定を証明してくれる。ようやっと、
「うぉる、たー……しんぱい、かけた。ごめんな、さい……。」
「……いや、構わない。初めてのAC戦は、お前にとって相当な負担だったようだな。621、これから慣れていけ……無理に急かす事はしない。」
機能の枯れた筈の肉体から、絞り出すようにして溢れた涙を優しく指で拭われた。五感を損なったままの筈の肉体が、その暖かさを感じずにはいられない。
私自身が、私のあやふやさを自覚させられる。この頭の中には今、数えるのも嫌になるぐらいの
それが原因で死に至った事も、あるらしい。その中には、今この決意を揺らがさせるような……
幾度となく死んだ。
もし、それを今のように思い出したとしても……その多くに割り切りがついているのはきっと、どうしようもなく
「……ううん、だいじょう、ぶ。もう、へーき……だから。」
正直、今ので挫けそうになった。あの訓練生をちゃんと助けられて、気が抜けていたのだろう。ウォルターは……やっぱり私を助けてくれた。
どうしようもなく、甘い人。自分のものでもない重荷を一生背負って、降ろせもしない優しい人。最期の瞬間さえ、私の事を大切に想って……助けられなかった、人。
あの結末を見届けた瞬間から、絶対に助けたいと決意してしまった。その想いこそが、私の中で最も強い原動力……らしい。
「……。お前がそう言うなら、信じるが……無理はするな。何か、してほしい事はあるか。」
だってこんなに、すぐ私の身を案じてくれるんだから。そうやって、自分の目的も二の次にしようとして。
でも今は、その心遣いが何よりも……嬉しい。
「ぎゅって、して……。て、つないで。おはなし、いっぱいきかせて……。」
あなたを助けるのは、絶対。この決意は、揺るがない。私はそのためにも、強く在らないといけない……。
でも今だけは、あなたに寄りかからせてほしい。今だけでいい、少しだけ……頼らせてほしい。
こればっかりは、
「ああ。621、お前が好きなだけしてやろう……。何の話を聞きたい?」
「……うぉるたーの、ともだち。みしがん、ってひとのはなし。それと、それと、えっと……。」
「ミシガンか……そうだな、後日お前を預ける相手だ、先に知っておくのも悪くないだろう。次の話は聞きながらゆっくり考えておけ、俺も話も、逃げたりしない。」
少しだけ……そう、少しだけ……あなたに頼りたい。
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彼はかつて技研都市で狂った遺産を目の当たりにし続け、その遺産が星一つを瞬く間に焼き払わんとした事を覚えている。
コーラルは、ただの資源ではない。あれは確かに人の営みを豊かにしたのだろうが、多くの人を不幸に陥れもした。自分もまた、その一人であるのだが。
二度とこんなものの存在を許してはならない。その為に、犠牲を……
その上で、尚も犠牲を重ねようとしている。他人から見れば、廃品寸前の寄る辺もない
そしてそれは事実だ、否定はしないし余地もないと考える。だが真実は異なり、撤退を指示しても尚、ハウンズ達はその使命を全うしたに過ぎないが、死なせたという事実は揺るがないのだから。
「……やっと、眠ったか。」
膝枕をされ、穏やかな寝息を立てて眠りに就いた621を見て、そっと頭を撫でやる。
今回の……最期の仕事を果たすにあたって、唯一この手元に残された猟犬。その経歴は、複雑だ。
履歴を見るに、愛のない家庭で生まれ、小遣いついでに売り払われ、治験……とは名ばかりの第四世代強化人間施術の実験台として用いられ……半分成功、半分失敗の状態で売れる事もなく放置されていたらしい。
何度かACに乗せてテストさせた所、腕前そのものは良好だったようだが、情緒不安定と発覚。その術後の有様もあって、手を出そうとする者はウォルター以外に居らず、だ。
「お前には……これから、多くのものを背負わせてしまう。俺を許してくれとは……言わない。」
独り言を呟きながら、弱々しくも優しい力加減で握ってくる手を握り返す。まるで赤子のような……いや、その齢を鑑みれば幼子そのものだ。
こんなにも小さく、壊れそうな子に、ウォルターは多くの汚れ仕事を背負わせる事になると考えて、背に負う十字架の重みが増したのを感じる。
親に愛されず、子として育つでもなく一方的に託され……否が応でも、自分を重ねずにはいられない。そんなこの子に、自分は何という事を。
だがそれでも、やらねばならない。こんな、死を恐れ殺す事を嫌う幼子に……自分は付け入っているという事実に、凝り固まった表情が歪む。
「うぉる、たぁ……。」
「何だ?621。」
……暫く待っても、返事はない。どうやら寝言らしい。本来ならばこんな、血錆と硝煙の染み付いた戦場にいてはならない、あどけなさの残る子供。そんな幼さを見せつけられる。
「いなく、なら……ないで……ずっと、いっしょ……。」
「……。」
寝言だとしても、胸が締め付けられるような言葉だ。自分の目的を知っている筈もないのだが、待ち受けている
621
始まる前から実は中身が超ボロボロ、でも頑張る。この子がどれぐらい死んだかはこれを読んでいるあなたの胸に手を当てて聞いてみてください。
ウォルター
どうしてごすのせいぞんるーとないんですか?
621をロリっこにしたのはごすの曇らせ促進のためです。